異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第3章・冒険者デビュー

彼はまだ戻らない

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 ユリウスは何故戻って来ないのだろう。
 そもそも、危ないのならユリウスがサーチートを連れて、テレポートの呪文で戻ってくればいいのに。
 だけど、ユリウスは私にサーチートを召喚させて、サーチートだけをこちらに戻した。
 そりゃあ、ゴブリンホイホイのサーチートがいなくなれば、ゴブリンはいつか途切れるだろうけど、ホブゴブリンとかいう体の大きなゴブリンまで出てきているのなら、一人では絶対に危険だと思う。
 もしかしてユリウスは、最初からサーチートだけこちらに戻して、自分はネーデの森に残るつもりだったの?
 それなら、サーチートが助けてって言ってきた時に、私にサーチートを召喚して呼び戻してやってくれって言った意味もわかる。
 あの時、何か変だって思ったんだよね。
 どうしてユリウスの考えている事に、気づけなかったんだろう。

「ユリウス……」

 ユリウスを助けに行こう。私はそう思った。だけど、

「オリエさん、行っては行けません!」

 と私の腕を掴み、アルバトスさんが言う。

「オリエさん、ユリウスはきっと大丈夫ですから、ここで待っていてあげてください」

「でもっ……」

「ユリウスが心配な気持ちは、わかります。だけど、今ユリウスが居る場所、あなたにはわからないでしょう? 今日はいつもと違う場所からネーデの森に入ると言っていたはずですし、あなたがユリウスを見つけられる確率は低いです。それに、あなたはユリウスにここに居てほしいと言われていたのではないですか?」

「それは、そうなんですけど……」

「では、待っていてあげてください。ユリウスは大丈夫です。今のあの子は、多分、あなたが考えているよりも、ずっと強いですから」

「アルバトスさんは、ユリウスがサーチートだけを戻して、一人残ろうとしている事を、知っていたんですか?」

 私の問いに、アルバトスさんは、えぇ、と頷いた。

「おそらくそうするつもりなのだろうとは、思っていました。目に見える範囲のゴブリンだけでも、倒そうと考えるだろうと」

「でも、ホブゴブリンとかいう、大きなゴブリンも居るって言ってたじゃないですか。ユリウスは一人なんですよ? アルバトスさんは、心配じゃないんですか?」

「もちろん、心配ですよ。だけど同時に、私は今のユリウスの強さも信じているのです。多分今のユリウスは、私たちの想像以上の力を持っています。だから、オリエさんもあの子を信じて待っていてあげてください」

 アルバトスさんにここまで言われたら、頷くしかないような気がした。
 本当は心配でたまらないけれど。

「オリエちゃん、ユリウスくんは強いよ。だから、アルバトス先生の言葉を信じて、一緒に待とう。大丈夫だよ、ユリウスくんは、きっとすぐに戻ってきてくれるよ」

「うん、そうだね」

 小さな黒い目を潤ませたサーチートが、私の頬に小さな手を触れて、一生懸命に慰めようとしてくれた。

 だけどユリウスはなかなか戻って来てくれなくて――彼が戻って来たのは、サーチートが戻って来てから五時間近く経ってからだった。


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