竜の国の人間様

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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忙しい毎日

嬉しいニュース

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 離れのベルが耳をくすぐって、僕は惰眠から目を覚ました。ロバートが先週地方遠征から戻ってきていたので、ここ二日ほど僕の側に居る。一方、ロバートが居るのでバルトは領地の管理を兼ねて出掛けてしまった。

 僕が妊娠している事もあって、ロバートとバルトのどちらかが必ず王都に居る様に仕事を調整しているみたいだ。それは僕には心強い。メダも居たり居なかったりで案外当てにならないからだ。


 ベッドから起き上がったロバートは、全裸で扉まで歩き寄るとドア越しに誰かと話しをしている。ぼんやりロバートの滑らかに揺れる尻尾をニンマリしながら眺めていると、ロバートが小さな水差しからカップに液体を注いで僕の方へ戻って来た。

「目が覚めたかい?流石にあの音では起きてしまうね。さぁこれを飲んで?」

 朝の駆けつけ一杯のポーションドリンクは、妊娠してからの僕の栄養補助食品の様なものだ。メンフィス先輩と僕のミル研究チーム、そしてダグラスの全面協力の元で完成された画期的なこの飲み物は、妊娠した者が必要な魔素に特化したポーションだ。


 メンフィス先輩は凄いとは思っていたけど、想像より頭ひとつ凄かった。今やメンフィス先輩の開発した紙薬はダグラスとの共同開発で騎士団の遠征には欠かせない常備品になりつつある。

 今はダグラスがただ同然でお試しとして配布しているけれど、きっと必需品になったらいい値段で売り捌くに違いない。本当あの熊は商売上手だ。


 僕は変わり映えしない味に飽きたなと思いながら、素直にロバートに飲ませてもらった。普通に自分で飲んだ方が速いのだけど、そうすると夫たちが酷く悲しげにするので、甘んじて飲ませてもらっているんだ。

 この世界の、給餌行動が愛情の示し方と言うのは、正直面倒だなと思っているのは内緒だ。

 僕がドリンクを飲み切ると、嬉しげに微笑んで朝のキスをするロバートにキスを返した。足首に巻き付く滑らかな虎模様の尻尾を堪能しつつ、顔を上げてロバートに尋ねた。


 「さっき何を話していたの?」

 するとロバートはハッとして明るい表情で僕に言った。

「ああ、朝食の時にパーカス殿からテディに話があるらしくて、いつぐらいに食べるか聞かれたんだ。お腹空いたかい?」

 僕が頷くと、ロバートはいそいそと僕の洋服箪笥を開いて、僕用に仕立て上げられたマタニティーブラウスを手に取って僕に見せた。

「これでどうかな?」

 結婚してから僕は、自分の趣味じゃない服も着る様になった。夫たちが着て欲しい服を拒否するより、着て見せて喜ばせた方が僕も嬉しいからだ。


 ロバートは色っぽいデザインが好きみたいで、肩と背中の出たホルターネック状の真っ赤なロングブラウスを僕に着せた。露出した肩に唇を押し当てて、ロバートは目を細めて言った。

「真珠の様な白い肌と黒髪に良く似合うね。テディが綺麗すぎて、目が潰れそうだ。」

 多分それは贔屓目だと思うけど、嬉しそうなので僕もロバートの逞しい筋肉を撫で撫でして囁いた。

「ロバートもいつまでも裸でいたら、僕も部屋から出たくなくなるでしょ?」


 二人でクスクス笑いながら、僕はロバートが着替える様子をソファに座りながら眺めた。まったくけしからん具合に均整のとれた身体は、僕にため息をつかせる。

 羨ましいのと、あの身体がどんな風に昨日僕を喜ばせたか知っているせいで、さっさと朝食に行った方が良さそうだった。本当に部屋から出られなくなりそうだ。

 安定期に入ったせいか、僕の欲望は強くなった。二人が心配する一方、僕は自分をコントロールするのが難しい。そんな自分に戸惑う事も多くて、僕は妊娠ホルモンなのか魔素の流れなのか、その類に随分振り回されている。



