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【ドルフ視点】悔しくて、情け無くて
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ルキノは翌日から普通な顔で登校してきたけど、周囲のヤツらは腫れ物に触るみたいに距離ができてて、俺はせめてアイツが傷つかないように、普通の顔で接してやる事しかできなかった。
騎士になれないと理解しながらも、アイツは鍛錬に手を抜く事なんかなくて、やっぱり他のヤツよりもよっぽど真面目に取り組んでる。
師範も「アイツがなぁ、勿体ないな」と呟くほどに。
なんとかできないのかと聞いてみても、師範ですらオメガを騎士として採用させるのは無理だという。
平民で。学生で。頭も別によくない俺ができることなんてなかった。
もしも俺が頑張って頑張って、平民ながらにそれなりの地位をもったとしても、その頃にはルキノはもう今更騎士なんて目指せない年齢になっているだろう。
悔しくて、でもルキノがやる気を失わずに頑張っているのを見ると元気がでる。
そんな時、アイツが泣きはらした酷い顔で登校したんだ。
昼飯をささっと平らげて、ルキノを例の鍛錬場の下の窪みに連れ込んで話を聞いたら、昨日両親とともに『オメガ』として今後どうすべきか、説明を聞きに行ったのだと言う。
ルキノは、顔をくしゃくしゃにしてポツリと言った。
「オレ、アルファに嫁に行かねぇと、おかしくなるんだってさ」
「は? え? 抑制剤で何とかなるって言ってなかったか?」
「今はな。でも年々ヒートが酷くなるんだって。薬で抑えても身体のダメージがデカイから、精神や肉体が保たないって。番を持った方がいいって言うんだ。アルファに突っ込まれねぇと生きるのもままならねぇとかどういう事なんだよ」
その直接的な表現に息を呑む。それでもこれは、オメガという性が持つ苦しい実情の片鱗でしかないのかも知れない。
「男じゃなきゃダメなのか?」
「女のアルファなんてレアすぎだろ。母さんは泣くし、父さんですら青くなっててさ……三ヶ月にいっぺん発情期がきてエロい事しか考えられなくなって身体が辛くなるとか言われるだけでもサイアクって思ったのに」
ぐすっとルキノから悲しい音が聞こえる。
「騎士になってさ、笑顔の可愛い子と結婚してさ、普通に子供もできて、家を継ぐんだって思ってたのに……オレの人生、なんもかんもダメじゃん」
「ルキノ……」
「オレがいったい、何したって言うんだよ……」
あまりにも可哀相で、肩を抱いたまま一緒に泣いた。
翌日にはまた普通の顔で鍛錬に精を出すルキノと普通に過ごしながら、夜は悶々とどうしようもない事を考える。
アルロード様がルキノに提案した言葉は、俺が何度も煩悶した事だった。
俺は、ルキノに言えなかっただけだ。
今、俺の目をまっすぐに見つめてくるアルロード様は、ルキノのために考えた事を、口にしただけ。
その違いが悔しかった。
俺はベータで、アイツを慰めることはできても番にはなれない。
多分騎士になっても薄給で、アイツを養いながら病気のおふくろや弟妹を養うのは難しい。
それに、アイツがなりたかった騎士になった俺と毎日顔を合わせるのは、アイツにとって苦痛じゃないのか。
それに、今まで友だったアイツを、嫁として見る事ができるのか。
そもそも、アイツが俺と夫婦になる事を望むのか。
悩んで、迷って、言えなかった言葉をアルロード様は躊躇なく言ったんだ。
アルファならルキノの番になれる。
彼ほどの実力があれば、ルキノを養う事だって容易だろう。
でも、公爵家の次男だ。
家族の反対だってあるだろうに、そんなの度外視でルキノのために、ってすぐに動いた。
結果としてはルキノに断られたわけだけど、ルキノの心を救ったのは事実だ。
悔しくて、自分が情け無くて。
ずっとアイツのそばにいて、一緒に切磋琢磨して一緒に悩んできたっていうのに、アイツの一番傍で心配する権利を奪われたみたいな気持ちになったんだ。
自分が意気地なしだったくせに。
完全に八つ当たりだ。
俺は、顔を上げてアルロード様に目を合わせ、しっかりと詫びの姿勢をとった。
「すいません。昨日俺、あんな事言ったけど、本当に八つ当たりなんです。アルロード様がルキノに言った事……どれも、俺も考えた事がある内容で……でも、結局ルキノには言えなかった。アルロード様に負けた気がして、つい口走ったっていうか」
俺の告白に、アルロード様は目を丸くする。
そして、なぜか優しい笑みを浮かべた。
「そうか、話してくれてありがとう。ドルフは誠実な男なんだな、ルキノが信頼しているのも無理はない」
「信頼? ルキノが?」
「ああ。今後はドルフと一緒の時じゃないと僕には会わないって言うんだ。自分がもしヒートになってもドルフがなんとかしてくれるって。……僕も悔しかった」
「そりゃ俺がベータだからでしょうけど」
嬉しいのに、口ではついそんな事を言ってしまう。そんな素直じゃない俺に、アルロード様は言うんだ。
「もちろんそれは大きいと思うけれど、他の誰でもない、ドルフの名前が出るんだから、信頼の証だと思うよ。僕達はきっと助け合える。ルキノのために一緒に知恵を絞らないか?」
