2 / 95
再会⑵
しおりを挟む
それから間もなくお開きとなり、二次会は何とか丁重にお断りして、お店を出る。お店の前には、同じタイミングで一次会が終わったと思われる団体が、ごった返していて縫うように離れていく。
少し早歩きしたのがマズかったのか、お店から少し離れると酔いが回って、立っていられなくなった。
「ねぇ~お兄さん大丈夫?ちょっとお店で休んで行く?」
そんなボクを見つけて、キラキラ着飾った女の人が強引に腕を引いてきた。
「いえ……だいじょう……」言いかけた所で、割って入ってくる声がある。
「すいません。この人、オレの連れなんで」
肩を抱きかかえられ、見上げると奥田先生だった。
「な……んで……」
「ちょっとだけ歩けるか?もたれかかってもいいから」
奥田先生は、ボクの体を支えながら、キラキラした女の人から遠ざかって行く。
少し行くと大きな公園があり、そこのベンチに座って休む。お水を飲んで座っていると、だいぶ楽になった。
「少しは良くなったか?」
奥田先生は、心配そうな顔をして覗き込んでくる。
「あっ……はい。お水もありがとうございます」
まだ10時前であり、夜の公園にもそれなりに人がいた。
「あ、あの……。先生は大丈夫だったんですか?その……誰か一緒だったとか……」
「いや……こっちも新しい教員の歓迎会で、ちょうど終わって店を出たら、しゃがみ込む真野が見えたんだ」
奥田先生は、高校で知り合った時から、小さことによく気づく。ボクなんて、クラスでも大人しくて目立たない存在で、他の先生には名前を間違えられたり、スルーされてしまう事があったが、奥田先生には良いところも悪いところも、気づかれることが多かった。
今日だって、奥田先生が声をかけてくれなかったら、ちょっとヤバめなお店に連れ込まれていたかもしれない。
「少し落ち着いたなら、タクシー拾って来るけど」
そう言って立ち上がろうとする先生を遮るように声を出す。
「大丈夫です。さっきは急いで動いたから、酔いが急激にまわったみたいで、もう落ち着いたので地下鉄で帰れます」
「そうか?じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
高校生の時だって、特別仲が良かった訳ではなく、先生にとっては、生徒の一人に過ぎなかったと思う。唯一、ボクが入り浸っていた図書室で先生と会うことが多く、会えば一言二言話をする、ただそれだけだった。
だけど、3年間変わらなかったクラス担任より、奥田先生とやり取りした会話の方が鮮明に覚えていて、ふとした瞬間に思い出すこともあった。
なぜかわからないけど、ボクにとって奥田先生はちょっと特別だった。
一緒に地下鉄で帰ると、奥田先生の家とボクの家の最寄り駅が一緒であることがわかった。
何という偶然……。
職場にも、地下鉄の最寄り駅からも近くて、家賃が手頃でという理由で、先月一人暮らしをするために引っ越して来たばかりだった。
「こんな偶然あるんだな。じゃあ、今度仕事帰りに会えたら、飯でも行くか。ここら辺は美味しい店が多いんだよ」
「はい。ぜひ」
そんな会話をして、先生とは別れた。先生の後ろ姿を見送りつつ、さっき調子悪かったのが、嘘のように足取り軽く家路へと向かった。
少し早歩きしたのがマズかったのか、お店から少し離れると酔いが回って、立っていられなくなった。
「ねぇ~お兄さん大丈夫?ちょっとお店で休んで行く?」
そんなボクを見つけて、キラキラ着飾った女の人が強引に腕を引いてきた。
「いえ……だいじょう……」言いかけた所で、割って入ってくる声がある。
「すいません。この人、オレの連れなんで」
肩を抱きかかえられ、見上げると奥田先生だった。
「な……んで……」
「ちょっとだけ歩けるか?もたれかかってもいいから」
奥田先生は、ボクの体を支えながら、キラキラした女の人から遠ざかって行く。
少し行くと大きな公園があり、そこのベンチに座って休む。お水を飲んで座っていると、だいぶ楽になった。
「少しは良くなったか?」
奥田先生は、心配そうな顔をして覗き込んでくる。
「あっ……はい。お水もありがとうございます」
まだ10時前であり、夜の公園にもそれなりに人がいた。
「あ、あの……。先生は大丈夫だったんですか?その……誰か一緒だったとか……」
「いや……こっちも新しい教員の歓迎会で、ちょうど終わって店を出たら、しゃがみ込む真野が見えたんだ」
奥田先生は、高校で知り合った時から、小さことによく気づく。ボクなんて、クラスでも大人しくて目立たない存在で、他の先生には名前を間違えられたり、スルーされてしまう事があったが、奥田先生には良いところも悪いところも、気づかれることが多かった。
今日だって、奥田先生が声をかけてくれなかったら、ちょっとヤバめなお店に連れ込まれていたかもしれない。
「少し落ち着いたなら、タクシー拾って来るけど」
そう言って立ち上がろうとする先生を遮るように声を出す。
「大丈夫です。さっきは急いで動いたから、酔いが急激にまわったみたいで、もう落ち着いたので地下鉄で帰れます」
「そうか?じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
高校生の時だって、特別仲が良かった訳ではなく、先生にとっては、生徒の一人に過ぎなかったと思う。唯一、ボクが入り浸っていた図書室で先生と会うことが多く、会えば一言二言話をする、ただそれだけだった。
だけど、3年間変わらなかったクラス担任より、奥田先生とやり取りした会話の方が鮮明に覚えていて、ふとした瞬間に思い出すこともあった。
なぜかわからないけど、ボクにとって奥田先生はちょっと特別だった。
一緒に地下鉄で帰ると、奥田先生の家とボクの家の最寄り駅が一緒であることがわかった。
何という偶然……。
職場にも、地下鉄の最寄り駅からも近くて、家賃が手頃でという理由で、先月一人暮らしをするために引っ越して来たばかりだった。
「こんな偶然あるんだな。じゃあ、今度仕事帰りに会えたら、飯でも行くか。ここら辺は美味しい店が多いんだよ」
「はい。ぜひ」
そんな会話をして、先生とは別れた。先生の後ろ姿を見送りつつ、さっき調子悪かったのが、嘘のように足取り軽く家路へと向かった。
1
あなたにおすすめの小説
溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集
あかさたな!
BL
全話独立したお話です。
溺愛前提のラブラブ感と
ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。
いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を!
【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】
------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜
黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。
だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。
しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──?
年上執着×年下強気
二人の因縁の恋が、再始動する。
*アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
百戦錬磨は好きすぎて押せない
紗々
BL
なんと!HOTランキングに載せていただいておりました!!(12/18現在23位)ありがとうございます~!!*******超大手企業で働くエリート営業マンの相良響(28)。ある取引先の会社との食事会で出会った、自分の好みドンピシャの可愛い男の子(22)に心を奪われる。上手いこといつものように落として可愛がってやろうと思っていたのに…………序盤で大失態をしてしまい、相手に怯えられ、嫌われる寸前に。どうにか謝りまくって友人関係を続けることには成功するものの、それ以来ビビり倒して全然押せなくなってしまった……!*******百戦錬磨の超イケメンモテ男が純粋で鈍感な男の子にメロメロになって翻弄され悶えまくる話が書きたくて書きました。いろんな胸キュンシーンを詰め込んでいく……つもりではありますが、ラブラブになるまでにはちょっと時間がかかります。※80000字ぐらいの予定でとりあえず短編としていましたが、後日談を含めると100000字超えそうなので長編に変更いたします。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる