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第二百十九話 まだやるかい?
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「え?まだ負けてない?」
ロワの言葉にゴオリは目つきが鋭いまま頷く。
「ああ。俺はまだ負けてない」
「いやいやいや!ホウリさんの攻撃でやられたでしょ!?」
ロワが目を大きく開いて叫ぶ。
ゴオリが目覚めての第一声は「俺はまだ負けていない」だった。まあ、こいつの性格的にそう言うとは思ってたけどな。
「あれで負けてないっていうのは無理がないですか!?」
「ふんっ!俺が負けるなんてありえない。あれは何かの間違いだ」
「何をどう間違ったらあんな無様な負け方をするんですか!?」
「あ゛あ゛?」
ゴオリに睨まれ、ロワが慌てて俺の後ろに隠れる。
「怖いなら挑発するなよ」
「だって、納得できないんですもん」
「納得できなくても、ゴオリに負けを認めさせるまで戦わないといけないんだよ」
勇者の魂を奪う方法は2つある。1つ目は相手に心から負けを認めさせること。2つ目は相手を殺すこと。
一見、1つ目の方が簡単そうに思える。だが、人によっては死んでも負けを認めないこともあり、殺さないで達成できないこともある。
2つ目は俺じゃ達成できない以上、1つ目の条件を達成するしかないわけだ。
そのためにはどうにかして、ゴオリに負けを認めさせないといけない。
「どうするんですか?ゴオリさんに負けを認めさせるのは簡単じゃないですよ?」
「やり方は分かってる」
「本当ですか?」
「あいつを何回もボコボコ倒す。それしかない」
「え?」
ロワの間の抜けた声を背に、俺はゴオリに近づく。
「ゴオリ、まだ負けていないんだよな?」
「ああ」
「ならもう一回だ。構えろ」
俺は新月をゴオリに向ける。1回でダメなら負けを認めさせるまで続けるだけだ。
俺の言葉にキョトンとした表情をしたゴオリだったが、すぐにニヤリと獰猛な表情に変わる。
「良いじゃねえか。うだうだ話すよりも手っ取り早い。だが……」
ゴオリは俺の新月を指さす。
「その武器は使うな」
「あ?」
「だってそうだろ?壊れない武器なんてただのズルだ」
「な!?そっちのスキルの方がズルでしょ!?」
「分かった」
ロワの言葉を無視して俺は新月を仕舞う。
「これでいいか?」
「ああ。始めるか」
「ロワ、下がってろ」
「もう下がってまーす!」
いつの間にか戦闘場の外に逃げていたロワ。これだけ行動が早いのは今までの特訓のおかげか。
そう思い前に視線を合わせると、ゴオリが殴ろうとが迫ってきていた。
「オラァ!」
「甘い」
俺は首を横に曲げて回避して、お返しに顔面を殴る。鉄のように固い感触が拳から伝わる。強化中は攻撃が通らないな。
俺は距離を取らずにゴオリにまとわり着くように動く。ゴオリは鬱陶しそうに裏拳を繰り出してくるが、全部回避する。常に視界外にいて、密着する距離に居れば意外と避けられる。
「くそが!鬱陶しいんだよ!」
「知らないのか?戦いって言うのは鬱陶しさの押し付けあいなんだぜ?」
「ざけんな!」
「どうした?一回も当たってないぞ?」
挑発しながら俺はゴオリに纏わりつく。近くで即死の攻撃を回避し続けるのは怖いが、意外とこの位置が安全だ。
挑発しながら回避を続けていると、ゴオリが体勢を低くした。後ろに跳んで距離を取る気か。
そう思った俺はゴオリの襟をつかむ。
すると、思った通りゴオリは距離を取ろうと後ろに跳んだ。襟を掴んでいた俺も一緒に跳ぶことになる。
「な!?」
不意を突かれてゴオリの表情に驚愕に変わる。そんなゴオリの顔面に勢いがついた肘を叩き込む。
鼻の骨が折れる音が聞こえ、ゴオリは血を流しながら床に倒れこんだ。
「気絶したな」
かがんでゴオリが気絶していることを確認し、手でロワを呼ぶ。
「はい、なんでしょうか」
