臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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序章

エピソード? アネッサ?サイド 後編

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 まるで炎症反応のように身体中から熱を帯びているスコット……立っているのが不思議なぐらいの状態だと思う……
 二人ともボロボロだけど、私はスコットに肩を貸して教会に向かった。無事に教会までたどり着くと、神父様は優しく部屋や食事の用意をしてくれた。
 
 どうやらスコットはお忍びの女装をして、教会の子どもたちの世話をしているらしい。
 スコットは優しいんだね。
 改めて考えると、何でスコットは女装という性別を偽る変装をしないと行けない人なんだろう。
 この帝国の皇子様とか? 本当の髪の毛も気になるなぁ。
 でも私の事も聞かれたら困る事もあるし、機会を見てから話してみようかな。

 そんな事を考えながら食事をした。
 考え事に集中するあまり、スコットが神父様に介助してもらいながら食べていた事に気づくのが遅れて、私はスコットにすごく無理をさせてしまった事を実感した。
 その後、私は寝室に移動して急いで清拭や着替えをした。
 だってスコット一人じゃ身体を拭くのも大変だと思うし、命の恩人に少しでも何かしたくて。
 やっぱりスコットは、服すら脱げずに困っていた。

「出来る範囲で着替えを手伝うわ。身体を拭くのも大変そうだから上半身だけ身体を拭くのを手伝うわ」
 
 流石に下半身は手伝う事はできないわ。
 だから私は寝室に戻ったわ。
 そしたらリビングの方でスコットが、

「あぁ~! ハッ! ハッ! デェッ! ダァ~~!」

 って奇声を上げているの。
 フフッ本当に不思議な人ね、臆病者で勇敢で優しくて変な人で真面目な人。
 さっきまでの緊張感が嘘みたいに笑ってしまい、
 いつの間にか眠りについていた。

  

 ふぅ、割としっかり熟睡できたわ。
 シャツにパンツスタイルの衣服に着替えて、リビングに向かった。リビングにはパンや果物といった簡単な朝食が用意されていた。
 神父様が気を遣って下さったのね。

 私は昨日の出来事を思い出す。私自身の無力さとスコットを危険な目に合わせた事と。
 軽く朝食を済ますと、シャツの腕を捲り上げて、昨日刺客から手に入れたナイフを持つ。
 仮想刺客を想定して小柄な身体を活かした闘い方を考えながらナイフを振る。

 しばらくすると、
「ふぁ~」 
 あの声はスコットが目覚めたのね。
 スコットがリビングにやって来ると朝から驚いた顔をしていた。
 そうよね。いきなり女の子がこんな事してたら。

「スコットおはよう」

「アネッサおはよう。朝早いんだな」

「そうね。追手が来る前に安全な所まで逃げないと行けないからね。せめて昨日みたいにならないようトレーニングをしていたのよ」


 スコットに誘われて一緒に窓から外の様子を眺めたら、スラム奥地の監禁場所から煙が上がっており多くの人を集めていた。
 ここからだと中央広場まで行くのには少し遠いらしいので、工房エリアにある鍛冶屋に移動する事となった。
 そこで誰かと待ち合わせをするらしい。
 行った事のない工房に少しワクワクして、自然と微笑んでスコットの提案に了承した。

「分かったわ。今日はエスコートをお願いするわ」

 スコットの顔が耳まで赤くなっていた。照れ屋さんな一面もあるのね。意外な発見に少し楽しくなった。

 その後、部屋の整理をして神父様へ感謝の気持ち伝えてから工房エリアに向かう事になった。

 通りは人が多くて中央広場の何倍だろう? とにかく驚いた。
 スコットは、昨夜の事件が気になって来たのかこの地区にしては珍しいと言っていた。
 大人達が歩くと流れと反対方向に進むので、スコットを見失ないようにしないと。人の流れに流されないようにスコットの後ろを歩いていると、スコットが私の手を突然握りしめた。
 臆病なスコットの意外と大胆な行動に少しだけ動揺した。こんな男らしい一面もあるんだなぁ。

 何とか工房に着き、スコットが扉を開こうとした時に、手を握りしめている事に気づいたらしく慌てているので、からかってみた。

「いや、アネッサこれは特に変な意味ではなく」
「今日は随分と積極的なのね」
「違うんだ、無意識に手を握っていたようなんだ」
「あらあら、淑女の手を無意識に握るなんて」
「淑女だったら昨日の出来事は幻かな」
「そうね。怖がりなスコットが私を助ける王子様にも見えたからね。本当に幻だったかも知れないね」

 私はスコットとの会話が面白くなってきて笑いを堪えていたが、お互いに最後は笑いながら喋っていた。
 しかし会話の中でスコットは王子様と言う言葉の時に一瞬だけ動揺していた。
 何か関わりがあるのだろうか?

 鍛冶屋の扉を開けると、ドワーフのおじさんがいた。私は初めてドワーフを見るので、表情は崩さないが内心では、
(本物だぁ、思ったより小さい、武具を作るのが得意と聞いてたのでいつかお願いできるかなぁ)
 と頭が一杯になっていた。

 何かスコットとドワーフのおじさんが話しているが、私は周りの道具や武具が気になり辺りを見渡していた。

(帝国の技術を持ってしても、やっぱり無いか)
 
 その時、後ろのドアから気配を感じた。

「お待ちしておりました。身近にいながらお嬢様を守れなかった事に悔やみ毎日ここに足を運んでおりました。無事にお会い出来ましたが、私は護衛として失格です。私の命で償えるかわかりませぬが、既に覚悟は出来ております」

 えっ? 何この人? 気配を感じたら、もう後ろに立っていた。かなり強いはずだわ。しかし言葉遣いから、スコットは男爵家で無いと言っているようなものじゃない。大丈夫この人? しかしこれでほぼ確定ね!

 どうやらスコットは、この方に護衛をしてもらい私を安全な所まで送ってくれるらしい。

 中央広場に着くと、広場の周囲を囲む屋台から美味しそうな匂いが漂い、広場ではべンチに日光浴をする人、東地区のバザーや商店に向かう人、色んな人達が自由に過ごす平和な空間だった。

 そしてスコットは私の家族の事まで心配してくれたのか、
「アネッサ、家族の元まで送ろうか?」 
 と言ってくれた。

 その優しさだけで充分だよ。家族に合わすとややこしくなりそうだわ。スコットの家も高位貴族らしいし。お互いの為には合わない方が良いはず。

「スコットありがとう、その気持ちで充分だわ」

「アネッサ、帝国は治安が良いはずなんだが、今回のように危険にあう言葉も絶対無いとは言い切れない。ボク達にはヒュンメルがいるから大丈夫だよ」

 紳士だなぁスコットは。

「ん~それじゃ南エリアの衛兵さんの所まで案内してくれるかしら」

 暫くの間お互いの素性がバレない範囲内での話し、気付けば南エリアの衛兵の詰め所が見えて来た。
「アネッサもう少しで衛兵さんの所だね」
「うん、スコットもう少しだよ」
「「…………」」

 何だろう。色々あったけど、スコットが居てくれて安心したのか、急に寂しくなった。

 そしてスコットは私を衛兵の元に送ってくれた。

 その時、自然と私は言葉が出てきた。
「色々あって大変だったけど、また会えるかなぁ」

 その言葉にスコットは困っているようだった。
 
 しばらくしてから、スコットは笑顔だけど少し困った様子で、
「嬉しいけど、まずは両親がとても心配して……アネッサを外に出してくれなくなるかもね」

 私、不味い事を無意識に言っちゃったなぁ。
 もしかしたらまた会えるなんて可能性としてはかなり低い。彼は多分この国の高位貴族以上だと思う。
 何でこんな事言ってスコットを困らせちゃったんだろう。

「フフフ、そうかもね。私の両親は過保護だから」
 
 最後に、
 「「ありがとう」」
 お互いが、同じ言葉を、同じタイミングで言った。
 精一杯の笑顔でさよならを言ってスコット達を見送った。

 帰ったら父さん達心配しているだろうなぁ。
 経緯を伝えるのが面倒だなぁと思いながら衛兵さんに父さんを呼んでもらう事にした。
 大事な話し合い中じゃなければいいけどなぁ。
 私は絶対もう帝国の視察には着いていく事が出来ないから、スコットと会う事は無いだろうなぁ。
 そもそも雲の上の存在のような人かもしれないし。

 そして、スコットとの一期一会の思い出を心の中にそっとしまった。
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