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第二百四十九話 ん、私ともあっち向いてホイをやるべき
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夜の8時、ノエル達は校門の前に集合していた。
夜の学校は明るい時よりも不気味に見える。幽霊が出ると言われても驚かない。
メンバーはノエル、コアコちゃん、マカダ君、サルミちゃん、パンプ君、ナマク先生だ。メンバーからも分かる通り、今日はオカルト研究クラブの初活動の日だ。
「夜の学校ってワクワクするね」
「だよね!私、朝からずっと楽しみだったんだ!」
コアコちゃんと手を取り合って飛び跳ねていると、サルミちゃんの冷めた言葉が飛んできた。
「はしゃぎ過ぎないでよ。バカみたいじゃないの」
「えー、楽しい時は全身で表現した方が良いんじゃないの?」
「そうだよ!せっかくのクラブ活動なんだから楽しんだ方が良いよ!」
「近いわよ」
間近まで迫ったコアコちゃんとノエルをサルミちゃんが押しのける。
その様子を見ていたナマク先生が眼鏡をキラリと光らせる。
「皆さん、これはクラブ活動なんですから、あまりふざけてはいけませんよ」
「はーい」
ナマク先生に注意されて、渋々サルミちゃんから離れる。
本当はノエル達だけで行きたかった。けど、こっそり学校に入ったことがバレたら、オカルト研究クラブが無くなっちゃうって言われて断念した。
その代わり、ナマク先生と一緒に1時間だけなら良いって条件が出た。こっそりも良いけど、ちゃんと探索できるなら良いよね。
『それで、コアコは例の物は持って来たのか?』
「ばっちり!」
コアコちゃんがハードカバーの分厚い本を取り出した。表紙には、『決定版!学校の七不思議!』と書いてある。
「こういうのって、雑誌とかで特集するものじゃないの?」
パンプ君が興味深そうにコアコちゃんの本を眺める。
「どこで手に入れたの?」
「何かに当たったみたいで、ポストに入ってたんだ」
『なんだそれ。怪しくないか?』
「でもさ!とっても興味深いことが書いてあるんだよ!」
コアコちゃんが本を開いて勢いよく突き付けて来る。
「この付録なんて凄いんだよ!悪魔の呼び出し方とか書いてあるし!」
「悪魔なんている訳ないでしょ。というか、付録だけで1冊の本に出来そうな内容ね」
本を一瞥せず、サルミちゃんは学校の中へと入っていく。
「ちょっと!1人で行かないでよ!」
本を閉じてコアコちゃんがサルミちゃんを追う。
ノエル達も2人を歩いて追う。校舎の鍵はナマク先生が持っているし、一緒に行かないと意味が無いのにね。
それにしてもさっきの本、少し見られなかったけど、悪魔の召喚方法は正しそうだった。
正確には覚えていないけど、呪文も魔法陣の模様も当たってた。だとすると、あの本に書いてあることは信じられるかも?
そんな事を考えて歩いていると、案の定、玄関の前でコアコちゃんとサルミちゃんが突っ立っていた。
ナマク先生がカギを開けている間、サルミちゃんがノエルを睨みつけて来る。
「……何よ。言いたい事があるなら言いなさいよ」
「べっつにー?ただ、サルミちゃんってせっかちなんだなって思っただけだよ?」
「ムッキー!ムカつく!」
「実際に『ムッキー』って言う人いるんだ」
余程恥ずかしかったのか、サルミちゃんは顔を真っ赤にして地団太を踏む。
そうこうしている内に玄関の鍵が開いた。ナマク先生が腕時計を見て時間を確認する。
「では、夜の学校の探索を始めます。タイムリミットは午後9時です。午後9時になったら、強制的に帰宅となります」
「はーい」
「もっと探索したいのに……」
コアコちゃんが不満げにズレた眼鏡を直す。
『1時間で十分だろ。足りなかったら、次に持ち越せばいいわけだしな』
「それもそうだよ。とにかく、今はやりたい事をしよう」
「まずは何処に行くの?」
「うーんとね」
コアコちゃんが本をめくって確かめる。そして、とあるページを広げて見せて来る。
「『怪奇、怪しく光る本』?」
「深夜の図書室で一つだけ怪しく光る本があるんだって。その本を読んだら、呪われちゃって、最終的には死ぬらしいよ~」