「ヒールシュートでゴオリを回復してくれ」
「もしかして、まだ戦うんですか?」
「ゴオリが負けを認めるまで何回でも戦う。言っただろ?」
「あんな攻撃を躱して0.1秒の隙に攻撃する、そんなのを続けるんですか?」
「ああ」
「大丈夫ですか?」
「慣れてるからな。油断しなければ大丈夫だ。そんな事よりも早く回復させてくれ。少しでも疲れている内に戦いたい」
「わかりましたよ」
ロワがゴオリをヒールシュートで癒す。
ゴオリの鼻が治ったのを確認して頬をペチペチと叩く。
「うーん?」
「気が付いたな。じゃあ次だ」
「……ああ。次は密着するのは禁止だ」
「分かった。構えろ」
ゴオリが立ち上がり、俺は1m程の距離を取る。
「いくぞ!」
相変わらずゴオリは突進してくる。さっきと変わらない戦法か。楽でいいな。
さっきと同じように、ゴオリの拳を躱し、強化が切れるのを待つ。拳が風切る音を聞きながら、ゴオリという人物について考える。
やられても言い訳しながら向かってくる事から、自分の力をかなり自信があるんだろう。そして、力も権力もあるから全ての人間を下に見ている。だから。負けたことを認められないんだろう。
となると、負けを認めさせる条件は2つ。力と権力、どちらも否定することだ。
「いい加減にしろぉ!」
「よっと」
汗を振りまきながらゴオリが滅茶苦茶に攻撃してくる。
疲れて来たのか攻撃の速度が遅くなってきたな。回避も楽だ。
「くそがぁあああ!」
後ろに跳んで人差し指を向けて来る。時間が切れそうになると距離を取って時間稼ぎ。いままでと何も変わらないな。
「さっきの武器はもうねぇ!これで終わり……」
ゴオリの話の途中で俺は煙玉を投げつける。あれは周りの光を集めて攻撃する。つまり、煙とかで光を遮断すれば威力は下がる。
そして、あいつからは俺が見えない以上、正確な狙いは付けられないだろう。だが、俺なら気配を探れば場所が分かる。これで一方的に攻撃出来る。
「めんどくせぇ事しやがって!」
俺の場所が分からないゴオリは滅茶苦茶にパーフェクトビームを放ち、戦闘場の壁に複数の焦げをつくる。
俺はパーフェクトビームに当たらない様に身を低くしながら接近する。
そして、ゴオリの影が見えた瞬間、足を払ってゴオリを倒す。
「止めだ」
「があっ!」
ゴオリの腹を踏み抜いて気絶させる。
止めをさした事を確認し、再びロワを呼ぶ。
「回復させてくれ」
「わかりましたけど、これいつまで続くんですか?」
「あと5回は戦うつもりだ」
「うへー、多いですね」
「回復させたら怪我しない様に下がっておけよ?」
「わかりました」
☆ ☆ ☆ ☆
「はぁ!」
「ぐわぁ!」
ゴオリの腹に鎧通しを炸裂させ気絶させる。
何度目かの気絶を確認し、ロワにゴオリを回復してもらう。
「……はっ!」
「まだ負けてないんだろ?構えろ」
「…………」
「どうした?次は何を禁止する気だ?」
俺の言葉にゴオリは何も答えない。今までの戦いで俺は素手以外の使用を禁止されている。今の戦いでも強化中に倒した訳だし、もう何も縛るものは無い。
「聞こえなかったか?次はどうするかと聞いているんだ」
「…………自分が何をやったか分かってるのか?」
「王子様を数回に渡ってボコボコにした。他に何かしたか?」
「貴様ぁ……。こうなったら父上に言いつけてやる!貴様なんかすぐに死刑だ!」
「勝てないからパパに泣きつくのか」
涙目でゴオリが喚き散らす。やっぱりこの程度か。
「うるさい!お前さえいなければ俺様が一番強いんだ!」
「前に酒屋で女の子にやられたくせにか?しかも、俺みたいに回避しまくってた訳じゃなく真っ向勝負で負けたんだろ?」
「そいつも見つけだして死刑にしてやる!俺様に逆らう奴は……」
ゴオリがそこまで言うと、戦闘場の扉の方向から鉄の軋む音が聞こえた。視線を向けると扉が重々しく開き、国王が護衛もつけずに入ってきた。
「国王様!?」
「別に畏まらなくてもいいぞ」
