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第二百七十五話 川の中に石がある
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『シャアアアアア!』
ヤマタノオロチの咆哮を受けて、僕の体が竦む。周りの皆も同じように、動きを止めてしまっている。
前にコマンドデーモンを相手した時とは比べものにならないプレッシャー。だが、動かないといけない。動かないと助からない、動かないと勝てない、動かないと……
「怯むな!」
ミエルさんの叫びで僕の思考がクリアになる。
「攻撃は全て私が受け止める!だから全力で攻撃しろ!」
「「「「おおおおおお!」」」」
ミエルさんが大剣を掲げ皆を鼓舞する。
その鼓舞に答えるように、僕らは武器をヤマタノオロチに向ける。
「行くぞ!」
ミエルさんが大剣と盾を構えて、ヤマタノオロチに突っ込んでいく。雪の中の動きとは思えないほどに軽快に進んでいく。流石はミエルさんだ。
『シャアアア!』
ヤマタノオロチがミエルさんに尻尾で薙ぎ払いを行う。ミエルさんは尻尾を盾で受けて弾き飛ばす。
「あれならいけそうね」
ミエルさんの動きを見て、クラフさんが呟く。
確かにヤマタノオロチの攻撃は強大だ。だけど、ミエルさんに捌けないほどじゃない。
「今よ!遠距離攻撃ができる人は畳みかけて!」
クラフさんの指示を聞き、僕は複製のトリシューラを取り出す。他の皆も弓や杖を構えて臨戦態勢を取る。
それぞれの武器にMPを込め始める。
「撃て!」
クラフさんの号令で一斉に遠距離攻撃をヤマタノオロチに放つ。ミエルさんはヤマタノオロチの影に隠れて遠距離攻撃から逃れる。
これなら少しはダメージを与えられるはず……
『シャア!』
ヤマタノオロチは小さく鳴くと、その巨体から力を抜いた。
そして、雪山を転がり始めて遠距離攻撃を避けようとする。
「なにやってるの!?」
目の前の光景が信じられずに僕は叫んでしまう。
ヤマタノオロチに限らず魔物は知能が低い。敵を見つけたら攻撃、HPやMPが少なくなったら逃げる、みたいな簡単な状況判断しかできない。
遠距離攻撃されても、精々が首を振るって撃退するくらいだろう。
けど、ヤマタノオロチは巨体を素早く移動させるために、転がる事を選択した。そんなの普通じゃ考えられない。
さっき転がったことで学習した?でも、学習するような知能も無いはず。これがクラフさんの言っていた『やりにくさ』の正体だったのか。
「させるか!」
ミエルさんが盾で転がろうとするヤマタノオロチの巨体を支える。
そうだった、今は考え事をしても仕方がない。全力でヤマタノオロチを倒さないと。
僕は2本の矢を番えて放つ。矢はヤマタノオロチとミエルさんを挟むように両側の地面に突き刺さった。
「ミエルさん!」
「分かった!」
ミエルさんは言葉だけで全てを察してくれたのか、一瞬だけ盾をヤマタノオロチから離した。
瞬間、ミエルさんとヤマタノオロチの間に黄色の半透明の壁が出現した。その壁に阻まれてヤマタノオロチが転がれずにお腹を上にした形で止まってしまう。
無防備なお腹に僕らが放った遠距離攻撃が殺到する。
『シャアアアアア!?』
お腹は柔らかいのか、矢や魔法が命中して血が噴き出した。傷はすぐに再生したが、普通に戦うよりもダメージが通りやすいみたいだ。
「行けるぞ!」
誰かの言葉で皆の目に力が宿る。
ヤマタノオロチはMPを使わせ切って倒すのが定石だ。深い傷を与えれば与えるほどにMPの消費は激しくなり、倒すまでの時間が短くなる。
戦闘時間が短くなれば、余力を残して倒せる。良いこと尽くめだ。
「ここで畳みかけるぞ!」
「ああ!」
ケット先輩が剣で、ボンファン先輩がハンマーで追撃を加えようと駆け出す。
「くらえ!」
無防備なお腹に2人武器が繰りだされる。瞬間、
『シャアアアアア!』
ヤマタノオロチが寝転がったまま体を曲げて、伸ばす反動で尻尾を振るった。
まさか反撃が来るとは思っていなかったのか、ケット先輩とボンファン先輩は反応できずに固まる。
「……やべっ」
ケット先輩の呟きが聞こえる。このタイミングだとトリシューラも間に合わない!2人を救う方法が無い!
