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辺境の地で
貴族の心得※
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デミオの一件があってから、僕は時々シモン兄上とデミオが睦み合っている事を想像しては嫌な気分になった。自分だってローレンスとかなり際どい事をしていたというのに、そんなところは我ながら都合良く棚に上げている。
なぜ嫌な気持ちになるのかは、多分デミオがイケすかない令息だったせいだろう。兄上が彼の本性を見抜けない上に、そんな彼に優しく愛撫すると考えると胸の奥がザワザワしてくる。
一方、周囲の令息達とは時々閨の指南を受けた話で盛り上がることも多くて、僕も義父上からいつその手の話が出るのかと、何処か落ち着かない気持ちでいた。
だから夕食時に義父上から執務室に後で来る様にと言われた時は、ついにその話が来たのかと緊張で顔を強張らせてしまった。執務室に入ると、義父上はソファに座って美しいカットグラスに琥珀色の酒を少し入れて嗜んでいた。
僕を目の前に座らせると、一気に小さなグラスを傾けてひと息ついて僕を見つめた。
「…今までこうやってアンドレと二人でゆっくり顔を合わせる機会もそうなかった。あと半年でもう直ぐ15歳のアンドレも王都へ上京すると言うのに、今頃そんな風に後悔するとは私も父親失格だな。
今日は貴族としての閨の指南の話をしたいと思ったのだ。学友達と話題になっているだろうが、私はアンドレの希望に沿いたいと思っている。
…こんな事は放っておいても時期がくれば経験するものだし、実際には恥をかかないためにやり方を知っておくという意味でしかない。
アンドレはどうしたい?…正直アンドレがご令嬢とほとんど親交がない事が気になっている。こっちの勝手な推測でしかないが、もしかしてアンドレは…。」
僕はハッとして顔を上げた。僕が令嬢達に興味が湧かないという事を見透かされてしまっているのだろうか。けれど、この辺境は騎士達も多いせいか、男同士のその手の話も割と聞くことに最近は気づいていた。
「…義父上は、その、どちらも経験があるのですか?」
言葉にしてから馬鹿なことを聞いてしまったと思ったけれど、今更発した言葉は引き戻せない。目を伏せて膝の上の拳を握っていると、義父上は目の前の自分の美しいグラスに酒を追加して呟いた。
「若い頃も含めて、自分から男を望んだ事はない。ただ、私と寝たがった男は少なくなかった。それこそ上京したての学生の頃は周囲も弾けていたから、望まれるまま試した事はあるが…。まぁ私には向いていなかったと言うところだ。
実際経験してみないと自分の事など分からないからね。ただ、私の仲間の中には反対に男に傾倒して行く者も居た。…だが貴族の間では趣味趣向に関しては大らかだが、それは遊びに限っている。
事実、後継問題に繋がると彼の様に苦しむと言う事も出てくる。まぁ体面さえ整えば、水面下がどうであろうと見ないふりをするのも貴族の得意とする所だがね。」
僕は義父上のご学友が結果的にどうなったのか気になったけれど、聞ける訳もなかった。それに今の話ぶりから、僕とローレンスの事も知っている様な気もして来た。
「…僕は、その、どちらとも経験してみたいと思います。…自分が望むところまで。」
僕の言葉に義父上はグラスを煽って頷いた。
「分かった。手配しよう。無理はさせない様に重々伝えておく。」
「アンドレ様、今夜はよろしくお願いします。今夜は私、マリーにお任せ下さいませ。」
セリーナ姉上より少し年上の淑女は、赤く塗られた唇を微笑ませて僕の前で礼を取った。
「…よろしく。」
むせかえる様な甘い香水の香りで、僕は既に息が詰まりそうだった。僕が促されるままベッドに腰掛けると、目の前でマリーがゆっくりとドレスを脱ぎ始めた。
