忘れられない思い

yoyo

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共同生活⑵

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   先生の部屋は、もう何度も来た事があって、いつも綺麗に片付いていたけど、今日はいつも以上にすっきり片付けてあった。ボクを泊めるために、いつも以上に掃除をしてくれたのかもしれない。
   部屋に入ると、後ろから腕を回されて、先生に抱きしめられる。先生の温もりを感じて、回された腕に自由が利く左手を重ねる。


「ふふっ……どうしたんですか?」

「昨日から我慢してたんだ。ものすごく心配して病院に行ったら、真野は知らない男と楽しそうに話しをしてるし……」

「やっぱり、妬いてたんじゃないですか。でも、都築さんは彼女いますよ。それも高校生の」

「こっ、高校生?職業的に気になるけど……でも、ま、年の差で言うとオレも人のことは言えないからな」


   ふと、昨日は名前で呼んでくれてたのに、もう呼んでくれないのかなとぼんやり思っていると、先生に体を反転させられて、顔を覗き込まれる。目が合い、何でもないと軽く首を振ると唇を重ねてきた。

   夜ご飯はお弁当でいいと言ったけど、明日からしばらくお弁当になると思うからと今日はオレが作ると譲らなかった。作り方の指導と味見はボクの仕事になったけど。
   ボクが食べやすいのと作りやすいということで、炒飯を作ることになった。炒飯は、卵とネギとベーコンのシンプルなもので、それに中華スープを付け足す。先生は料理はほとんどしないと言っているけど、手際が良くあっという間に炒飯も作ってしまい、ボクはただ隣に立っていただけだ。


「先生、ボクがいなくても何も問題なく作れますよね」

「そんなことないよ。真野がそばにいることが一番重要なのに。はい、味見」

   口元にスプーンを向けられ、口に含むと味付けも問題なく美味しい。


「おいひーです」

「それなら良かった。じゃあ、ご飯にしようか」


   テーブルに炒飯とスープが置かれるが、いざ食べようとするとスプーンがない。

「あ、スプーン。どこでしたっけ?」

「まてまて。はい、あーん」


   スプーンを取りに行こうとしたボクを止めて、先程のように炒飯の乗ったスプーンを近づけてくる。

「いやいや。1人で食べれますから」

「左手だと食べにくいでしょ。ほらほら、あーん」


   完全に面白がっている先生を恨めしそうに見るが、ニヤニヤしているだけでやめてくれそうにない。せっかくの炒飯が冷めてしまうのも、勿体無くて観念して口を近づけ、スプーンを咥える。一瞬、先生の動きが止まったので「スキありっ」と左手で先生の手からスプーンを奪うことに成功する。


「面白がって、ふざけないでください。左手でも食べれますから。ほらっ!」

   左手で炒飯をすくい、得意げに先生に見せると「あぁ……」と言ったきりそれ以上はからかってくることはなかった。いつもなら、もうしばらく面白がっていじわるしてくるところだけど、今日はそれがなくて少し拍子抜けだ。
   何か気にさわることしたかな……と思ったけど、そのあといつもの先生に戻っていたので、思い過ごしのようだ。
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