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第15話 変わらぬ父。変わった娘。愛されたいとはもう思わない。
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ノックをし、父オリスナの書斎へと入っていく。
「お父様、ただいま戻りました。」
「今回のことは、手紙で読んだ。
あんな男を選ぶとは、お前も見る目がないな」
鼻先で嗤うオリスナ。
(あの男との婚姻を強引に進めたのは、あなたでしょうに)
オリスナの脳内では、自分が決めた婚姻であることは綺麗に忘れられているようだった。
「まあ、仕方がない。
妻を当てにして借金をするなど、男として論外だ。
あの家と付き合いがなくなっても、今の我が家にはさして問題もないしな。
もっと良い相手を探してやるから、安心しろ」
オリスナは機嫌良さげに、にやりと笑う。
普段ならば、離婚したアリシアを機嫌よく受け入れるわけがない。
フリード子爵家が事業に失敗していたらしいとは聞いていたが、どうやら本当のようだ。
なんの旨味もない家と関係を持つより、別家にアリシアを嫁がせて、クルード家の勢力拡大を、彼は考えていた。
この離婚は、むしろ好都合なのだろう。
「それはお断りいたします」
アリシアはまっすぐにオリスナをみつめる。
「なに?」
彼のこめかみがぴくりと動く。
「私は一度、家のために身を奉げました。
二度目は自分で道を決めたいと思います」
「それは、私の決定に逆らうということか?」
「はい。私は・・・」
「ふざけるな!!」
アリシアの言葉を遮り、怒鳴りつける。
「お前のことを思ってのことだぞ!
大体、離婚されて傷物になったお前に、女としての価値なぞないんだ!
それをなんとかしようという親心がお前にはわからんのか!!」
(・・・・変わってない・・・)
怒鳴りつけ、罪悪感を煽るもの言い。
小さい頃からこれを聞くと、自分が悪いんじゃないかと思って話せなくなった。
大人しく言うことを聞いていれば、愛されて幸せになれると信じていた。
でも、その結果はどうだったのか?
今の彼女が、家の・・・父であるオリスナの言いなりの結果だ。
「わかりません。私のことを思っての言葉だとは少しも思いません。
”傷物”という言葉を平気で使って攻撃してくるあなたの親心など、理解したいとも思いません」
「生意気な!!お前のようなやつは出ていけ!!
二度と敷居はまたぐな!!」
歯をむき、目を血走らせて怒る様子を見ながら、アリシアの心は以前と同様に悲しみに満ちていた。
ただ、以前とは違い、愛されるために父に従おうという気持ちは微塵もわかなかった。
心が凪いでいく。
なぜか、リュウの笑顔が脳裏に浮かんできた。
「そういたします。失礼いたしますわ。」
笑顔でアリシアは一礼をした。
彼女の人生で最高に美しいカテーシーだった。
「お父様、ただいま戻りました。」
「今回のことは、手紙で読んだ。
あんな男を選ぶとは、お前も見る目がないな」
鼻先で嗤うオリスナ。
(あの男との婚姻を強引に進めたのは、あなたでしょうに)
オリスナの脳内では、自分が決めた婚姻であることは綺麗に忘れられているようだった。
「まあ、仕方がない。
妻を当てにして借金をするなど、男として論外だ。
あの家と付き合いがなくなっても、今の我が家にはさして問題もないしな。
もっと良い相手を探してやるから、安心しろ」
オリスナは機嫌良さげに、にやりと笑う。
普段ならば、離婚したアリシアを機嫌よく受け入れるわけがない。
フリード子爵家が事業に失敗していたらしいとは聞いていたが、どうやら本当のようだ。
なんの旨味もない家と関係を持つより、別家にアリシアを嫁がせて、クルード家の勢力拡大を、彼は考えていた。
この離婚は、むしろ好都合なのだろう。
「それはお断りいたします」
アリシアはまっすぐにオリスナをみつめる。
「なに?」
彼のこめかみがぴくりと動く。
「私は一度、家のために身を奉げました。
二度目は自分で道を決めたいと思います」
「それは、私の決定に逆らうということか?」
「はい。私は・・・」
「ふざけるな!!」
アリシアの言葉を遮り、怒鳴りつける。
「お前のことを思ってのことだぞ!
大体、離婚されて傷物になったお前に、女としての価値なぞないんだ!
それをなんとかしようという親心がお前にはわからんのか!!」
(・・・・変わってない・・・)
怒鳴りつけ、罪悪感を煽るもの言い。
小さい頃からこれを聞くと、自分が悪いんじゃないかと思って話せなくなった。
大人しく言うことを聞いていれば、愛されて幸せになれると信じていた。
でも、その結果はどうだったのか?
今の彼女が、家の・・・父であるオリスナの言いなりの結果だ。
「わかりません。私のことを思っての言葉だとは少しも思いません。
”傷物”という言葉を平気で使って攻撃してくるあなたの親心など、理解したいとも思いません」
「生意気な!!お前のようなやつは出ていけ!!
二度と敷居はまたぐな!!」
歯をむき、目を血走らせて怒る様子を見ながら、アリシアの心は以前と同様に悲しみに満ちていた。
ただ、以前とは違い、愛されるために父に従おうという気持ちは微塵もわかなかった。
心が凪いでいく。
なぜか、リュウの笑顔が脳裏に浮かんできた。
「そういたします。失礼いたしますわ。」
笑顔でアリシアは一礼をした。
彼女の人生で最高に美しいカテーシーだった。
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