声を低くして怪しい感じを出そうとしている。けど、コアコちゃんがやっても可愛いだけで、ちっとも怖くない。
「それって、探し出しても本物か確かめられないよね?本物だったら呪われちゃうんだし」
「大丈夫!中を見ちゃっても、2人であっち向いてホイをすれば呪われないんだって」
『急にうさん臭さが増したぞ?というか、今って深夜か?』
「深夜にしては、まだ早い時間な気もするけど?」
「行けば分かるんじゃない?」
「ノエルの言う通りよ。さっさと図書館に行くわよ」
「おー!」
皆、自分で用意した懐中魔灯を取り出して掲げる。
懐中魔灯は魔石のMPを利用して明かりを付ける魔道具だ。ホウリお兄ちゃんの世界には懐中電灯っていうよく似た物があるって聞いたっけ。
皆で仲良く照らしながら、図書館に移動する。
「そういえばさ、ナマク先生の時も七不思議ってあったの?」
「ありましたよ」
「へー、どいういうのかしら?」
「普通ですよ。理科室の骸骨が動くとか、屋上までの階段が夜だけ13段になるとか」
「この本にも、昔の七不思議の項目に書いてあるね」
「……若さに執着しているつもりは無かったんですが、『昔』と言われると心にキますね」
ナマク先生の顔に少しだけ影が掛かる。いけないこと聞いちゃったかな?
そんな話をしながら歩いていると、2階の図書館にたどり着いた。
「カギは開いてるかな?」
「今日は全ての教室のカギを借りています。問題無いですよ」
「流石ナマク先生。準備が良いね」
ナマク先生が心なしか得意げにカギの束を取り出す。
「少し待っててくださいね」
そう言ってナマク先生がカギ束のカギを1つ1つ鍵穴へと刺していく。
「これも違う。これも……違いますね」
「ねえ」
見かねたサルミちゃんが鍵束を横からつかみ取る。
「こういうのってカギに何処のカギか書いてあるものでしょ」
『確かに、どの教室のカギか書いてあるな』
「ナマク先生、分からなかったんですか?」
「……ちょっとしたジョークです」
皆からの視線から耐えられなくなったナマク先生が視線を反らす。
ナマク先生の代わりに、サルミちゃんがカギを見つけ出して、図書室に扉を開ける。
「10分くらい探して、無かったら次に行きましょう」
「光る本なんて、すぐに見つかるだろうしね」
「懐中魔灯は消した方が見つけやすいかな?」
「そうだね。でも、暗いと危ないから気を付けてね?」
「うん」
懐中魔灯を消して、皆で手分けして図書館中を探す。月明りがあるから真っ暗じゃないけど、それでも見えにくい。椅子とかに躓かないように気を付けないと。
足元に注意しながら、本棚の本を見ていく。すぐに見つかると思ったけど、案外見つからない。
もしかしたら、あの本が間違っているとか?
「みんなー、見つかったー?」
「見つからないよー」
『俺も同じだー』
「こっちもよー」
「僕もー」
皆も見つからないみたい。光るから目立つと思ったんだけど……。
そう思って図鑑のコーナーで足元に視線を落とす。すると、本棚の下がほんのりと光っているのが見えた。
もしかして、そう思って這いつくばって本棚の下に手を伸ばす。すると、一冊の本が手に触れた。
引っ張り出してみると、それは図鑑みたいな厚さの本だった。けど、緑色に怪しく光っていて、見ただけで異様だと分かる。
「けど、これって……」
「嘘!?」
ノエルが首を傾げていると、コアコちゃんが脱兎のごとく駆けて来た。そして、ノエルが持っていた本を奪うと、愛おしそうに掲げた。
「こ、これが伝説の呪いの本……。何処にあったの!?」
「この本棚の下だよ」
「本棚の下か~。それは見つけにくいね」
「おーい、見つかったのー?」
やって来た皆にも輝く本を見せる。
「本当に輝いているわね。でも、これって……」
『サルミも気付いたか?』
「やっぱり?変だよね?」
マカダ君もサルミちゃんも気付いたみたいだ。当のコアコちゃんはというと、本をうっとりと眺めている。
「ああ、すぐにでも開きたい……」
「コアコ、ちょっとその本貸して」
「えへへ、良いよ」
緩んだ顔でパンプ君に本を手渡す。パンプ君は本をじっくり見ると、ノエルと同じように首を傾げた。
「これって蛍光塗料じゃない?」
「えへへ……え?」
パンプ君の言葉にサルミちゃんが目を丸くする。
「少し良いですか?」
「どうぞ」
その間にナマク先生がパンプ君から本を受け取ってジッと見つめる。
