【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

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【アルロード視点】僕の『推し』はルキノだ

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「オレがヒートになったら、ドルフがなんとかしてくれますんで。アルロード様は心配しないで」

「……!!!」

胸が締め付けられるような気持ちで目が覚める。

……はあ、と息をついて身を起こした。

もう何度こうして目を覚ましただろう。一晩で何度同じ夢を見て目を覚ませば気が済むのか。

どうやら僕は、今日ルキノに言われたあの言葉が相当悲しかったらしい。

オメガという性差がもとでずいぶんと悩んでいる様子だったというのに、なんとかひねり出した案はことごとく却下されてしまった。

妙案だと思った結婚に至っては「アルロード様だけは絶対にダメ」と強硬に断られる始末だ。

情けなくて悲しかった。

しかも、今後はドルフと一緒じゃないと会わないとまで言われてしまった。

拒絶されたような気もしたし、僕よりもドルフが頼りになるんだとはっきり言われた気持ちになった。

本当ならそれは当たり前だ。彼は僕よりもずっと前からルキノと友人なんだから、より信頼されているのは間違いない。しかもベータだからヒートの影響も受けない。

ルキノの言う事はすべて正論だったのに、それでも僕はショックを受けていた。

僕がルキノのためにやってあげられることは本当にないのか。

ルキノはああ言ったけれど、本当に上位貴族の第二夫人になって護衛として扱われる事が彼の幸せなのだろうか。

彼の幸せは彼にしか分からない。

少なくとも嘘を言っているようには感じなかった。

けれど、それが彼の大切な『あのお方』と今後も会えるかも知れないからだなんて、そんな偶然の幸運を心のよりどころにするのはあまりにも悲しいじゃないか。

彼の希望になりうるのが、そんな確実性のないものであるのが悔しい。

大切にすると誓う僕と結婚するよりも、そんなあるかないかすら分からない幸運を唯一の希望としてどこの誰とも分からない人と結婚する方がいいというのか。

ぐす、と鼻の奥が鳴った。

嫌われてはいないと思う。

ルキノは僕のことが大好きだからこそ、結婚できないと言った。

僕に申し訳ないと思いながら長い人生を生きるのは嫌だ、僕には愛し合う美しいオメガ女性と、最高に幸せな人生を送って欲しい、ちゃんと愛する誰かを探して欲しい。

真剣な目でそんな事を言われてしまうと反論する事もできない。

僕がルキノの幸せを願っているように、ルキノだって僕の幸せを願ってくれた結果なのだろうと思うと、嬉しい気持ちもあった。

ルキノはオメガである事に向き合って、御父君と話し合うと言っていた。

彼はこれまで有耶無耶にしていた事を真剣に考えて、もう行動を起こしたのかも知れない。

自分の人生を、決めてしまったかも知れない。

もしかして、ものすごく悩んで、今頃眠れぬ夜を送っているのかも知れない。

そう思うと心配で、目を閉じてもルキノの顔が思い浮かぶ。

やっと眠れてもさっきみたいにルキノの夢を見て飛び起きてしまうのだから、自分でも重傷だと思う。

結局僕は、かなりの寝不足を抱えたまま登校することとなってしまったのだった。

アカデミーに行ってしまえば朝から色んな人に話しかけられて、少しは気が紛れる。ルキノやドルフとはクラスも違って基本的には別の授業だ。

けれど時々合同演習があって、そんな時にはルキノ達を見る事ができるんだと、ここ数ヶ月で気がついた。

きっとルキノもこうした合同演習で、大切な『あのお方』の姿を目にしているのだろう。

ルキノもドルフも基礎も体幹もしっかりしていて、剣の速度も速い。特にドルフは上背もあるからか一撃が重いようで、相手もなかなか苦戦しているようだ。

対してルキノは剣の軽さをスピードで補っている感がある。力では押し負けるのが分かっているからだろう。ちょこまかとよく動きまわって相手を翻弄している。あれだけ動いて疲れも見せないところを見るに、スタミナも相当あるんだろう。

こんなにも鍛えて、僕の目から見ても将来有望だというのに、オメガだというだけで騎士の道が閉ざされてしまうのか。

暗澹たる気持ちで見ていたら、打ち合いを終えたルキノが僕に気づいて笑ってくれる。

良かった。いつもの笑顔だ。

それだけで僕の気持ちは満たされて、昨夜の悪夢も溶けていくみたいに気持ちが楽になった。

ルキノが笑っていられるならそれでいい。

そう考えて、ふと思い当たる。まるでいつものルキノの言葉みたいだ。

ああ、そうか。

どうやら僕は、ルキノの熱い思いを聞いているうちに『推し』への愛を理解できたらしい。

そして、僕の大切な『推し』はルキノなんだと気がついてしまった。

そう分かってしまうとルキノを見るだけで胸が高鳴る。

なるほど、ルキノは大切な『あのお方』を見る度にこんなに胸がバクバクと踊っていたのか。それは確かに、他の人に打ち明けてこの湧き上がるような衝動をなんとかしたいと思うかもしれない。

けれど、胸の中にそっとしまっておきたくもあるような、不思議な感情だ。

合同演習が終わるまで、僕はそっとルキノを盗み見ては胸の震えるようなざわめきを享受していた。
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