魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百十四話 完璧で究極の

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 いつもの教室の朝のホームルーム、いつものようにナマク先生が教壇に立っている。けど、いつもと違うのは隣にパンプ君がいるって事だ。
 パンプ君が黒板に名前を書くとペコリとお辞儀をする。


「あんう・あっくれす。よおしくおねがいしまう」


 お辞儀したタイミングで皆でパチパチと拍手をする。その後、パンプ君の耳が聞こえなかったこと、まだ話すことに慣れてないことをナマク先生が説明する。
 皆の拍手に包まれながらパンプ君が席につく。顔を見るにまだ緊張しているのかな?心配だなぁ。
 ナマク先生が教室を出ていくと同時にノエルはパンプ君の席に直行する。


「パンプ君」
「おえう」


 ノエルが声を掛けると、パンプ君が少しだけ表情をやわらげた。


「おういあの?」
「大変だったらいつもみたいに書いてお話しても良いんだよ?」


 パンプ君は頷いていつものスケッチブックを取り出す。


≪どうしたの?≫
「ちょっと緊張しているかな、って思って。大丈夫?寂しくない?」
≪ノエルも皆もいる。寂しくはない≫
「そっか」


 緊張はしているみたいだけど、大丈夫そうだね。


「何か困った事があったら何でも聞いてね。それはそうと……」


 ノエルはこっちを見ているクラスメイトに向かって、笑顔で手招きする。


「皆も一緒にお喋りしよ?」
「え?でも……」
「いいから、いいから。何か気になることがあるなら、パンプ君に直接聞いてみようよ」
「じゃあ……」


 皆が恐る恐るといった様子でパンプ君の席の周りに集まってくる。
 その後、ノエルも少しだけお手伝いがありつつも、パンプ君は皆の楽しくお喋りをしたのだった。よかった、よかった。


☆   ☆   ☆   ☆


「良くないわよ」
「へ?」


 放課後、サルミちゃんとコアコちゃんとマカダ君が急にやってきた。


「良くないって何が?」
「あんたね、何のためにパンプの耳を治して学校に来させたのよ」
「パンプ君と一緒に学校に通うためだよ?」
「ノエルちゃ~ん、オカルト研究クラブ忘れてない?」
「……忘れてないよ?」
『嘘つけ』


 完っ全に忘れてた。パンプ君の耳が治って満足しちゃってた。


「えっと……、部員が足りないからパンプ君に、オカルト研究クラブに入ってもらう必要があるんだよね?」
「今更な話ね」
「ノエルちゃん、これに名前書いてね」


 コアコちゃんがノエルの机にクラブ申請書と書かれた紙を置く。


「これに名前を書けばオカルト研究クラブが出来るの?」
「クラブの内容とかも書く必要があるけどね。部員の欄は本人が書く必要があるんだ」
「そうなんだ」


 ノエル以外の皆の名前は書いてある。あとはノエルとパンプ君だけだ。
 とりあえずノエルの名前を書いてコアコちゃんに渡す。


「あとはパンプ君だけだね」
『そもそもパンプは入部してくれるのか?』
「恩人のノエルが頼めば無下にはしないんじゃない?」
「とりあえず聞いてみよっか」


 丁度、パンプ君はまだ帰っていない。このまま勧誘しちゃおう。
 教科書を鞄に仕舞っているパンプ君の肩を叩く。


「パンプ君」
≪ノエル?どうしたの?≫
「一つだけお願いがあるんだけどさ」
≪分かった引き受けるよ≫
「まだ何も説明してないよ?」


 まさか説明する前に承諾されると思ってなかった。


「せめて説明くらいは聞いてくれない?」
≪分かった。僕は何をすればいいの?≫
「ノエル達でオカルト研究クラブを作りたいんだけど、部員の数が足りないんだ」
≪どういうクラブなんだ?≫
「不思議な事を調べたり、部室でお喋りしたり、お菓子食べたりだね」
「後の2つは初耳かな?」
≪分かった。僕も入るよ≫
「わーい!ありがとう!」


 コアコちゃんが置いたクラブ申請書にパンプ君が名前を書く。


「よーし、これでオカルト研究クラブ結成だね」
「活動内容をまだ書いてないでしょ」
『なんて書くんだ?』
「不思議な事を調べたり、部室でお喋りしたり、お菓子食べたりじゃないの?」
「そんな事を書いたら絶対に却下されるよ」
「えー、楽しそうじゃない?」


 毎日お菓子食べてお喋り出来るなんて、最高の放課後になるのになー。


「確かに楽しそうだけど、流石に無理じゃないかな?」
「無理じゃないわよ」


 意外にもサルミちゃんがそんな事を言い出した。


「え?出来るの?」
「活動内容をそれっぽく書けば楽勝よ。お菓子とお喋りだったら」


 サルミちゃんが迷いなく申請書に鉛筆を走らせる。


「こんなものね」
「えーっと、『ディスカッションにより知見を深める』?お菓子は?」
「こっそり持ち込めばいいでしょ。先生が来た時にこっそり隠せばバレないわよ。ノエルだったら気配で近づいてくる人は分かるんだし」
「なるほど!」
『なるほどじゃないけどな』
「でもさ、オカルト要素は何処にあるの?」
「オカルト要素ね」


