魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百七十四話 団員を守るのは俺の仕事だ

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 ヤマタノオロチを遠ざけた後、他の皆と合流するまで、僕らは対策を取ることにしました。
 火を起こして暖を取りながら、ミエルさんがクラフさんに尋ねます。


「それで、やりにくいと言っていたが、具体的にどういうことなんだ?」
「良く分からないのよ。いつもの攻撃が当たらなかったり、動きが違ったり……」
「つまり、いつもと動き方が違ったという訳か?」
「端的に言うとそうね。けど、なんだかそれだけじゃない気がするの」
「どういうことだ?」
「直感的なことだから言葉にするのは難しいわね」


 なんだか話しにくそうだ。これは、これ以上聞いても何も出ないかな?


「ふむ、私達がいたら勝てそうか?」
「戦力は?」
「こんな感じだ」


 ミエルさんが王都の騎士団の戦力をまとめた紙を渡す。
 クラフさんが紙を目を通して口を開く。


「流石は王都の騎士団ね。これなら何とかなりそうだわ。けど、私達が消耗しすぎて、力に慣れそうにないのよ」
「なら、急いで回復してくれ。それまでは、私たちは時間稼ぎに専念する」
「ありがと。そうと決まれば、急いで街に戻らないとね」


 クラフさんが、スミル騎士団の皆さんを1か所に集める。


「みなさーん、王都の騎士団の方たちが向かっているらしいです。ヤマタノオロチもしばらくは来ないと思うので、休憩や物資の補給をしてきてください」
「団長はどうするんですか?」
「私はここに残ります。幸い、私は消耗していないし、1人くらいはヤマタノオロチを知っている人が残った方が良いでしょう」
「分かりました」


 ガントレットを付けていた男の人が騎士団の人達の前に出る。


「団長の代わりは俺が務める。すぐに街に戻って補給と回復を行い、済んだら戻ってくる。いいな?」
「「「はっ!」」」
「では、出発!」


 上に登っていく騎士団の皆さんを、クラフさんは手を振る。


「本当に行かなくてよかったのか?」
「ええ。大丈夫よ。それよりも、早く王都の騎士団が来てくれると嬉しいかな」
「流石に神級スキル持ちが3人いるとはいえ、ヤマタノオロチ相手では厳しいからな」
「そうですね。……ん?3人?」


 ミエルさんの言葉に僕は引っ掛かりを覚える。


「今、神級スキル持ちが3人って言いました?」
「ああ」
「つまり、クラフさんも神級スキルを持っているんですか?」
「そうよ」
「ええ!?」


 あまりの衝撃に思わず目を見開く。


「ど、どの神級スキルを持っているんですか!?」
「私の神級スキルは『杖神』。回復、デバフ、バフのスキルが得意よ」
「特に回復スキルは強力でな。私が知っている奴の中で3番目に強い回復スキルだ」
「3番目……」


 1番と2番はフランさんとノエルちゃんだろうから……イレギュラーな存在を除いて1番強い回復スキルを持っている人ってこと?凄すぎない?


「やあね、褒め過ぎよ」
「事実だ。それに、バフとデバフも役に立つし、それらを使うための思考力もある。伊達にスミルの騎士団長をやっている訳では無いのだぞ」
「それは凄いですね!そんな人が味方にいるなんて頼もしいです!」


 僕はスミルさんの手を握って真っすぐ見つめる。すると、クラフさんは視線を反らせて苦笑した。


「えっと、その……あははは」
「ロワ?何をやっている?」
「あ、ご、ごめんなさい!」


 ミエルさんから殺気を受けて僕は手を離す。
 テンションが上がりすぎて、つい手を握ってしまった。初対面の人になんて失礼なこと……。


「本当にごめんなさい」
「べ、別にいいのよ?ちょっとびっくりしただけだから」
「そうはいかない。今後、同じことをしないように注意してくれ」
「は、はい」


 目力を強くして、ミエルさんが顔を近づけてくる。なんだか、今までで一番威圧感がある気がする。
 僕が何度も首を縦に振ると、ミエルさんは満足したのか顔を遠ざけてくれた。


