魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百五十話 三羽そろえば牙をむく

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「よし!次に行こう!」


 落ち込んでいたコアコちゃんだったが、すぐに気を取り直して本を開いていた。元気そうでなによりだ。


「次はなんですか?」
「これかな。『驚愕!ニワトリ男!』」
「相変わらず良く分からないわね。ちょっと見せなさい」


 本がテーブルの上に置かれて、皆で覗き込む。


『なになに、夜中に生き物小屋のニワトリが人型に変化する?』
「そんなこと起こるの?」
「普通に起こらないことだから面白いんだよ!」
「というか、また夜なんだね」
「夜ってなんだか不思議な感じだからじゃない?」
「理由が適当すぎるでしょ。ま、そうと決まればさっさと行きましょ」


 ちゃんとカギを閉めたのかを確認して、図書室を後にする。


「うう、改めて思ったけど、薄暗い廊下って不気味だね……」
「満面の笑みで言うセリフじゃないね」


 コアコちゃんが満面の笑みで先陣を切る。どう聞いても怖がっているようには聞こえない。


「こういう薄暗くて不気味なところって何か出そうで怖いよね!」
『力強く言うな。せめて怖そうに言ってくれ』
「まあ、他に人なんていないでしょうし、誰かいれば幽霊なんでしょうよ」
「それが、私達以外にも誰かが学校にいるみたいなんです」
「え?そうなの?誰?」
「分かりません。どうやら、急に学校の使用申請があったみたいです」


 その人に会うかもしれないってことなんだ。どんな人なんだろう?もしも、敵だったら……。
 ノエルはこっそりと銃を取り出して、上着の内側にあるホルスターに仕舞う。使うことが無ければ良いけど。
 1階に降りて、裏手の扉から校舎裏に出る。ここには皆でお世話している小さな畑とかウサギ小屋とかがある。
 その中に目的のニワトリ小屋があった。


「これがニワトリ小屋ね」


 小屋の金網から中を覗き込んでみる。ニワトリさんは気持ちよさそうに寝ているけど、人にはなっていない。


「これが本に書かれていたニワトリね」
『何も変わった所はないな』
「可笑しいな?本に書かれてたのは確かにここだったんだけど……」
「可笑しいのはその本でしょうが」


 コアコちゃんが本を懐中魔灯で照らしながら隅々まで読み込む。ノエルも横から一緒に読んでみるけど、詳しいことは書いてない。


「まだ時間が早いとか?」
「待ってる時間は無いわよ」
「うーん、ニワトリ小屋の中に何か無いか探してみる?」
「何かって何?」
「さあ?」
「待ってても仕方ないし、それしかないね」
「ナマク先生、カギを開けてください!」
「分かりました。けど、あまり大きな声を出してはいけませんよ」


 焦っているコアコちゃんをたしなめつつ、ナマク先生がカギ束を取り出す。
 今度はそれほど時間が掛かることも無く、ニワトリ小屋のカギを見つけ出す。


「良いですか?ニワトリを驚かさないように、そっと探すんですよ?」
「分かった。閃光手りゅう弾を投げて怯んだ隙に調べるね」
『流れるように不正解を選ぶな』


 振りかぶった閃光手りゅう弾をマカダ君に取られる。


「え?敵に見つかりたくないときは、閃光手りゅう弾で視界を封じて、意識を奪うんでしょ?」
『寝てるニワトリを敵と判断するな。というか、閃光手りゅう弾を使ったら敵に見つかるだろうが』
「ノエルは姿を見られなければ何の問題も無いって教わったよ?」
『ホウリさんから?』
「フランお姉ちゃんから」
『魔王様か。納得だな』


 マカダ君は閃光手りゅう弾のピンを戻してアイテムボックスに仕舞う。


『普通に調べるぞ。隠密機動は得意なんだろ?』
「ちぇー、だったら普通の手りゅう弾にするよ」
『良い訳ないだろ。つーか、なんでこんなに武器を持ってるんだよ。戦争でも始める気か?』
「お化粧、可愛いお洋服、手りゅう弾は女の子の必需品だよ?」
『どこの常識だ。戦争中でも、もう少し倫理観あったぞ?』
「そうですよ。ノエルさんにお化粧は早いです」
『絶対にそっちじゃない』


 手りゅう弾も没収された。悲しい。


「バカやってないでさっさと探すわよ」
「そうだよ。時間も無いしね」


 ノエルとマカダ君を無視して、皆はニワトリ小屋に中に入る。ノエル達もこっそりと小屋の中に入る。


「私は外で見張っておきます。念のためカギも閉めておきますね」
「はーい」


 ナマク先生を残して、皆で小屋の中に入る。
 ニワトリ小屋の下は土でフカフカしている。これなら、こっそり動くことも問題無いかな。


「慎重に探しなさいよ」
「でもさ、探すって何処を探すの?」


 ニワトリ小屋にはエサ入れくらいしかなく、調べられそうなところは無い。


「それは……地面でも掘り返す?」
『というか、ニワトリが人型になるっていう階段なんだろ?だったら、ニワトリ事態を調べるべきなんじゃないか?』
「でもさ、気持ちよさそうに寝ているニワトリさんを起こすのは可哀そうだよ?」
『手りゅう弾を放り込もうとした奴のセリフか?』


 でも、ニワトリさんと地面くらいしか調べられそうに無いし、簡単にでも調べておこうかな。
 皆で地面を調べたり、ニワトリさんを観察してみる。でも、何も見つからない。


「うーん?やっぱり時間が悪いのかな?」
「私はその本の内容が間違っている、って説を推すわ」
「それは無いよ!」
「しー、ニワトリが起きちゃうよ」


 パンプ君に注意されて、コアコちゃんが思わず口に手を当てる。
 周りを見渡してみると、ニワトリさん達は気持ちよさそうに寝ていた。その様子を見て、コアコちゃんが大きく息を吐く。