「……鑑定した結果、確かにこの光は蛍光塗料によるものみたいです」
「う、うそ……」
「本当です」
ナマク先生が本を開き、ページをめくっていく。本物なら呪われるみたいだけど、ナマク先生の様子は変わらない。
「文字は読めませんが、魔導書みたいですね。魔法陣が色々と書かれています」
「本当ですか?」
「確かめてみますか?」
コアコちゃんがナマク先生から本を受け取って、パラパラとめくっていく。
「………………」
「一応、あっち向いてホイやっておく?」
「そうですね」
冗談で言ったつもりだったけど、ナマク先生は拳を突き出して、じゃんけんの構えを取る。
「え?本当にやるの?」
「万が一ということもありますので」
「う、うんじゃあ行くよ?じゃんけんぽん」
ノエルはグー、ナマク先生はチョキ。
「あっち向いてホイ」
ノエルは上を指し、ナマク先生は上を向く。ノエルの勝ちだ。
『いや、弱すぎないか?』
「流れるように負けたね」
「生徒に花を持たせてあげたんですよ」
「絶対に嘘ね」
そうこうしている内に、コアコちゃんが本を読み終わった。
「どう?」
「……魔本じゃなかった」
「そっか」
「この本は私が預かります。司書の方に経緯を報告し、処遇を決めて貰いましょう」
「……はい」
肩を落としながら、コアコちゃんはナマク先生に本を渡す。
ノエルは落ち込んでいるコアコちゃんの方に手を置く。
「とりあえずさ、コアコちゃんもあっち向いてホイやっておこうか」
「絶対に今じゃないわよ」
こうして1か所目の探索は終わった。
今思い返せば、ナマク先生とコアコちゃんには何の異変も無かった。だから気付かなかったんだと思う。
この本は本物の魔本だって。
夜の学校は明るい時よりも不気味に見える。幽霊が出ると言われても驚かない。
メンバーはノエル、コアコちゃん、マカダ君、サルミちゃん、パンプ君、ナマク先生だ。メンバーからも分かる通り、今日はオカルト研究クラブの初活動の日だ。
「夜の学校ってワクワクするね」
「だよね!私、朝からずっと楽しみだったんだ!」
コアコちゃんと手を取り合って飛び跳ねていると、サルミちゃんの冷めた言葉が飛んできた。
「はしゃぎ過ぎないでよ。バカみたいじゃないの」
「えー、楽しい時は全身で表現した方が良いんじゃないの?」
「そうだよ!せっかくのクラブ活動なんだから楽しんだ方が良いよ!」
「近いわよ」
間近まで迫ったコアコちゃんとノエルをサルミちゃんが押しのける。
その様子を見ていたナマク先生が眼鏡をキラリと光らせる。
「皆さん、これはクラブ活動なんですから、あまりふざけてはいけませんよ」
「はーい」
ナマク先生に注意されて、渋々サルミちゃんから離れる。
本当はノエル達だけで行きたかった。けど、こっそり学校に入ったことがバレたら、オカルト研究クラブが無くなっちゃうって言われて断念した。
その代わり、ナマク先生と一緒に1時間だけなら良いって条件が出た。こっそりも良いけど、ちゃんと探索できるなら良いよね。
『それで、コアコは例の物は持って来たのか?』
「ばっちり!」
コアコちゃんがハードカバーの分厚い本を取り出した。表紙には、『決定版!学校の七不思議!』と書いてある。
「こういうのって、雑誌とかで特集するものじゃないの?」
パンプ君が興味深そうにコアコちゃんの本を眺める。
「どこで手に入れたの?」
「何かに当たったみたいで、ポストに入ってたんだ」
『なんだそれ。怪しくないか?』
「でもさ!とっても興味深いことが書いてあるんだよ!」
コアコちゃんが本を開いて勢いよく突き付けて来る。
「この付録なんて凄いんだよ!悪魔の呼び出し方とか書いてあるし!」
「悪魔なんている訳ないでしょ。というか、付録だけで1冊の本に出来そうな内容ね」
本を一瞥せず、サルミちゃんは学校の中へと入っていく。
「ちょっと!1人で行かないでよ!」
本を閉じてコアコちゃんがサルミちゃんを追う。
ノエル達も2人を歩いて追う。校舎の鍵はナマク先生が持っているし、一緒に行かないと意味が無いのにね。
それにしてもさっきの本、少し見られなかったけど、悪魔の召喚方法は正しそうだった。
正確には覚えていないけど、呪文も魔法陣の模様も当たってた。だとすると、あの本に書いてあることは信じられるかも?
