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このお方には敵わない
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そう呟くユーリア様の首を、白くて繊細なレースのチョーカーが彩っている。ユーリア様のチョーカーも番に贈られたものなのかもしれない。
「番のチョーカーを賜ったのですもの。あんなに悩んでいらしたのに、あのお方に愛されて、ルキノ様はオメガとしてのご自身を受け入れることができたのですね」
そう言われると恥ずかしいけど、その言葉が、なぜだかすごく胸に響いた。
そういえばオレ、アルロード様とちゃんと番になってから、ずっとずっと嫌でずしっと心に重くのしかかってた、自分が『オメガ』だって事実が気にならなくなってた。
騎士にもなれず、でもオメガとして誰かを愛するとか愛されるとかそういうの、想像もできなくて、どう生きていいのか分からなくなってたってのに……オレは、アルロード様のまっすぐな言葉と行動に、一緒に生きてく未来を信じることができたのかもしれない。
「……アルロード様の、おかげです」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
突然アルロード様の声が降ってきて、オレは軽く飛び上がった。
もちろんアンリエッタ様とユーリア様はにこやかに挨拶をしているけれど、ちょっぴり頬が上気してとても可愛らしい。急な推しの補給、緊張するのめっちゃ分かる。
「あの、ルキノ様のチョーカー、とても素敵ですわね。今、ちょうどそのお話をしていたところですの」
「ありがとう、僕もとても気に入っているんだ」
「お二人があまりにも幸せそうで、見ているわたくしたちまで、幸せな気分です」
そんな会話を黙って聞いていたドルフも、深く深く頷いた。
「いや、ほんと良かった。ルキノがオメガだって分かったばっかの頃は、無理して笑ってんの見るのも結構胸にくるもんがあったけど、アルロード様なら俺も安心だしな」
「ドルフ……」
「任せてくれ。ルキノは絶対に僕が幸せにしてみせる」
「はいはい。それはもう信頼してますって」
アルロード様の決意表明に、ドルフが苦笑してる。
恥ずかしくって思わず顔を赤くしたオレに、アルロード様は満面の笑みを向けていて、アンリエッタ様たちはそんなアルロード様を頬を染めて見守っていた。
分かる。オレも、アルロード様がこんな言葉をはっきりと口にされるお方だとは思ってなかった。
嬉しいけど恥ずかしい。
恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。
めちゃくちゃ複雑な気持ちだ。
「僕はルキノのおかげで今が人生で一番幸せだと思っているんだけれど、実はひとつだけ残念なことがあるんだ」
「ほー」
「まぁ、何かしら」
何も言えなくなったオレのかわりに、アンリエッタ様たちが聞き返してくれる。
アルロード様は意味ありげに笑ってオレを見た。
「僕はルキノが『あのお方』のことを話す時のキラキラ輝くような笑顔がとても好きだったんだけれど、僕と婚約してからまったく話してくれないんだよ」
「っ!!!」
な、何を急に。
だって、『あのお方』がアルロード様だって、アルロード様はもう知ってるでしょ!
なのに、面と向かってまたおんなじテンションで言うの無理に決まってるじゃん!?
真っ赤になってあわあわするオレを、ドルフ達が不憫そうに見てくるのがさらにいたたまれない。
「ああ……」
「それは仕方ないかも」
「ですねぇ」
「そうだろうか。ねぇルキノ、たまにでいいから、あの熱量で愛を叫んでくれると嬉しいんだけれど」
にっこりと笑うアルロード様の様子に、さすがに皆もオレが語る『あのお方』がアルロード様のことだとバレていると分かったらしい。ドルフなんてあからさまにやれやれ、って顔してるし。
「全力で推し語りしてやれ」
「頑張ってくださいまし」
「役得ですわよ」
口々にそう言いながら去って行ってしまった。
「ね、ルキノ。愛を叫んでくれる?」
「……はい……!!!」
もはやそう答えるしかできない。
甘々すぎて死にそう。
強くて優しくて麗しくて時に儚げで、騎士道精神に満ちあふれた高潔な振る舞いがいつも壮絶に格好良いオレの最愛の推しは、思っていたよりもずっとずっと、恋人には甘々を求めるお方だったらしい。
恥ずかしいけど……でも、よく考えたらそれもいいかもしれない。
なんせ、番になったからってアルロード様の麗しさも、かっこよさも、優しさも、減るわけじゃないんだもんね。
むしろ迸るオレの「アルロード様、素敵!!!」の気持ちをいつでも語りまくれるんだと考えれば、ものすごくラッキーなのかもしれない。
なんだ、めちゃくちゃ楽しみになってきた。
やっぱりオレの旦那様、最高の推し様だった!!!
「今日から、全力で推し語りさせていただきます!!」
急に目をらんらんと輝かせたオレを見て、アルロード様は一瞬目を丸くして、それから華やかに笑った。
「ありがとう、楽しみだ!」
そして、ちょっぴり頬を染めてこんなことを言う。
「今日はあの別邸に寄り道してもいいね。僕も、僕の大切な人の素敵なところを全力で話すから、楽しみにしていて欲しい」
「~~~~っ」
どう考えても面と向かって恥ずかしいことを言うつもりに違いない。
真っ赤になったオレに、「放課後が楽しみだね」と微笑んでから、アルロード様は行ってしまった。
ああ、どこまで行ってもこのお方には敵わない。
そう実感したオレだった。
「番のチョーカーを賜ったのですもの。あんなに悩んでいらしたのに、あのお方に愛されて、ルキノ様はオメガとしてのご自身を受け入れることができたのですね」
そう言われると恥ずかしいけど、その言葉が、なぜだかすごく胸に響いた。
そういえばオレ、アルロード様とちゃんと番になってから、ずっとずっと嫌でずしっと心に重くのしかかってた、自分が『オメガ』だって事実が気にならなくなってた。
騎士にもなれず、でもオメガとして誰かを愛するとか愛されるとかそういうの、想像もできなくて、どう生きていいのか分からなくなってたってのに……オレは、アルロード様のまっすぐな言葉と行動に、一緒に生きてく未来を信じることができたのかもしれない。
「……アルロード様の、おかげです」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
突然アルロード様の声が降ってきて、オレは軽く飛び上がった。
もちろんアンリエッタ様とユーリア様はにこやかに挨拶をしているけれど、ちょっぴり頬が上気してとても可愛らしい。急な推しの補給、緊張するのめっちゃ分かる。
「あの、ルキノ様のチョーカー、とても素敵ですわね。今、ちょうどそのお話をしていたところですの」
「ありがとう、僕もとても気に入っているんだ」
「お二人があまりにも幸せそうで、見ているわたくしたちまで、幸せな気分です」
そんな会話を黙って聞いていたドルフも、深く深く頷いた。
「いや、ほんと良かった。ルキノがオメガだって分かったばっかの頃は、無理して笑ってんの見るのも結構胸にくるもんがあったけど、アルロード様なら俺も安心だしな」
「ドルフ……」
「任せてくれ。ルキノは絶対に僕が幸せにしてみせる」
「はいはい。それはもう信頼してますって」
アルロード様の決意表明に、ドルフが苦笑してる。
恥ずかしくって思わず顔を赤くしたオレに、アルロード様は満面の笑みを向けていて、アンリエッタ様たちはそんなアルロード様を頬を染めて見守っていた。
分かる。オレも、アルロード様がこんな言葉をはっきりと口にされるお方だとは思ってなかった。
嬉しいけど恥ずかしい。
恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。
めちゃくちゃ複雑な気持ちだ。
「僕はルキノのおかげで今が人生で一番幸せだと思っているんだけれど、実はひとつだけ残念なことがあるんだ」
「ほー」
「まぁ、何かしら」
何も言えなくなったオレのかわりに、アンリエッタ様たちが聞き返してくれる。
アルロード様は意味ありげに笑ってオレを見た。
「僕はルキノが『あのお方』のことを話す時のキラキラ輝くような笑顔がとても好きだったんだけれど、僕と婚約してからまったく話してくれないんだよ」
「っ!!!」
な、何を急に。
だって、『あのお方』がアルロード様だって、アルロード様はもう知ってるでしょ!
なのに、面と向かってまたおんなじテンションで言うの無理に決まってるじゃん!?
真っ赤になってあわあわするオレを、ドルフ達が不憫そうに見てくるのがさらにいたたまれない。
「ああ……」
「それは仕方ないかも」
「ですねぇ」
「そうだろうか。ねぇルキノ、たまにでいいから、あの熱量で愛を叫んでくれると嬉しいんだけれど」
にっこりと笑うアルロード様の様子に、さすがに皆もオレが語る『あのお方』がアルロード様のことだとバレていると分かったらしい。ドルフなんてあからさまにやれやれ、って顔してるし。
「全力で推し語りしてやれ」
「頑張ってくださいまし」
「役得ですわよ」
口々にそう言いながら去って行ってしまった。
「ね、ルキノ。愛を叫んでくれる?」
「……はい……!!!」
もはやそう答えるしかできない。
甘々すぎて死にそう。
強くて優しくて麗しくて時に儚げで、騎士道精神に満ちあふれた高潔な振る舞いがいつも壮絶に格好良いオレの最愛の推しは、思っていたよりもずっとずっと、恋人には甘々を求めるお方だったらしい。
恥ずかしいけど……でも、よく考えたらそれもいいかもしれない。
なんせ、番になったからってアルロード様の麗しさも、かっこよさも、優しさも、減るわけじゃないんだもんね。
むしろ迸るオレの「アルロード様、素敵!!!」の気持ちをいつでも語りまくれるんだと考えれば、ものすごくラッキーなのかもしれない。
なんだ、めちゃくちゃ楽しみになってきた。
やっぱりオレの旦那様、最高の推し様だった!!!
「今日から、全力で推し語りさせていただきます!!」
急に目をらんらんと輝かせたオレを見て、アルロード様は一瞬目を丸くして、それから華やかに笑った。
「ありがとう、楽しみだ!」
そして、ちょっぴり頬を染めてこんなことを言う。
「今日はあの別邸に寄り道してもいいね。僕も、僕の大切な人の素敵なところを全力で話すから、楽しみにしていて欲しい」
「~~~~っ」
どう考えても面と向かって恥ずかしいことを言うつもりに違いない。
真っ赤になったオレに、「放課後が楽しみだね」と微笑んでから、アルロード様は行ってしまった。
ああ、どこまで行ってもこのお方には敵わない。
そう実感したオレだった。
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