「ケット先輩!ボンファン先輩!」
「シン・ダブルプロフェクション!」
やられた、そう思った瞬間にミエルさんのシン・ダブルプロフェクションがヤマタノオロチの尻尾を跳ね返す。見ると、ヤマタノオロチの影からミエルさんが跳び出すしていた。
ミエルさんがヤマタノオロチのお腹に大剣を突き刺しながら叫ぶ。
「一度距離を取れ!チャンスになったら攻撃をしろ!」
「了解!」
ケット先輩とボンファン先輩が後ろに下がって距離を取りはじめる。
ヤマタノオロチは藻掻くことで大剣を弾き飛ばす。そして、体を起こすと距離をとる2人に向かって8本全ての首を伸ばしてきた。
『シャアアアアア!!』
「挑発!」
挑発のスキルの効果で、8本の首が全てミエルさんに向かう。シン・ダブルプロフェクションはMPを消費しない代わりに、体力と集中力の消耗が激しい。さっきの大きさの盾だと、500mを全力疾走するくらいの体力を消耗している筈だ。
流石のミエルさんでも、今の状態であれだけの首を相手には……
「ふんッ!」
僕の心配をよそに、ミエルさんの大剣の一振りで全ての首を弾き飛ばした。
そして、ミエルさんはヤマタノオロチの胴体に肉薄すると、盾で突進した。
「せいッ!」
ヤマタノオロチは少しだけ動きを止めたけど、直ぐにミエルさんに尻尾を振るった。
ミエルさんは尻尾を難なく盾で受けると、攻撃の勢いを利用して後ろに跳んだ。
「……ふう」
着地したミエルさんは小さく息を吐くと、大剣をヤマタノオロチに向けた。
「来い、お前の攻撃は全て受け止めてやる」
朝日がミエルさんの金色の髪を宝石のように美しく輝かせる。顔には返り血がついていて、鎧は傷だらけだ。けど、その光景をみた僕はその美しさに心を奪われた。
街の平穏を掛けて戦っている、その事実さえも頭から抜け落ちそうになる。すると、隣からクラフさんの呟きが聞こえた。
「……あなた達の団長、強すぎないかしら?」
ハッと意識を取り戻し、隣にいるクラフさんに視線を向ける。
「僕等の自慢のリーダーですからね!」
「かなり心強いわね。さあ、私達も行くわよ!」
「はい!」
ミエルさんは前よりも強くなっている。今ならコマンドデーモンにも引けを取らないだろう。
だけど、僕も前よりも強くなったんだ!その成果を今見せるんだ!
「ボンファン先輩!」
「おう、どうした?」
「あれ行きましょう!」
「あれか。分かった」
ボンファン先輩がハンマーを地面に打ち付ける。そして、僕はハンマーの上に乗っかった。
その様子を見てクラフさんが首を傾げた。
「何をする気?」
「詳しい話は後です。僕が隙を作るので畳みかけてください」
「良く分からないけど、分かったわ」
そう言うと、クラフさんが杖にMPを込め始める。すぐに臨戦態勢が取れるのは、流石は騎士団長だ。
「行くぞ!」
「お願いします!」
「ハイアッパー!」
ハンマーが輝き、勢いよく振り上げられた。その反動を試用して、僕は思いっきりジャンプをする。
「秘儀!ロケットジャンプ!」
これは騎士団で訓練していた時に編み出した技。ハンマーの攻撃力を利用して高くまでジャンプする連携技だ。
騎士団で試したときは高くジャンプしすぎて天井に頭をぶつけたけど、外なら何の問題もない。
軽く20mは飛んだ僕は、矢を番えて引き絞る。狙いは真下にいるヤマタノオロチ……じゃない。
「ミエルさん!」
矢を放つ瞬間、僕は大声でミエルさんに合図を出す。
ミエルさんは僕に視線を向けずに、後ろに大きく跳んだ。そして僕は矢を放つ。
矢はエンチャントしていたクラウドショットの効果で10本に分裂して、狙い通りヤマタノオロチの周りに突き刺さった。
そして、矢が突き刺さった所は徐々に茶色に変色していく。使った矢はマッドショット、刺さった箇所を泥化させる矢だ。
僕は更に矢を放って、ヤマタノオロチの周りを全て茶色に染める。
『シャアアアアア!?』
泥になった地面にヤマタノオロチの巨体はズブズブと沈んでいった。ヤマタノオロチも脱出しようと藻掻くが体は更に沈んでいく。
『シャアアアアア!』
悲鳴を上げながら更に沈んでいくヤマタノオロチ。これで攻撃がやり易くなったはずだ。
そう思いながら、僕は更に弓を引き絞る。今の僕は上空にいる。このままだと地面に叩きつけられてお陀仏だ。回復スキルなんて意味がない。
けど、他の皆は攻撃にMPを割いているだろうし、助けてもらうことは出来ない。自分で何とかしないと。
僕は空中で体勢を調えつつ矢を放つ。放たれた矢は地面に突き刺さると、一瞬で僕と場所が入れ替わった。
放った矢はワープアロー。刺さった矢と自分を入れ替える矢だ。
これで、落下を最小限に抑えて着地ができる。けど、落下時のエネルギーを全て消せる訳じゃないから、着地した足にとんでもない激痛が走る。
「うぐっ!?」
皆さんの邪魔にならないように、なんとか叫び声を堪える。だけど、折れるほどではないけど、足に物凄いダメージを負ってしまった。これだと動けそうにない。
そう思った僕は自分の足に狙いを定めて、弓を弾き絞る。そして、特に葛藤もなく矢を放った。
「……ふぅ」
矢は足に命中すると、緑色の光となって吸い込まれていった。そして、僕の足の痛みが引いていくのを感じる。
ヒールアロー、命中した対象のHPを回復するスキルだ。回復量は多くはないけど、遠くからピンポイントで回復できるのが強い。あと、僕だけで回復できる貴重な手段だ。
痛みが完全に引くまでヒールアローを使う。
「よし、直ぐに戦線に戻らないと」
動きは封じても、まだ倒せたわけじゃない。すぐに攻撃に参加しないと。
僕は弓を握りなおして、ヤマタノオロチの所まで走った。
ヤマタノオロチの咆哮を受けて、僕の体が竦む。周りの皆も同じように、動きを止めてしまっている。
前にコマンドデーモンを相手した時とは比べものにならないプレッシャー。だが、動かないといけない。動かないと助からない、動かないと勝てない、動かないと……
「怯むな!」
ミエルさんの叫びで僕の思考がクリアになる。
「攻撃は全て私が受け止める!だから全力で攻撃しろ!」
「「「「おおおおおお!」」」」
ミエルさんが大剣を掲げ皆を鼓舞する。
その鼓舞に答えるように、僕らは武器をヤマタノオロチに向ける。
「行くぞ!」
ミエルさんが大剣と盾を構えて、ヤマタノオロチに突っ込んでいく。雪の中の動きとは思えないほどに軽快に進んでいく。流石はミエルさんだ。
『シャアアア!』
ヤマタノオロチがミエルさんに尻尾で薙ぎ払いを行う。ミエルさんは尻尾を盾で受けて弾き飛ばす。
「あれならいけそうね」
ミエルさんの動きを見て、クラフさんが呟く。
確かにヤマタノオロチの攻撃は強大だ。だけど、ミエルさんに捌けないほどじゃない。
「今よ!遠距離攻撃ができる人は畳みかけて!」
クラフさんの指示を聞き、僕は複製のトリシューラを取り出す。他の皆も弓や杖を構えて臨戦態勢を取る。
それぞれの武器にMPを込め始める。
「撃て!」
クラフさんの号令で一斉に遠距離攻撃をヤマタノオロチに放つ。ミエルさんはヤマタノオロチの影に隠れて遠距離攻撃から逃れる。
これなら少しはダメージを与えられるはず……
『シャア!』
ヤマタノオロチは小さく鳴くと、その巨体から力を抜いた。
そして、雪山を転がり始めて遠距離攻撃を避けようとする。
「なにやってるの!?」
目の前の光景が信じられずに僕は叫んでしまう。
ヤマタノオロチに限らず魔物は知能が低い。敵を見つけたら攻撃、HPやMPが少なくなったら逃げる、みたいな簡単な状況判断しかできない。
遠距離攻撃されても、精々が首を振るって撃退するくらいだろう。
けど、ヤマタノオロチは巨体を素早く移動させるために、転がる事を選択した。そんなの普通じゃ考えられない。
さっき転がったことで学習した?でも、学習するような知能も無いはず。これがクラフさんの言っていた『やりにくさ』の正体だったのか。
「させるか!」
ミエルさんが盾で転がろうとするヤマタノオロチの巨体を支える。
そうだった、今は考え事をしても仕方がない。全力でヤマタノオロチを倒さないと。
僕は2本の矢を番えて放つ。矢はヤマタノオロチとミエルさんを挟むように両側の地面に突き刺さった。
「ミエルさん!」
「分かった!」
ミエルさんは言葉だけで全てを察してくれたのか、一瞬だけ盾をヤマタノオロチから離した。
瞬間、ミエルさんとヤマタノオロチの間に黄色の半透明の壁が出現した。その壁に阻まれてヤマタノオロチが転がれずにお腹を上にした形で止まってしまう。
無防備なお腹に僕らが放った遠距離攻撃が殺到する。
『シャアアアアア!?』
お腹は柔らかいのか、矢や魔法が命中して血が噴き出した。傷はすぐに再生したが、普通に戦うよりもダメージが通りやすいみたいだ。
「行けるぞ!」
誰かの言葉で皆の目に力が宿る。
ヤマタノオロチはMPを使わせ切って倒すのが定石だ。深い傷を与えれば与えるほどにMPの消費は激しくなり、倒すまでの時間が短くなる。
戦闘時間が短くなれば、余力を残して倒せる。良いこと尽くめだ。
「ここで畳みかけるぞ!」
「ああ!」
ケット先輩が剣で、ボンファン先輩がハンマーで追撃を加えようと駆け出す。
「くらえ!」
無防備なお腹に2人武器が繰りだされる。瞬間、
『シャアアアアア!』
ヤマタノオロチが寝転がったまま体を曲げて、伸ばす反動で尻尾を振るった。
まさか反撃が来るとは思っていなかったのか、ケット先輩とボンファン先輩は反応できずに固まる。
「……やべっ」
ケット先輩の呟きが聞こえる。このタイミングだとトリシューラも間に合わない!2人を救う方法が無い!
「ケット先輩!ボンファン先輩!」
「シン・ダブルプロフェクション!」
やられた、そう思った瞬間にミエルさんのシン・ダブルプロフェクションがヤマタノオロチの尻尾を跳ね返す。見ると、ヤマタノオロチの影からミエルさんが跳び出すしていた。
ミエルさんがヤマタノオロチのお腹に大剣を突き刺しながら叫ぶ。
「一度距離を取れ!チャンスになったら攻撃をしろ!」
「了解!」
ケット先輩とボンファン先輩が後ろに下がって距離を取りはじめる。
ヤマタノオロチは藻掻くことで大剣を弾き飛ばす。そして、体を起こすと距離をとる2人に向かって8本全ての首を伸ばしてきた。
『シャアアアアア!!』
「挑発!」
挑発のスキルの効果で、8本の首が全てミエルさんに向かう。シン・ダブルプロフェクションはMPを消費しない代わりに、体力と集中力の消耗が激しい。さっきの大きさの盾だと、500mを全力疾走するくらいの体力を消耗している筈だ。
流石のミエルさんでも、今の状態であれだけの首を相手には……
「ふんッ!」
僕の心配をよそに、ミエルさんの大剣の一振りで全ての首を弾き飛ばした。
そして、ミエルさんはヤマタノオロチの胴体に肉薄すると、盾で突進した。
「せいッ!」
ヤマタノオロチは少しだけ動きを止めたけど、直ぐにミエルさんに尻尾を振るった。
ミエルさんは尻尾を難なく盾で受けると、攻撃の勢いを利用して後ろに跳んだ。
「……ふう」
着地したミエルさんは小さく息を吐くと、大剣をヤマタノオロチに向けた。
「来い、お前の攻撃は全て受け止めてやる」
朝日がミエルさんの金色の髪を宝石のように美しく輝かせる。顔には返り血がついていて、鎧は傷だらけだ。けど、その光景をみた僕はその美しさに心を奪われた。
街の平穏を掛けて戦っている、その事実さえも頭から抜け落ちそうになる。すると、隣からクラフさんの呟きが聞こえた。
「……あなた達の団長、強すぎないかしら?」
ハッと意識を取り戻し、隣にいるクラフさんに視線を向ける。
「僕等の自慢のリーダーですからね!」
「かなり心強いわね。さあ、私達も行くわよ!」
「はい!」
ミエルさんは前よりも強くなっている。今ならコマンドデーモンにも引けを取らないだろう。
だけど、僕も前よりも強くなったんだ!その成果を今見せるんだ!
