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家族の優しさが嬉しくて
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「それでも、身を立てることはできるし、誰かの役に立つ事はできると思うんだ」
「ルキノ……」
母さんはなおも心配そうに涙をぬぐっているけれど、父さんは何かを考えるように黙り込んだ。
僅かな時間のあと、父さんがゆっくりと口を開く。
「ルキノの考えはよく分かった」
珍しくオレの顔をまっすぐに見つめてくれるけど、その目が思いのほか優しくてびっくりした。
「まずはルキノの言うように、俺は引き続き護衛として受け入れてくれる御仁を探すとしよう」
「ありがとう!」
「もし相手が見つからなかった場合の事は、またアカデミーの卒業が近くなった時に改めて話そう。俺は冒険者も悪くないと思うが、今の時点で決めるのは早すぎるかも知れない」
「うん……」
「しかし、ルキノは強いな。俺がどうしたらいいかと右往左往して、どう声をかけたらいいのかと迷っているうちに、自分で前を向いて将来を考えるようになっていたんだな」
父さんのおっきな手の平が、オレの頭を優しく撫でる。
そんなのちびっ子の頃以来で、不覚にもちょっと涙が出そうになった。
「すごく親身になってくれた人がいて……いつまでも現実逃避してるわけにもいかないな、と思ったんだ」
「そうか、友達か?」
「うん……友達って言うか、すごく尊敬してる人」
「良かったな。本当に悩んでいるときに心の支えになってくれる人は貴重だ。大切にしなさい」
「うん……!」
父さんに励まされ、母さんにまたぎゅっと抱きしめられ、オレはちょっと安心して自室へと戻る。
自室に入ろうとしたところでマルセロが走ってきて、オレにホットミルクを渡してくれた。
優しくて気の利くマルセロは、本当は文官になりたかったんだって知ってる。
オレがこんなことになったもんだから、アカデミーでは騎士科に進もうか迷ってるらしくて、オレはなんだか申し訳ない気持ちもあるんだ。オレも人生変わったけど、家族も充分に人生変わっちゃったんだよな……。
「ありがとな。なんか甘い匂いがするけど、蜂蜜も入ってる?」
「うん。少し甘い方が良いかなと思って。……あのさ、兄ちゃん。僕にできる事があったら何でも言ってね」
健気なことを言ってくれる優しい弟に、申し訳ないやら嬉しいやらだ。
「あと、時間があるときで良いから、剣の稽古をつけてくれると嬉しい」
恥ずかしそうに笑う顔は愛嬌たっぷりだ。
マルセロだって変わってしまった未来への道に、ちゃんと真摯に向き合ってる。
オレもそうありたい。
素直にそう思った。
「でね! あのお方が優しすぎてさ、オレはもう絶対にあのお方が幸せになれるように頑張ろうって思ったんだよね」
翌日。
家族と腹を割って話せてスッキリしたおかげか、オレの舌はもう絶好調だった。
よく眠れたし、きっとそのうちいいことあるさなんて、なんだかすごく前向きな気持ちになれている。それもこれもアルロード様のおかげだ。
アルロード様を崇める言葉にも力が入るってもんだろう。
「ふぅん。それだけ親身になってくれるなら、結婚しちまえば良いじゃないか。好きなんだろ?」
事もなげにドルフが言うけど、そんなわけにいくかよ。
「分かってないなぁ。オレはあのお方が愛する人と幸せになるところを陰ながら応援したいんだ。あれだけ優しくて思いやりに溢れた方だから、きっとあのお方を笑顔にしてくれる、素敵な人と出会える筈だと思うんだ」
「はいはい」
「やあ、ルキノは今日も元気だね」
オレがドルフを相手に昨日のアルロード様の御心ばえを力説していたら、アルロード様が現われた。
今日も輝く笑顔が美しい……!
と思ったら。
なんだかいつもよりも元気がない。というか、目の下にクマが……?
「アルロード様、もしかしてゆうべ、眠れませんでした……?」
「えっ、いや、そんな」
「目の下にクマがあるし、いつもより疲れてる感じがします。もしかして、オレが心配かけちゃったから……?」
「いや、違うんだ。ちょっと考えたいことがあって……ルキノのせいではないよ」
そっか、そりゃそうだ。オレなんかの事で眠れないほど悩むなんてある筈ないもんね。ていうかそんな事があったらオレは自分が許せないだろう。
アルロード様が何に悩んでいるのかは分からないけれど、少しでも健やかに過ごして欲しい。
「そうだ。これ、もし良かったら使ってください」
オレは手持ちの香り瓶を手渡してみる。
「これは……?」
「なんか、リラックス効果があるらしいです。眠る前に使うとよく眠れるって聞いたから、オレも時々使ってて」
「ありがとう、今夜早速使ってみるよ」
そう言ってアルロード様は嬉しそうに笑ってくれたあと、ふと心配そうな顔でオレを見た。
「ルキノも眠れない夜が沢山あるんだね」
しまった……!