膝を折ろうとするロワを止める。
「え?でも……」
「あの人はそんな細かい事は気にしない。無礼な態度さえ取らなければ大丈夫だ」
ロワは半信半疑と言った様子で立ち上がる。
国王が戦闘場に入ってくるとゴオリが笑顔で駆けていく。
「父さん!聞いてよ、こいつが俺をいじめるんだ」
「知っている。わしがホウリに頼んだのだからな」
「え?」
ゴオリが信じられないと言った様子で国王を見る。
「な、なんでそんな事を……」
「お前の行動は目に余っておってな。少し灸をすえるつもりだったのだ」
「そ、そんな……」
「そして、今の言葉を聞いてわしは決めた」
「何を?」
「ゴオリ、貴様を勘当する」
「……へ?」
ゴオリの目が大きく見開かれる。そして、言葉の意味を理解した瞬間、ゴオリは泣きながら国王に縋りつく。
「ま、待って!なんでいきなり!」
「いきなり?前からお主の行動に関しては目に余ると伝えていた筈だが?」
「だからって勘当はないでしょ!」
「自分の力でなし得ぬ事を努力でなく、権力で解決しようとする。そんな者が王の器として相応しいと思っているのか?」
「それは……」
「これは王命だ。異論は認めん」
「うう……」
王の毅然とした言葉にゴオリが崩れ落ちる。
王はそんなゴオリを一瞥し、戦闘場から出ていく。
「……うう」
悔しいのか、ゴオリが呻きながら涙を流す。
俺はそんなゴオリの前でしゃがみ、優しく肩に手を置く。
「ゴオリ」
「ホウリぃ。これから俺はどうすれば良いんだぁ……」
「それはお前の決めることだ。だから俺から言えることは一つだ」
涙でぐしゃぐしゃのゴオリに俺は優しい微笑みを浮かべる。
「まだ負けていないんだろ?構えろ」
「……へ?」
俺は戦い始めた時と同じ立ち位置で構える。
「あと1分で始めるぞ。さっさと構えろ」
「……は?」
「俺が国王に命じられたのは、お前に負けを認めさせることだ。お前が負けを認めていないのであれば、勘当されようが、親からゴミみたいな視線を向けられようが関係ない」
「え?いや……」
「もう一度だけ言うぞ。構えろ」
俺はいつでも攻撃できるように拳を構える。そんな俺をゴオリは信じられない物を見るように視線を向けて来る。
「お前には人の心がないのか?」
「これまで人の大切なものを奪ったり壊したりしたんだろ?それに比べれば何てことはない筈だぜ?」
「だが……」
「甘えるなよ?」
俺はゴオリの言葉をさえぎる。
「戦士はどんな状況でも勝ってこそだろ。お前は敵にやられた後もズルいって言うのか?」
「それは、お前がズルするから……」
「じゃあ聞くが、お前が俺の立場でなんでも使えたとして、勝てるのか?」
「それは……」
「俺には一つの大きな力がある訳じゃない。だが、攻撃を避ける技術や、指で物を飛ばす技術、爆弾を使う技術、会話で開いての体内時計を狂わせる技術。細かい技術だけでも100は使っている。対するお前は勝つために何をした?」
「…………」
俺の言葉にゴオリは言葉を失う。そんなゴオリに追い打ちをかける。
「戦ってみて分かったが、お前のレベルって1だろ?」
「ああ……」
「少しでも上げれば俺に一撃で倒されることも無かったんじゃないか?他にスキルを覚えれば、接近されても対処できたんじゃないか?格闘技を練習したら、俺に攻撃を当てられたんじゃないか?」
「…………」
「強くなろうとしていない奴に、俺は絶対に負けない」
言葉を失って項垂れているゴオリの髪を掴み、強引に顔を上げさせる。
「まだ負けていないんだろ?構えろ」
「うう……うわあああん」
俺の言葉にゴオリが号泣し始める。
瞬間、ゴオリの胸から金色の光が出てきて俺の胸に吸い込まれた。言葉にしなくても、直感的に察する。
「これで依頼は達成だな。ロワ、帰るぞ」
「は、はい……でも良いんですか?」
「ああ。あそこから這い上がれるかはゴオリ次第だ。俺達がやる事じゃない」
「そうですか」
ゴオリの泣き声を聞きつつ、俺達は戦闘場をあとにする。
