魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百十四話 犯罪的だ・・・うますぎる・・・

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「そういえば、騎士団の皆さんってどうしてるんでしょうか?」


 宿探しの帰り、ふと気になったのかロワから質問が飛んでくる。


「騎士団の皆は防衛戦に参加してもらっている。とはいえ、騎士団として団体で戦っている訳では無い。他の冒険者に混ざって戦っている」
「知らない人と戦うなんて大変そうですね」
「私とロワも似たようなことをやっていただろう?」
「それもそうですね」


 最初の一週間は他の者に混ざって戦っていたが、本当に大変だった。
 なにせ、訓練も受けていない荒くれ者が大半を占めていたからな。連携も何もあったものじゃなかった。
 そう考えると、ロワは始めから連携しやすかったな。意外とロワは騎士団の適正は高いのかもしれないな。


「皆さんは今も戦っているんでしょうか?」
「さあな。朝に戦っているのなら、そろそろ帰ってきてもいい筈だが」


 そんな事を話しつつ、私達は帰路を進む。
 すると、丁度道の向こう側にケットとリンが歩いているのが見えた。


「噂をすれば、って奴だな」
「さっきも似たようなことがあった気がしますね」


 ホウリのことを言っているのだろう。私も丁度同じことを思っていたところだ。


「どうします?声掛けますか?」
「折角だし話しかけるか」


 もう少しロワと二人きりでいたい気もするが、部下の労いも上司の役目だ。ロワも2人と話したいだろうしな。


「ケット先輩!リン先輩!」
「ん?」


 ロワが手を振りながら叫ぶと、2人もこちら気が付いた。


「よおロワ、ミエル」
「2人も帰る途中なの?」
「はい」
「そうだ」


 軽く挨拶を交わし、誰が言うまでもなく自然と横並びになる。この並びも4人で帰るときの定番と化したな。


「いやー、今回の戦闘もきつかったな」
「魔物のレベルが明らかに上がってるわよね」
「だが、冒険者の質も上がっているだろう?」
「それが全然。強くても連携がなってないから苦労してんだよ」
「魔法を放つときも私の射線に入って戦ってたりね」
「俺も敵に接近しようとしたら、いきなり目の前に味方が飛び出して来たんだぞ?やってらんねぇよ」


 2人とも愚痴が止まらない。相当ストレスが溜まっていると見えるな。


「それは大変だったな」
「ですね」
「他人事だな?お前らはそんなこと無いのか?」
「私は前衛だからな。味方の誤射はあるが大した問題じゃない」
「僕も壁の上から援護なのでそんなに無いですね。最近は戦場に出てませんし」
「は?どういうことだ?」


 私たちは今までの出来事を2人に話す。


「つまり、貴方達は毎日オダリムで遊んでいるってこと?」
「そんな訳あるか。最近はバリスタの整備にかかりきりだ」
「今日だって10日ぶりの休みなんですからね」
「バリスタ?ああ、最近壁の上に出て来たアレか」


 ケットがオダリムの壁の上に視線をやる。そこには、私たちが整備したバリスタを冒険者が使っている姿があった。


「かなり強力な兵器だって聞いたぜ?」
「消費MP10でケンタウロスも倒せるくらいはあります」
「MP10でケンタウロスを倒せるの?戦局が変わるくらいには強力じゃないの」
「ふふーん」
「なんでロワが威張っているんだ」


 胸を張っているロワにケットのツッコミが炸裂する。


「そういえば、ミエルとロワはこの後予定あるか?」
「特にないぞ」
「だったら飲みに行かないか?」
「良いですね」


 ロワがケットの提案を聞いて笑顔で頷く。だが、ロワはお酒で何度か失敗している。正直なところ、お調子者のケットと一緒に飲みに行かせるのはかなり心配だ。


「ミエルはどうする?」
「……分かった。私も同行しまよう」


 ロワは行く気満々みたいだし、止められないだろう。なら、私も一緒に行った方が安心だ。


「決まりね。どこかに居酒屋は無いかしら?」
「それならこの近くに良い感じの居酒屋があった筈ですよ」


 そんな事を話していると、向こうにもう一人見知った顔があることに気が付いた。


「ロワ、向こうにいるのってクラフじゃないか?」
「え?あ、本当ですね」


 クラフは買い物かごを持って、パン屋でパンを受け取っていた。


「買い物ですかね?」
「だと思うぞ」
「誰?知り合い?」
「スミルの騎士団長だ」
「スミルの騎士団って脳筋集団だろ?そんな騎士団の団長がなんでオダリムにいるんだ?」
「それは絶対に本人に言うなよ?」


 本人に聞かれたら半殺しじゃ済まないだろう。
 そんな事を話していると、クラフさんも僕らに気が付いたのか、買い物かごを揺らしながら駆けよって来た。


「奇遇ね、ロワ君、ミエル」
「ああ。奇遇だな」
「買い物ですか?」
「ええ。宿の厨房を借りて久しぶりに料理しようと思ってね」
「料理できるのか。羨ましいな」
「ミエルは料理できないの?」
「ああ」


 正確には料理を禁止されているだが。聞いた話によると、ディーヌの宿だけではなく、オダリム全土に私の料理禁止令が行き届いているらしい。
 全く、私が何をしたというのだ。ちょっと、個性的な料理ができるだけではないか。


「だったらさ、私が料理教えてあげよっか?」


 クラフは私の言葉を別の意味ととらえたのか、そんな提案をしてくる。


「良いのか?」
「食材は多めに買ったし大丈夫よ」
「それならお言葉に甘えて……」
「俺達これから飲みに行くんだ!」
「だから残念だけどお断りするわね!」
「僕等も残念なんですけど、今回は諦めてください!」


 私が承諾しようとすると、3人が勢いよくまくし立ててくる。


「そ、それなら仕方ないわね」


 クラフは勢いに押される形で引き下がってしまう。不味い、このままでは貴重な料理ができる機会を失ってしまう。ここを逃せば次に料理が出来るのがいつになるのか分かった物ではない。


「ま、待ってくれ!私は料理を───」
「引き下がらないとロワのことが好きだってバラすぞ?」
「いやぁ、残念だがそういうことだ。またの機会に頼む」
「そう?なら仕方ないわね」

 
 クラフは買い物かごをアイテムボックスに仕舞う。
 くそっ、ケットに耳元で脅されなければ無理矢理にでも付いていったものを。


「そうだ、クラフさんも一緒に飲みに行きませんか?」
「いいの?お邪魔じゃないかしら?」
「いいっすよ。こんな綺麗な人と飲めるなんて最高っす」
「私は綺麗じゃないのかしら?」
「私も綺麗って言われたことないな」
「お前らはそういう目で見られない」


 私達の抗議をバッサリと切り裂き、ケットはクラフに向き直る。
 少し不満感を抱いていると、ロワが耳に口を寄せて来た。


「大丈夫です、ミエルさんは綺麗ですよ」
「な!?」


 顔が熱くなるのを感じながら、ロワへと視線を向ける。すると、ロワはいたずらっぽく笑っていた。
 いつもの天然な言葉かと思ったが、今回は明確にからかってきたようだ。


「さ、行きましょうか」


 私が何も言えずにいると、ロワが歩き始める。
 ロワってあんな一面もあるんだなぁ。そんな事を考えつつ、私はロワの後に続いた。


☆   ☆   ☆   ☆


「おらぁ、私の酒が飲めないっていうのかぁ!」


 飲み会を始めて2時間、すっかり出来上がってしまったクラフにケットは絡まれていた。


「の、飲み過ぎじゃないですかね?」
「ああ?飲まないとやってらんないのよぉ!」


 クラフがグラスにビールを注いで一気に呷る。


「神級スキルを持っているからって私に頼り過ぎなのよぉ!そんな大勢のバフなんて長時間かけてられるわけないれしょうがぁ!」


 クラフも相当にストレスが溜まっているのか、口からは愚痴があふれ出してくる。この調子が2時間ずっとなのだ。面倒くさいことこの上ない。
 そんなクラフに、美人と飲めると喜んでいたケットも苦笑いを浮かべている。


「さあ飲めぇ!飲んで飲んで飲みまくるのらぁ!」


 ケットの表情を知ってか知らずか、クラフは更にグラスにビールを注ぐ。そして、ケットへ押し付けた。


「俺はもう大丈夫ですから……」
「いやぁ飲め!とことんまで飲めぇ!」
「だから良いですって──って力強っ!?」
「スミルの団長だからな。ケットごときが抵抗できるパワーな訳ないだろう?」
「流石は脳筋騎士団の団長様だな!?」
「あ?今脳筋って言った?」


 ケットの言葉でクラフの目が鋭くなる。あーあ、禁句を言ってしまったか。


「え、えっと、その……」
「乙女に向かって脳筋って言ったわね!」


 酔っているとは思えない速度で、ケットの首が絞められる。


「こうなっては止まらないな」
「どうします?飲み会を続ける雰囲気じゃありませんよ?」
「別の店で飲みなおしましょうか」
「そうするか」
「ケット先輩はどうします?」
「だ、だじゅげで……」


 顔を青くしながら、ケットが必死に何かを訴えて来る。
 ケットとの付き合いも長い。何を言いたいのかは手に取るように分かる。


「自分たちの事は気にしないで行ってこい、らしいぞ」
「そういうことなら行きましょうか」
「良いんですか?目で必死に何かを訴えているような感じがしますけど?」
「大丈夫だ、問題無い」
「なら良いですね」


 私たちは気配を消して店の出口まで向かう。


「誰が脳筋ですって!?もう一回言ってみなさいよ!」
「ぐげぇ……」


 怒鳴り声と蛙を潰したときのような声が背後から聞こえてくる。楽しそうでなによりだ。
 そんなこんなで夜は更けていくのだった。
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