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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード? フィーネサイド 前編
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「最悪……」
アタシはポツリと呟いた。
ハーフエルフとして育ってから、森の外には出ないように言いつけられていた。
でも、そんな閉鎖された中で過ごすのは嫌だ!
もっと外の世界を見てみたい!
私はエルフと違って特徴的な耳の形ではなく人間と一緒だ。
だったら外の世界でも怪しまれずに行き来できると思うのよ。
…………その考えが甘かったのかしら…………
森から出た所で薄汚い五名の人間達がアタシを見つけてニヤニヤとしながら近づいてくる。
「お嬢ちゃん。どうしたんだいこんな所で? 迷子かな?」
森の中の精霊達が怯えている。
コイツらは悪い人間だ。
「どうしたのかなお嬢ちゃん。そんな怖い顔をして、可愛い顔が台無しだよ? おじさん達と一緒にお母さんを探しに行こうか?」
話しかける三名の人間達の後ろに大きな袋を隠し持っている人間と縄を持っている人間が見えた。
コイツらはアタシを攫うつもりね。
ハーフエルフとバレたのかしら? それとも人攫いなのかしら?
「お嬢ちゃん。早くこっちにおいでよ。おじさんの手を握って一緒にお母さんを探しに行こう」
どうして人間はこんな奴がいるの?
段々腹が立ってきたわ! もう知らない!
アタシは右の手のひらに空気を集める様に集中して精霊に力を借りて魔法を唱えた。
「シルフ! アタシに力を貸して! 吹き飛べ!」
思いっきり右手の空気の塊を投げつけると、話しかけていた男の両サイドの二人を吹っ飛ばし、木に体を打ちつけて気絶させた。
その瞬間話しかけていた男が目の色を変えた。
「おい! こいつエルフだぞ! 捕まえたら大金だぜ!」
「どうしてアンタ達はそんな勝手な事言うのよ! 一体アタシ達がなにしたのよ!」
「うるせえ! エルフは奴隷として人気なんだよ! 森の奥に入るとお前達は素直に応じないから何人の人間がしんだとおもってやがる!」
そして腰に隠していた斧の側面の部分で頭を狙ってきた。
アタシはすぐに腰のナイフを取り出して防いだが、ナイフが弾かれて森の中に消えていった。
驚いて逃げると思っていたのに、どうやらコイツらはアタシを気絶させてどこかに連れ去るようだわ。
もう本当に人間って最悪ね。素直に森に居ればよかったわ。
アタシは、後ろにステップし距離を空けて、背中から短弓を取り出した。
狙うのは、話しかけてきたボスっぽい奴よ!
一瞬呼吸を整えて弓を引き、額を狙った…………が、ボスの額には当たらず斧に弾かれていた。
「クッ! もう一度よ!」
アタシは距離を保つよう動きながら弓を引こうとするが、他の奴らがナイフを投げてアタシの足を狙って邪魔をしてくる。
「おい! お前ら、動きを止める為に怪我を負わすのは片方の太ももまでだからな!」
クソ! コイツらアタシをバカにして!
動き回って距離を保っていたから少し息が上がってきたけど、アタシは右の手に集中して魔法を唱えた。
「シルフ!」
ボスは大げさに転がって避けられてしまい、そこに残ったのは衝撃音と地面が少し抉れる態度だった。
「どうやら、そろそろ限界が近づいてきたか? 優しくしてやるからよ、もう諦めな」
悔しい! こんな奴らに! アタシは絶対に諦めないわ!
ジリジリと三人組は間合いを詰めてくるけど、アタシもそんなに甘くはないわよ!
素早く弓を引き胴体をねらった。
ボスには斧で防がれけど、ボスの後ろにいた奴には……ダメだわ脇腹を掠めた程度ね
残っている矢を全て使い切るペースで矢を放ったのに、ボスには全く当たらない。
他の奴らの腕や肩や脇腹を擦る程度で、これじゃ動きを封じる事はできていないわ。
「顔には傷をつけるなよ高く売れるからなぁ」
ボスは笑みを浮かべながら他の二人に言っていた。
エルフだけって事で急に目の色変えて物扱いにして…………
「何だいチビちゃん? おじさん達は忙しいんだよ」
「お前達は一体何をしている」
アタシはこの場には存在しなかった男の子の声が聞こえる方に振り向くと
肩まで伸びている少し癖のある黒髪のミディアムヘアーにオニキスのような黒目に中性的な整った顔立ち、多分アタシぐらいの歳の男の子がそこにいた。
「見てわかんねぇか? ありゃエルフなんだよ。長寿だからいつまでも若さを保つ事が出来て貴族や奴隷商人に大人気なんだよ。それにあいつらは人間と接触するのを嫌っていて、近づいただけで、精霊を使って人間に攻撃することもあるから、ほっとくと危ないんだよ。オレらは人類を守ってるんだよ。ヘヘヘ」
結局はアタシ達は人間達にとってはそんな物なのね……
男の子の表情がみるみる変化しアタシの為に怒ってくれているのかしら?