化粧の濃さの割にドレスは上品でシンプルなもので、こうした状況のために脱ぎやすさも考慮されているのかもしれなかった。あっという間にマリーは全裸になると、僕の前でゆっくりとひと回りした。
「お湯を頂いて来ますので、少しお待ちください。」
そう言うと、寝室を形の良い丸いお尻を揺らしながら出て行った。僕はふうっと息を吐き出しながら、さっきのマリーの裸を思い浮かべた。形の良い大きめの胸は美しかった。
けれどあの胸を見ても、妹のキャサリンに与えられる乳としか思えない。触れたら違うのだろうか。
待つほども無く、マリーはガウンを着て戻って来た。マリーは自分のガウンの腰紐を焦らす様に解くとベッドに座る僕の前に立った。
「アンドレ様、触れてみますか?」
僕はコクリと頷くと恐る恐るたわわな胸に手を出した。思いの外重量を感じるそれは柔らかい様で案外ハリがあった。感触は悪くない。同級生達が興奮気味に女の胸について語る気持ちも分かる気がして思わず口元を緩めた。
「気に入っていただけましたかしら。女は胸の先端が一番気持ち良いんですの。触れるなり、口づけるなりしていただけますか?」
僕は自分でも経験があったのでどうされれば気持ち良いのかよく知っていた。だから躊躇無くマリーの胸を愛撫した。
いつも執拗にローレンスにされていた事を他人にするのは妙な感じだ。悪戯にローレンスに返していた胸への愛撫と比べると、女のそれはまるでその為に出来ているかのように咥えやすい。
それはまるで自分がキャサリンになったみたいで、笑えてくる。僕がそんな事を考えている事など目の前のマリーは知らずに、甘く呻きながら言った。
「ああ…!アンドレ様はとてもお上手ですわ。女は気持ちが良くなると下の方がぐっしょりと濡れて来てしまいますの。触って確認してみますか?」
そう言って、マリーは息を弾ませながら胸に置いていた僕の手を自分の脚の間へ連れて行った。
…今夜は簡単には終わらない気がしてきた。妙に冷静な自分を感じながら僕は閨の指南を受け続けた。
なぜ嫌な気持ちになるのかは、多分デミオがイケすかない令息だったせいだろう。兄上が彼の本性を見抜けない上に、そんな彼に優しく愛撫すると考えると胸の奥がザワザワしてくる。
一方、周囲の令息達とは時々閨の指南を受けた話で盛り上がることも多くて、僕も義父上からいつその手の話が出るのかと、何処か落ち着かない気持ちでいた。
だから夕食時に義父上から執務室に後で来る様にと言われた時は、ついにその話が来たのかと緊張で顔を強張らせてしまった。執務室に入ると、義父上はソファに座って美しいカットグラスに琥珀色の酒を少し入れて嗜んでいた。
僕を目の前に座らせると、一気に小さなグラスを傾けてひと息ついて僕を見つめた。
「…今までこうやってアンドレと二人でゆっくり顔を合わせる機会もそうなかった。あと半年でもう直ぐ15歳のアンドレも王都へ上京すると言うのに、今頃そんな風に後悔するとは私も父親失格だな。
今日は貴族としての閨の指南の話をしたいと思ったのだ。学友達と話題になっているだろうが、私はアンドレの希望に沿いたいと思っている。
…こんな事は放っておいても時期がくれば経験するものだし、実際には恥をかかないためにやり方を知っておくという意味でしかない。
アンドレはどうしたい?…正直アンドレがご令嬢とほとんど親交がない事が気になっている。こっちの勝手な推測でしかないが、もしかしてアンドレは…。」
僕はハッとして顔を上げた。僕が令嬢達に興味が湧かないという事を見透かされてしまっているのだろうか。けれど、この辺境は騎士達も多いせいか、男同士のその手の話も割と聞くことに最近は気づいていた。
「…義父上は、その、どちらも経験があるのですか?」