「ボンファン先輩!」
「おう、どうした?」
「あれ行きましょう!」
「あれか。分かった」
ボンファン先輩がハンマーを地面に打ち付ける。そして、僕はハンマーの上に乗っかった。
その様子を見てクラフさんが首を傾げた。
「何をする気?」
「詳しい話は後です。僕が隙を作るので畳みかけてください」
「良く分からないけど、分かったわ」
そう言うと、クラフさんが杖にMPを込め始める。すぐに臨戦態勢が取れるのは、流石は騎士団長だ。
「行くぞ!」
「お願いします!」
「ハイアッパー!」
ハンマーが輝き、勢いよく振り上げられた。その反動を試用して、僕は思いっきりジャンプをする。
「秘儀!ロケットジャンプ!」
これは騎士団で訓練していた時に編み出した技。ハンマーの攻撃力を利用して高くまでジャンプする連携技だ。
騎士団で試したときは高くジャンプしすぎて天井に頭をぶつけたけど、外なら何の問題もない。
軽く20mは飛んだ僕は、矢を番えて引き絞る。狙いは真下にいるヤマタノオロチ……じゃない。
「ミエルさん!」
矢を放つ瞬間、僕は大声でミエルさんに合図を出す。
ミエルさんは僕に視線を向けずに、後ろに大きく跳んだ。そして僕は矢を放つ。
矢はエンチャントしていたクラウドショットの効果で10本に分裂して、狙い通りヤマタノオロチの周りに突き刺さった。
そして、矢が突き刺さった所は徐々に茶色に変色していく。使った矢はマッドショット、刺さった箇所を泥化させる矢だ。
僕は更に矢を放って、ヤマタノオロチの周りを全て茶色に染める。
『シャアアアアア!?』
泥になった地面にヤマタノオロチの巨体はズブズブと沈んでいった。ヤマタノオロチも脱出しようと藻掻くが体は更に沈んでいく。
『シャアアアアア!』
悲鳴を上げながら更に沈んでいくヤマタノオロチ。これで攻撃がやり易くなったはずだ。
そう思いながら、僕は更に弓を引き絞る。今の僕は上空にいる。このままだと地面に叩きつけられてお陀仏だ。回復スキルなんて意味がない。
けど、他の皆は攻撃にMPを割いているだろうし、助けてもらうことは出来ない。自分で何とかしないと。
僕は空中で体勢を調えつつ矢を放つ。放たれた矢は地面に突き刺さると、一瞬で僕と場所が入れ替わった。
放った矢はワープアロー。刺さった矢と自分を入れ替える矢だ。
これで、落下を最小限に抑えて着地ができる。けど、落下時のエネルギーを全て消せる訳じゃないから、着地した足にとんでもない激痛が走る。
「うぐっ!?」
皆さんの邪魔にならないように、なんとか叫び声を堪える。だけど、折れるほどではないけど、足に物凄いダメージを負ってしまった。これだと動けそうにない。
そう思った僕は自分の足に狙いを定めて、弓を弾き絞る。そして、特に葛藤もなく矢を放った。
「……ふぅ」
矢は足に命中すると、緑色の光となって吸い込まれていった。そして、僕の足の痛みが引いていくのを感じる。
ヒールアロー、命中した対象のHPを回復するスキルだ。回復量は多くはないけど、遠くからピンポイントで回復できるのが強い。あと、僕だけで回復できる貴重な手段だ。
痛みが完全に引くまでヒールアローを使う。
「よし、直ぐに戦線に戻らないと」
動きは封じても、まだ倒せたわけじゃない。すぐに攻撃に参加しないと。
僕は弓を握りなおして、ヤマタノオロチの所まで走った。
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