まだ純粋そうな子だからエルフと人間の関係は知らないんだろうな。
「ふざけんな! この世界の種族がどうとか人類を守るとか関係ねえ、お前が勝手に相手の領域を土足で踏み荒らしているだけだろ! お前らみたいな襲う事しか出来ない人生を諦めた人間の方がクズだよ! 何で、争う事しか考えないんだよ」
えっ! アタシの胸に男の子の言葉が響いた……
「一丁前に説教かガキが! てめぇみてぇな奴にはお仕置きが必要だな、容赦しねぇぞ!」
コイツらの目が血走ってる。男の子が青ざめた顔で震えてる。このままじゃ男の子が危ない!
「グワァー」
アタシはこの隙に、弓で近くにいた奴の肩を貫いて一人戦闘不能となった。
何とか一人片付けたわ……
「このくそアマがぁ!」
もう一人の奴がブチ切れて斧を持ってアタシに突進している。
怒りで冷静さを失っているわ、斧を振り下ろすだけの攻撃なんか今のアタシでも避けられるわ。
アタシは横に避けて距離を空けようとした瞬間に男が左手に持っていた砂をアタシの顔目掛けて投げかけた。
「痛っ!」
アタシの目に砂が入り、目が開けない。
聴覚を頼りに集中すると斧を振りかぶる音が聞こえた。
アタシは急いで弓を両手で持ち頭の上で構えた。
その瞬間に強い衝撃がアタシの両腕に響いて、受け止めた弓からピシッと大きな音が鳴った。
「チッ! クソがぁ!」
どうしよう! 弓が耐えられそうにないわ!
もう少し、あと少しで!
目が少しだけ開くことができた。
アタシは斧の間合いから離れて弓のが放てる位置まで移動した。 もう息が限界……
そして少しだけ、ボスと闘っている男の子の方を見たら、アタシと闘っていた奴が男の子の背後に向かっていた。
あっ! アタシのせいで男の子が……
「危ない! 後ろ!」
男の子はアタシの声に気づいて、背後からの一撃を剣で反らしていた。
しかしボスの斧が男の子に迫っていた。
「危ない! シルフお願い!」
なんとかボスの足に草が絡まって転倒させれた。
本当に危なかったわ。
とりあえずこれでら二対一ね。
そして男の子が私を気遣ってか、青ざめた顔で声をかけてきた。
「大丈夫?」
アンタがでしょ! それに何アタシを見てボォーってしてんの! 闘いの最中よ!
「アンタ前を見なさいよ、何ボォーとしてるのよ」
前を向くとボス達は体勢を整えていた。
男の子はアタシに魔法で攻撃できないか聞いてきた。
「もう無理よ。アンタを守ったので魔力が残ってないから精霊を呼べないわ」
「じゃあ弓は?」
「もう耐えられそうにないわ、後一本放つのが限界ね」
男の子も膝が震えている。もうこの子も限界かな。
アタシも膝に手をついて息を整えている。
「誰か! 力を貸して下さい! オレ達を助けて下さい」
男の子は馬車に向かって叫び出した。
もう良いよ。君は逃げてよ。
「キャッ」
そんな事を考えていたら右の太ももに燃える様な熱さと痛みが走った。
どうやらボス達が隠し持っていたナイフを投げてアタシの右の太ももに刺さっている。
「クソガキは殺して、エルフは売る前に俺たちの怖さを教えてやらないとな」
「へへへ、そうだな。でもそれじゃエルフが高く売れなくなってしまうぜ」
もう、これまでかな…………アタシは恐怖で震える声で男の子に話した。
「クッ! アンタだけでも逃げなさい! アタシが引きつけるから、馭者に馬車を走らすように言いなさい!」
「そんなことできない! オレも闘うから諦めんなよ!」
「膝が震えてるアンタに何が出来るのよ! 足手纏いなだけよ!」
何この震えるだけしかできない臆病者のくせに!