そんな事を考えて歩いていると、案の定、玄関の前でコアコちゃんとサルミちゃんが突っ立っていた。
ナマク先生がカギを開けている間、サルミちゃんがノエルを睨みつけて来る。
「……何よ。言いたい事があるなら言いなさいよ」
「べっつにー?ただ、サルミちゃんってせっかちなんだなって思っただけだよ?」
「ムッキー!ムカつく!」
「実際に『ムッキー』って言う人いるんだ」
余程恥ずかしかったのか、サルミちゃんは顔を真っ赤にして地団太を踏む。
そうこうしている内に玄関の鍵が開いた。ナマク先生が腕時計を見て時間を確認する。
「では、夜の学校の探索を始めます。タイムリミットは午後9時です。午後9時になったら、強制的に帰宅となります」
「はーい」
「もっと探索したいのに……」
コアコちゃんが不満げにズレた眼鏡を直す。
『1時間で十分だろ。足りなかったら、次に持ち越せばいいわけだしな』
「それもそうだよ。とにかく、今はやりたい事をしよう」
「まずは何処に行くの?」
「うーんとね」
コアコちゃんが本をめくって確かめる。そして、とあるページを広げて見せて来る。
「『怪奇、怪しく光る本』?」
「深夜の図書室で一つだけ怪しく光る本があるんだって。その本を読んだら、呪われちゃって、最終的には死ぬらしいよ~」
声を低くして怪しい感じを出そうとしている。けど、コアコちゃんがやっても可愛いだけで、ちっとも怖くない。
「それって、探し出しても本物か確かめられないよね?本物だったら呪われちゃうんだし」
「大丈夫!中を見ちゃっても、2人であっち向いてホイをすれば呪われないんだって」
『急にうさん臭さが増したぞ?というか、今って深夜か?』
「深夜にしては、まだ早い時間な気もするけど?」
「行けば分かるんじゃない?」
「ノエルの言う通りよ。さっさと図書館に行くわよ」
「おー!」
皆、自分で用意した懐中魔灯を取り出して掲げる。
懐中魔灯は魔石のMPを利用して明かりを付ける魔道具だ。ホウリお兄ちゃんの世界には懐中電灯っていうよく似た物があるって聞いたっけ。
皆で仲良く照らしながら、図書館に移動する。
「そういえばさ、ナマク先生の時も七不思議ってあったの?」
「ありましたよ」
「へー、どいういうのかしら?」
「普通ですよ。理科室の骸骨が動くとか、屋上までの階段が夜だけ13段になるとか」
「この本にも、昔の七不思議の項目に書いてあるね」
「……若さに執着しているつもりは無かったんですが、『昔』と言われると心にキますね」
ナマク先生の顔に少しだけ影が掛かる。いけないこと聞いちゃったかな?
そんな話をしながら歩いていると、2階の図書館にたどり着いた。
「カギは開いてるかな?」
「今日は全ての教室のカギを借りています。問題無いですよ」
「流石ナマク先生。準備が良いね」
ナマク先生が心なしか得意げにカギの束を取り出す。
「少し待っててくださいね」
そう言ってナマク先生がカギ束のカギを1つ1つ鍵穴へと刺していく。
「これも違う。これも……違いますね」
「ねえ」
見かねたサルミちゃんが鍵束を横からつかみ取る。
「こういうのってカギに何処のカギか書いてあるものでしょ」
『確かに、どの教室のカギか書いてあるな』
「ナマク先生、分からなかったんですか?」
「……ちょっとしたジョークです」
皆からの視線から耐えられなくなったナマク先生が視線を反らす。
ナマク先生の代わりに、サルミちゃんがカギを見つけ出して、図書室に扉を開ける。
「10分くらい探して、無かったら次に行きましょう」
「光る本なんて、すぐに見つかるだろうしね」
「懐中魔灯は消した方が見つけやすいかな?」
「そうだね。でも、暗いと危ないから気を付けてね?」
「うん」
懐中魔灯を消して、皆で手分けして図書館中を探す。月明りがあるから真っ暗じゃないけど、それでも見えにくい。椅子とかに躓かないように気を付けないと。
足元に注意しながら、本棚の本を見ていく。すぐに見つかると思ったけど、案外見つからない。
もしかしたら、あの本が間違っているとか?
