臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード? フィーネサイド 中編その1

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 えっこの子、何か気絶したままなんだけど本当に大丈夫?
 周りの人達まで心配しているし。
 馭者さんが「取り敢えず馬車に乗せよう」と言ってみんなで馬車に乗せた。
 意識を失うと人ってこんなに重たいのね。
 そして馬車はゆっくりと進み出した。
 子連れの親子も心配そうに声をかけていたが全く反応は無かった。

 念のために息をしているか耳で呼吸音聞き、手で胸の動きを確認した。
 大丈夫気絶しているだけ、こういう時はガツンと起こすのが一番よ!

「ちょっと! アンタ! いつまで寝てるのよ。目を覚ましなさいよ! このバカ」

 男の子がぼんやりと目を開けた。

 アタシは男の子の顔を見て、おかしな所はないか確認した。
 大丈夫そうね。
 
 そして、男の子は起き上がろうとした。

「心配かけたね。もう大丈夫だから、よっと」

 何か大丈夫って言いながら片膝立ちの状態からこちらに顔ごと倒れそうになってるんだけど! 

「えっ! ちょっとぉ!」

 アタシは慌てて身体を支えようとしたが、アタシも右足が痛み反応が遅れた。
 そして男の子はあろう事かアタシの両膝の間に顔を埋めてきた。

「いっ痛ぁぁい! 何してんのよ! 変態!」
 
 何コイツ、ワザとなの? 覗こうとしたの? しかもアタシの痛めている右足に体重をかけてきて!  
 痛みと恥ずかしさから涙が出そうになり、コイツに思いっきり頬を往復ビンタした。これでも気が済まないわ。
 こんな変態なヤツとは口を聞いてあげないわ。


 何なのよ、一体? アタシの方をチラチラ見て申し訳なさそうな顔をしてくる。まぁアタシが雰囲気を悪くしたかも知れないけど……この変態も悪いのよ!
 
 意を決したようにアタシの側に来て話しかけてきた。

「えっと、さっきは申し遅れたんだけど、オレの名前はクライヴ。シェリダン領の平民で、これから王都にある王立学院の入学に向かっているんだ。君の名前は?」

 ちょっと待って! アタシ名前を伝えて、アンタはフィーナって間違えてたわよね!

「アンタ……忘れたの?」

「えっ? 以前会った事ないと思うけど?」

 何とぼけた事言ってんのよ!

「ハァ? 当たり前でしよ初対面なんだから!」
 
 ハァァ、もういいわ。

「アンタが倒れる前に名乗ったんだけど、アンタは即アタシの名前を間違ってたわ! いい! よく聞きなさい! アタシの名前はフィーネ! フィーナじゃなくてフィーネ! わかった」

 何でこんな事にイライラしてくるんだろう?
 助けてもらったのに名前を覚えてもらえなかった事が辛かったのかなぁ。

「フィーネだね。よろしく」

 そう言ってクライヴは笑顔で握手をしようとしてくれた。
 アタシあんなに皮肉ばかり言ってたのに…………
 しかも笑顔がギャップありすぎよ! 闘っていた時はオドオドしてたくせに……でも助けてくれた時は何か男らしかったけど…………

 とにかくそんな爽やかな顔をされたら、何かアタシが恥ずかしくなってくるの。
 だからアタシは顔を見られないように握手をした。

 取り敢えず急いで話題を切り替えて気にしてないようにしないと!

「まぁよろしくねクライヴ。ところでアンタこんなに言われて笑顔でいれるなんてマゾなの?」

 あぁー、アタシのバカ! 何故そんな言葉をチョイスしたのよ!
 気を取り直してクライヴに話しかけた。

「そう言えばクライヴはこの世界の種族がどうとかなんか言ってたわね、エルフに対してどう思うの?」

「えっどう思うとは?」

「さっきの盗賊達の話じゃないけど種族間で色々あるのよ。特に人間はアタシ達を攫ったりするし、イヤらしい目で見てくる人間もいるし」
 
 まぁどうせ人間達なんか殆どがそんなヤツばかりなんだろうけど……

「へぇ~そうなんだ」

「そうなんだって? アンタってエルフの歴史とか知らないの!」

「書物で学んだけど、改めてファンタジーだなぁって思うよ」

 ん? ファンタジー? なにその言葉 どういう事? 

