魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
416 / 472

第三百五十三話 オラに元気を分けてくれ

しおりを挟む
 カスケットの頭上の巨大な球体を見ながら、僕らは呆然としていた。


「あんなのどうすれば良いんでしょうか?」
「分からないが、防げなければオダリムが終わることは確実だろう」
「そうだ!フランさんに任せましょう!」


 王都としては魔国に借りを作りたくないんだろうけど、オダリムが崩壊するよりはマシだろう。それどころか、ここでカスケットを倒さないと他の街も危ないかもしれない。フランさんに全て解決してもらった方がマシだろう。


「今から探しましょう!」
「そうだな!私はここの近辺を探す!」
「僕はワープアローを使って、遠くを探してみます!」
「無駄だ」


 僕たちがフランさんを探そうとしたら、後ろから気だるそうに声を掛けられた。
 振り返ると、去った筈のミントさんが梯子で壁に上ってきていたところだった。


「ミントさん?寝ている筈では?」
「こんな非常事態に寝ている訳にはいかないだろう」
「そんな事よりも無駄だというのはどういう事だ?」


 小瓶に入っている怪しげな薬を飲んでいるミントさんにミエルさんが質問する。


「フランはオダリムの森にいる筈だ。この後は魔国に行く予定だから、街の中を探しても無駄だ」
「そんな……なんとかフランさんと連絡を取る手段は無いんですか?」
「さっき報告を受けたのだが、魔国でも敵の進行が激しくなっているようだ。オダリムを助けるのは厳しいだろうな」
「どんな敵でもフランさんなら瞬殺できるのでは?」
「相手はアンシャントドラゴン。しかも、4体もいて無限に回復してくるらしい」
「はぁ?なんだそれ?」
「詳しい事は後だ。それよりも……」


 ミントさんは空を見上げて疲れた目でカスケットを見る。


「あいつを何とかする方法を考えるのが先決だろう」
「そうでした!」


 良く分からないけどフランさんに頼れないんだったら、僕達でなんとかするしかない。
 僕達が話している間にもカスケットの頭上の光の玉は大きくなっている。


「ですが、あんなのどうやって防ぐんですか!?」
『審判の時だ』


 カスケットがゆっくり手を振り下ろす。すると、光の玉がゆっくりとオダリムに向かって落下してきた。
 光の玉はオダリムを覆いつくすほどの大きくなっている。全力のトリシューラを放っても相殺できないだろう。


「くっ……こうなったら!」


 ミエルさんが眼を金色に光らせて、空に手を掲げる。


「シン・プロフェクションガード!」


 瞬間、空を覆う程の巨大な白い盾がオダリムの上空に現れた。ミエルさんのシン・プロフェクションガードだ。


「これであいつに返してやる!」


 光の玉がゆっくりと落下してきて、白い盾と接触する。


「うおおおおおおお!」


 ミエルさんの雄たけびと共に白い盾は火花を上げながら光の玉を受け止める。
 そして、光の玉は白い盾に跳ね返されて、カスケットに向かって飛んでいく。


『なんだと?』


 カスケットの驚愕の声が聞こえる。そして、カスケットは周りにバリアを展開して、光の玉を受け止めようとする。
 バリアは光の玉を受け止めると徐々にひび割れていく。そして、バリアは光の玉を防ぎきると同時に粉々に砕け散った。


『くっ!』
「チャンスです!トリシューラで追撃します!」


 トリシューラを取り出して、MPを込めようと試みる。瞬間、傍でドサリという何かが倒れる音がした。
 思わず音がした方を向くと、ミエルさんが大粒の汗を流しつつ膝を付いていた。


「ミエルさん!」
「だ、大丈夫だ」
「大丈夫じゃないですよね!?シン・プロフェクションガードで体力を使い切ったんですか!?」


 ミエルさんが力なく頷く。シン・プロフェクションガードは大きく体力と集中力を消耗するスキルだ。訓練して使えるようになったとはいえ、あれだけ大きな盾を作ったんだ。立てなくなるのも無理はない。