こうして俺は魔王討伐に必要な勇者の魂をゲットしたのだった。
ロワの言葉にゴオリは目つきが鋭いまま頷く。
「ああ。俺はまだ負けてない」
「いやいやいや!ホウリさんの攻撃でやられたでしょ!?」
ロワが目を大きく開いて叫ぶ。
ゴオリが目覚めての第一声は「俺はまだ負けていない」だった。まあ、こいつの性格的にそう言うとは思ってたけどな。
「あれで負けてないっていうのは無理がないですか!?」
「ふんっ!俺が負けるなんてありえない。あれは何かの間違いだ」
「何をどう間違ったらあんな無様な負け方をするんですか!?」
「あ゛あ゛?」
ゴオリに睨まれ、ロワが慌てて俺の後ろに隠れる。
「怖いなら挑発するなよ」
「だって、納得できないんですもん」
「納得できなくても、ゴオリに負けを認めさせるまで戦わないといけないんだよ」
勇者の魂を奪う方法は2つある。1つ目は相手に心から負けを認めさせること。2つ目は相手を殺すこと。
一見、1つ目の方が簡単そうに思える。だが、人によっては死んでも負けを認めないこともあり、殺さないで達成できないこともある。
2つ目は俺じゃ達成できない以上、1つ目の条件を達成するしかないわけだ。
そのためにはどうにかして、ゴオリに負けを認めさせないといけない。
「どうするんですか?ゴオリさんに負けを認めさせるのは簡単じゃないですよ?」
「やり方は分かってる」
「本当ですか?」
「あいつを何回もボコボコ倒す。それしかない」
「え?」
ロワの間の抜けた声を背に、俺はゴオリに近づく。
「ゴオリ、まだ負けていないんだよな?」
「ああ」
「ならもう一回だ。構えろ」
俺は新月をゴオリに向ける。1回でダメなら負けを認めさせるまで続けるだけだ。
俺の言葉にキョトンとした表情をしたゴオリだったが、すぐにニヤリと獰猛な表情に変わる。
「良いじゃねえか。うだうだ話すよりも手っ取り早い。だが……」
ゴオリは俺の新月を指さす。
「その武器は使うな」
「あ?」
「だってそうだろ?壊れない武器なんてただのズルだ」
「な!?そっちのスキルの方がズルでしょ!?」
「分かった」
ロワの言葉を無視して俺は新月を仕舞う。
「これでいいか?」
「ああ。始めるか」
「ロワ、下がってろ」
「もう下がってまーす!」
いつの間にか戦闘場の外に逃げていたロワ。これだけ行動が早いのは今までの特訓のおかげか。
そう思い前に視線を合わせると、ゴオリが殴ろうとが迫ってきていた。
「オラァ!」
「甘い」
俺は首を横に曲げて回避して、お返しに顔面を殴る。鉄のように固い感触が拳から伝わる。強化中は攻撃が通らないな。
俺は距離を取らずにゴオリにまとわり着くように動く。ゴオリは鬱陶しそうに裏拳を繰り出してくるが、全部回避する。常に視界外にいて、密着する距離に居れば意外と避けられる。
「くそが!鬱陶しいんだよ!」
「知らないのか?戦いって言うのは鬱陶しさの押し付けあいなんだぜ?」
「ざけんな!」
「どうした?一回も当たってないぞ?」
挑発しながら俺はゴオリに纏わりつく。近くで即死の攻撃を回避し続けるのは怖いが、意外とこの位置が安全だ。
挑発しながら回避を続けていると、ゴオリが体勢を低くした。後ろに跳んで距離を取る気か。
そう思った俺はゴオリの襟をつかむ。
すると、思った通りゴオリは距離を取ろうと後ろに跳んだ。襟を掴んでいた俺も一緒に跳ぶことになる。
「な!?」
不意を突かれてゴオリの表情に驚愕に変わる。そんなゴオリの顔面に勢いがついた肘を叩き込む。
鼻の骨が折れる音が聞こえ、ゴオリは血を流しながら床に倒れこんだ。
「気絶したな」
かがんでゴオリが気絶していることを確認し、手でロワを呼ぶ。
「はい、なんでしょうか」
「ヒールシュートでゴオリを回復してくれ」
「もしかして、まだ戦うんですか?」
「ゴオリが負けを認めるまで何回でも戦う。言っただろ?」
「あんな攻撃を躱して0.1秒の隙に攻撃する、そんなのを続けるんですか?」
