魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百五十四話 光指す道となれ!

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「退いて下さーい!」


 僕は街中をバイクで爆走しながら、僕は道行く人に叫ぶ。
 今は深夜ということもあり人通りは少ないけど、絶対にいない訳じゃない。比較的に人通りの少ない道を選んでいるとはいえ、叫んで僕の存在を知らせないと事故が起こるかもしれない。
 そのおかげか偶に人が居ても道の端に寄ってくれている。これなら、すぐにでも時計台につくだろう。
 バイクのアクセルを前回にして、オダリムの道を爆走する。右に左に道を進んでいき、時計台を必死に目指す。
 そして、十数分の爆走でオダリムの中心にある時計台までたどり着けた。


「よし」


 時計台の傍にバイクを止めると、白衣を着たラミスさんがやってきた。


「ラミスさん!お久しぶりです!」
「久しぶりね。ロワ君も元気だった?」
「おかげ様で元気にやってます」


 ラミスさんはミントさんの奥さんだ。ホウリさんのお陰で結婚できたらしく、お二人ともホウリさんに感謝しているらしい。


「もしかして、ラミスさんがサポートを?」
「その通り。早速だけど時計台へと急ぎましょう。時間が無いわ」
「分かりました」


 ラミスさんに案内されるまま、僕は時計台の中へと入る。
 時計台の中は薄暗く、真ん中が円柱状の金網があり、その中に歯車やシャフトなどの部品が回っているのが辛うじて見える。


「あれが時計の部品ですか?」
「そうね。今明かりをつけるから待っててね」


 ラミスさんが壁のスイッチを押すと、時計台の中が明るくなった。光源は見当たらないけど、昼間のように明るい。これもミントさんの発明品なんだろうか。


「説明は時計台に上りながら行うわね」
「分かりました。お願いします」


 そういえば、この時計台で何をするのか全く知らない。切札があるって聞いてたけど、何をするつもりなんだろうか?
 スミルさんは壁沿いに設置されている螺旋階段を上り始める。僕もスミルさんの後に続きながら、切札に説明を受ける。


「この時計台はミントの手で高火力の兵器として改造したの。ロワさんにはその兵器の射手を担って欲しいの」
「高火力の兵器?」
「サンドの街で密かに製造されてた大規模兵器は知ってるわね?」
「王都を破壊しようとしてたアレですね」


 ノエルちゃんがサンドの領主から狙われていた理由の兵器だったよね。確かMPを発射する装置で、MPが大量に必要な代わりに、超遠距離から王都を破壊できる光線が発射できるんだっけ。


「アレは元を正せばミントが発明したものなの」
「そうだったんですか」


 細かいことは聞いてなかったけど、あの兵器ってミントさんが発明したものだったんだ。


「そう言う訳で、この時計台をあの兵器に改造したのよ」
「待ってください、どういう訳ですか」


 今までの説明と時計台が改造された理由が全く結びつかない。


「なんで時計台を改造したんですか?普通に兵器を作るんじゃダメなんですか?」
「1から作るには時間が足りなかったのよ。だから、オダリムで一番高い時計台を兵器として改造することにしたの」
「ですけど、この時計台はオダリムの皆さんの象徴なんですよね?改造するってなったら反対意見が出る気がしますけど?」
「反対意見なんて無いわよ。住人には改造するって公開してないし」
「それはどうなんですか!?」


 隠れて改造してたなんて大バッシングを受けるのは容易に想像できる。せめて説明くらいはするべきじゃないだろうか。


「下手に反対されて建設が遅れる方が致命的なんだって。今回は速さが勝負だから、こういう手を取ったって言ってたわよ」
「言ったのはホウリさんですか?ミントさんですか?」
「どっちもよ。まあ、全部終わったら元に戻すし問題は無いんじゃない?」


 ラミスさんがあっけらかんと言い放つ。その様子を見て、僕は何も追及できなくなった。
 いつものホウリさんなら、改造を公表しても反対意見が出ないように立ち回れただろう。けど、反対意見をどうにかするだけの余裕も無かったんだ。
 思っていたよりも状況は切羽詰まってるみたいだ。