「もっと自分を大事にしろよ!」
「フン! その言葉そっくりあなたに返すわ!」
もう! 早く逃げなさいってば!
オドオドした男の子は急に真面目な顔になり、
「盗賊の一人を何秒足止めできる?」
えっ! 何急に? 今のアタシの状態を知ったら諦めて逃げてくれるかな?
「この足だと踏ん張れないし、デタラメに打って一発で、弓がダメになると思う。魔力が残ってないし、精霊魔法も大技は手の内がバレているから、小さい竜巻を起こして砂埃を上げるぐらいしかできないわ」
「えっ無理してない? そんなに動けるか?」
えっ? こっちが驚きなんですけど! どう言う事、アンタまだ闘うつもりなの? 見ず知らずのアタシの為に命張らなくていいわよ! 何かイライラしてくるわね!
「そんなこと知らないわよ! こっちも命懸けよ! ダメだったら意識を失ってアイツらに捕らえられるだけよ!」
男の子は泣きそうな笑顔でアタシに作戦を伝えた。
「相手が三メートル以内に来た時に竜巻を起こして、そしてすぐに矢を放って、当たらなくていいから」
「えっ! アンタ何言ってんの?」
「説明している時間はないから」
本当に大丈夫? でももう間に合わない! どうしよう!
ボス達がゆっくり男の子に近づいている。
残り二十メートル……
十五メートル…………
十メートル………………
八メートル……………………
五メートル…………………………
やだ! やだ! 死なないでよ!
ボス達が男の子に向かって走り出した。
「このガキが! 死に晒せ!」
そして、残り三メートル以内に入って来た。
「頼む今だ!」
男の子から指示を受けるとアタシは急いで精霊に力を借り全ての魔力を放出した。
「シルフよ竜巻を巻き上げて!」
もうアタシには砂が舞う程度の強風が一瞬駆け抜ける程度しか出来なかった…………助けれなかった…………
でも泣かない! 男の子の言った通りすぐ矢を放った。
「後は任せろ」
男の子の声が風に舞って聞こえてきた。
「【クロノス】」
「グワァー! オレの右手が」
「ケツが痛え! 何で右手が痺れてやがるんだ、あれ斧がねぇぞ」
男の子以外アタシも含めて一瞬の強風の間に何が起こったか分からない。
そして男の子が尻もちをついているボスの首元にサーベルの先を軽く押し付けていて、首から胸の方へ僅かな血がつたっていた。
その後突然、オドオドしていた男の子が冷静な声でボスを脅していた。
「いい加減にしないとこのまま刺すよ。それかもう一度同じ事しようか」
「くそ、引き上げろ! 馬車の中にも動ける奴がいるはずだ! このまま捕まるのは馬鹿らしいぜ!
負傷した奴らを捨てて逃げていく。
その後は馭者さんが馬車に乗っている人と協力して気絶しているこの悪い人間二人を縄で縛っていた。
そして、男の子の方を見ると、今だに馬車から少し離れた場所で立ちっぱなしでいた。
えっ! 立ったまま死んでないよね! 助けてもらって感謝も言えてないのに…………
右足をひきずりながら男の子に近づくと、男の子は疲れた顔をして立っていた。
良かったあ……
争い事とか嫌いな感じな人なのに、見ず知らずのアタシを助けにくるお人好しで、闘うのが怖いくせに必死に助けようと急にカッコよく見えてしまい、とっても不思議な人。
何かアタシの胸の中がモヤモヤしている。
アタシは自分達が助かった事に安堵して泣きそうになったのと、この子を失わなくて良かった事に泣きそうになった事を我慢して、命の恩人に対して感謝をするのと名前を聞きたかった。
「ありがとう助かったわ! アンタやるわねぇ。そうだアタシの名前はフィーネ。あなたの名前は? えっ? ちょっと?」
男の子が突然アタシの方へ倒れ込み、何とか地面に落ちないように肩で止めた。
「ごめんフィーナ、足……大丈……夫」
少し痛かったけど、こんな状態でも気遣ってくれるこの子と、密着した姿勢に胸がモヤモヤからドキドキに変化した。
ん!
「アタシの名前はフィーネ! フィーナじゃない!」
危うく騙される所だったわ!
