忘れられない思い

yoyo

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家族⑸

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「春おじさん、もう帰っちゃうの?まだ、休みあるんだから、もう少しいればいいのに」


   しょんぼり顔の小夏こなつが、足元にまとわりついている。この2日の滞在ですっかり懐かれてしまった。小夏は、美鈴の娘で今年小学生になったばかりだ。今回の滞在中は実家に泊まるつもりだったけど、1日目に美鈴の家で夕食に呼ばれて行ったのをきっかけに小夏に「このまま泊まって」と泣きつかれて、結局実家には帰らず、3日間お世話になってしまった。小夏の弟の柚夏ゆずきもやっとオレに慣れて、目を合わせても泣かなくなったところだった。


「小夏、わがまま言ったらダメだよ」


   美鈴の夫の樹生いつきが、小夏に声をかける。そして、オレの方を向いて声をかけてきた。


「春人くん、今度は、ぜひ2人で遊びにきてね」






   母親と病室で話をした日、病室を出ていた美鈴がちょうどお見舞いに来た樹生と小夏、柚夏と一緒に戻ってきた。4人部屋は、一気に人が増えて賑やかになり、あまり長居するのも他の患者さんにも申し訳なく、母親に帰る前にもう一度、顔を出すと告げて、病室を後にする。そのあと、実家に帰ろうとしたオレを美鈴と樹生が夕食に誘ってくれた。
   美鈴の家は、実家と病院のちょうど真ん中くらいの場所で、車で15分ほどだった。今まで、実家で美鈴家族と会ったことは何度もあったが、美鈴の家に行くのは初めてだった。
   みんなで賑やかに夕食を食べ終わる頃には、ちょっと緊張気味だった小夏もすっかり慣れて、べったりになっていた。


「はぁ~やっと寝たよ。春人はよっぽど気に入られたみたいだね。最後まで一緒寝たかったと寝てる間に帰らないよねと言っていた」


   小夏の寝かしつけを終えた美鈴がリビングに戻ってきた。そんな言葉に苦笑で返すしかない。


「いや……でも、今日、泊まっちゃって本当にいいのか?ここから実家までそんなにかからないし、帰るよ?」

「何言ってるの。明日の朝、春人がいなかったら小夏は大荒れだよ。そうなったら、ちょっと面倒くさいんだから、春人が今日帰ることは許さないよ」

「春人くん、小夏のお守りさせちゃってごめんね。でも僕も春人くんとは、ゆっくり話したかったから是非ゆっくりしていってよ」


   樹生とは、今までも盆や正月など家族で集まる機会の時に話すことはあったけど、オレがあまり実家に寄り付かなかったこともあり、軽く話をした程度だった。オレのことは話したことがなかったけど、3年前の葬式の一件もあったし、美鈴のことだからサクッと話しているのだろうなと思っている。
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