……ルキノ、お前の目は確かだった。
アルロード様はやっぱり優しくて、聖人のような人だった。
そしてきっと、ルキノの事を特別大切に思ってくれているに違いない。
騎士になれないと理解しながらも、アイツは鍛錬に手を抜く事なんかなくて、やっぱり他のヤツよりもよっぽど真面目に取り組んでる。
師範も「アイツがなぁ、勿体ないな」と呟くほどに。
なんとかできないのかと聞いてみても、師範ですらオメガを騎士として採用させるのは無理だという。
平民で。学生で。頭も別によくない俺ができることなんてなかった。
もしも俺が頑張って頑張って、平民ながらにそれなりの地位をもったとしても、その頃にはルキノはもう今更騎士なんて目指せない年齢になっているだろう。
悔しくて、でもルキノがやる気を失わずに頑張っているのを見ると元気がでる。
そんな時、アイツが泣きはらした酷い顔で登校したんだ。
昼飯をささっと平らげて、ルキノを例の鍛錬場の下の窪みに連れ込んで話を聞いたら、昨日両親とともに『オメガ』として今後どうすべきか、説明を聞きに行ったのだと言う。
ルキノは、顔をくしゃくしゃにしてポツリと言った。
「オレ、アルファに嫁に行かねぇと、おかしくなるんだってさ」
「は? え? 抑制剤で何とかなるって言ってなかったか?」
「今はな。でも年々ヒートが酷くなるんだって。薬で抑えても身体のダメージがデカイから、精神や肉体が保たないって。番を持った方がいいって言うんだ。アルファに突っ込まれねぇと生きるのもままならねぇとかどういう事なんだよ」
その直接的な表現に息を呑む。それでもこれは、オメガという性が持つ苦しい実情の片鱗でしかないのかも知れない。
「男じゃなきゃダメなのか?」
「女のアルファなんてレアすぎだろ。母さんは泣くし、父さんですら青くなっててさ……三ヶ月にいっぺん発情期がきてエロい事しか考えられなくなって身体が辛くなるとか言われるだけでもサイアクって思ったのに」
ぐすっとルキノから悲しい音が聞こえる。
「騎士になってさ、笑顔の可愛い子と結婚してさ、普通に子供もできて、家を継ぐんだって思ってたのに……オレの人生、なんもかんもダメじゃん」
「ルキノ……」
「オレがいったい、何したって言うんだよ……」
あまりにも可哀相で、肩を抱いたまま一緒に泣いた。
翌日にはまた普通の顔で鍛錬に精を出すルキノと普通に過ごしながら、夜は悶々とどうしようもない事を考える。
アルロード様がルキノに提案した言葉は、俺が何度も煩悶した事だった。
俺は、ルキノに言えなかっただけだ。
今、俺の目をまっすぐに見つめてくるアルロード様は、ルキノのために考えた事を、口にしただけ。
その違いが悔しかった。
俺はベータで、アイツを慰めることはできても番にはなれない。
多分騎士になっても薄給で、アイツを養いながら病気のおふくろや弟妹を養うのは難しい。
それに、アイツがなりたかった騎士になった俺と毎日顔を合わせるのは、アイツにとって苦痛じゃないのか。
それに、今まで友だったアイツを、嫁として見る事ができるのか。
そもそも、アイツが俺と夫婦になる事を望むのか。
悩んで、迷って、言えなかった言葉をアルロード様は躊躇なく言ったんだ。
アルファならルキノの番になれる。
彼ほどの実力があれば、ルキノを養う事だって容易だろう。
でも、公爵家の次男だ。
家族の反対だってあるだろうに、そんなの度外視でルキノのために、ってすぐに動いた。
結果としてはルキノに断られたわけだけど、ルキノの心を救ったのは事実だ。
悔しくて、自分が情け無くて。
ずっとアイツのそばにいて、一緒に切磋琢磨して一緒に悩んできたっていうのに、アイツの一番傍で心配する権利を奪われたみたいな気持ちになったんだ。
自分が意気地なしだったくせに。
完全に八つ当たりだ。
俺は、顔を上げてアルロード様に目を合わせ、しっかりと詫びの姿勢をとった。
「すいません。昨日俺、あんな事言ったけど、本当に八つ当たりなんです。アルロード様がルキノに言った事……どれも、俺も考えた事がある内容で……でも、結局ルキノには言えなかった。アルロード様に負けた気がして、つい口走ったっていうか」
俺の告白に、アルロード様は目を丸くする。
そして、なぜか優しい笑みを浮かべた。
「そうか、話してくれてありがとう。ドルフは誠実な男なんだな、ルキノが信頼しているのも無理はない」
「信頼? ルキノが?」
「ああ。今後はドルフと一緒の時じゃないと僕には会わないって言うんだ。自分がもしヒートになってもドルフがなんとかしてくれるって。……僕も悔しかった」
「そりゃ俺がベータだからでしょうけど」
嬉しいのに、口ではついそんな事を言ってしまう。そんな素直じゃない俺に、アルロード様は言うんだ。
「もちろんそれは大きいと思うけれど、他の誰でもない、ドルフの名前が出るんだから、信頼の証だと思うよ。僕達はきっと助け合える。ルキノのために一緒に知恵を絞らないか?」
……ルキノ、お前の目は確かだった。
アルロード様はやっぱり優しくて、聖人のような人だった。
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