「ああ」
「大丈夫ですか?」
「慣れてるからな。油断しなければ大丈夫だ。そんな事よりも早く回復させてくれ。少しでも疲れている内に戦いたい」
「わかりましたよ」
ロワがゴオリをヒールシュートで癒す。
ゴオリの鼻が治ったのを確認して頬をペチペチと叩く。
「うーん?」
「気が付いたな。じゃあ次だ」
「……ああ。次は密着するのは禁止だ」
「分かった。構えろ」
ゴオリが立ち上がり、俺は1m程の距離を取る。
「いくぞ!」
相変わらずゴオリは突進してくる。さっきと変わらない戦法か。楽でいいな。
さっきと同じように、ゴオリの拳を躱し、強化が切れるのを待つ。拳が風切る音を聞きながら、ゴオリという人物について考える。
やられても言い訳しながら向かってくる事から、自分の力をかなり自信があるんだろう。そして、力も権力もあるから全ての人間を下に見ている。だから。負けたことを認められないんだろう。
となると、負けを認めさせる条件は2つ。力と権力、どちらも否定することだ。
「いい加減にしろぉ!」
「よっと」
汗を振りまきながらゴオリが滅茶苦茶に攻撃してくる。
疲れて来たのか攻撃の速度が遅くなってきたな。回避も楽だ。
「くそがぁあああ!」
後ろに跳んで人差し指を向けて来る。時間が切れそうになると距離を取って時間稼ぎ。いままでと何も変わらないな。
「さっきの武器はもうねぇ!これで終わり……」
ゴオリの話の途中で俺は煙玉を投げつける。あれは周りの光を集めて攻撃する。つまり、煙とかで光を遮断すれば威力は下がる。
そして、あいつからは俺が見えない以上、正確な狙いは付けられないだろう。だが、俺なら気配を探れば場所が分かる。これで一方的に攻撃出来る。
「めんどくせぇ事しやがって!」
俺の場所が分からないゴオリは滅茶苦茶にパーフェクトビームを放ち、戦闘場の壁に複数の焦げをつくる。
俺はパーフェクトビームに当たらない様に身を低くしながら接近する。
そして、ゴオリの影が見えた瞬間、足を払ってゴオリを倒す。
「止めだ」
「があっ!」
ゴオリの腹を踏み抜いて気絶させる。
止めをさした事を確認し、再びロワを呼ぶ。
「回復させてくれ」
「わかりましたけど、これいつまで続くんですか?」
「あと5回は戦うつもりだ」
「うへー、多いですね」
「回復させたら怪我しない様に下がっておけよ?」
「わかりました」
☆ ☆ ☆ ☆
「はぁ!」
「ぐわぁ!」
ゴオリの腹に鎧通しを炸裂させ気絶させる。
何度目かの気絶を確認し、ロワにゴオリを回復してもらう。
「……はっ!」
「まだ負けてないんだろ?構えろ」
「…………」
「どうした?次は何を禁止する気だ?」
俺の言葉にゴオリは何も答えない。今までの戦いで俺は素手以外の使用を禁止されている。今の戦いでも強化中に倒した訳だし、もう何も縛るものは無い。
「聞こえなかったか?次はどうするかと聞いているんだ」
「…………自分が何をやったか分かってるのか?」
「王子様を数回に渡ってボコボコにした。他に何かしたか?」
「貴様ぁ……。こうなったら父上に言いつけてやる!貴様なんかすぐに死刑だ!」
「勝てないからパパに泣きつくのか」
涙目でゴオリが喚き散らす。やっぱりこの程度か。
「うるさい!お前さえいなければ俺様が一番強いんだ!」
「前に酒屋で女の子にやられたくせにか?しかも、俺みたいに回避しまくってた訳じゃなく真っ向勝負で負けたんだろ?」
「そいつも見つけだして死刑にしてやる!俺様に逆らう奴は……」
ゴオリがそこまで言うと、戦闘場の扉の方向から鉄の軋む音が聞こえた。視線を向けると扉が重々しく開き、国王が護衛もつけずに入ってきた。
「国王様!?」
「別に畏まらなくてもいいぞ」
膝を折ろうとするロワを止める。
「え?でも……」
「あの人はそんな細かい事は気にしない。無礼な態度さえ取らなければ大丈夫だ」
ロワは半信半疑と言った様子で立ち上がる。