「ふー、良かった……」
「気を付けなさいよね。こんな狭い中で暴れるニワトリの相手なんてしたくないわよ」
「ごめんなさい」


 コアコちゃんが頭を下げて謝る。


「あれ?これなんだろ?」


 すると、何かを見つけたのか、コアコちゃんが何かを拾い上げた。
 それは魔法陣が刻まれたコインだった。


「なにこれ?」
「貸して」
「うん良いよ」


 コアコちゃんからコインを受け取る。模様以外はなんの変哲もない。魔法陣も見たことないし、ただのお洒落なコインかな?


「誰かの落とし物みたいだね。ナマク先生に渡しておこうか?」 
「そうだね。お願いしようかな」


 無くさない様にコインをアイテムボックスに仕舞う。これでよし。


「コイン以外は何も見つからなさそうだし、もう出ない?」
「そうだね」
「ナマクせんせー。カギ開けてー」


 扉の前にいたナマク先生に声を掛ける。だけど、返事は返ってこない。


「先生?」


 入口の方に向くと、そこには誰もいなかった。


「へ?先生?」
「ちょっと!?なんでいないのよ!?」


 サルミちゃんが慌てて扉を押す。けど、扉は全く開く気配が無い。


「やっぱり閉まってる……」
「どどどどどうするの!?閉じ込められちゃったよ!?」
『落ち着け。まずは状況の把握からだ』


 大慌てのコアコちゃんとは対照的に、マカダ君は落ち付いている。


『カギが閉まって開けられないと思い込んでいるだけの可能性がある。サルミ、カギは本当に閉まっているのか?』
「そうね。本当に閉まっているわ」


 サルミちゃんが力一杯に扉を押したり引いたりしているけど、開く気配は無い。


『中からカギは開けられないか?』
「外から回すタイプじゃないわね。カギ穴も外にしかないみたい」
『なるほど、普通にカギを開けるのは無理そうだな』
「じゃあどうするの?」


 マカダ君は顎に手を置いて考え始める。うーん、どうしようかな?いざとなれば、壊して出られるけど、最終手段かな。
 何とか穏便な手が無いか考えて居ると、マカダ君の視線がノエルに向いていることに気が付く。


「どうしたの?」
『何か脱出に使えそうなものを持ってないかって思ってな』
「ノエルが?」
『ノエルが』
「うーん、何かって言われてもな~。そんなに役に立つものは持ってないよ?」
『何を持ってるんだ?』
「えっとね」


 ノエルは準備してきたものを頭に浮かべてみる。


「ナイフ、ピッキング用の針金、ガムテープ、懐中魔灯、拳銃、弾薬、手りゅう弾、携帯食料くらいかな?」
「役立ちそうなものしか持ってないじゃないの」
「針金があるんだったら、それで開ければ?」
「あ、確かに」
「ノエルって、勉強が出来るけどバカよね」
「むう、それってどういう意味」


 文句を言いながら、ノエルは針金を取り出す。そして、金網に腕を差し込んで外にあるカギ穴に刺す。


「1分くらい待ってね」
「当たり前にやってるけど、なんでピッキングが出来るのよ」
「ホウリお兄ちゃんに教わった」
「ホウリお兄ちゃんねぇ、一度しかあった事ないけど、どんな人なの?」
『人探しから国家転覆まで、なんでもこなす人だな』
「手術の腕も、詐欺の腕も一流だね」
「ステータスが平凡でも、闘技大会で優勝できるよ!」
「まるで分からないわ」
「大丈夫。一緒に過ごしているノエルも半分くらいしか分からないから」
「それ人なの?化け物とかじゃないの?」
「ノエルちゃん、今度お家に遊びに行ってもいい?」
「良いけど、ホウリお兄ちゃんは化け物じゃなくて人間だよ?」


 多分。
 そうこうしている内にカギ穴がカチャリという乾いた音を立てて回った。


「開いたよー」
「良かった~、一時はどうなるかと思ったよ」


 コアコちゃんが胸を撫でおろして、扉を開ける。
 皆も次々とニワトリ小屋から出る。皆が出るのを待って、ノエルもニワトリ小屋を出る。


「んー、外の風は気持ちいいね~」
「小屋の中なんて吹き抜けでしょうが。外と変わらないわよ」
「僕はニワトリ達を起こさずに出られて良かったって思ったね」
『全くだ。逃げられたりしたらって思うと、寒気がするぜ』


 マカダ君が身を震わせる。確かにニワトリさん達が逃げたら、魔装を使っても捕まえるのは難しい。


「そうだね。何も無くてよかった……」


 ふと、ニワトリ小屋へと視線を向ける。
 そこには、目をぱっちりと開けているニワトリと開いている扉があった。


「……えーっと?」
≪コケーッ!≫


 ニワトリさん達が開いた扉に向かって突撃してきた。
 ノエルは咄嗟に扉を閉めたけど、3匹が小屋の外に脱走してしまった。


「なにやってるのバカ!」
『悪態は良いから捕まえろ!怪我でもさせたら、オカルト研究クラブが無くなるぞ!』
「それだけはダメ!」
「待てー!」
「捕まえろー!」


 ガムテープで扉を補強して、これ以上ニワトリさん達が逃げない様にする。
 そして、全力で走るニワトリさんを皆と一緒に追いかけた。ちなみに、全匹捕まえるのに20分かかった。
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