【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

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【ドルフ視点】こんなの、ただの八つ当たりだ

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言ってしまってから、すぐに後悔した。

アルロード様の表情を見ても、この人にルキノを貶めるような意図なんてなかったとはっきり分かる。

ルキノの言う通り善意の塊なのか、それともたった三ヶ月程度の交流で、結婚してもいいと決意するほどルキノの事を気に入ったのか。

どっちにしたって言い過ぎだ。ルキノに頼まれたわけでもないのに……ていうか、むしろルキノは喜んでたっていうのに。

気まずくなって、思わず目を逸らす。口からは勝手に特大のため息が漏れ出ていた。

「……すんません。こんなの、ただの八つ当たりだ」

「八つ当たりって……」

アルロード様が呆然と呟く。

当たり前だ。相当失礼な事を言った。平民の俺が公爵家の子息であるアルロード様にあんな悪意のこもった言葉を投げつければ、相手が相手なら手ひどい報復を受けてもおかしくない。

それに、こんな事アルロード様に言ったなんてルキノに知られたら、思いっきりぶん殴られそうだ。

「本当にすみませんでした」

「待ってくれ!」

謝って逃げようと思ったらとっ捕まった。

さすがにお優しいアルロード様でも、あんなことを言い逃げさせてはくれないらしい。

そう思ったのに。

「どう考えても、昨日僕がルキノに提案した内容を正しく知った上で発言しただろう? 八つ当たりではないはずだ。……僕はやっぱり、ルキノを酷く傷つけてしまったんだろうか」

お優しいアルロード様は、どこまでもお優しいらしい。俺からかけられた辛辣な言葉に怒っていたわけではなく、単純にルキノの事を心配していたのだった。

***

ルキノはむしろ喜んでいたとちゃんと伝えたんだけれど、アルロード様は納得できなかったらしい。

翌日、俺はアカデミーの食堂の奥にある、貴族がよく使う特別な部屋に連れ込まれていた。

「落ち着かないんですけど」

めっちゃ無駄にキラキラしてて本当に落ち着かない。背筋のピシッとしたタキシードの給仕もなんか威圧感あるし、食堂の豪快なおばちゃん達に会いたい。

「食堂で話すには少し込み入った話だからね」

穏やかに微笑むアルロード様はさすがの貫禄だ。給仕が何か囁くと、鷹揚に頷いて軽く目線を送る。

それだけで何か伝わったのか、給仕は手早く食事を並べて音もなく去って行った。

目の前にはとんでもなく豪華なフルコース。

いったい何品あるんだか分かんねぇし、ナイフやフォークも大量に並んでて途方に暮れる。

「俺、テーブルマナーとか分かんねぇんですけど」

「他に人はいないんだし、好きに食べていいよ」

じゃあ、とフォークをひとつ手に取って、遠慮無く食うことにする。多分食べる順番とかもあるんだろうけど、もう気にしないことにした。

「今日は悪かったね、こんなところに呼び出したりして」

本当に申し訳なさそうな顔でアルロード様が詫びてくる。

確かに、ルキノがいないタイミングで貴族ですらない俺だけこんな高級なところに呼ばれても違和感しかないけど。でも、呼び出された理由も分かる。

「やっぱ、昨日の事っすよね。失言でした。すみません、俺が口出すことじゃないのに」

「それはいいんだ。よく考えてみたら、確かにドルフが言ったような意味に捉えられても仕方が無いと思う。ルキノに失礼な事を言ってしまった」

「昨日も言いましたけど、ルキノは喜んでたんです。アルロード様は優しい人だって……本人がそう思ってるのに、俺があんな言い方するのは出過ぎた真似だったって反省してます」

「いや、僕は人の感情に疎いと思っているんだ。実際、ルキノのためを思って色々提案してみたものの、全て断られてしまった」

それは相手がアルロード様だからって事も大きいだろう。ルキノはアルロード様命だから、自分の事でアルロード様に迷惑がかかるなんて死んでも嫌だと思う。

「ルキノから全部聞いているだろうドルフなら、きっと相談にのってくれるだろうと思って……僕は、ルキノには幸せになって欲しいんだ」

まっすぐな瞳でそう告げられて、俺の手が止まる。

飯はうまい筈なのに、手が動く気がしなかった。

「それは……無理です」

「無理? なぜ? 昨日の言葉を聞くに、ドルフだってルキノの事を心配しているだろう? だからあんな風に怒ったんだ。僕らはルキノのために知恵を出し合える筈だ」

「……っ」

昨日襲われた胸の痛みが、生々しい感触を伴って蘇ってくる。

そりゃあ心配してるさ。アイツが騎士になるために頑張ってきたの、一番傍で見てきた。

オメガだと診断された日、アイツは人目につかない鍛錬場の下の窪みでひとり泣いていた。その昔、俺が騎士科に入りたての頃、生意気だって小突かれてた時によく行ってた場所だった。

何にも言ってやれなくて、ただ傍に座ってアイツが泣き止むのを待つしか無くて。

「オレ、騎士になれないんだな」

やっと泣き止んだアイツがぽつりと言った言葉に絶望した。

あんなに鍛錬してきたのに。

クズみたいな先輩や同期なんかより、よっぽど真面目で才能だってあるのに。

絶対にいい騎士になるって断言できるのに。

『オメガだった』

それだけで、あの鍛錬の日々も、コイツの夢も、何もかもなくなってしまうのか。
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