28 / 95
事故⑴
しおりを挟む
季節は夏から秋に変わり、夜になると肌寒く感じることが増えた。ボクと先生は、大きく変わらずだったけど、キスしたりハグしたりのスキンシップは増えた。先生は、ゲイであることをカミングアウトしてるわけではないから、外では今まで通り変わりないけど……
今日は、先生とご飯を食べる約束をしていて、残業せずに帰りたかった。でも、就業間際に資料室で必要なはファイルを探すことになって、少し気が急っていたのかもしれない。
下段の棚には見つからず、最上段のボックスにも手を伸ばす。何とか背伸びをしてギリギリ取れそうな高さだったから、不精をして踏台を使わずに取っていたところに、一緒に探していた都築さんが軽くぶつかってきた。ボックスは、なかなかの重さで、思いっきり姿勢を崩してボックスごと転倒してしまう。
「うわー」
「真野!!」
ボクは持っていたボックスの中身を盛大に撒き散らして、意識が途切れた。
1分程意識が消失していたようで、気づくと都築さんが必死にボクの名前を呼んでいる。
「あぁ……よかった……気づいたか……」
「いっ……た」
体を起こそうとすると、無理するなと止められた。
「ごめんな。俺がぶつかったせいで」
「大丈夫です。踏み台を使わなかったボクが悪いので……」
意識は戻ったものの頭を打っているということで、そのまま病院に担ぎ込まれてしまった。病院では、軽い脳震盪と右手小指の亀裂骨折で全治2週間と言われ、念のため1日入院になってしまった。
あーあ……ついてない……
「真野、本当にごめん。オレのせいでこんな怪我させてしまって」
病室で頭を下げ続ける都築さんがいる。都築さんは、病院に付き添ってくれて、全ての検査が終わって病室のベットにいるボクに頭を下げていた。診察を終えて、仰々しく右手につけられたギプスを見て、都築さんはまた顔を歪めてしまったのだ。
「顔を上げてください。都築さんは悪くないですよ。もう、謝らないで下さい。痛みはほとんどないですから」
「俺がボーッとしてたから……」
確かに、今日の都築さんはずっと上の空で、調子が悪そうだった。
「何かあったんですか?」
「え……?」
「今日の都築さんは、いつもと様子が違ったから……」
都築さんは、一瞬バツが悪そうな顔をしたけど、ボクへの負い目からか観念して口を開く。
「俺に年下の彼女がいるのは知ってるよな……」
「あー、高校生の?」
「……まあ……そうだ。その子とちょっと揉めてて……はぁ……真野には何だか偉そうなこと言ってたのに、俺も上手くコミュニケーションが取れてなかったってことだよ……」
頭をガシガシ掻いてショボくれている都築さんの姿は、新鮮で何だか笑ってしまう。
「都築さんでも、そんなに余裕がなくなちゃうことがあるんですね。あははっ」
「何だよそれ。笑うなよ」
「彼女のこと、すごく大切なんですねー。ふふふふ……」
「あーもう、うるさいなぁ!」
今日は、先生とご飯を食べる約束をしていて、残業せずに帰りたかった。でも、就業間際に資料室で必要なはファイルを探すことになって、少し気が急っていたのかもしれない。
下段の棚には見つからず、最上段のボックスにも手を伸ばす。何とか背伸びをしてギリギリ取れそうな高さだったから、不精をして踏台を使わずに取っていたところに、一緒に探していた都築さんが軽くぶつかってきた。ボックスは、なかなかの重さで、思いっきり姿勢を崩してボックスごと転倒してしまう。
「うわー」
「真野!!」
ボクは持っていたボックスの中身を盛大に撒き散らして、意識が途切れた。
1分程意識が消失していたようで、気づくと都築さんが必死にボクの名前を呼んでいる。
「あぁ……よかった……気づいたか……」
「いっ……た」
体を起こそうとすると、無理するなと止められた。
「ごめんな。俺がぶつかったせいで」
「大丈夫です。踏み台を使わなかったボクが悪いので……」
意識は戻ったものの頭を打っているということで、そのまま病院に担ぎ込まれてしまった。病院では、軽い脳震盪と右手小指の亀裂骨折で全治2週間と言われ、念のため1日入院になってしまった。
あーあ……ついてない……
「真野、本当にごめん。オレのせいでこんな怪我させてしまって」
病室で頭を下げ続ける都築さんがいる。都築さんは、病院に付き添ってくれて、全ての検査が終わって病室のベットにいるボクに頭を下げていた。診察を終えて、仰々しく右手につけられたギプスを見て、都築さんはまた顔を歪めてしまったのだ。
「顔を上げてください。都築さんは悪くないですよ。もう、謝らないで下さい。痛みはほとんどないですから」
「俺がボーッとしてたから……」
確かに、今日の都築さんはずっと上の空で、調子が悪そうだった。
「何かあったんですか?」
「え……?」
「今日の都築さんは、いつもと様子が違ったから……」
都築さんは、一瞬バツが悪そうな顔をしたけど、ボクへの負い目からか観念して口を開く。
「俺に年下の彼女がいるのは知ってるよな……」
「あー、高校生の?」
「……まあ……そうだ。その子とちょっと揉めてて……はぁ……真野には何だか偉そうなこと言ってたのに、俺も上手くコミュニケーションが取れてなかったってことだよ……」
頭をガシガシ掻いてショボくれている都築さんの姿は、新鮮で何だか笑ってしまう。
「都築さんでも、そんなに余裕がなくなちゃうことがあるんですね。あははっ」
「何だよそれ。笑うなよ」
「彼女のこと、すごく大切なんですねー。ふふふふ……」
「あーもう、うるさいなぁ!」
1
あなたにおすすめの小説
溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集
あかさたな!
BL
全話独立したお話です。
溺愛前提のラブラブ感と
ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。
いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を!
【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】
------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜
黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。
だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。
しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──?
年上執着×年下強気
二人の因縁の恋が、再始動する。
*アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
百戦錬磨は好きすぎて押せない
紗々
BL
なんと!HOTランキングに載せていただいておりました!!(12/18現在23位)ありがとうございます~!!*******超大手企業で働くエリート営業マンの相良響(28)。ある取引先の会社との食事会で出会った、自分の好みドンピシャの可愛い男の子(22)に心を奪われる。上手いこといつものように落として可愛がってやろうと思っていたのに…………序盤で大失態をしてしまい、相手に怯えられ、嫌われる寸前に。どうにか謝りまくって友人関係を続けることには成功するものの、それ以来ビビり倒して全然押せなくなってしまった……!*******百戦錬磨の超イケメンモテ男が純粋で鈍感な男の子にメロメロになって翻弄され悶えまくる話が書きたくて書きました。いろんな胸キュンシーンを詰め込んでいく……つもりではありますが、ラブラブになるまでにはちょっと時間がかかります。※80000字ぐらいの予定でとりあえず短編としていましたが、後日談を含めると100000字超えそうなので長編に変更いたします。すみません。
アズ同盟
未瑠
BL
事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。
一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。
アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て
……いや、お前は誰だ?
やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。
アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる