魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百四十二話 君がッ泣くまで殴るのをやめないッ!

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 ロットをボコボコにした後、わしは王都まで戻って来た。
 ロットには砂漠でも使えるテントを与えて、砂漠に放置しておいた。わしの持論なんじゃが、街よりも自然に囲まれていた方が闘志が湧きやすい。闘志を高めて力の解放を速めて貰おうとしよう。
 その分、オダリムの戦力は落ちるが、そこはホウリに何とかしてもらうとしよう。


「ふぅ……少しだけ街をうろつくかするか」


 最近はオダリム、王都、魔国の行き来で休む暇も無かった。それが重要なことじゃとは知っておる。しかし、少しくらいは息抜きは必要じゃろう。


「ノエルに会いたいのう。もう1年は会っていない気分じゃ」


 この時間であれば学校は終わって、下校しておる筈じゃ。
 じゃが、今のノエルは友達の家に泊まっているのであったな。どこの家に泊まっているのか分からんから、会いに行くのも無理じゃな。


「仕方あるまい。劇場に顔でも出すか」


 1カ月も連絡をよこさんのはマズイからのう。そう思いつつ、劇場へと足を向ける。
 瞬間、信じられない光景が目に飛び込んだ。


「あれはノエル?」


 制服を着たノエルが、クラスメイトと共に歩いていた。


「いやー、何とかなって良かったね」
「猫耳と尻尾が生えるなんて、オカルトって本当にあったのね」
『なんか死ぬほど疲れたな』
「私は本物のオカルトが見られて満足だよ!」
「コアコはブレないね」


 クラスメイトと楽しそうにお喋りしておる。というか、猫耳と尻尾?なにかあったんじゃろうか?
 ふむ、話しかけたいが楽しそうなところに水を差すのは気が引けるのう。


「……まあ良いか。お~い!ノエル~!」


 わしが遠くから呼ぶとノエルが振り返る。そして、わしを見つけると花が咲いたような笑顔になった。


「フランお姉ちゃん!」


 ノエルは魔装を使ってわしに突撃してくる。わしは大きく手を広げてノエルを迎える。
 そして、ノエルの突撃を受け止めると、後ろに大きく後ずさりをして威力を殺した。


「久しぶりじゃな」
「うん!久しぶり!会いたかったよ!」
「わしも会いたかったぞ~」


 ノエルを抱きしめると、わしの中の精神力が回復していくのを感じた。やはり、ノエルは生活に必須じゃな。これであと1カ月は持つじゃろう。


『魔王様、お久しぶりです』


 ノエルとの邂逅を楽しんでおると、マカダがわしの元へ来て頭を下げてきた。


『マカダか。人国には慣れたか?』
『はい、魔王様の寛大な措置のお陰でございます』
『それは良かったのう。あと、そこまで堅苦しくならんでよいぞ』
『かしこまりました』


 わしの言葉でマカダが顔を上げる。じゃが、その表情にはまだ緊張が含まれておった。王の前で緊張するなと言われても無理な話か。


「あなたがノエルの言っていた『フランお姉ちゃん』ですね?」


 マカダと話しておると、残りのクラスメイトもこちらにやってきた。


「お主らは?」
「私はサルミ。ノエルのクラスメイトです」
「私はコアコです」
「僕はパンプ。よろしくお願いいたします」
「よろしくのう」


 ノエルの話で何度か聞いた名じゃな。ということは、こやつらがオカルト研究クラブか。


「いつもノエルと仲良くしてくれてありがとのう」
「毎日苦労してますよけどね」
「でもノエルちゃんといると退屈しないよね」
「だね」
「ふふん、でしょ?」
『褒めてるのか?』
「え?褒めてないの?」


 皆の言葉にノエルは小首をかしげる。
 そんなやり取りを見ながらわしは微笑ましく思う。どうやら、クラスメイトとの関係性は良好のようじゃな。


「それにしても、ノエルからは鬼のように強い人って聞いてたんですけど、意外と普通ですね?」
「鬼のように強いじゃと?」
「サルミ!その言い方は失礼なんじゃ───」
「照れるではないか」
「照れてる!?」


 そうか、ノエルからは鬼のように強いと思われておるのか。嬉しい評価じゃな。


「そうだ!せっかく会ったんだし特訓しない?」
「わしはに良いが、今は他の家に泊まっているんじゃろ?時間も遅いし迷惑ではないか?」


 あと1時間ほどで日が落ちる。ただでさえ泊めて貰っているのに、暗くなっての帰宅は迷惑じゃろう。
 そう思っていると、サルミと呼ばれた子が口を開いた。


「私は別に良いわよ」
「良いの?」
「ええ。警備に話は通しておくから、用が済んだら帰って来なさい」
「オッケー!」
「話は決まったようじゃな。場所はスターダストの家で良いか?」
「うん!みんな、また明日ね!」
「またね」
『また明日』
「またね」