「では、これからの事をまとめるぞ。まず、王都の騎士団と合流。その後、ヤマタノオロチを捜索し、可能であれば戦闘し、押さえつける。そして、スミルの騎士団が合流したら、討伐へ切り替える」
「スミルの騎士団の方々は、どのくらいで到着するんですか?」
「3時間はかかると思って欲しいかな」
「思ったよりも短いですね」
「そうだな、普通なら半日はかかる」


 この高地を上り下りするのは時間がかかるはずだ。3時間で補給と回復を終えて往復するなんて、かなり早い。
 普段、どんな過酷な訓練をしていたら、そんなに素早く行動ができるんだろうか。


「では、焚火で皆に場所を知らせつつ、ここで待機だな」
「そうですね」


 空を見上げると、星空が瞬いている。空気が澄んでいるからか、王都よりも輝きが強い。だから、たいまつが無くても周りを見る事ができる。
 戦うには都合がいいけど、それを差し引いても幻想的で心が奪われる。


「……とても綺麗ですね」
「そうだな」


 ミエルさんの声から、さっきまでの緊張感が無くなる。少しでも心が休まったのなら良かった。


☆   ☆   ☆   ☆


 結局、王都の騎士団と合流したのは日が昇り始めた時だった。
 皆さんと合流してから、僕らは下山してヤマタノオロチを探す。


「見つけた者はすぐに報告するように」


 ミエルさんにそう言われて、僕らは注意深く周りを観察する。けど、あんな巨大な魔物の姿は見えない。


「見つからないわね?」
「麓まで転がったのか?」
「だとしたら厄介ね。見つからないと、今後、襲ってくるかも」
「そうだな。可能であればここで仕留めてしまいたい」


 ミエルさんとクラフさんが話し合いながら、周りを注視する。
 自分でやっておいてなんだけど、かなり面倒なことになってしまった。これって、見つけられなかったら、僕の責任では?腹を切ってお詫びするべきなのでは?


「…………」
「どうした?顔色が悪いぞ?」
「……大丈夫です」
「本当か?今から腹を切る奴の顔になってるぞ?」
「…………問題無いです」


 ケット先輩は首を傾げたが、それ以上は何も聞いてこなかった。
 とにかく、一刻も早くヤマタノオロチを見つけないと。腹を切るのはゴメンだ。
 目を皿のようにしてヤマタノオロチを探す。でも、あんな巨大な魔物が開けた斜面にいるんだったら、すぐに気付くだろう。やっぱりここにはいないのかな……ん?


「ミエルさん」


 とある違和感を覚えた僕はミエルさんに声を掛ける。


「どうした?」
「あそこ見てください」


 僕は下の方を指さす。そこは不自然に雪が盛り上がっていた。


「なんだあれ?」
「さあ?でも、何も無いのに雪が積もってるのは不自然じゃないですか?」
「ふむ、調べてみるか。私が近づくから、皆は後ろから様子を見てくれ」
「それではミエルさんが危険ですよ!?」
「団員を守るのが団長の仕事だ。それに、私なら多少攻撃を受けても問題無い」
「ダメです」
「だが……」
「だって、僕が嫌ですから」


 そう言うとミエルさんが言葉を失った。それを肯定と受け取った僕は矢筒のカバーを外す。


「僕が矢で攻撃します。それで様子を見てみましょう」


 普通の矢だとダメージは無い筈。だったら、劣化トリシューラの方がいいかな。
 そう思い、劣化トリシューラを弓に番えて引き絞る。MPは100、様子見ならこれくらいで良いと思う。


「……ふっ」


 MPを籠め切った劣化トリシューラが雪が積もったところへ突き刺さる。瞬間、雪の下からヤマタノオロチが勢いよく飛び出してきた。


『シャアアアアア!』
「え!?」


 8本の首で威嚇してくるヤマタノオロチを見て、クラフさんが眼を見開く。


「ヤマタノオロチに雪に潜る習性はない筈よ!?」
「これも普段とは違うという点の1つだろう」


 ミエルさんが大剣と盾を構える。


「全員行くぞ!目標はヤマタノオロチだ!」
「「「おおおおおおお!」」」


 各々が武器を構えて、目標であるヤマタノオロチを見据える。
 こうして、ヤマタノオロチとの戦いが始まったのだった。
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