国王が戦闘場に入ってくるとゴオリが笑顔で駆けていく。
「父さん!聞いてよ、こいつが俺をいじめるんだ」
「知っている。わしがホウリに頼んだのだからな」
「え?」
ゴオリが信じられないと言った様子で国王を見る。
「な、なんでそんな事を……」
「お前の行動は目に余っておってな。少し灸をすえるつもりだったのだ」
「そ、そんな……」
「そして、今の言葉を聞いてわしは決めた」
「何を?」
「ゴオリ、貴様を勘当する」
「……へ?」
ゴオリの目が大きく見開かれる。そして、言葉の意味を理解した瞬間、ゴオリは泣きながら国王に縋りつく。
「ま、待って!なんでいきなり!」
「いきなり?前からお主の行動に関しては目に余ると伝えていた筈だが?」
「だからって勘当はないでしょ!」
「自分の力でなし得ぬ事を努力でなく、権力で解決しようとする。そんな者が王の器として相応しいと思っているのか?」
「それは……」
「これは王命だ。異論は認めん」
「うう……」
王の毅然とした言葉にゴオリが崩れ落ちる。
王はそんなゴオリを一瞥し、戦闘場から出ていく。
「……うう」
悔しいのか、ゴオリが呻きながら涙を流す。
俺はそんなゴオリの前でしゃがみ、優しく肩に手を置く。
「ゴオリ」
「ホウリぃ。これから俺はどうすれば良いんだぁ……」
「それはお前の決めることだ。だから俺から言えることは一つだ」
涙でぐしゃぐしゃのゴオリに俺は優しい微笑みを浮かべる。
「まだ負けていないんだろ?構えろ」
「……へ?」
俺は戦い始めた時と同じ立ち位置で構える。
「あと1分で始めるぞ。さっさと構えろ」
「……は?」
「俺が国王に命じられたのは、お前に負けを認めさせることだ。お前が負けを認めていないのであれば、勘当されようが、親からゴミみたいな視線を向けられようが関係ない」
「え?いや……」
「もう一度だけ言うぞ。構えろ」
俺はいつでも攻撃できるように拳を構える。そんな俺をゴオリは信じられない物を見るように視線を向けて来る。
「お前には人の心がないのか?」
「これまで人の大切なものを奪ったり壊したりしたんだろ?それに比べれば何てことはない筈だぜ?」
「だが……」
「甘えるなよ?」
俺はゴオリの言葉をさえぎる。
「戦士はどんな状況でも勝ってこそだろ。お前は敵にやられた後もズルいって言うのか?」
「それは、お前がズルするから……」
「じゃあ聞くが、お前が俺の立場でなんでも使えたとして、勝てるのか?」
「それは……」
「俺には一つの大きな力がある訳じゃない。だが、攻撃を避ける技術や、指で物を飛ばす技術、爆弾を使う技術、会話で開いての体内時計を狂わせる技術。細かい技術だけでも100は使っている。対するお前は勝つために何をした?」
「…………」
俺の言葉にゴオリは言葉を失う。そんなゴオリに追い打ちをかける。
「戦ってみて分かったが、お前のレベルって1だろ?」
「ああ……」
「少しでも上げれば俺に一撃で倒されることも無かったんじゃないか?他にスキルを覚えれば、接近されても対処できたんじゃないか?格闘技を練習したら、俺に攻撃を当てられたんじゃないか?」
「…………」
「強くなろうとしていない奴に、俺は絶対に負けない」
言葉を失って項垂れているゴオリの髪を掴み、強引に顔を上げさせる。
「まだ負けていないんだろ?構えろ」
「うう……うわあああん」
俺の言葉にゴオリが号泣し始める。
瞬間、ゴオリの胸から金色の光が出てきて俺の胸に吸い込まれた。言葉にしなくても、直感的に察する。
「これで依頼は達成だな。ロワ、帰るぞ」
「は、はい……でも良いんですか?」
「ああ。あそこから這い上がれるかはゴオリ次第だ。俺達がやる事じゃない」
「そうですか」
ゴオリの泣き声を聞きつつ、俺達は戦闘場をあとにする。
こうして俺は魔王討伐に必要な勇者の魂をゲットしたのだった。
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