また心配させてしまったのか。困ったオレは慌てて昨夜の話をした。
「あ、でもこれからは大丈夫です。ゆうべ今後の事について家族とも話せましたし! アルロード様のおかげです。ありがとうございました!」
「そうか、良かった……」
ホッとしたようにアルロード様が微笑んでくれたから、オレも心底安心する。
やっぱりアルロード様にはいつだって笑っていて欲しい。改めてそう思った。
「ルキノ……」
母さんはなおも心配そうに涙をぬぐっているけれど、父さんは何かを考えるように黙り込んだ。
僅かな時間のあと、父さんがゆっくりと口を開く。
「ルキノの考えはよく分かった」
珍しくオレの顔をまっすぐに見つめてくれるけど、その目が思いのほか優しくてびっくりした。
「まずはルキノの言うように、俺は引き続き護衛として受け入れてくれる御仁を探すとしよう」
「ありがとう!」
「もし相手が見つからなかった場合の事は、またアカデミーの卒業が近くなった時に改めて話そう。俺は冒険者も悪くないと思うが、今の時点で決めるのは早すぎるかも知れない」
「うん……」
「しかし、ルキノは強いな。俺がどうしたらいいかと右往左往して、どう声をかけたらいいのかと迷っているうちに、自分で前を向いて将来を考えるようになっていたんだな」
父さんのおっきな手の平が、オレの頭を優しく撫でる。
そんなのちびっ子の頃以来で、不覚にもちょっと涙が出そうになった。
「すごく親身になってくれた人がいて……いつまでも現実逃避してるわけにもいかないな、と思ったんだ」
「そうか、友達か?」
「うん……友達って言うか、すごく尊敬してる人」
「良かったな。本当に悩んでいるときに心の支えになってくれる人は貴重だ。大切にしなさい」
「うん……!」
父さんに励まされ、母さんにまたぎゅっと抱きしめられ、オレはちょっと安心して自室へと戻る。
自室に入ろうとしたところでマルセロが走ってきて、オレにホットミルクを渡してくれた。
優しくて気の利くマルセロは、本当は文官になりたかったんだって知ってる。
オレがこんなことになったもんだから、アカデミーでは騎士科に進もうか迷ってるらしくて、オレはなんだか申し訳ない気持ちもあるんだ。オレも人生変わったけど、家族も充分に人生変わっちゃったんだよな……。
「ありがとな。なんか甘い匂いがするけど、蜂蜜も入ってる?」
「うん。少し甘い方が良いかなと思って。……あのさ、兄ちゃん。僕にできる事があったら何でも言ってね」
健気なことを言ってくれる優しい弟に、申し訳ないやら嬉しいやらだ。
「あと、時間があるときで良いから、剣の稽古をつけてくれると嬉しい」
恥ずかしそうに笑う顔は愛嬌たっぷりだ。
マルセロだって変わってしまった未来への道に、ちゃんと真摯に向き合ってる。
オレもそうありたい。
素直にそう思った。
「でね! あのお方が優しすぎてさ、オレはもう絶対にあのお方が幸せになれるように頑張ろうって思ったんだよね」
翌日。
家族と腹を割って話せてスッキリしたおかげか、オレの舌はもう絶好調だった。
よく眠れたし、きっとそのうちいいことあるさなんて、なんだかすごく前向きな気持ちになれている。それもこれもアルロード様のおかげだ。
アルロード様を崇める言葉にも力が入るってもんだろう。
「ふぅん。それだけ親身になってくれるなら、結婚しちまえば良いじゃないか。好きなんだろ?」
事もなげにドルフが言うけど、そんなわけにいくかよ。
「分かってないなぁ。オレはあのお方が愛する人と幸せになるところを陰ながら応援したいんだ。あれだけ優しくて思いやりに溢れた方だから、きっとあのお方を笑顔にしてくれる、素敵な人と出会える筈だと思うんだ」
「はいはい」
「やあ、ルキノは今日も元気だね」
オレがドルフを相手に昨日のアルロード様の御心ばえを力説していたら、アルロード様が現われた。
今日も輝く笑顔が美しい……!
と思ったら。
なんだかいつもよりも元気がない。というか、目の下にクマが……?
「アルロード様、もしかしてゆうべ、眠れませんでした……?」
「えっ、いや、そんな」
「目の下にクマがあるし、いつもより疲れてる感じがします。もしかして、オレが心配かけちゃったから……?」
「いや、違うんだ。ちょっと考えたいことがあって……ルキノのせいではないよ」
そっか、そりゃそうだ。オレなんかの事で眠れないほど悩むなんてある筈ないもんね。ていうかそんな事があったらオレは自分が許せないだろう。
アルロード様が何に悩んでいるのかは分からないけれど、少しでも健やかに過ごして欲しい。
「そうだ。これ、もし良かったら使ってください」
オレは手持ちの香り瓶を手渡してみる。
「これは……?」
「なんか、リラックス効果があるらしいです。眠る前に使うとよく眠れるって聞いたから、オレも時々使ってて」
「ありがとう、今夜早速使ってみるよ」
そう言ってアルロード様は嬉しそうに笑ってくれたあと、ふと心配そうな顔でオレを見た。
「ルキノも眠れない夜が沢山あるんだね」
しまった……!
また心配させてしまったのか。困ったオレは慌てて昨夜の話をした。
「あ、でもこれからは大丈夫です。ゆうべ今後の事について家族とも話せましたし! アルロード様のおかげです。ありがとうございました!」
「そうか、良かった……」
ホッとしたようにアルロード様が微笑んでくれたから、オレも心底安心する。
やっぱりアルロード様にはいつだって笑っていて欲しい。改めてそう思った。
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