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第三百三十七話 犬も歩けば棒に当たる
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ホウリさんから話を聞いた後、僕は街に繰り出した。格好はいつもの格好ではなく、防具を身に着け矢筒を背負った戦闘スタイルだ。
今、街は魔物の襲撃を受けているから戦闘の格好をしている人も多い。だから、幸いにも僕が浮く事はなかった。
「それで、何をすれば良いんですか?」
隣のホウリさんに僕は訪ねてみる。ホウリさんからは、僕とホウリさんで街を出歩くとしか聞いていない。何をするのか知らないのはかなり不安だ。
僕の質問にホウリさんがキョロキョロと辺りを見渡しながら答えてくれる。
「俺の作戦はこうだ。街を練り歩いて怪しそうな奴をとっちめる。以上」
「雑すぎないですか!?」
「偶には当てもなく歩くのも良いだろ?」
「良いわけ無いですよね!?」
オダリムは広大だ。ホウリさんが一目で犯人が分かるとしても、偶々犯人を見つけるなんて無理だろう。
「真面目にやってくださいよ!」
「真面目にやってるよ」
「その割には行きあたりばったりだと思いますけどね?」
「ほら良く言うだろ?何かが歩けば何かに何かするって」
「犬も歩けば棒に当たるですよね!?記憶がふわふわ過ぎるでしょう!?」
「あー、それだ。ロワは賢いな」
「もう煽ってますよね?」
こんな簡単な言葉をホウリさんが知らない訳ない。僕をからかっているんだろう。
まあ、ホウリさんの事だし何か考えがあるんだろう。深く聞いても、からかわれるだけだろうし、何も聞かないでおこう。
「それで、ただ歩くだけで良いんですか?」
「周りに不審な人物がいないかを確認しながら街を歩くぞ」
「と言われましても……」
パッと見て不審な人物なんて分からない。怪しい人を探そうと思うと、待ち行く人が皆怪しく思えてくる。もう、信じられるのはホウリさんとかミエルさんしかいない。
「怪しい人ってどんな人ですか?」
「分かりやすいのは挙動不審な奴だな」
「挙動不審ですね」
キョロキョロと辺りを見渡すけど、挙動不審な人は見当たらない。そりゃそうか。見ただけで分かるように挙動不審な人がいたら、他の人にすぐに通報されるだろう。
「挙動不審な人って見つかりませんね?」
「鏡を見てこい。すぐに見つかる」
「ホウリさんがさせたんですよね!?」
「あ、ドライフルーツだ」
僕の抗議は屋台のドライフルーツで完全にスルーされてしまった。
ホウリさんは抱えるほどのドライフルーツを買って、口いっぱいに頬張る。
「お前は怪しい奴を探そうとするのに挙動不審になり過ぎだ。お前が憲兵に通報されるぞ?」
「それは分かりますが……」
「こういうのは普通に歩いて、さりげなく探すものだ」
「難しいですね……」
「まあ、頑張ってみるしかないな」
「というか、他に怪しい人の特徴ってないんですか?」
「普通の人とは違う奴を探せ」
ホウリさんはそれだけ言うと、ドライフルーツの咀嚼に戻った。
そんな具体性の無いアドバイスでどうしろというのだろうか。
不満を覚えながらも、僕は怪しい人がいないか見てみる。とはいえ、僕の目で見ても怪しい人なんて……
「ひょっひょっひょ!これは良い代物ですぞ!」
いた。
「ホウリさん!怪しい人いましたよ!」
ホウリさんの肩を必死で叩き、怪しい人を指さす。
そこにはハイレグの水着にネクタイを付けた男性がいた。紫色の怪しい瓶に頬ずりしている。明らかに怪しい人だ。
ホウリさんは僕の指さした方を見ると、直ぐに前に視線を向けた。
「あー、あれはナイカムさんだな」
「ナイカムさん?」
「ここらで有名な人だよ」
「何で有名なんですか?」
「職務質問が多いで有名だ」
「ですよね!?」
あれで職務質問されない方が可笑しいだろう。
「というか、あの液体は何なんですか?毒?」
「フルールジュースだ。今から量販店に営業に行くんだろうよ」
「あの格好で営業しているんですか!?」
僕だったら、あんなのが営業に来たら店を閉めて憲兵を呼びに行く。それどころか、弓矢を取り出すかもしれない。
「会社で一番の営業成績らしいな」
「あの見た目でですか?」
「人は見かけによらないんだぜ?」
「そんなものですかね?」
あの見た目で営業1位だなんて、どんな手を使っているんだろうか?催眠とか?
「単純な話術だからな?汚い手を使っている訳じゃないぞ?」
どうやら怪しんでいるのが顔に出ていたようだ。ホウリさんから訂正が来た。
というか、どんな話術ならあの見た目で営業が出来るんだろうか。ちょっと気になる。
「あと、怪しい奴を見つけるのが目的なんだからな?ナイカムさんばかりに気を取られるなよ?」
「あの人も十分に怪しいと思うんですけどね?」
腑に落ちないながらも、僕は続けて怪しい人が居ないか探してみる。
「あ、あの人なんてどうですか?」
僕はハンチング帽をかぶった中年の男性を指さす。キョロキョロと辺りを見渡して何かを探しているような仕草だ。
「あれは何かを探している仕草です。怪しくないですか?」
「あれはただの強盗だ。裏切者とは違う」
「強盗!?」
これほど『ただの』という形容詞が似合わない言葉もないだろう。というか、なんでホウリさんは強盗を見つけて冷静で言われるのだろうか。
「なんで分かったんですか!?」
「強盗に慣れていない奴は雰囲気で分かる。殺気というか緊張感と言うか、そういった独特の雰囲気がある」
ホウリさんには愚問だったかな。というか、雑談している場合じゃない!
「被害が出る前に早く通報しないと!」
「通報はまだだ。あいつはあくまでも強盗を計画しているだけ。実行しないと現行犯での逮捕はできない」
「じゃあ、誰かが襲われるまで見てろって事ですか?」
「ああ。あいつが危害を加えようとした瞬間に取り抑える。それなら、被害を出さずにあいつを逮捕出来る」
「そうでしたか。てっきり無視するのかと思いました」
「流石に強盗は無視できないだろ。下手したら怪我人が出る」
ホウリさんも被害を出したい訳じゃないみたいだ。そりゃそうか。
「いつ捕まえるんですか?」
「強盗はどこかの店に入るはずだ。入った後を追って、武器を取り出した瞬間に取り抑える。あとは憲兵を呼んできて終わりだ」
「了解です」
強盗の後を追っていって、何処の店に入るのかを注視する。強盗はまだ武器を持っていない。どういう武器を取り出しても良いように、心の準備をしておこう。
背負っている矢筒を確認しつつ、弓に弦が張ってあるか確認する。よし、すぐにでも矢を射れる。武器を出した瞬間に攻撃しよう。
ドキドキとしている胸を抑えつつ、強盗の後を追う。
「……ん?この道は?」
強盗を負っていると、ホウリさんの眉間に皺が寄っていった。
「どうしたんですか?」
「……ちょっと予定が変わるかもしれない」
「どういうことですか?」
僕の質問にホウリさんは答えず、無言で強盗を追っていった。なんとなく殺気が漂っている気がする。
ホウリさんの迫力に押されながら、僕もホウリさんの後に続く。
強盗は目的地を決めているのか、足取りに迷いが無く進んでいく。そして、とある店の前で止まった。
「あの店は?」
「『キャフレ』。オダリムで3本の指に入るスイーツショップだ」
瞬間、ホウリさんから表情が消えた。そして、尋常じゃない程の殺気がホウリさんから漏れ出てくる。
「ホウリさん!?そんなに殺気を出したら強盗にバレますよ!?」
声を抑えてホウリさんに話しかけると、感情の無い顔が僕に向けられてきた。
「お前はここで待ってろ」
「え?僕も行きますよ?」
「ここで待ってろ」
ホウリさんの有無を言わさないような迫力に、僕は思わず首を縦に振った。ホウリさんは強盗の後を追ってお店の中に入っていった。
「……強盗の人、運が無かったなぁ」
死にはしないだろうけど、死んだほうがマシだっていう目には合うんだろうなぁ。
そんなことを考えつつ、不自然に静かなスイーツショップを眺めるのだった。
数分後、気絶した強盗を持ってホウリさんはスイーツショップから出て来た。そして、憲兵に突き出すから、1人で裏切者を探して欲しいと言われ、僕はオダリムの街をさまよう事になったのだった。
今、街は魔物の襲撃を受けているから戦闘の格好をしている人も多い。だから、幸いにも僕が浮く事はなかった。
「それで、何をすれば良いんですか?」
隣のホウリさんに僕は訪ねてみる。ホウリさんからは、僕とホウリさんで街を出歩くとしか聞いていない。何をするのか知らないのはかなり不安だ。
僕の質問にホウリさんがキョロキョロと辺りを見渡しながら答えてくれる。
「俺の作戦はこうだ。街を練り歩いて怪しそうな奴をとっちめる。以上」
「雑すぎないですか!?」
「偶には当てもなく歩くのも良いだろ?」
「良いわけ無いですよね!?」
オダリムは広大だ。ホウリさんが一目で犯人が分かるとしても、偶々犯人を見つけるなんて無理だろう。
「真面目にやってくださいよ!」
「真面目にやってるよ」
「その割には行きあたりばったりだと思いますけどね?」
「ほら良く言うだろ?何かが歩けば何かに何かするって」
「犬も歩けば棒に当たるですよね!?記憶がふわふわ過ぎるでしょう!?」
「あー、それだ。ロワは賢いな」
「もう煽ってますよね?」
こんな簡単な言葉をホウリさんが知らない訳ない。僕をからかっているんだろう。
まあ、ホウリさんの事だし何か考えがあるんだろう。深く聞いても、からかわれるだけだろうし、何も聞かないでおこう。
「それで、ただ歩くだけで良いんですか?」
「周りに不審な人物がいないかを確認しながら街を歩くぞ」
「と言われましても……」
パッと見て不審な人物なんて分からない。怪しい人を探そうと思うと、待ち行く人が皆怪しく思えてくる。もう、信じられるのはホウリさんとかミエルさんしかいない。
「怪しい人ってどんな人ですか?」
「分かりやすいのは挙動不審な奴だな」
「挙動不審ですね」
キョロキョロと辺りを見渡すけど、挙動不審な人は見当たらない。そりゃそうか。見ただけで分かるように挙動不審な人がいたら、他の人にすぐに通報されるだろう。
「挙動不審な人って見つかりませんね?」
「鏡を見てこい。すぐに見つかる」
「ホウリさんがさせたんですよね!?」
「あ、ドライフルーツだ」
僕の抗議は屋台のドライフルーツで完全にスルーされてしまった。
ホウリさんは抱えるほどのドライフルーツを買って、口いっぱいに頬張る。
「お前は怪しい奴を探そうとするのに挙動不審になり過ぎだ。お前が憲兵に通報されるぞ?」
「それは分かりますが……」
「こういうのは普通に歩いて、さりげなく探すものだ」
「難しいですね……」
「まあ、頑張ってみるしかないな」
「というか、他に怪しい人の特徴ってないんですか?」
「普通の人とは違う奴を探せ」
ホウリさんはそれだけ言うと、ドライフルーツの咀嚼に戻った。
そんな具体性の無いアドバイスでどうしろというのだろうか。
不満を覚えながらも、僕は怪しい人がいないか見てみる。とはいえ、僕の目で見ても怪しい人なんて……
「ひょっひょっひょ!これは良い代物ですぞ!」
いた。
「ホウリさん!怪しい人いましたよ!」
ホウリさんの肩を必死で叩き、怪しい人を指さす。
そこにはハイレグの水着にネクタイを付けた男性がいた。紫色の怪しい瓶に頬ずりしている。明らかに怪しい人だ。
ホウリさんは僕の指さした方を見ると、直ぐに前に視線を向けた。
「あー、あれはナイカムさんだな」
「ナイカムさん?」
「ここらで有名な人だよ」
「何で有名なんですか?」
「職務質問が多いで有名だ」
「ですよね!?」
あれで職務質問されない方が可笑しいだろう。
「というか、あの液体は何なんですか?毒?」
「フルールジュースだ。今から量販店に営業に行くんだろうよ」
「あの格好で営業しているんですか!?」
僕だったら、あんなのが営業に来たら店を閉めて憲兵を呼びに行く。それどころか、弓矢を取り出すかもしれない。
「会社で一番の営業成績らしいな」
「あの見た目でですか?」
「人は見かけによらないんだぜ?」
「そんなものですかね?」
あの見た目で営業1位だなんて、どんな手を使っているんだろうか?催眠とか?
