29 / 95
事故⑵
しおりを挟む
「真野?」
ベットのすぐ隣の戸口から、聞き慣れた声が聞こえて、視線を向けると奥田先生が立っていた。今日、先生と会う約束をしていたから、入院することになってしまったことを連絡していたのだ。大丈夫だから心配いらないって言ったんだけど、面会時間に間に合うように急いで来てくれたようだ。
「先生……」
「おまっ……何が大丈夫だよ。腕も怪我してるんじゃ……」
「いや……ギプスで大袈裟に見えるだけで、小指にヒビが入っただけなんですよ」
険しい顔の先生に詰め寄られ、なんとかなだめる。
「あ……あのぅ……えっと……」
突然の険しい表情の先生の来室に、困惑気味の都築さんがいる。
「あーえっと……こちらは……」
都築さんに先生を紹介しようとして、なんて言っていいか迷う。
どうしよう……何て言えばいいのかな……
そんなボクの様子を察してか、先生が言葉を繋げる。
「あーオレは、奥田春人と言います。真野……匠とは、親戚みたいなものです」
「え……あ……俺は同じ職場の都築秋平と言います。すいません。俺のせいで真野に怪我させてしまいました」
都築さんは先生に向かって深々と頭を下げる。
「先生、違うんだ。都築さんは悪くないから。ボクが不精しちゃったから……」
一瞬会話が途切れた時、面会時間終了のアナウンスが流れてきた。
「都築さん、こいつもこう言ってるし、あなただけが悪いわけではなさそうですから、頭を上げてください。あと、ま……匠、何かいるものはないか?買ってくるけど」
「あ、いや。明日退院できるし。今日必要な物は、都築さんが用意してくれたから」
「そうか……」
さっきから、先生に苗字ではなく名前で呼ばれて、密かにドキドキしていた。今日は先生と会う約束していたし、このまま先生と一緒に帰れないことが寂しい。
「じゃあ真野、明日退院するとき迎えに来るよ。その手じゃ何かと不便だろ」
「いや、明日はオレが来るから、都築さんは大丈夫ですよ」
先生は微笑んではいるけど、何だか都築さんに対して圧が強い。
変な誤解をしていなきゃいいんだけど……
「都築さん。先生に迎えに来てもらうので……ありがとうございます」
「え……あ……そうか。じゃあ、お大事にな。それでは俺はこれで……」
「今日は、遅くまでありがとうございました。それと……早く彼女さんと仲直りしてくださいね」
最後の一言に、やや苦笑して病室から出て行く。
都築さんがいなくなると、先生は徐ろにカーテンを閉めて2人だけの空間を作る。
「先生?」
「はぁー。やっと2人になれた。ほんっとにお前は……心配したよ」
そう言うと、ボクを優しく抱きしめる。
「先生っ……ここ、病室ですよ……」
「見えてないよ。ちょっとだけ……」
「もしかして、都築さんに妬いてました?」
「……そんなことないよ……」
ちょっとだけと言っていた割には、しばらく離してくれなくて、先生には怪我だけでなく、かなり心配をかけてしまったようだ。
ベットのすぐ隣の戸口から、聞き慣れた声が聞こえて、視線を向けると奥田先生が立っていた。今日、先生と会う約束をしていたから、入院することになってしまったことを連絡していたのだ。大丈夫だから心配いらないって言ったんだけど、面会時間に間に合うように急いで来てくれたようだ。
「先生……」
「おまっ……何が大丈夫だよ。腕も怪我してるんじゃ……」
「いや……ギプスで大袈裟に見えるだけで、小指にヒビが入っただけなんですよ」
険しい顔の先生に詰め寄られ、なんとかなだめる。
「あ……あのぅ……えっと……」
突然の険しい表情の先生の来室に、困惑気味の都築さんがいる。
「あーえっと……こちらは……」
都築さんに先生を紹介しようとして、なんて言っていいか迷う。
どうしよう……何て言えばいいのかな……
そんなボクの様子を察してか、先生が言葉を繋げる。
「あーオレは、奥田春人と言います。真野……匠とは、親戚みたいなものです」
「え……あ……俺は同じ職場の都築秋平と言います。すいません。俺のせいで真野に怪我させてしまいました」
都築さんは先生に向かって深々と頭を下げる。
「先生、違うんだ。都築さんは悪くないから。ボクが不精しちゃったから……」
一瞬会話が途切れた時、面会時間終了のアナウンスが流れてきた。
「都築さん、こいつもこう言ってるし、あなただけが悪いわけではなさそうですから、頭を上げてください。あと、ま……匠、何かいるものはないか?買ってくるけど」
「あ、いや。明日退院できるし。今日必要な物は、都築さんが用意してくれたから」
「そうか……」
さっきから、先生に苗字ではなく名前で呼ばれて、密かにドキドキしていた。今日は先生と会う約束していたし、このまま先生と一緒に帰れないことが寂しい。
「じゃあ真野、明日退院するとき迎えに来るよ。その手じゃ何かと不便だろ」
「いや、明日はオレが来るから、都築さんは大丈夫ですよ」
先生は微笑んではいるけど、何だか都築さんに対して圧が強い。
変な誤解をしていなきゃいいんだけど……
「都築さん。先生に迎えに来てもらうので……ありがとうございます」
「え……あ……そうか。じゃあ、お大事にな。それでは俺はこれで……」
「今日は、遅くまでありがとうございました。それと……早く彼女さんと仲直りしてくださいね」
最後の一言に、やや苦笑して病室から出て行く。
都築さんがいなくなると、先生は徐ろにカーテンを閉めて2人だけの空間を作る。
「先生?」
「はぁー。やっと2人になれた。ほんっとにお前は……心配したよ」
そう言うと、ボクを優しく抱きしめる。
「先生っ……ここ、病室ですよ……」
「見えてないよ。ちょっとだけ……」
「もしかして、都築さんに妬いてました?」
「……そんなことないよ……」
ちょっとだけと言っていた割には、しばらく離してくれなくて、先生には怪我だけでなく、かなり心配をかけてしまったようだ。
1
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる