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第5章・ゴブリン・デスマーチ
ゴブリンキングの力
しおりを挟む兵士五千人と、冒険者五百人――相手はたった三体のゴブリンで、数で圧倒的に勝っていたはずだった。
だが、残ったゴブリン三体に向かって突撃した十数分後、ゴブリンキングが天に向かって雄叫びを上げただけで、オブルリヒト兵の半数は腰を抜かしてしまった。
冒険者の方も同じように腰を抜かしたものも居たが、そこは冒険者としての場数を踏んでいるからだろう、すぐに立ち直った。
だが、ひるんだ人間たちの隙を逃さず、三体のゴブリンたちの攻撃が始まった。
「ひるむな! 体制を整えるのだ!」
「そうよ! しっかりしなさい! ファイヤーボール!」
「ウインドボール!」
ジュンが再びファイヤーボールを放つと、ジュニアスもウインドウォールを放ち、炎の壁は激しく燃えながら、ゴブリンキングへと迫る。
「ジュニアス様と戦女神の魔法だ!」
「そうだ! ルリアルーク王と、矛の聖女様が居る! 俺たちが負けるはずがない!」
ジュニアスとジュンの姿を見たオブルリヒト兵は、希望を胸に再び立ち上がった。
だが、ジュニアスとジュンの放った炎の壁の合成魔法は、ゴブリンキングが腕を一振りしただけで起きた風で消えてしまい、その衝撃で再び立ち上がった兵士たちは吹き飛ばされ、ジュニアスとジュンも地面に転がる。
「どうして? 私のファイヤーボールが効かないっていうの? そんなはずない! そんなはずないわ!」
立ち上がったジュンが怒りに燃えながら、再びゴブリンキングに向かってファイヤーボールを放つ。
だがそれも、ゴブリンキングが腕を振るっただけで起きた風で消えてしまい、ジュニアスとジュンは再び地面に転がった。
一体どうしてだとジュニアスは思う。
だが、考えられるのは一つだけだった。
「ちょっと! どうなっているのよ! あんた、ルリアルーク王って強い奴なんでしょ! 早くあいつを何とかしなさいよ!」
ジュンに怒鳴られたジュニアスは、近くに居たノートンを振り返った。
この戦いの映像はノートンの通信魔法によって、全世界に届けられているはずだった。
ただ腕を振るっただけの風に吹き飛ばされ、地面に転がる無様な姿を見られるわけにはいかなかった。
「ジュニアス様、通信魔法は、吹き飛ばされた衝撃で切れております」
「そうかっ」
ノートンの報告を聞いて、ほっとするジュニアス。
だが、この無様な姿が世界に向けて配信されていないだけで、他は何も変わらなかった。
五千人の兵士が居ようとも、ゴブリンキングに勝つことはできない――ジュニアスは早々に悟っていた。
「撤退だ」
小さく呟くように言うと、ノートンが頷く。
それを見ていたジュンも、勝ち目はないと思ったらしく、「仕方ないわね」と頷いた。
「兵士たちよ! ジュニアス様は体制を立て直すために、一度王宮に戻られる! お前たちがゴブリンキングと戦い、ジュニアス様の時間を稼ぐのだ! 戦えない者は、ジュニアス様をお守りしろ! ジュニアス様の盾になるのだ!」
ノートンの命令を聞いた兵士に動揺が走る。
さらにノートンは、ゴブリンジェネラルと戦っている冒険者に、こう言い放った。
「冒険者どもは、早くゴブリンジェネラルを倒し、ゴブリンキング討伐の援護に回れ!」
と――。
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