 ノエルはオカルト研究クラブの皆と手を振って別れた。


「では行くとするか」
「うん!」


☆   ☆   ☆   ☆


 スターダストの家についたわしらは早速戦闘の準備をした。
 と言っても、わしは庭に認識阻害の結界を張るだけじゃがな。


「遅くなっても良いとは言われたが、遅くなりすぎるのも迷惑じゃろう。特訓は30分だけじゃが良いな?」
「うん!30分だけなら全力で戦えるしね!」


 ノエルの魔装は体力を大きく消耗する。じゃから、短時間の特訓しか出来んのならば、全力を出すほうが効率が良い。


「わしはいつでも良いからな。ノエルの都合の良い時に始めてくれ」
「オッケー」


 ノエルはナイフを2本取り出して両手に構える。今回はナイフ主体で戦うつもりか。どのくらい強くなっているのか楽しみじゃな。


「行っくよー!魔装!」


 ノエルからあふれ出したMPが体中に凝縮されていく。そして、ノエルは地面を蹴り、目にも止まらぬ速さで突進してきた。


「双牙突!」


 突進の勢いを利用して、ノエルが両手のナイフを突き立てて来る。


「中々良いが、直線的すぎるぞ!」


 ナイフの腹を指で挟んで双牙突を止める。


「まだまだ!」


 ノエルはナイフから手を離して拳を握る。武器を手放したか、判断が早いのう。それとも、わざとナイフを受け止めさせたか?どちらにせよ、戦いに慣れて来たようじゃな。


「ショートスクリュー!」


 ノエルが拳を捻って、勢いよく突き出してくる。
 わしはナイフを離してノエルの拳を受け止める。


「威力が前よりも上がっているのう。よく頑張ったのう」
「ありがと……ね!」


 拳を受け止めたわしの腕を取って、一本背負いで思いっきり投げ飛ばしてきた。
 わしはノエルにされるがまま空中を舞う。


「煌めきの槍!」


 地面に落下するわしに向かって、ノエルが突っ込んでくる。そして、胸元に目掛けて抜き手を放ってきた。
 落下中に攻撃することで、相手の回避を制限してきたか。良い手じゃな。


「じゃが甘い!」


 ノエルの抜き手を白刃取りの要領で受け止める。そして、体を回転させてノエルの腕を捻り上げる。


「うわっ!?」


 ノエルは咄嗟に地面を蹴って、捻られた腕ごと体を回転させる。
 じゃが、体勢を整えることは出来ず、肩で地面に着地する。


「くっ……」


 魔装でダメージは受けていないみたいじゃが、明確な隙をさらすことになった。そこでわしはノエルの胸元に目掛けて蹴りを繰り出す。


「うわっ!?」


 ノエルは腕で防御するが、大きく吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。あれでは無傷という訳にはいかんじゃろう。


「くうう……セイントヒール!」

 ノエルは立ち上がってセイントヒールでダメージを回復させる。じゃが、今のノエルは魔装を解除せんとセイントヒールが使えん。つまり、セイントヒールを使うのは隙をさらすことにもなる。


「つまり、攻め立てられると弱い!」


 わしはノエルに向かって接近し拳を繰り出す。わしの拳がノエルの胸元に命中する、そう思った瞬間、ノエルの目がキラリと光った。


「流水の定め!」


 ノエルがわしの拳を受け流して、懐に潜り込んできた。魔装を使わずに攻撃をしのいだか。魔装だけではなく、戦闘の技術も高くなったみたいじゃな。
 懐に潜り込んだノエルは足を振りかぶった。


「レインボーキック、青紫!」


 足に魔装を集中させた蹴りが、音速を越えんばかりの速さでわしの顔に繰り出される。
 回避をしようとするが、拳を振り切っており回避できる体勢ではない。避けきれん!
 無防備なわしの顔面にノエルの蹴りが綺麗に入った。


「……見事じゃ」
「ふふん、でしょ?」


 ノエルが後ろに跳んで、わしと距離を取る。良いのが入っても、倒しきれんかったから距離を取ったか。油断もしていないようじゃな。


「さっきの蹴りは新しい必殺技か」
「うん!魔装の破壊力と、鞭のような速さを掛け合わせた技だよ!」
「中々良かったぞ」
「でも、フランお姉ちゃんには効かなかったしなぁ……」
「そんなこと無いぞ?1ダメージは入った」
「え?ほんと?」


 わしが頷くとノエルが飛んで喜んだ。実際、嘘でもなんでもなくわしにダメージは入っておる。スキルを使っていないとはいえ、わしにダメージを与えるのは大したものじゃ。


「やったー!ついにフランお姉ちゃんにダメージを与えられた!」
「じゃが、特訓は終わっておらんぞ。今の感じを忘れずに戦うんじゃ」
「はーい!


 こうして、わしらは日が暮れるまで特訓をしたのじゃった。
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