【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

文字の大きさ
23 / 49

家族の優しさが嬉しくて

しおりを挟む
「それでも、身を立てることはできるし、誰かの役に立つ事はできると思うんだ」

「ルキノ……」

母さんはなおも心配そうに涙をぬぐっているけれど、父さんは何かを考えるように黙り込んだ。

僅かな時間のあと、父さんがゆっくりと口を開く。

「ルキノの考えはよく分かった」

珍しくオレの顔をまっすぐに見つめてくれるけど、その目が思いのほか優しくてびっくりした。

「まずはルキノの言うように、俺は引き続き護衛として受け入れてくれる御仁を探すとしよう」

「ありがとう!」

「もし相手が見つからなかった場合の事は、またアカデミーの卒業が近くなった時に改めて話そう。俺は冒険者も悪くないと思うが、今の時点で決めるのは早すぎるかも知れない」

「うん……」

「しかし、ルキノは強いな。俺がどうしたらいいかと右往左往して、どう声をかけたらいいのかと迷っているうちに、自分で前を向いて将来を考えるようになっていたんだな」

父さんのおっきな手の平が、オレの頭を優しく撫でる。

そんなのちびっ子の頃以来で、不覚にもちょっと涙が出そうになった。

「すごく親身になってくれた人がいて……いつまでも現実逃避してるわけにもいかないな、と思ったんだ」

「そうか、友達か?」

「うん……友達って言うか、すごく尊敬してる人」

「良かったな。本当に悩んでいるときに心の支えになってくれる人は貴重だ。大切にしなさい」

「うん……!」

父さんに励まされ、母さんにまたぎゅっと抱きしめられ、オレはちょっと安心して自室へと戻る。

自室に入ろうとしたところでマルセロが走ってきて、オレにホットミルクを渡してくれた。

優しくて気の利くマルセロは、本当は文官になりたかったんだって知ってる。

オレがこんなことになったもんだから、アカデミーでは騎士科に進もうか迷ってるらしくて、オレはなんだか申し訳ない気持ちもあるんだ。オレも人生変わったけど、家族も充分に人生変わっちゃったんだよな……。

「ありがとな。なんか甘い匂いがするけど、蜂蜜も入ってる?」

「うん。少し甘い方が良いかなと思って。……あのさ、兄ちゃん。僕にできる事があったら何でも言ってね」

健気なことを言ってくれる優しい弟に、申し訳ないやら嬉しいやらだ。

「あと、時間があるときで良いから、剣の稽古をつけてくれると嬉しい」

恥ずかしそうに笑う顔は愛嬌たっぷりだ。

マルセロだって変わってしまった未来への道に、ちゃんと真摯に向き合ってる。

オレもそうありたい。

素直にそう思った。

「でね! あのお方が優しすぎてさ、オレはもう絶対にあのお方が幸せになれるように頑張ろうって思ったんだよね」

翌日。

家族と腹を割って話せてスッキリしたおかげか、オレの舌はもう絶好調だった。

よく眠れたし、きっとそのうちいいことあるさなんて、なんだかすごく前向きな気持ちになれている。それもこれもアルロード様のおかげだ。

アルロード様を崇める言葉にも力が入るってもんだろう。

「ふぅん。それだけ親身になってくれるなら、結婚しちまえば良いじゃないか。好きなんだろ?」

事もなげにドルフが言うけど、そんなわけにいくかよ。

「分かってないなぁ。オレはあのお方が愛する人と幸せになるところを陰ながら応援したいんだ。あれだけ優しくて思いやりに溢れた方だから、きっとあのお方を笑顔にしてくれる、素敵な人と出会える筈だと思うんだ」

「はいはい」

「やあ、ルキノは今日も元気だね」

オレがドルフを相手に昨日のアルロード様の御心ばえを力説していたら、アルロード様が現われた。

今日も輝く笑顔が美しい……!

と思ったら。

なんだかいつもよりも元気がない。というか、目の下にクマが……?

「アルロード様、もしかしてゆうべ、眠れませんでした……?」

「えっ、いや、そんな」

「目の下にクマがあるし、いつもより疲れてる感じがします。もしかして、オレが心配かけちゃったから……?」

「いや、違うんだ。ちょっと考えたいことがあって……ルキノのせいではないよ」

そっか、そりゃそうだ。オレなんかの事で眠れないほど悩むなんてある筈ないもんね。ていうかそんな事があったらオレは自分が許せないだろう。

アルロード様が何に悩んでいるのかは分からないけれど、少しでも健やかに過ごして欲しい。

「そうだ。これ、もし良かったら使ってください」

オレは手持ちの香り瓶を手渡してみる。

「これは……?」

「なんか、リラックス効果があるらしいです。眠る前に使うとよく眠れるって聞いたから、オレも時々使ってて」

「ありがとう、今夜早速使ってみるよ」

そう言ってアルロード様は嬉しそうに笑ってくれたあと、ふと心配そうな顔でオレを見た。

「ルキノも眠れない夜が沢山あるんだね」

しまった……!

また心配させてしまったのか。困ったオレは慌てて昨夜の話をした。

「あ、でもこれからは大丈夫です。ゆうべ今後の事について家族とも話せましたし! アルロード様のおかげです。ありがとうございました!」

「そうか、良かった……」

ホッとしたようにアルロード様が微笑んでくれたから、オレも心底安心する。

やっぱりアルロード様にはいつだって笑っていて欲しい。改めてそう思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶
BL
日本の一般的なサラリーマンである竹内颯太は、会社へ出勤する途中で異世界に召喚されてしまう。 「勇者様! どうかこの世界をお救いください!」 なんと颯太は『勇者』として、この世界に誕生してしまった魔王を倒してほしいと言われたのだ。 始めは勝手に召喚されたことに腹を立て、お前たちで解決しろと突っぱねるも、王太子であるフェリクスに平伏までされ助力を請われる。渋々ではあったが、結局魔王討伐を了承することに。 魔王討伐も無事に成功し、颯太は元の世界へと戻ることになった。 「ソウタ、私の気持ちを受け取ってくれないか? 私はあなたがいてくれるなら、どんなことだってやれる。あなたを幸せにすると誓う。だからどうか、どうか私の気持ちを受け取ってください」 「ごめん。俺はお前の気持ちを受け取れない」 元の世界へ帰る前日、フェリクスに告白される颯太。だが颯太はそれを断り、ひとり元の世界へと戻った。のだが―― 「なんでまた召喚されてんだよぉぉぉぉぉ!!」 『勇者』となった王太子×『勇者』として異世界召喚されたが『賢者』となったサラリーマン ●最終話まで執筆済み。全30話。 ●10話まで1日2話更新(12時と19時)。その後は1日1話更新(19時) ●Rシーンには※印が付いています。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?

めがねあざらし
BL
役立たずと追放されたΩのリオン。 治癒師の家に生まれながら癒しの力もないと見放された彼を拾ったのは、獣人国ザイファルの将軍であり、冷徹と名高い王太子・ガルハルトだった。 だが、彼の傷を“舐めた”瞬間、リオンの秘められた異能が覚醒する。 その力は、獣人たちにとって“聖なる奇跡”。 囲い込まれ、離されず、戸惑いながらも、ガルハルトの腕の中で心は揺れて──偽りの関係が、いつしか嘘では済まなくなっていく。 異能×政治×恋愛。 運命が交錯する王宮オメガバースファンタジー。

処理中です...