「ハァー何それ」

「本でしか知らなかった色々な種族に会えて嬉しいと思う気持ちがあるなあ。それと宗教や倫理観とか色々あると思うけどみんなが仲良くできたら平和なのにね。オレ闘ったり、戦争するとか嫌いだからさあ、だから平和になってほしいと思うんだ」

 へぇー、人間のくせにエルフだけでなく他の種族に対しても偏見しないんだ。こんな人間っているの? 不思議な人ね。
 アタシ達エルフでもそんな考え方は珍しいのに。

「ふーん変なの」

「ところでフィーネはエルフのなの? さっき盗賊と闘った時には耳は尖ってなかったけど」

 まぁそう思うよね? ハーフエルフは珍しいから。

「アタシはハーフエルフなの。耳も尖ってないし、どちらかというと人間寄りね。寿命も成長も人間と同じ。ただ精霊に力を借りて精霊魔法を扱えるから、それでエルフだとバレるのよ。気をつけてたつもりなんだけどアイツらしつこく付き纏ってくるからイラっとして使っちゃったの。そしたら目の色変えて襲って来たの」

あー! 思い出しただけでイライラしてくるわぁ。

「へぇー色々エルフ事情があるんだね。フィーネは人間の陵域に来るぐらいだから何か事情があるんだね」

 えっ! ボォーとしてるくせにビックリした。変な所で勘がいいのかしら。無難に答えといた方がいいわね。

「いや、特に行くあても無いよ」

「ん……」 

「だから、これからどーしよかなって思ってさ」

 なに人の話聞いてないの?

「学院に通って人間の事を学んだらどうかな?」
 
 学院かぁ、人間の住む街ってら少し興味もあるし、いいかもしれないわ!

「そうそれ、さっきから気になってたのよ! アタシでも入学できるの?」

「入学金さえ払えば大丈夫なはず……」

 成る程、特に細かい事は無く、入学金さえ支払えれば良いのね。

「ふーん、そうなんだ。クライヴいい考えね。ちなみに入学金はいくらなの? 銀貨何枚程度?」

「実は小金貨二枚…………」

 えっ? 何で今アタシにこんな話を持ちかけたの? 期待させといて落として腹が立つわね!

「ふざけてんじゃ無いわよ! アタシ銀貨六枚しか持ってないわよ!」

「でも入学金さえ払えば授業料や学生寮や朝夕の食事が無量だよ」

「どうやって今からそんな大金稼ぐのよ」

 もういいや、諦めてどこかの町にでも降ろしてもらおう……

 アタシが諦めかけた時、話を聞いていた馭者さんが、
「この盗賊二人を憲兵に引き渡して賞金首なら賞金がもらえるかも知れないよ」

 えっ! そうなの? 賞金が貰えるの?

 そして、馬車は大きな街に着いた。
 凄い……石壁で周囲を囲んだ大きな砦の中に大きな街があった。しかも屋根はカラフルで、アタシ達の住んでいる所とは別世界だった。

 アタシは周りの建物等を眺めていると、突然クライヴが真剣な顔で話しかけてきた。

「フィーネ、もし良ければ一緒に来て欲しい所があるんだが?」

 えっ! 何! そんな顔されたらダメだよ! クライヴって時々グイグイと男らしい所を魅せるから……そりゃ、ちょっとイケメンだし、見ず知らずのアタシを命懸けで助けてくれて優しいしさ。
 ええい! 恥ずかしがっているのがバレたくないし、クライヴに返事しないと!

「ちょ、ちょっといきなり何なの? そんなにアタシと居たいの? まぁ別にぃぃ……けど……」

「ここの領主のランパード様に挨拶に行こうと思って」

 は? 領主に会う? 平民が? アタシでも人間社会はある程度学んだから分かるけど、クライヴは貴族に殺されたいの?

「やっぱり馬鹿なの! 平民が領主に会う? 殺されるわよ? そんな事アタシでもわかるわよ!」

 何でアンタが残念そうな顔をアタシに向けるのよ!
 
「何その顔? アタシに何か文句あるの!」

 クライヴはアタシを連れて街の教会に行き、神父さんと話をしているみたい。この教会も綺麗ね。
 アタシが周りを見ていると、一目で貴族と分かる馬車がやってきた。
 嘘でしょ! 多分アタシは今すごく驚いている顔をしていると思う。

「えっ! アンタが言ってた事本当だったの?」

「だから、言っただろ。ランパード様に挨拶に行くって」

 えっ? クライヴは平民じゃないの? アタシ凄く失礼な事をしちゃった……

「クライヴの事疑ってごめんなさい」
 
 馬車から降りると使用人やメイドさん達がずらりと通路の脇に並んでいた。

 人が一杯いる。ちょっと怖いよ。アタシこれからどうなるの?

