魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百五十一話 あててんのよ

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 なんとかニワトリさんをニワトリ小屋に戻し、一息つく。


「あ、あんたが雑にピッキングしたせいで、鍵が壊れたじゃないの……」
「ノエルの性じゃないよ!最初から壊れてたの!」
「本当かしら?」
「本当だよ!ほら!」


 ノエルはニワトリ小屋のカギを指さす。カギ穴は錆びついていて、かなりの年月が経っているのが分かる。ニワトリ小屋だって、所々がさび付いていて、いつ壊れても可笑しくない。


「だから、ノエルが壊したんじゃなくて、もう壊れそうだったの!」
『トドメはノエルだったと思うけどな』
「マカダ君がやれって言ったんでしょ!?」
「そうだよ。皆でノエルちゃんに任せたんだから、責めるのは可哀そうだよ」
「コアコちゃ~ん、ありがと~」


 感謝の意味を込めて、コアコちゃんに抱き着く。


「うう、苦しいよぉ……」
「あ、ごめんね」


 あまりに嬉しくて思い切り抱きしめてしまった。魔装は使ってないけど、痛かったに違いない。反省反省。
 コアコちゃんから体を話すと、校舎の影からナマク先生がやって来た。


「すみません、少し警備員の方に用があり外していました……あれ?なんで皆さんは外にいるんですか?小屋には鍵を掛けましたよね?」
「カギが壊れたんです。おかげで、ニワトリ達も大脱走ですよ」
「本当ですか!?皆さん、怪我は!?」
「皆、無事ですよ」
「よ、よかった……」
『ニワトリも全員無傷だ。まあ、俺達はへとへとだがな』
「すみません、私が目を離したばっかりに……」


  ナマク先生が申し訳なさそうに頭を下げる。それを隙だと思ったのか、サルミちゃんがまくしたてる。


「本当よ。何とかなったから良かったけど、私達やニワトリに怪我があったら、どうなってたかしら?」
「それは……本当にすみません」
「むしろ私達がいたからカギが壊れていたことにも気づけた訳だし?褒めてほしいわね?」
「ありがとうございました」


 サルミちゃんに言われるがまま、ナマク先生がお礼を言う。もうサルミちゃんのペースだ。


「時間も20分くらいは無駄にしたんだし、少しは時間を延長しても良いんじゃない?」
「いえ、それは……」
「出来ないの?」
「時間を決めたのは私ではなく、学校側です。なので、私個人で延長の判断は出来ません」


 ナマク先生が心苦しそうに呟く。本当はナマク先生も延長したいんだろうけど、どうにもならないんだろう。
 ナマク先生はしばらく考えた後、とある考えを口にした。


「延長は出来ませんが、次の探索をなるべく早い日程で行う、というのはどうでしょうか?」
「まあ、妥協点としては悪くないわね。それで手を打ちましょう」
「ありがとうございます」
「どっちが先生なのか分からないね」


 ナマク先生が頭を下げ、コアコちゃんがふんぞり返っている。確かに、サルミちゃんが先生みたい。


「さあ、いつまでもここにいても仕方ないわ。さっさと次に何処に行くのか決めるわよ」
「サルミ先生、時間はどれくらい残っていますか?」
「約10分ですね」
「そんなに無いね。だったら……」


 コアコちゃんが、いつもと同じように本をめくっていく。


「これが一番いいかな」
「『恐怖!異世界に繋がる扉!』?これまた聞いたことが無いわね」
「ノエルは聞いたことあるよ。入学試験の時にコアコちゃんが言ってたやつだよね?」
「そうなの!べつの世界があるなんて面白そうでしょ!?」
「場所は校長室。扉を調べるだけなら、時間もかからないだろうし、良いんじゃない?」


 異世界かー。ホウリお兄ちゃん曰く、この世界以外にも別の世界はあるらしい。でも、世界を繋ぐ通路は神様が管理しているから、滅多なことじゃ繋がらないって言ってた。
 その滅多なことが起こったから、ホウリお兄ちゃんは苦労しているみたいだけど。


『時間が深夜って書いてあるのだけが気がかりだけどな』


 本を読んでいたマカダ君が眉間に皺を寄せる。


「また深夜?」
「きっと、昼間に七不思議が目撃されない理由付けでしょ。決まったならさっさと移動しましょう」
「おー」


 裏口から入って、校長室がある3階まで階段で上がる。


「そういえば、他にも学校に入る許可を取ってる人がいるって聞いたけど、結局会わなかったね」
「そうだね。どういう人だったんだろ?」
『目的も分からないな』
「忘れ物取りにとか、設備の点検でしょ。会ったところで気まずくなるだけよ」
「そうかな?」


 一応、周りの気配を探りながら進んでいるけど、何も感じない。離れたところにいるのか、それとも気配を隠すのが上手いのか。でも、気配を隠す必要は無いだろうし、離れてるだけかな。
 そういう訳で、最後の目的地である校長室にたどり着いた。他の教室とは違い扉は押戸になっていて、木目も見えていて高級感がある。


「この扉が異世界に繋がっているんだ……」
「開けるだけで調べられるなんて楽ね」


 震える手でコアコちゃんがドアノブに手を掛ける。前の2つよりも遥かに緊張しているみたいだ。


「あ、開けるよ?」
「うん!いつでもオッケーだよ!」
「……本当に開けるよ?」
「大丈夫ですよ」
「…………い、今から開けます」
「ああもう!じれったいわね!さっさと開けなさいよ!」
「だ、だって……」


 コアコちゃんがドアノブから手を離し、肩で息をする。


「どうしたの?」
「……この七不思議も嘘だったらどうしよって思ったら怖くて」


 コアコちゃんが俯きながら呟く。


「夜に皆を集めて、探検して、無駄になったらって思うと手が動かなくて……」
「コアコちゃん……」


 確かに前の2つは何の成果も得られなかった。けど、


「それは違うよ」
「え?」
『俺達は七不思議の真実を確かめるためにここにいる。けどな、全部嘘でも良いんだよ』
「私たちは皆であーでもない、こーでもないって言いながら、探しているのが楽しくて来てるの」
「だから、何かを見つけなくちゃいけないって思わないで。楽しんでいこうよ」
「皆…………ありがと」


 コアコちゃんは再びドアノブに手を掛ける。その手に迷いや怯えは無かった。


「じゃあ、行くよ」
「うん!」
「3……2……1!」


 コアコちゃんがドアノブを捻り、思いっきり押し込む。……けど扉は開かない。
 コアコちゃんはバツが悪そうに振り向いた。


「……カギを開けるの忘れてた」
「あんたねぇ」
「ご、ごめんね。ナマク先生、カギを貸してください」
「分かりました」


 カギを受け取り、校長室のカギ穴に差し込んで回す。これで、今度こそ扉は開くはずだ。


「じゃあ、行くよ?」


 さっきの勢いは無くなったけど、コアコちゃんが再びドアノブに手を掛ける。
 そして、今度はカウントダウンも無くドアノブを捻り押し込む。
 今回も何も無く、校長室に入れるだけ。そう思ってしまっていた。
 だからだろうか、行動が一手遅くなってしまったのは。


「……え?」


 扉を開けたコアコちゃんが言葉を失う。いや、コアコちゃんだけじゃない。後ろから見えていたノエル達も言葉を話すことが出来なかった。


「これって……異世界?」


 絞り出すようにコアコちゃんが呟く。
 扉の向こうには、見たことも無いような高い建物が、遥か下に所狭しと詰められている世界が広がっていた。
 扉の向こうからお日様の光が差し込んでくる。今は夜だし、お日様が出ているなんてありえない。それに、建物だってこの世界で見たことが無いものばっかりだ。
 それに、そんな光景が地平線まで続いている。王都もかなり広いけど、こんなに広い街はこの世界には無いはずだ。
 全ての要素が、目の前が異世界に繋がってしまったことを示している。
 まさか、本当に異世界に繋がっているとは思わず、皆で呆然とする。瞬間、


「キャッ!」


 外へ突風が吹き、コアコちゃんが外へと放り出されそうになる。


「コアコちゃん!」


 咄嗟にコアコちゃんの手を取って、廊下に引っ張る。ギリギリのところでコアコちゃんが落ちる前に、廊下に引き込むことが出来た。けど……


「ノエル!」
「ノエル!」
『ノエル!』
「ノエルさん!」
「ノエルちゃん!」


 引き込んだ反動で、今度はノエルが外に放り出された。マカダ君が手を伸ばしてくるけど、つかめそうに無い。
 ノエルはそのまま、異世界の空を落下することになった。


「って、なんでぇぇぇぇl?」


 突然の出来事に頭が追いつかず、思わず力一杯に叫ぶ。上にある扉からどんどんと離れていく。このままじゃ不味い!
 独特の浮遊感を味わいつつ、どうにか出来ないかと考える。何か使える道具は……ダメだ。この距離じゃ、どうしても元の場所まで戻れない。
 元の場所に戻るよりも、どうにか無事に着地出来ないかに考えを変える。
 この勢いで地面に叩きつけられるとなると、全力で魔装をしないと。でも、瀕死にはなっちゃうからセイントヒールですぐに回復して……
 そうやって、必死に考えていると、上の扉から誰かが飛び降りて来た。
 マカダ君?にしては大きいような?それに、凄い速度で落下してくる?
 そう思っていると、数秒後にその人の顔が確認できた。


「ホウリお兄ちゃん!?」
「ノエル!」


 ホウリお兄ちゃんから放たれたワイヤーがノエルの腰に巻き付く。
 そして、ホウリお兄ちゃんがノエルを引き寄せて抱きかかえられた、


「なんでここにいるの!?」
「それは後だ!銃を借りるぞ!」


 ホウリお兄ちゃんが上着の中に仕込んでいた銃を抜き取り、上に狙いを付ける。
 そして、一発だけ打つと扉のドアノブに命中させて、無理やり閉めた。閉まった瞬間、扉は跡形も無く消え去った。
 これで、他の皆が落ちる事は無い。とりあえず安心するけど、状況は何も変わっていない。


「これからどうするの!?」
「疾風迅雷だ!俺が何とかする!」
「了解!」


 ホウリお兄ちゃんの背中にしがみついて、コネクトでMPを共有する。これで、ホウリお兄ちゃんもMPは無限に使える。


「行くぞ!雷装!」


 ホウリお兄ちゃんの体から電気が溢れだす。けど、これだけじゃ、どうにもならない。


「次だ!結界!」


 ホウリお兄ちゃんが下に薄い結界を何重にも作成する。結界はノエル達を支えることが出来ずに、簡単に割れていく。
 けど、割れる事で落ちる勢いが減っていく。これなら何とかなるかも?


「どこに落ちるかだが……あそこだな」


 ホウリお兄ちゃんが空き地に目を付けて、結界で調整をする。
 そして、地面に落ちる瞬間に結界とワイヤーを使って網を作って、その中に飛び込む。網に優しく受け止められ、怪我も無く着地できる。


「ふぅ、何とか助かった……」


 網から這い上がって、地面に降り立つ。
 周りには、見上げるほどに大きな建物が建っている。こうして、ノエルは異世界に降り立ったのだった。
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