「ミエルさんは休んでてください。あとは僕が何とかします」
「……私も少し休んだら戦う。それまでは任せたぞ」


 ミエルさんは肩で息をしながら、そのまま目を閉じた。無理に戦おうとしないのは流石は騎士団長だ。
 体力を効率よく回復させる訓練もしてるみたいだけど、今回の消耗はかなり大きい。僕が戦わないと。


「だけど、僕の力だとカスケットを倒しきれないかもしれない。何か方法を考えないと……」
「対抗策ならあるぞ」
「本当ですか!?」
「ああ。ホウリに言われて準備していた魔道具がある。いざという時にはロワに使わせるように言われていた」
「その魔道具はどこに?」
『くそが!調子に乗るなよ!』


 希望が見えかけた瞬間にカスケットが叫ぶ。どうやら、もう衝撃から立ち直ったらしい。


「時間が無い。今すぐに時計台に向かってくれ」
「分かりました。ですが、時計塔に付くまでにカスケットが待っていてくれるでしょうか?」
『こんな街なんて叩き潰してやる!』


 案の定、カスケットは巨大な手を振り上げた。光の玉なんて無くても、あんな巨大な腕を振り下ろされたら街が破壊されてしまう。トリシューラで応戦しても、MPが足りなくて2回目は防ぐことが出来ない。


「ミエルさんはまだ戦えないし、あれを防ぐ手段が乏しい……」


 なんとかしてカスケットの動きを止めないと、被害が大きくなる。何か使えそうな矢は無かったかな。
 必死に持っている矢を思い出している間にも、カスケットは腕を振り下ろそうとしている。


「くっ……こうなったら……」


 トリシューラにMPを込めようとした瞬間、カスケットが振り下ろした腕が大きく弾かれた。


「なんだ?何が起こった?」
「腕が弾かれた時に電撃が走っていたような?」


 カスケットの体が次々と電撃と共に衝撃が走る。


『うぜえんだよ!』


 カスケットは腕を振り回すが、電撃による衝撃は止まらない。よく見てみると、電撃が走る瞬間にフードを被った人がカスケットを殴り飛ばしているのが、辛うじて見えた。


「そうか。雷装で物凄い速さで動いているんだ」
「そんなことが出来る奴がいるのか?あの速さで動くとなると、かなりのMPが必要だぞ?並みのMPだと数秒で動けなくなるぞ?」


 ミントさんの言う通り、あの速さで動きであの質量のカスケットを弾くとなると、かなりのMPを消費する。それこそ無限に近いMPがないと、あんなことは出来ないだろう。
 ……あれってホウリさんとノエルちゃんだよね?


「………………」
「どうした?」
「いえ。なんでも無いです。僕達は時計台に急ぎましょう」
「そうだな。誰か分からないが、抑えてくれるのはありがたい」


 僕は曖昧に微笑みながら傍にいるミエルさんに話しかける。


「ミエルさん、僕らは時計台に行ってきます。ノエルさんも回復したら来てくださいね」
「……分かった」


 僕は壁についている梯子に手を掛けて、一気に下に降りる。ノエルちゃんのことはあまり話さない方がいいだろうし、このまま知らないふりをしてた方が良いよね。
 下に降りると、ミントさんがテントの中に入っていった。


「どうしたんですか?」
「時計台までは徒歩だと一時間はかかる。こいつを使ってくれ」


 そう言うと、ミントさんがテントの中からバイクを持って来た。前に乗ったものとは違って4輪じゃなくて2輪だ。
 だけど、問題はそこじゃない。


「バイクで街の中を移動するんですか!?」
「緊急事態だ、許されるだろう」
「そうですけど……」
「今の時間は人通りも少ない。道を選べば問題はないだろう」
「万が一にでも人を轢いたらどうするんですか!?」
「轢かないように頑張ってくれ」


 そう言って、ミントさんが強引にバイクを押し付けてくる。はぁ、仕方ないな。


「分かりましたよ。時間も無いですしね」
「聞き分けの良い奴は嫌いじゃない。魔道具については時計台にいる技術者に聞いてくれ。俺はやることがある」
「分かりました」


 僕はヘルメットをかぶってバイクに跨る。そして、夜の街にバイクで走り出したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

処理中です...