【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。

涼石

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第3話 子どもが素晴らしいのは親のおかげ。子どもが駄目なのは娘自身の問題。

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教会脇にある村の集会所が、学校になった。

8人ほどの中に、見たことがある顔ぶれも何人か並んでいた。

「今日から皆さんのクラスを受け持ちます。
わからないところがあれば、遠慮なく質問してください」

大人が来るとばかり思っていた。
そんな彼らにとっては、アリシアの登場は想定外だった。

戸惑いと反発心が、見え隠れする。

「なんで、お前が先生なんだよ?」

生徒の一人が、おもしろくなさそうに声を上げる。
この街に初めて来た頃、パン屋までの道をアリシアに教えてくれた子だった。

「教える人が足りないからです。
初歩の勉強について、私は学び終えているので皆さんの担当になりました。」

「勉強なんて役に立つのかよ!」

別な男の子が、声をあげる。

彼は、近所の農民の子だ。

ここで勉強するよりも、畑仕事のほうが役に立つと言っている大人も多い。
子どもも農家の働き手と考えている親にとって、学校はいい迷惑だった。

そんな両親の愚痴を、聞いてるのかもしれない。

アリシアは、首を傾げる。

「役に立つかはわからないわ」

「なんだよ!それ!無責任じゃん!!」

「だって未来のことなんて、私には分からないもの」

アリシアは、一人一人の目を見る。

「ただ・・・"あんなこと教わったけど、役に立たないや。"という将来なら問題ないけど、"教わっておけばよかった。"って未来が来た時、絶対に後悔すると思うの。
だったら、教わっていた方が人生的にお得だと思うわ」

アリシアはそう言って、逆の方に首を傾げる。

彼女に反論できる子は、誰もいなかった。

「それじゃ、今日から文字の勉強を始めますね」

静かになった教室に、アリシアの声が響いた。




数年がたち、彼女が教鞭をとることに慣れてきた頃、オリスナは地方にいる貴族の子息たちを王都アカデミーへと送り出す私設教育機関を立ち上げた。
自身が中央アカデミーを卒業していることと、当時送り出した貴族子息の何名かが非常に優秀だったことが重なり、事業は大当たりをした。

収入も増え、親族でも一目置かれるようになった。

オリスナは、アリシアの教えるクラスを2クラスに増やし、空いている時間は彼女自身の淑女教育と私設教育機関での勉強にあてるように命じた。

アリシアは少し変わった視点を持ち、子どもたちの個性に合わせた教育を試行錯誤していた。

オリスナは、それをよく思っていなかった。

子どもの個性を重視した教え方は効率も悪く、なにより自分の教育方針を無視されているようで彼をイライラさせた。

そのことに触れるとアリシアが反発するため、毎回怒鳴りつけ、彼女が反省し謝罪するまで叱責し続けた。

マリアはそんな様子を収めるために、アリシアを自室に呼んだ。

「アリシア、お父様を怒らせてはいけません。
あなたが大人になって、素直にお父様の意見を聞けばお父様も怒らないと思うわ。
あなたは頑固すぎるのよ」

アリシアは何も言わず、いつものように黙って下を向いていた。

「もう下がりなさい」

そう言うとアリシアは一礼し、部屋を出ていった。

(本当に暗い子。
どうしてあんなになってしまったのかしら・・・)

マリアにはわからない。
同じように育てている妹のエミリアはよく笑い、オリスナとの関係も良好だ。

オリスナもエミリアには、怒鳴ったことがない。

(同じように育てているはずなのに、アリシアはどうしてあんな風に育ってしまったのかしら?)

アリシアの見た目は美しい。
家族の誰にも似ず、神殿の彫刻のような整い方をしている。

黙っていると近寄りがたく、たまにふわりと見せる笑顔に人は引き込まれる。

オリスナが宮殿で仕事をしていた頃、まだ小さい彼女が外に出ると人の注目を集めることが多かった。

マリアもそんな子が、自分の子であることが誇らしかった。

そう・・・優れた子の母親であるマリアは、他の母親よりも優れているはずだった。


それなのに、今ではアリシアがオリスナの機嫌を損ねる度に、マリアも悪いように言われる。

(なぜ、私が責められるのよ!)


必死にこの家を支え、オリスナに尽くしている私が


(アリシアのせいだわ)


今のアリシアには、同じくらいの子の友人がいない。

村の子から、一線を引かれている。
マリアはそれも気に入らなかった。

妹のエミリアはそんなことはないのに。

それもこれも、変わり者で子どもらしくないあの子が悪いのだ。

(あの子に問題があるから、拗れるのよ。
あの子がもっと素直になれば、私がこんな苦労しなくて済むのに)

あの子が出来損ないと思われることは、マリアの子育てを・・・マリア自身の価値を否定されることのように思えて耐え難かった。

(私がきちんと育てているのだから、アリシアは私の自慢の娘になるべきなのよ)

マリアはこめかみを押さえ、深いため息をもらした。


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