人の名前を間違えるってどう言う事よ?
さっきまでのこの胸の高鳴りを返しなさい!
アタシはポツリと呟いた。
ハーフエルフとして育ってから、森の外には出ないように言いつけられていた。
でも、そんな閉鎖された中で過ごすのは嫌だ!
もっと外の世界を見てみたい!
私はエルフと違って特徴的な耳の形ではなく人間と一緒だ。
だったら外の世界でも怪しまれずに行き来できると思うのよ。
…………その考えが甘かったのかしら…………
森から出た所で薄汚い五名の人間達がアタシを見つけてニヤニヤとしながら近づいてくる。
「お嬢ちゃん。どうしたんだいこんな所で? 迷子かな?」
森の中の精霊達が怯えている。
コイツらは悪い人間だ。
「どうしたのかなお嬢ちゃん。そんな怖い顔をして、可愛い顔が台無しだよ? おじさん達と一緒にお母さんを探しに行こうか?」
話しかける三名の人間達の後ろに大きな袋を隠し持っている人間と縄を持っている人間が見えた。
コイツらはアタシを攫うつもりね。
ハーフエルフとバレたのかしら? それとも人攫いなのかしら?
「お嬢ちゃん。早くこっちにおいでよ。おじさんの手を握って一緒にお母さんを探しに行こう」
どうして人間はこんな奴がいるの?
段々腹が立ってきたわ! もう知らない!
アタシは右の手のひらに空気を集める様に集中して精霊に力を借りて魔法を唱えた。
「シルフ! アタシに力を貸して! 吹き飛べ!」
思いっきり右手の空気の塊を投げつけると、話しかけていた男の両サイドの二人を吹っ飛ばし、木に体を打ちつけて気絶させた。
その瞬間話しかけていた男が目の色を変えた。
「おい! こいつエルフだぞ! 捕まえたら大金だぜ!」
「どうしてアンタ達はそんな勝手な事言うのよ! 一体アタシ達がなにしたのよ!」
「うるせえ! エルフは奴隷として人気なんだよ! 森の奥に入るとお前達は素直に応じないから何人の人間がしんだとおもってやがる!」
そして腰に隠していた斧の側面の部分で頭を狙ってきた。
アタシはすぐに腰のナイフを取り出して防いだが、ナイフが弾かれて森の中に消えていった。
驚いて逃げると思っていたのに、どうやらコイツらはアタシを気絶させてどこかに連れ去るようだわ。
もう本当に人間って最悪ね。素直に森に居ればよかったわ。
アタシは、後ろにステップし距離を空けて、背中から短弓を取り出した。
狙うのは、話しかけてきたボスっぽい奴よ!
一瞬呼吸を整えて弓を引き、額を狙った…………が、ボスの額には当たらず斧に弾かれていた。
「クッ! もう一度よ!」
アタシは距離を保つよう動きながら弓を引こうとするが、他の奴らがナイフを投げてアタシの足を狙って邪魔をしてくる。
「おい! お前ら、動きを止める為に怪我を負わすのは片方の太ももまでだからな!」
クソ! コイツらアタシをバカにして!
動き回って距離を保っていたから少し息が上がってきたけど、アタシは右の手に集中して魔法を唱えた。
「シルフ!」
ボスは大げさに転がって避けられてしまい、そこに残ったのは衝撃音と地面が少し抉れる態度だった。
「どうやら、そろそろ限界が近づいてきたか? 優しくしてやるからよ、もう諦めな」
悔しい! こんな奴らに! アタシは絶対に諦めないわ!
ジリジリと三人組は間合いを詰めてくるけど、アタシもそんなに甘くはないわよ!
素早く弓を引き胴体をねらった。
ボスには斧で防がれけど、ボスの後ろにいた奴には……ダメだわ脇腹を掠めた程度ね
残っている矢を全て使い切るペースで矢を放ったのに、ボスには全く当たらない。
他の奴らの腕や肩や脇腹を擦る程度で、これじゃ動きを封じる事はできていないわ。
「顔には傷をつけるなよ高く売れるからなぁ」
ボスは笑みを浮かべながら他の二人に言っていた。
エルフだけって事で急に目の色変えて物扱いにして…………
「何だいチビちゃん? おじさん達は忙しいんだよ」
「お前達は一体何をしている」
アタシはこの場には存在しなかった男の子の声が聞こえる方に振り向くと
肩まで伸びている少し癖のある黒髪のミディアムヘアーにオニキスのような黒目に中性的な整った顔立ち、多分アタシぐらいの歳の男の子がそこにいた。
「見てわかんねぇか? ありゃエルフなんだよ。長寿だからいつまでも若さを保つ事が出来て貴族や奴隷商人に大人気なんだよ。それにあいつらは人間と接触するのを嫌っていて、近づいただけで、精霊を使って人間に攻撃することもあるから、ほっとくと危ないんだよ。オレらは人類を守ってるんだよ。ヘヘヘ」
結局はアタシ達は人間達にとってはそんな物なのね……
男の子の表情がみるみる変化しアタシの為に怒ってくれているのかしら?