「みんなー、見つかったー?」
「見つからないよー」
『俺も同じだー』
「こっちもよー」
「僕もー」
皆も見つからないみたい。光るから目立つと思ったんだけど……。
そう思って図鑑のコーナーで足元に視線を落とす。すると、本棚の下がほんのりと光っているのが見えた。
もしかして、そう思って這いつくばって本棚の下に手を伸ばす。すると、一冊の本が手に触れた。
引っ張り出してみると、それは図鑑みたいな厚さの本だった。けど、緑色に怪しく光っていて、見ただけで異様だと分かる。
「けど、これって……」
「嘘!?」
ノエルが首を傾げていると、コアコちゃんが脱兎のごとく駆けて来た。そして、ノエルが持っていた本を奪うと、愛おしそうに掲げた。
「こ、これが伝説の呪いの本……。何処にあったの!?」
「この本棚の下だよ」
「本棚の下か~。それは見つけにくいね」
「おーい、見つかったのー?」
やって来た皆にも輝く本を見せる。
「本当に輝いているわね。でも、これって……」
『サルミも気付いたか?』
「やっぱり?変だよね?」
マカダ君もサルミちゃんも気付いたみたいだ。当のコアコちゃんはというと、本をうっとりと眺めている。
「ああ、すぐにでも開きたい……」
「コアコ、ちょっとその本貸して」
「えへへ、良いよ」
緩んだ顔でパンプ君に本を手渡す。パンプ君は本をじっくり見ると、ノエルと同じように首を傾げた。
「これって蛍光塗料じゃない?」
「えへへ……え?」
パンプ君の言葉にサルミちゃんが目を丸くする。
「少し良いですか?」
「どうぞ」
その間にナマク先生がパンプ君から本を受け取ってジッと見つめる。
「……鑑定した結果、確かにこの光は蛍光塗料によるものみたいです」
「う、うそ……」
「本当です」
ナマク先生が本を開き、ページをめくっていく。本物なら呪われるみたいだけど、ナマク先生の様子は変わらない。
「文字は読めませんが、魔導書みたいですね。魔法陣が色々と書かれています」
「本当ですか?」
「確かめてみますか?」
コアコちゃんがナマク先生から本を受け取って、パラパラとめくっていく。
「………………」
「一応、あっち向いてホイやっておく?」
「そうですね」
冗談で言ったつもりだったけど、ナマク先生は拳を突き出して、じゃんけんの構えを取る。
「え?本当にやるの?」
「万が一ということもありますので」
「う、うんじゃあ行くよ?じゃんけんぽん」
ノエルはグー、ナマク先生はチョキ。
「あっち向いてホイ」
ノエルは上を指し、ナマク先生は上を向く。ノエルの勝ちだ。
『いや、弱すぎないか?』
「流れるように負けたね」
「生徒に花を持たせてあげたんですよ」
「絶対に嘘ね」
そうこうしている内に、コアコちゃんが本を読み終わった。
「どう?」
「……魔本じゃなかった」
「そっか」
「この本は私が預かります。司書の方に経緯を報告し、処遇を決めて貰いましょう」
「……はい」
肩を落としながら、コアコちゃんはナマク先生に本を渡す。
ノエルは落ち込んでいるコアコちゃんの方に手を置く。
「とりあえずさ、コアコちゃんもあっち向いてホイやっておこうか」
「絶対に今じゃないわよ」
こうして1か所目の探索は終わった。
今思い返せば、ナマク先生とコアコちゃんには何の異変も無かった。だから気付かなかったんだと思う。
この本は本物の魔本だって。
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