「ちなみに、この兵器はどのくらいで改造が完了したんですか?」
「2週間ね」
「短くないですか!?」
「既にできていた部品を時計台に組み込んでいくだけだったから、そこまで大層なことじゃないのよ。壁とかに配線とかがむき出しでしょ?すぐに使えることを優先したから、見栄えとかが犠牲になってるわ」


 スミルさんの言う通り、壁には配線とか部品とかが乱雑に接着されている。これが発射装置の機構なんだ。
 配線はビスで打ち止め、部品はむき出しで接着、お世辞にも丁寧だとは言えない。


「だから、部品とかにはあまり触らないでね。部品の保護も最低限だから、ちょっとの衝撃でも壊れかねないわ」
「わ!分かりました!」


 僕は部品の伸ばしていた手を引っ込める。危ない危ない、欲望に負けて触るところだった。
 そんな事を話していると、僕らは時計台の頂上へとたどり着いた。


「ふう、一番高い建物だけあって登るのも一苦労ね」
「お疲れ様です」
「ロワ君は元気そうね。流石は騎士団ね」
「ありがとうございます。ですが、頂上は真っ暗なんですね?」


 階段は明るかったけど頂上は真っ暗だ。階段から漏れている明かりで少しだけ見えるけど、何があるのか明確には分からない。


「危ないからそのまま動かないで待っててね」


 ラミスさんが時計台の中心に向かって歩き、何かを操作する。すると、壁から何かが動くような音がした。


「なんですか!?」


 僕が目を見開いて固まっていると、全方向の壁が下がっていきオダリムの街が見えるようになった。


「えええええええ!?」
「驚いてくれたようで何よりだわ」
「なんですかコレ!?これも改造ですか!?」


 恐る恐る時計台の中からオダリムの街を覗き込んでみる。まさか壁が取り払われるとは思っていなかった。
 頂上の中心には太い柱が通っている。これで屋根を支えてるんだ。


「これはこの時計台の機能よ。なんでもこの時計台から色んな出し物をして、下から眺めるのが名物らしいわよ?」
「そんなことがあるんですか……」


 オダリムには色んな名物があるなぁ。そんな呑気なことを考えていると、背後から強烈な光を感じた。
 振り向いてみると遠くでカスケットが雷装したホウリさんとノエルちゃんと戦っているところだった。


「そうだ!切札!早く切札を使わないと!」


 外からの月明りで時計台の頂上も見えるようになっている。僕は急いで切札である兵器を探す。


「どれが兵器ですか!?」
「落ち着いて。これがMP発射装置よ」


 ラミスさんが大砲のような魔道具に手を置く。


「これがMP発射装置ですか」


 MP発射装置の左右には取っ手が付いていて、親指で押せるところにボタンが付いている。


「右のボタンを押すことでMPをチャージ、左のボタンでMPを発射することが出来るわ」
「それは良いんですが、これはどうやって狙いを付けるんですか?」


 カスケットの位置を12時とすると、MP発射装置は9時の方向を向いている。
 MP発射装置は地面にくっついている。上下左右に傾けることは出来るけど、カスケットに狙いを付けるまでの射角は無い。


「装置の下にあるレバーを上げると、レールが動くようになっているわ。それで標的まで狙いを付けて」
「レール?」


 よく見てみると、大砲の下はレールになっている。レールは頂上の床の周りを囲うように配置されている。このレールを使えば360°全てに狙いを付けることが出来そうだ。


「レバーはこれか」


 MP発射装置の下についているレバーを下げると、装置が動くようになったのかな。
 体を使って押すことで、MP発射装置が動き始めた。


「お、重いですね?」
「高威力の兵器なので、それなりに重いわよ。それでも動かせるまで軽量化したんだからね」
「軽量化してこれですか」


 僕はそこまで攻撃力が高い方じゃないから、死ぬほど大変だ。
 やっとの思いでカスケットの方向にMP発射装置を移動させた。


「ぜぇぜぇ、もう二度とやりたくない……」


 息を整えつつ、僕は取っ手を握る。
 さて、反撃開始と行こうか!
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