言葉にしてから馬鹿なことを聞いてしまったと思ったけれど、今更発した言葉は引き戻せない。目を伏せて膝の上の拳を握っていると、義父上は目の前の自分の美しいグラスに酒を追加して呟いた。
「若い頃も含めて、自分から男を望んだ事はない。ただ、私と寝たがった男は少なくなかった。それこそ上京したての学生の頃は周囲も弾けていたから、望まれるまま試した事はあるが…。まぁ私には向いていなかったと言うところだ。
実際経験してみないと自分の事など分からないからね。ただ、私の仲間の中には反対に男に傾倒して行く者も居た。…だが貴族の間では趣味趣向に関しては大らかだが、それは遊びに限っている。
事実、後継問題に繋がると彼の様に苦しむと言う事も出てくる。まぁ体面さえ整えば、水面下がどうであろうと見ないふりをするのも貴族の得意とする所だがね。」
僕は義父上のご学友が結果的にどうなったのか気になったけれど、聞ける訳もなかった。それに今の話ぶりから、僕とローレンスの事も知っている様な気もして来た。
「…僕は、その、どちらとも経験してみたいと思います。…自分が望むところまで。」
僕の言葉に義父上はグラスを煽って頷いた。
「分かった。手配しよう。無理はさせない様に重々伝えておく。」
「アンドレ様、今夜はよろしくお願いします。今夜は私、マリーにお任せ下さいませ。」
セリーナ姉上より少し年上の淑女は、赤く塗られた唇を微笑ませて僕の前で礼を取った。
「…よろしく。」
むせかえる様な甘い香水の香りで、僕は既に息が詰まりそうだった。僕が促されるままベッドに腰掛けると、目の前でマリーがゆっくりとドレスを脱ぎ始めた。
化粧の濃さの割にドレスは上品でシンプルなもので、こうした状況のために脱ぎやすさも考慮されているのかもしれなかった。あっという間にマリーは全裸になると、僕の前でゆっくりとひと回りした。
「お湯を頂いて来ますので、少しお待ちください。」
そう言うと、寝室を形の良い丸いお尻を揺らしながら出て行った。僕はふうっと息を吐き出しながら、さっきのマリーの裸を思い浮かべた。形の良い大きめの胸は美しかった。
けれどあの胸を見ても、妹のキャサリンに与えられる乳としか思えない。触れたら違うのだろうか。
待つほども無く、マリーはガウンを着て戻って来た。マリーは自分のガウンの腰紐を焦らす様に解くとベッドに座る僕の前に立った。
「アンドレ様、触れてみますか?」
僕はコクリと頷くと恐る恐るたわわな胸に手を出した。思いの外重量を感じるそれは柔らかい様で案外ハリがあった。感触は悪くない。同級生達が興奮気味に女の胸について語る気持ちも分かる気がして思わず口元を緩めた。
「気に入っていただけましたかしら。女は胸の先端が一番気持ち良いんですの。触れるなり、口づけるなりしていただけますか?」
僕は自分でも経験があったのでどうされれば気持ち良いのかよく知っていた。だから躊躇無くマリーの胸を愛撫した。
いつも執拗にローレンスにされていた事を他人にするのは妙な感じだ。悪戯にローレンスに返していた胸への愛撫と比べると、女のそれはまるでその為に出来ているかのように咥えやすい。
それはまるで自分がキャサリンになったみたいで、笑えてくる。僕がそんな事を考えている事など目の前のマリーは知らずに、甘く呻きながら言った。
「ああ…!アンドレ様はとてもお上手ですわ。女は気持ちが良くなると下の方がぐっしょりと濡れて来てしまいますの。触って確認してみますか?」
そう言って、マリーは息を弾ませながら胸に置いていた僕の手を自分の脚の間へ連れて行った。
…今夜は簡単には終わらない気がしてきた。妙に冷静な自分を感じながら僕は閨の指南を受け続けた。
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