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第二百三十三話 プリンを、2つも食べちゃいます
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「はー、やっと終わりましたね」
「だな」
的当てのゴタゴタが終わり、僕らは展示会を後にしていた。数時間の出来事だったけど、疲れで体が重い。
「なんだか疲れました。あとは宿でゆっくりします」
「言っておくが、まだハイファイでの用事は終わっていないからな?」
「え?……ああ、トリシューラですか」
「さては忘れてたな?」
「そんな事はないですよ?」
正直、疲れすぎて頭から抜けていた。僕の武器の話なのに、腑抜けすぎかも。
「トリシューラってどこで買えるの?とっても高いんでしょ?」
「オークションとか闇市とか色々なんだが、今回は職人から直接買い取る」
「トリシューラの職人って正体が開かされてないんですよね?」
「ホウリお兄ちゃんなら調べられるんじゃない?」
「言われてみればそうだね」
ホウリさんのおかげで直接買える訳だ。感謝してもしきれない。
「矢を作るところを直接見られますかね?」
「頼んでみたら良いんじゃないか?」
「そうします」
脆いブルーライトクリスタルの中に模様を彫り込む。どうやっているのか、とても気になる。
「それで職人さんは何処にいるんですか?」
「到着してからのお楽しみだ」
「どういう所だろ?」
「きっと、人通りの少ないところに工房があるんだよ。人目を忍んで、こっそりと凄い物を作る、ロマンがあると思わない?」
「それならさ、いっそ街の外にいるんじゃない?」
「人里離れた場所で一人で作業、いいね。雰囲気あるよ」
2人であーでもない、こーでもないと言い合いながら、ホウリさんに付いていく。
歩く事10分。ホウリさんは人気の多い通りにやって来た。見た感じ、旅行者っぽい人が多めかな。通りのお店も旅行者向けのお店が多い。
「こんな所に職人がいるんですか?」
「そろそろ昼飯の時間だろ?何か食べたい物はあるか?」
「もうそんな時間ですか」
空を見ると太陽が真上まで登り切っていた。いつの間にかお昼ご飯の時間になってたんだ。
「ノエルはハンバーグが食べたい!」
「ノエルちゃんは本当にハンバーグが好きなんだね」
「ロワは食べたいものはあるか?」
「疲れたので力が付くものがいいですね。ステーキが食べたいです」
「ロワも肉か、だったらあそこが丁度良いな」
「いいお店があるんですか?」
「ああ。ここらに上手いレストランがあるんだ」
「じゃあそこでお昼を食べましょうか」
ホウリさんのおすすめのお店か。これは期待できる。
「どこにあるんですか?」
「近く、というかもう見えるぞ。あそこだ」
ホウリさんが指さす方向を見ると、装飾品があまりない落ち着いたお店があった。看板には『ヴェニタス』と書かれている。
「なんか美味しそうじゃないね」
「そう思うならノエルはまだまだだな」
「むう、そんなこと無いもん」
むくれているノエルちゃんを連れてヴェニタスまで向かう。窓から見るにお客さんは入っていないみたいだ。
普通にお店を探していたんだったらスルーしていたかもしれない。けど、ホウリさんのおすすめって聞くと隠れ家的なお店に感じるから不思議だ。
「こんにちは~」
扉を開けると、軽いベルの音が鳴り響く。店に入ってすぐに奥から眼鏡を掛けた男の人がやって来た。タキシードを着こなした真面目そうなウエイターさんだ。
「いらっしゃいませ」
「3人ですけどいいですか?」
「大丈夫です。こちらへどうぞ」
ウエイターさんに促され、厨房に一番近いテーブル席に通される。
僕はノエルちゃんの隣に座り、向かいにホウリさんが座る。席に着いたと同時に僕らの前にメニューが置かれる。
メニューは黒い革で覆われていて高級感がある。店内も明るさが抑えられていて、モダンな雰囲気が漂っている。
いつも行っているファミリーレストランよりも大人な雰囲気だ。
「決まりましたらお呼びください」
ウエイターさんが一礼して厨房に戻っていく。
メニューに目を通すと、細く優雅な文字で料理名が書かれていた。ちょっと読みにくいんだけど、大人って感じがする。
「決まったか?」
「僕は子羊のステーキでお願いします」
「ノエルは柔らかハンバーグ!」
「俺はキングシュリンプのローストにするか。すみませーん」
ホウリさんが呼ぶと、ウエイターさんが早足でやってきた。
「注文をお伺いします」
「子羊のステーキと柔らかハンバーグ、キングシュリンプのローストを1つずつ」
「お飲み物はいかがされますか?」
「俺はオレの実のジュース」
「ノエルも同じの!」
「僕はジンジャエールをお願いします」
「かしこまりました」
伝票に注文した物を書き加え、ウエイターさんは厨房へ戻った。
「良い雰囲気のお店ですね」
「だろ?雰囲気だけじゃなくて味も補償するぜ?」
「楽しみですね」
「それにな、この店は飯だけじゃなくてデザートも美味いんだぜ?」
「さてはそれがメインですね?」
「それもある」
ホウリさんらしい理由だ。ご飯が美味しいのは本当だろうし、問題はないと思うけど。
「昨日はどこに行ってたんだ?」
「うーんとね、水族館とかゲームセンターとか、色んなところに行ったよ」
「この街の水族館は凄かっただろ?」
「そうですね。王都よりも魚の種類が多かったです」
昨日の事をホウリさんに話す。ホウリさんは僕たちの話に相槌を打ちながら、静かに聞く。
「それでね、水槽の前でお魚さんを見てたら……」
「お待たせいたしました」
夢中になって話していると、いつの間にかウエイターさんが料理を運んできていた。
台車で持ってきた熱々の鉄板とライスを僕らの前に並べる。
「子羊のステーキ、柔らかハンバーグ、キングシュリンプのローストでございます」
「ありがとうございます」
僕の前に鉄板に乗せられたステーキが置かれる。
「美味しそうですね」
「早く食おうぜ」
お肉にナイフを入れてみると、抵抗も少なく切ることが出来た。お肉を口に入れてみると、お肉の上品な旨味が口いっぱいに広がった。
「美味しいです」
「おいしー!」
「いい味だ」
「ありがとうございます」
僕たちの感想を聞いたウエイターさんが軽く頭を下げる。
「これって全部ウエイターさんが作っているんですか?」
「その通りです。調理から配膳、会計や掃除といったすべての事を私が行っております」
「全部一人でなんて、大変じゃないですか?」
「お客さまはそこまで来ませんので、苦ではありませんよ」
「お客さんが来ないと、稼ぎが出ないんじゃないんですか?」
「この店は趣味のようなものなので、問題ございません」
趣味でこんなお店が持てるなんて、すごくお金持ちなんだろうか。まあ、ストレートに聞くとホウリさんに怒られそうだから黙っておくけど。
「ロワお兄ちゃん、ステーキちょっと頂戴?」
「いいよ。僕もハンバーグ貰っていい?」
「いいよ」
「俺にも分けてくれ」
皆で分け合いながら料理を楽しむ。
ものの数分で料理を全て平らげた僕は椅子にもたれ掛かる。
「ふぅ、お腹いっぱいです」
「食後のデザートはいかがですか?」
「僕は大丈夫です。コーヒーだけください」
「ノエルはプリンが食べたい!」
「いくつ欲しい?」
「2つ!」
「じゃあ俺のと合わせて10個頼めますか?」
「じゅう!?……かしこまりました」
一瞬だけウエイターさんに同様の色が見えた。けど、すぐに無表情になって開いた皿を持って厨房へと向かった。
「ホウリさんのスイーツ発言で動揺する人って久しぶりですね」
「俺が悪いんじゃない。慣れてない周りが悪いんだ」
「それは暴論だと思いますよ?」
そんなことを話していると、ウエイターさんが10個のプリンを台車に乗せてやってきた。
「お待たせいたしました」
ノエルちゃんの前にプリンが2つ、ホウリさんの前に8つ、僕の前にコーヒーが置かれる。平皿に盛られている山型のプリンで、上からカラメルが滴っている。
皿が前に置かれた瞬間、ホウリさんは間髪入れずにプリンを食べ始める。
「うん、美味いな」
「ありがとうございます」
「本当においしー!何個でもいけそう!」
ノエルちゃんも夢中になってプリンを食べる。そんなに美味しいんだ。
「マスクの方はいかがですか?」
「マスク?ああ、僕ですか」
このマスクについて言及されたのは久しぶりだ。最近はマスクを取らずに食事をするのも慣れたし、マスクがない方が違和感ある。慣れって怖い。
「僕は甘いものが苦手なので、大丈夫ですよ」
「さようでございますか。失礼いたしました」
ウエイターさんが恭しく礼をする。細かな対応に関心しながら、コーヒーを口に含む。
「お、コーヒーも美味しいですね」
「ありがとうございます。今日のコーヒーは『ガテマエ』産なんですよ」
「コーヒーの明産地で知られている魔国の領地だな」
「そうなんですか?」
「山に囲まれてて暑いところなんだよね?授業でやったよ」
「小学生でも知ってることを知らないのか?」
「あはは……」
笑って目を反らせて誤魔化す。見てないけど、皆の視線が僕に向いているのが分かる。
「……コーヒーが美味しいですね」
「誤魔化せないからな?」
「……勉強がんばります」
諦めて前を向くとホウリさんの皿が全て空になっていた。目を離していたのは数秒だったと思うだけど、いつの間に平らげたんだろう?