まだ純粋そうな子だからエルフと人間の関係は知らないんだろうな。
「ふざけんな! この世界の種族がどうとか人類を守るとか関係ねえ、お前が勝手に相手の領域を土足で踏み荒らしているだけだろ! お前らみたいな襲う事しか出来ない人生を諦めた人間の方がクズだよ! 何で、争う事しか考えないんだよ」
えっ! アタシの胸に男の子の言葉が響いた……
「一丁前に説教かガキが! てめぇみてぇな奴にはお仕置きが必要だな、容赦しねぇぞ!」
コイツらの目が血走ってる。男の子が青ざめた顔で震えてる。このままじゃ男の子が危ない!
「グワァー」
アタシはこの隙に、弓で近くにいた奴の肩を貫いて一人戦闘不能となった。
何とか一人片付けたわ……
「このくそアマがぁ!」
もう一人の奴がブチ切れて斧を持ってアタシに突進している。
怒りで冷静さを失っているわ、斧を振り下ろすだけの攻撃なんか今のアタシでも避けられるわ。
アタシは横に避けて距離を空けようとした瞬間に男が左手に持っていた砂をアタシの顔目掛けて投げかけた。
「痛っ!」
アタシの目に砂が入り、目が開けない。
聴覚を頼りに集中すると斧を振りかぶる音が聞こえた。
アタシは急いで弓を両手で持ち頭の上で構えた。
その瞬間に強い衝撃がアタシの両腕に響いて、受け止めた弓からピシッと大きな音が鳴った。
「チッ! クソがぁ!」
どうしよう! 弓が耐えられそうにないわ!
もう少し、あと少しで!
目が少しだけ開くことができた。
アタシは斧の間合いから離れて弓のが放てる位置まで移動した。 もう息が限界……
そして少しだけ、ボスと闘っている男の子の方を見たら、アタシと闘っていた奴が男の子の背後に向かっていた。
あっ! アタシのせいで男の子が……
「危ない! 後ろ!」
男の子はアタシの声に気づいて、背後からの一撃を剣で反らしていた。
しかしボスの斧が男の子に迫っていた。
「危ない! シルフお願い!」
なんとかボスの足に草が絡まって転倒させれた。
本当に危なかったわ。
とりあえずこれでら二対一ね。
そして男の子が私を気遣ってか、青ざめた顔で声をかけてきた。
「大丈夫?」
アンタがでしょ! それに何アタシを見てボォーってしてんの! 闘いの最中よ!
「アンタ前を見なさいよ、何ボォーとしてるのよ」
前を向くとボス達は体勢を整えていた。
男の子はアタシに魔法で攻撃できないか聞いてきた。
「もう無理よ。アンタを守ったので魔力が残ってないから精霊を呼べないわ」
「じゃあ弓は?」
「もう耐えられそうにないわ、後一本放つのが限界ね」
男の子も膝が震えている。もうこの子も限界かな。
アタシも膝に手をついて息を整えている。
「誰か! 力を貸して下さい! オレ達を助けて下さい」
男の子は馬車に向かって叫び出した。
もう良いよ。君は逃げてよ。
「キャッ」
そんな事を考えていたら右の太ももに燃える様な熱さと痛みが走った。
どうやらボス達が隠し持っていたナイフを投げてアタシの右の太ももに刺さっている。
「クソガキは殺して、エルフは売る前に俺たちの怖さを教えてやらないとな」
「へへへ、そうだな。でもそれじゃエルフが高く売れなくなってしまうぜ」
もう、これまでかな…………アタシは恐怖で震える声で男の子に話した。
「クッ! アンタだけでも逃げなさい! アタシが引きつけるから、馭者に馬車を走らすように言いなさい!」
「そんなことできない! オレも闘うから諦めんなよ!」
「膝が震えてるアンタに何が出来るのよ! 足手纏いなだけよ!」
何この震えるだけしかできない臆病者のくせに!