「単純な話術だからな?汚い手を使っている訳じゃないぞ?」
どうやら怪しんでいるのが顔に出ていたようだ。ホウリさんから訂正が来た。
というか、どんな話術ならあの見た目で営業が出来るんだろうか。ちょっと気になる。
「あと、怪しい奴を見つけるのが目的なんだからな?ナイカムさんばかりに気を取られるなよ?」
「あの人も十分に怪しいと思うんですけどね?」
腑に落ちないながらも、僕は続けて怪しい人が居ないか探してみる。
「あ、あの人なんてどうですか?」
僕はハンチング帽をかぶった中年の男性を指さす。キョロキョロと辺りを見渡して何かを探しているような仕草だ。
「あれは何かを探している仕草です。怪しくないですか?」
「あれはただの強盗だ。裏切者とは違う」
「強盗!?」
これほど『ただの』という形容詞が似合わない言葉もないだろう。というか、なんでホウリさんは強盗を見つけて冷静で言われるのだろうか。
「なんで分かったんですか!?」
「強盗に慣れていない奴は雰囲気で分かる。殺気というか緊張感と言うか、そういった独特の雰囲気がある」
ホウリさんには愚問だったかな。というか、雑談している場合じゃない!
「被害が出る前に早く通報しないと!」
「通報はまだだ。あいつはあくまでも強盗を計画しているだけ。実行しないと現行犯での逮捕はできない」
「じゃあ、誰かが襲われるまで見てろって事ですか?」
「ああ。あいつが危害を加えようとした瞬間に取り抑える。それなら、被害を出さずにあいつを逮捕出来る」
「そうでしたか。てっきり無視するのかと思いました」
「流石に強盗は無視できないだろ。下手したら怪我人が出る」
ホウリさんも被害を出したい訳じゃないみたいだ。そりゃそうか。
「いつ捕まえるんですか?」
「強盗はどこかの店に入るはずだ。入った後を追って、武器を取り出した瞬間に取り抑える。あとは憲兵を呼んできて終わりだ」
「了解です」
強盗の後を追っていって、何処の店に入るのかを注視する。強盗はまだ武器を持っていない。どういう武器を取り出しても良いように、心の準備をしておこう。
背負っている矢筒を確認しつつ、弓に弦が張ってあるか確認する。よし、すぐにでも矢を射れる。武器を出した瞬間に攻撃しよう。
ドキドキとしている胸を抑えつつ、強盗の後を追う。
「……ん?この道は?」
強盗を負っていると、ホウリさんの眉間に皺が寄っていった。
「どうしたんですか?」
「……ちょっと予定が変わるかもしれない」
「どういうことですか?」
僕の質問にホウリさんは答えず、無言で強盗を追っていった。なんとなく殺気が漂っている気がする。
ホウリさんの迫力に押されながら、僕もホウリさんの後に続く。
強盗は目的地を決めているのか、足取りに迷いが無く進んでいく。そして、とある店の前で止まった。
「あの店は?」
「『キャフレ』。オダリムで3本の指に入るスイーツショップだ」
瞬間、ホウリさんから表情が消えた。そして、尋常じゃない程の殺気がホウリさんから漏れ出てくる。
「ホウリさん!?そんなに殺気を出したら強盗にバレますよ!?」
声を抑えてホウリさんに話しかけると、感情の無い顔が僕に向けられてきた。
「お前はここで待ってろ」
「え?僕も行きますよ?」
「ここで待ってろ」
ホウリさんの有無を言わさないような迫力に、僕は思わず首を縦に振った。ホウリさんは強盗の後を追ってお店の中に入っていった。
「……強盗の人、運が無かったなぁ」
死にはしないだろうけど、死んだほうがマシだっていう目には合うんだろうなぁ。
そんなことを考えつつ、不自然に静かなスイーツショップを眺めるのだった。
数分後、気絶した強盗を持ってホウリさんはスイーツショップから出て来た。そして、憲兵に突き出すから、1人で裏切者を探して欲しいと言われ、僕はオダリムの街をさまよう事になったのだった。
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