「どうした?」
「いえ、考えても仕方のないことです」
ホウリさんだし、不思議ではないか。ノエルちゃんも二つ目のプリンを食べ終わり、お腹を軽く叩く。
「ふぅ、お腹いっぱい」
「満足したか?」
「うん!」
「僕も大満足です」
「じゃあ、今日のメインいくか」
「メイン?」
まだ何か食べるんだろうか?でも、デザートも食べたし何かを食べるとは思えない。
不思議に思っていると、ホウリさんがウエイターさんに耳打ちをした。
「……かしこまりました、すぐに持ってまいります」
そう言うと、ウエイターさんは開いた皿を持って厨房へと戻っていった。
「まだ食べるの?」
「いや、今日のメインは料理じゃない」
「じゃあ何?」
「なんだと思う?」
「うーん?」
ここには突発的に来たわけだし、何かあるとは思えない。
頭を捻るが全く思い当たることがない。
「うーん、分かんない!」
「だろうな。ヒントも無しに分かる事じゃない」
「じゃあなんで聞いたんですか?」
「暇つぶし」
「ホウリお兄ちゃんの意地悪」
そんな事を話していると、ウエイターさんが大きなケースを持ってきた。大きさはバイオリンのケースよりも2周りくらい大きい。
ケースを見た瞬間、僕の脳内に海に行った時の光景がフラッシュバックした。
「来たみたいだな」
「あのケース何だろうね?」
「…………」
「ロワお兄ちゃん?」
「……もしかして、あれですか?」
「流石ロワだ」
ホウリさんがニヤリと笑うのを見て、僕は自分の考えが正しいと確信する。
ウエイターさんがテーブルにケースを置く。
「お確かめください」
ホウリさんはケースを開けて中を凝視する。
「いい出来だ」
「恐縮です」
「ねーねー、ノエル達にも見せて」
ホウリさんは僕たちにも見えるようにケースを回す。
そこにはケースの中に詰め込まれていたトリシューラがあった。
「だな」
的当てのゴタゴタが終わり、僕らは展示会を後にしていた。数時間の出来事だったけど、疲れで体が重い。
「なんだか疲れました。あとは宿でゆっくりします」
「言っておくが、まだハイファイでの用事は終わっていないからな?」
「え?……ああ、トリシューラですか」
「さては忘れてたな?」
「そんな事はないですよ?」
正直、疲れすぎて頭から抜けていた。僕の武器の話なのに、腑抜けすぎかも。
「トリシューラってどこで買えるの?とっても高いんでしょ?」
「オークションとか闇市とか色々なんだが、今回は職人から直接買い取る」
「トリシューラの職人って正体が開かされてないんですよね?」
「ホウリお兄ちゃんなら調べられるんじゃない?」
「言われてみればそうだね」
ホウリさんのおかげで直接買える訳だ。感謝してもしきれない。
「矢を作るところを直接見られますかね?」
「頼んでみたら良いんじゃないか?」
「そうします」
脆いブルーライトクリスタルの中に模様を彫り込む。どうやっているのか、とても気になる。
「それで職人さんは何処にいるんですか?」
「到着してからのお楽しみだ」
「どういう所だろ?」
「きっと、人通りの少ないところに工房があるんだよ。人目を忍んで、こっそりと凄い物を作る、ロマンがあると思わない?」
「それならさ、いっそ街の外にいるんじゃない?」
「人里離れた場所で一人で作業、いいね。雰囲気あるよ」
2人であーでもない、こーでもないと言い合いながら、ホウリさんに付いていく。
歩く事10分。ホウリさんは人気の多い通りにやって来た。見た感じ、旅行者っぽい人が多めかな。通りのお店も旅行者向けのお店が多い。
「こんな所に職人がいるんですか?」
「そろそろ昼飯の時間だろ?何か食べたい物はあるか?」
「もうそんな時間ですか」
空を見ると太陽が真上まで登り切っていた。いつの間にかお昼ご飯の時間になってたんだ。
「ノエルはハンバーグが食べたい!」
「ノエルちゃんは本当にハンバーグが好きなんだね」
「ロワは食べたいものはあるか?」
「疲れたので力が付くものがいいですね。ステーキが食べたいです」
「ロワも肉か、だったらあそこが丁度良いな」
「いいお店があるんですか?」
「ああ。ここらに上手いレストランがあるんだ」
「じゃあそこでお昼を食べましょうか」
ホウリさんのおすすめのお店か。これは期待できる。
「どこにあるんですか?」
「近く、というかもう見えるぞ。あそこだ」
ホウリさんが指さす方向を見ると、装飾品があまりない落ち着いたお店があった。看板には『ヴェニタス』と書かれている。
「なんか美味しそうじゃないね」
「そう思うならノエルはまだまだだな」
「むう、そんなこと無いもん」
むくれているノエルちゃんを連れてヴェニタスまで向かう。窓から見るにお客さんは入っていないみたいだ。
普通にお店を探していたんだったらスルーしていたかもしれない。けど、ホウリさんのおすすめって聞くと隠れ家的なお店に感じるから不思議だ。
「こんにちは~」
扉を開けると、軽いベルの音が鳴り響く。店に入ってすぐに奥から眼鏡を掛けた男の人がやって来た。タキシードを着こなした真面目そうなウエイターさんだ。
「いらっしゃいませ」
「3人ですけどいいですか?」
「大丈夫です。こちらへどうぞ」
ウエイターさんに促され、厨房に一番近いテーブル席に通される。
僕はノエルちゃんの隣に座り、向かいにホウリさんが座る。席に着いたと同時に僕らの前にメニューが置かれる。
メニューは黒い革で覆われていて高級感がある。店内も明るさが抑えられていて、モダンな雰囲気が漂っている。
いつも行っているファミリーレストランよりも大人な雰囲気だ。
「決まりましたらお呼びください」
ウエイターさんが一礼して厨房に戻っていく。
メニューに目を通すと、細く優雅な文字で料理名が書かれていた。ちょっと読みにくいんだけど、大人って感じがする。
「決まったか?」
「僕は子羊のステーキでお願いします」
「ノエルは柔らかハンバーグ!」
「俺はキングシュリンプのローストにするか。すみませーん」
ホウリさんが呼ぶと、ウエイターさんが早足でやってきた。
「注文をお伺いします」
「子羊のステーキと柔らかハンバーグ、キングシュリンプのローストを1つずつ」
「お飲み物はいかがされますか?」
「俺はオレの実のジュース」
「ノエルも同じの!」
「僕はジンジャエールをお願いします」
「かしこまりました」
伝票に注文した物を書き加え、ウエイターさんは厨房へ戻った。
「良い雰囲気のお店ですね」
「だろ?雰囲気だけじゃなくて味も補償するぜ?」
「楽しみですね」
「それにな、この店は飯だけじゃなくてデザートも美味いんだぜ?」
「さてはそれがメインですね?」
「それもある」
ホウリさんらしい理由だ。ご飯が美味しいのは本当だろうし、問題はないと思うけど。
「昨日はどこに行ってたんだ?」
「うーんとね、水族館とかゲームセンターとか、色んなところに行ったよ」
「この街の水族館は凄かっただろ?」
「そうですね。王都よりも魚の種類が多かったです」
昨日の事をホウリさんに話す。ホウリさんは僕たちの話に相槌を打ちながら、静かに聞く。
「それでね、水槽の前でお魚さんを見てたら……」
「お待たせいたしました」
夢中になって話していると、いつの間にかウエイターさんが料理を運んできていた。
台車で持ってきた熱々の鉄板とライスを僕らの前に並べる。
「子羊のステーキ、柔らかハンバーグ、キングシュリンプのローストでございます」
「ありがとうございます」
僕の前に鉄板に乗せられたステーキが置かれる。
「美味しそうですね」
「早く食おうぜ」
お肉にナイフを入れてみると、抵抗も少なく切ることが出来た。お肉を口に入れてみると、お肉の上品な旨味が口いっぱいに広がった。
「美味しいです」
「おいしー!」
「いい味だ」
「ありがとうございます」
僕たちの感想を聞いたウエイターさんが軽く頭を下げる。
「これって全部ウエイターさんが作っているんですか?」
「その通りです。調理から配膳、会計や掃除といったすべての事を私が行っております」
「全部一人でなんて、大変じゃないですか?」
「お客さまはそこまで来ませんので、苦ではありませんよ」
「お客さんが来ないと、稼ぎが出ないんじゃないんですか?」
「この店は趣味のようなものなので、問題ございません」
趣味でこんなお店が持てるなんて、すごくお金持ちなんだろうか。まあ、ストレートに聞くとホウリさんに怒られそうだから黙っておくけど。
「ロワお兄ちゃん、ステーキちょっと頂戴?」
「いいよ。僕もハンバーグ貰っていい?」
「いいよ」
「俺にも分けてくれ」
皆で分け合いながら料理を楽しむ。