 消しゴムで書いた文字を消して、サルミちゃんは再び鉛筆を走らせる。


「これでどうかしら?」
「『真偽不明な情報をディスカッションで事前に話し合い、調査により原因を究明する』か。それっぽくはあるね」
「これで普段は部室で駄弁りつつ、何か気になるものがあれば調べる都合のいいクラブが出来るわ。お菓子は自分たちで用意しないといけないけど」
「さっすがサルミちゃん!頭いいね!」
「ふふん、崇めたたえなさい」


 サルミちゃんが得意そうに胸を張る。


≪やけに慣れてるみたいだけど、普段からそんな事しているの?≫
「パパがいつもこんな事しているから、見なれているのよ」
「パパって憲兵長だっけ?凄い人だよね」
「やめてよ、あんな肩書だけのダメなパパよ」


 褒めたのにサルミちゃんが不機嫌になる。お父さんの事が嫌いなのかな?


「とにかく、これで必要なものは揃ったわ。今から先生に提出するわよ」
「遂になんだね」
「長かったなー」


 にゃんこ探しから領主さんの護衛まで色々とやってきた。失敗もあったけど、本当に良かった。


「じゃ、いくわよ!」
「「≪『おー!』≫」」


☆   ☆   ☆   ☆



「認められません」
「なんで!?」


 ナマク先生にクラブ申請書を出した瞬間にナマク先生に却下される。
 すると、隣に居たサルミちゃんとマカダ君が耳打ちをしてきた。


「だから他の先生にしようって言ったのよ。なんでナマク先生なのよ」
『絶対に却下されるに決まってるだろ。だから反対したんだよ』
「だって、一番良さそうな先生だったし……」
「もっと適任がいるでしょ」
「あの冷たい目を見てみろよ、絶対に許可しないって言う意思を感じるぜ」


 ナマク先生は相変わらず無表情でノエル達を見ている。ぱっと見、怖そうな印象を受けるけど、ノエルは、なんとなく優しい先生なんじゃないかなって思ってる。だから、ナマク先生の所に来たんだけど、当てが外れちゃったかな?
 コアコちゃんは諦めきれないのか、恐る恐る手を上げる。


「あのー、なんでダメなんでしょうか?」
≪活動内容がダメだったとか?≫
「私が考えたのよ?ダメな訳ないでしょう?」
「そうですね、活動内容はギリギリ問題ないです」
「ギリギリ……」


 ちょっとショックだったのかサルミちゃんが言葉を無くす。代わりにノエルが進めておこうかな。


「じゃあ、何がダメなんですか?」
「このクラブには顧問の先生が居ません。これではクラブとして認められません」


 申請書の右下にある顧問の部分を指さす。確かにそこは何も書かれていない。


『顧問か。すっかり忘れてた』
「そうだったね」
「誰に頼もうか?」


 部員だけしか考えていなかった。そういえば顧問の先生も必要だったね。失敗失敗。


「でも、私、顧問してくれる先生の心当たりないよ?」
「ナマク先生、誰か顧問やってくれそうな先生に心当たりは無いですか?」
「ありますよ」
「本当ですか!?」
「いったい誰!?」


 ナマク先生は申請書を手に取るとペンを走らせた。ペンを止めると申請書をノエル達に見せて来る。
 そこには顧問の欄にナマク先生の名前が書かれていた。


「え?これって……」
「私がオカルト研究クラブの顧問になりましょう」


 ナマク先生の言葉にコアコちゃんが手を上げる。


「あの、いいんですか?」
「ええ。問題ありません」
『なんで顧問をしてくれるんですか?』
「私なりの御礼ですね」
「御礼?」


 何かナマク先生にしたっけ?


「私だけではパンプさんを救う事は出来ませんでした。ノエルさんには感謝してもしたりません」
「ノエルはやりたい事をやっただけだよ?」
「それでもです。これでつり合いが取れるとは思ってませんが、皆さんが必要としているのであれば力になりましょう」


 いつものように無表情で話すナマク先生。でも、その眼は何処か暖かく感じられた。
 ノエル達はナマク先生に頭を下げる。


「「「「『よろしくお願いします!』」」」」
「はい、受理しました。部室は後日に用意します。本格的な活動はそれからになります」
「はーい!」
「それで、部長はどなたですか?」
「コアコちゃんでーす」
「え?私?」


 コアコちゃんは意外そうな表情で自身を指さす。


「え?だってコアコちゃんがやりたいんでしょ?」
「そ、そうだけど……、うん、じゃあ頑張る」


 コアコちゃんは表情を引き締めて両こぶしを胸の前に持ってくる。


「じゃあ決まりね」
「分かりました。これで手続きは終了です。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」


 こうして、ノエル達は念願のクラブを立ち上げたのだった。
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