 そして、エントランスには領主と思われる人がいた。

 クライヴと話をしているけど、アタシは緊張のあまり会話が耳に入ってこない……アタシ大丈夫よね。クライヴ優しかったし……捕まえられたりしないわよね……
 
「そうか、ところでクライヴ君? 後ろにいるお嬢さんは?」
 
 あっ考え事をしていたので話の内容を全く聞いていなかった。
 どうしよう……失礼がないようにするには……
 するとクライヴがアタシを庇ってくれた。

「こちらに向かう途中に盗賊に出会いまして、その時一緒に闘ったフィーネさんです」

 良かった……ハーフエルフとして捕まるのじゃないのね……

「あの、その、フィーネって言います。クライヴ……クライヴ君と一緒に王立学院の入学を目指しています」

 クライヴありがとう。貴族は怖い人と教わっていたからクライヴが居なかったら心細かったよ……

 その時、エントランスホールの奥から何かが駆け出してきた!

「クライヴ~久しぶり! クライヴも王立学院に入学するんだよね? じゃあ中等部になったら私と会えるね。楽しみだね」
 
 女の子がそう言いながらクライヴに抱きついていた。
 クライヴはモテる男は辛いぜ! ていうアピールをしているけど、バカじゃないの? 言っとくけどその子に恋愛対象として見られてないわよ!
 
「フィーネよ、よく聞きたまえ、これはねルーシー様の愛情表現なんだよ」

「愛情!?」

 えっ? 何それ、ご主人様と犬の関係じゃなくて、平民と貴族の身分差がありながらもお付き合いをしているの?

 するとルーシーと言う女の子が説明してくれた、

「愛情表現と言うか、クライヴとは女の子の服着たり、ママゴトとかお犬さんごっことかする弟のような感じだよ」

 えっ気持ち悪い! 何それ! 理解できないわ!

「えっアンタ、女装が趣味で犬になるの……」
 
 慌てるクライヴの必死の説明で、アタシも誤解が解けた。
 クライヴは領主様と話があるそうなので、アタシはルーシー様に誘われて庭園のテラスでお茶をご一緒した。
 綺麗な庭園ね、それにしても本当に広いわね。
 アタシは落ち着きなくキョロキョロと周りを見ていたら、突然ルーシー様から話しかけられた。
 
「フィーネはクライヴの事が好きなの?」

「ゴホッゴホッ」
 
 えっ? いきなり何? アタシはクライヴの事………………

「わかりません。を好きになった事がないので……でもクライヴは、本当は争い事が苦手で臆病で怖がりで闘いには向かない人だと思うのですが……見ず知らずのアタシを命懸けで助けてくれたり……アタシの事を気遣ってくれるので、アタシ…………アタシは……どう表現すれば良いのかわかりませんが、クライヴに出会ってからアタシが閉ざしていたモノクロの風景が、実は色彩豊かな風景に気づかせてくれたのです。そんな考え方もあるんだなぁと色んな事を経験出来て、クライヴに感謝しているのです……がアタシが素直になれなくて…………あっすみません答えになってないですよね」

「ううん、フィーネがそんなにクライヴの事を想っていてくれて嬉しいわ。二人のやり取りもクライヴが楽しそうだったから」

 楽しそう? そうなのかしら? いつも貶されてばかりで?

「フィーネちゃん大変だと思うよ」

「えっ! 何がですか?」

「強敵なライバルが現れるかもよ」

 ルーシー様の意味深な発言が引っかかる。

「まぁ、私からは断片的な聞いた話だから分からないけどね」

 ルーシー様は可愛らしく小さく舌を横にペロっとだきておどけていた。

「それでは、そろそろ戻りましょうか? クライヴをよろしくね」

 なんだか気恥ずかしくて顔が熱っている。
 アタシはルーシ様に「はい」と短く返事をした。

 エントランスに戻ると、クライヴから賞金首の謝礼金が出る事を開かされて、領主様見送りの元、馬車で冒険者協会と言う所に向かった。
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