ものの数分で料理を全て平らげた僕は椅子にもたれ掛かる。
「ふぅ、お腹いっぱいです」
「食後のデザートはいかがですか?」
「僕は大丈夫です。コーヒーだけください」
「ノエルはプリンが食べたい!」
「いくつ欲しい?」
「2つ!」
「じゃあ俺のと合わせて10個頼めますか?」
「じゅう!?……かしこまりました」
一瞬だけウエイターさんに同様の色が見えた。けど、すぐに無表情になって開いた皿を持って厨房へと向かった。
「ホウリさんのスイーツ発言で動揺する人って久しぶりですね」
「俺が悪いんじゃない。慣れてない周りが悪いんだ」
「それは暴論だと思いますよ?」
そんなことを話していると、ウエイターさんが10個のプリンを台車に乗せてやってきた。
「お待たせいたしました」
ノエルちゃんの前にプリンが2つ、ホウリさんの前に8つ、僕の前にコーヒーが置かれる。平皿に盛られている山型のプリンで、上からカラメルが滴っている。
皿が前に置かれた瞬間、ホウリさんは間髪入れずにプリンを食べ始める。
「うん、美味いな」
「ありがとうございます」
「本当においしー!何個でもいけそう!」
ノエルちゃんも夢中になってプリンを食べる。そんなに美味しいんだ。
「マスクの方はいかがですか?」
「マスク?ああ、僕ですか」
このマスクについて言及されたのは久しぶりだ。最近はマスクを取らずに食事をするのも慣れたし、マスクがない方が違和感ある。慣れって怖い。
「僕は甘いものが苦手なので、大丈夫ですよ」
「さようでございますか。失礼いたしました」
ウエイターさんが恭しく礼をする。細かな対応に関心しながら、コーヒーを口に含む。
「お、コーヒーも美味しいですね」
「ありがとうございます。今日のコーヒーは『ガテマエ』産なんですよ」
「コーヒーの明産地で知られている魔国の領地だな」
「そうなんですか?」
「山に囲まれてて暑いところなんだよね?授業でやったよ」
「小学生でも知ってることを知らないのか?」
「あはは……」
笑って目を反らせて誤魔化す。見てないけど、皆の視線が僕に向いているのが分かる。
「……コーヒーが美味しいですね」
「誤魔化せないからな?」
「……勉強がんばります」
諦めて前を向くとホウリさんの皿が全て空になっていた。目を離していたのは数秒だったと思うだけど、いつの間に平らげたんだろう?
「どうした?」
「いえ、考えても仕方のないことです」
ホウリさんだし、不思議ではないか。ノエルちゃんも二つ目のプリンを食べ終わり、お腹を軽く叩く。
「ふぅ、お腹いっぱい」
「満足したか?」
「うん!」
「僕も大満足です」
「じゃあ、今日のメインいくか」
「メイン?」
まだ何か食べるんだろうか?でも、デザートも食べたし何かを食べるとは思えない。
不思議に思っていると、ホウリさんがウエイターさんに耳打ちをした。
「……かしこまりました、すぐに持ってまいります」
そう言うと、ウエイターさんは開いた皿を持って厨房へと戻っていった。
「まだ食べるの?」
「いや、今日のメインは料理じゃない」
「じゃあ何?」
「なんだと思う?」
「うーん?」
ここには突発的に来たわけだし、何かあるとは思えない。
頭を捻るが全く思い当たることがない。
「うーん、分かんない!」
「だろうな。ヒントも無しに分かる事じゃない」
「じゃあなんで聞いたんですか?」
「暇つぶし」
「ホウリお兄ちゃんの意地悪」
そんな事を話していると、ウエイターさんが大きなケースを持ってきた。大きさはバイオリンのケースよりも2周りくらい大きい。
ケースを見た瞬間、僕の脳内に海に行った時の光景がフラッシュバックした。
「来たみたいだな」
「あのケース何だろうね?」
「…………」
「ロワお兄ちゃん?」
「……もしかして、あれですか?」
「流石ロワだ」
ホウリさんがニヤリと笑うのを見て、僕は自分の考えが正しいと確信する。
ウエイターさんがテーブルにケースを置く。
「お確かめください」
ホウリさんはケースを開けて中を凝視する。
「いい出来だ」
「恐縮です」
「ねーねー、ノエル達にも見せて」
ホウリさんは僕たちにも見えるようにケースを回す。
そこにはケースの中に詰め込まれていたトリシューラがあった。
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