 ロバートと手を繋いで母屋に顔を出すと、そこにはパーカスしか居なかった。メダは居たり居なかったりなので、まぁいつもと同じだ。

「おはよう、パーカス。僕に何か話があるって聞いたけど。」

 にこやかな従者や侍女達が僕らの面倒を見てくれるのを眺めていたパーカスは、食べ始めたのを見て口を開いた。

「ああ、そうじゃ。とっておきの話があってのう。ブレーベルから王立学校見学にゲオルグとシンディが来る様じゃぞ。多分今日の午後には到着するんじゃないのかのう。」


 僕はちぎった魔肉の破片を慌てて噛み締めてミルで流し込むと、ロバートの方を向いて言った。

「聞いた!?ゲオルグとシンディに会えるんだよ!?今日到着するの?流石に着いて早々は会えないかなぁ。あー、いつ以来だろう。あれ?でもゲオルグ達ってまだ入学には一年早くない?」

 僕は二年飛び級したので、彼らは来年入学という訳でも無い。するとパーカスが微笑んで言った。

「テディの親友は二人共優秀だな。というよりブレーベルのレベルが高いのかも知れぬ。彼らも飛び級が見込める様じゃぞ?」

 僕はもう一度ロバートに笑いかけて嬉しさに飛び上がりたい気分だった。


 王立学校でも友達は沢山出来たけど、この世界に馴染むために頑張っていた頃に僕を支えてくれた二人が側に来てくれるとなると話がまた別だった。

 今は僕が人間だという事は知られたけれど、それでも特別視する向きがある中で、彼らは僕をディーそのものとして扱ってくれるだろう。自分がこんなにも親友二人が足りないなんて自覚が無かっただけに、僕は嬉しくて堪らなかった。

「テディ、良かったね。彼らが一緒に学校へ通うのは来年にはなってしまうだろうけど、久しぶりに会えるんだろう?妊娠した姿を見たらきっと随分びっくりするんじゃないのか?」


 ロバートにそう言われて、僕はハッとしてパーカスを見た。パーカスは首を傾げて考え込んでいる。

「あやつらがテディの妊娠を知っているかは私にも分からんのう。話すとしたらダグラスからじゃろうが、案外余計な事は話さない場合もあるのでな。」

 もし彼らが僕の妊娠を知らなかったら、きっとシンディ辺りが叫びそうで、それはそれで大騒ぎになりそうだなと苦笑してしまった。でも今日には王都に到着の彼らに早く会いたくて堪らなくなった。

 僕のウキウキをパーカスとロバートが優しい顔で見守っているのに気づいて、僕はちょっと恥ずかしくなってしまった。でも嬉しい!


 部屋に戻った僕は、ロバートともう一度ベッドに転がりながら、ブレーベルのことを懐かしく話していた。

「そう言えばロバートは前にブレーベルに遠征で行ったよね。ブレートさんに会った?」

 僕を後ろから抱えたロバートは、僕の目立ち始めたお腹をゆっくり撫でながら答えた。

「ああ。ブレート様には随分お世話になったからね。私がテディの側に居たくて、王立騎士団を辞めてブレーベルに戻ろうかと相談した事もあったんだ。でもブレート様がテディが王都へ行くのは予想より早いだろうからと早まるのを止めてくれた。

 もしあの時ブレーベルに戻ったのなら、きっと飛び級したテディに置いて行かれてまた後悔したに違いないよ。」


 そんな事があったのを聞いたのは初めてだったので、僕は後ろに居るロバートを振り返って呟いた。

「僕、ロバートを悩ませてばかりだね?」

 するとロバートは僕の唇を甘く吸って水色の瞳を光らせて囁いた。

「テディにならどれだけ悩まされても良いよ。…一生悩ませて欲しいね。」

 僕がクスクス笑っていると、ロバートのイタズラな指先が僕の敏感な胸をゆっくりなぞり始めた。直ぐにツンと硬くなる胸のてっぺんは、服越しに触れられると焦ったくて余計にムズムズしてしまう。


 「テディのここは正直だね。直ぐに可愛くなって。」

 僕はじんわり濡れる脚の間を感じながら、甘いため息をついた。

「…ね、今日は二人共お休みでしょ?もっと触ってくれる?僕最近直ぐに欲しくなっちゃって…。」

 ロバートが僕の首に舌を這わしながら、手早く薄いズボンを脱がせた。僕の脚に触れる硬いものを感じながら、僕は下着越しにロバートの指でゆるゆると撫でられるのを甘い呻きで歓迎した。




 ★お知らせ★

 本日新作BL連載開始しました❣️

【札束でアルファの身体と結婚することにしました】

 年上Ωと冷淡年下アルファの政略結婚オメガバースBLです。エロい年上に沼ってわんこ化してしまう御曹司の未来しか見えません😁
 有り難い事に初日お気に入り100を超えましたので、感謝を込めてもう一話こちらと同時に更新します!

 よろしくお願いします💕




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