「もっと自分を大事にしろよ!」
「フン! その言葉そっくりあなたに返すわ!」
もう! 早く逃げなさいってば!
オドオドした男の子は急に真面目な顔になり、
「盗賊の一人を何秒足止めできる?」
えっ! 何急に? 今のアタシの状態を知ったら諦めて逃げてくれるかな?
「この足だと踏ん張れないし、デタラメに打って一発で、弓がダメになると思う。魔力が残ってないし、精霊魔法も大技は手の内がバレているから、小さい竜巻を起こして砂埃を上げるぐらいしかできないわ」
「えっ無理してない? そんなに動けるか?」
えっ? こっちが驚きなんですけど! どう言う事、アンタまだ闘うつもりなの? 見ず知らずのアタシの為に命張らなくていいわよ! 何かイライラしてくるわね!
「そんなこと知らないわよ! こっちも命懸けよ! ダメだったら意識を失ってアイツらに捕らえられるだけよ!」
男の子は泣きそうな笑顔でアタシに作戦を伝えた。
「相手が三メートル以内に来た時に竜巻を起こして、そしてすぐに矢を放って、当たらなくていいから」
「えっ! アンタ何言ってんの?」
「説明している時間はないから」
本当に大丈夫? でももう間に合わない! どうしよう!
ボス達がゆっくり男の子に近づいている。
残り二十メートル……
十五メートル…………
十メートル………………
八メートル……………………
五メートル…………………………
やだ! やだ! 死なないでよ!
ボス達が男の子に向かって走り出した。
「このガキが! 死に晒せ!」
そして、残り三メートル以内に入って来た。
「頼む今だ!」
男の子から指示を受けるとアタシは急いで精霊に力を借り全ての魔力を放出した。
「シルフよ竜巻を巻き上げて!」
もうアタシには砂が舞う程度の強風が一瞬駆け抜ける程度しか出来なかった…………助けれなかった…………
でも泣かない! 男の子の言った通りすぐ矢を放った。
「後は任せろ」
男の子の声が風に舞って聞こえてきた。
「【クロノス】」
「グワァー! オレの右手が」
「ケツが痛え! 何で右手が痺れてやがるんだ、あれ斧がねぇぞ」
男の子以外アタシも含めて一瞬の強風の間に何が起こったか分からない。
そして男の子が尻もちをついているボスの首元にサーベルの先を軽く押し付けていて、首から胸の方へ僅かな血がつたっていた。
その後突然、オドオドしていた男の子が冷静な声でボスを脅していた。
「いい加減にしないとこのまま刺すよ。それかもう一度同じ事しようか」
「くそ、引き上げろ! 馬車の中にも動ける奴がいるはずだ! このまま捕まるのは馬鹿らしいぜ!
負傷した奴らを捨てて逃げていく。
その後は馭者さんが馬車に乗っている人と協力して気絶しているこの悪い人間二人を縄で縛っていた。
そして、男の子の方を見ると、今だに馬車から少し離れた場所で立ちっぱなしでいた。
えっ! 立ったまま死んでないよね! 助けてもらって感謝も言えてないのに…………
右足をひきずりながら男の子に近づくと、男の子は疲れた顔をして立っていた。
良かったあ……
争い事とか嫌いな感じな人なのに、見ず知らずのアタシを助けにくるお人好しで、闘うのが怖いくせに必死に助けようと急にカッコよく見えてしまい、とっても不思議な人。
何かアタシの胸の中がモヤモヤしている。
アタシは自分達が助かった事に安堵して泣きそうになったのと、この子を失わなくて良かった事に泣きそうになった事を我慢して、命の恩人に対して感謝をするのと名前を聞きたかった。
「ありがとう助かったわ! アンタやるわねぇ。そうだアタシの名前はフィーネ。あなたの名前は? えっ? ちょっと?」
男の子が突然アタシの方へ倒れ込み、何とか地面に落ちないように肩で止めた。
「ごめんフィーナ、足……大丈……夫」
少し痛かったけど、こんな状態でも気遣ってくれるこの子と、密着した姿勢に胸がモヤモヤからドキドキに変化した。
ん!
「アタシの名前はフィーネ! フィーナじゃない!」
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チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
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平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
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気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
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