イバラの鎖

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
42 / 48
交差

逃避※

しおりを挟む
 僕を抉る兄上の逞しいそれに翻弄されながら、僕は声を殺して重なる快感に耐えた。別邸ではないこの屋敷で、あられも無いこの爛れたやり取りが漏れ出すことを僕は酷く恐れた。

 けれど、そんな僕の必死の努力を嘲笑う様に、兄上は容赦なく僕を攻め立てる。

 ぐりっと手前の敏感な場所を擦られて、突っ伏した僕は悲鳴に似た喘ぎをシーツに逃した。兄上に掴まれた腰が高く引き上げられて、僕は経験のあるその先を期待して両手でシーツを握りしめた。


 けれど、兄上は殊更ゆっくり僕の奥へと挿れると、味わう様に小さく動いた。ああ、それは何だか悶える様な気持ち良さと少しの苦しさ、そして不安を連れてくる。

 時々驚く様な快感が散りばめられたその動きに、僕は我慢できなくて肩越しに振り返って兄上を見た。

 少し口を開けて、興奮で強張った顔をした兄上がそんな僕に気づいて、重なったそこをピッタリと押し付けて僕にのし掛かって来た。その体勢が与える快感に呻きながら、僕はどこかホッとした気持ちで兄上の体温を感じた。


 背中から肩、首へと兄上の唇が甘やかに触れて、僕は強請る様に横を向いてそれが唇まで到達するまで待った。ようやく唇同士が重なると、僕は待ちきれない様に兄上の舌を吸った。

「…アンドレ。随分美味しそうに私を味わうね…。」

 掠れた兄上の声に、僕はヒクリと下半身を疼かせた。今やグチグチと小刻みに動く兄上からもたらす気持ち良さは、僕の息を浅くした。

「好き…、兄上っ!」


 溢れ出した僕の感情の望み通りに、兄上とピッタリと重ねられた身体はすっかりシーツにへばりついて、僕の中の良い場所を撫で立てる兄上の動きに揺さぶられて、自分の昂りもまたシーツに擦られて甘い快感を重ねた。

 その重なる刺激に、僕はもう声を殺す事もできずに身体が熱くなるばかりだった。

「兄上っ!もう、いっちゃうっ…!」

 僕の切羽詰まった懇願に、兄上は腰を掴んで僕を引き上げると容赦のない挿出で、濡れた破裂音を部屋に響かせた。


 僕の奥へ挿れる度に肌が触れ合って鳴る卑猥な音が部屋に響いて、僕はそのいやらしさにますます興奮が止まらない。兄上を咥え込んだ僕の窄みは、兄上の手が僕自身を激しく扱くのと同時に馬鹿みたいに兄上を締め付けた。

 頭の奥が痺れる様な強烈な絶頂に、僕は声にならない悲鳴でそれを称賛した。兄上もそれに少し遅れて苦しげな呻き声と共に容赦ない動きで僕を更に追い詰めるから、僕は終わらない苦しさと紙一重の絶頂に死んでしまいそうだった。


 不意にズルっと兄上の重いそれが僕から引き摺り出されて、窄みに押し付けながら熱い飛沫を吐き出してる時、僕はこの上なく興奮と幸福を感じる。それが兄上の僕への執着の様に感じるからだ。

 兄上が塗りつける欲望に、僕は独占欲を感じて胸の奥が疼いた。本当は僕の中へ吐き出して欲しいそれは、兄上曰くは僕の身体には良くない事だとあまりしてくれない。

 ああ、でも僕は本当はそれを望むんだ。そうして欲しくて、僕は屋敷でこうやって身体を重ねる様になっても別邸へと足を運ぶのをやめられない。


 「どうした…?激しすぎたか、アンドレ。」

 肘を立てて僕から少し身体を浮かして覗き込む兄上が僕に優しく尋ねた。僕はぐったりとして開かない瞼をくっつけながら口を開いたけれど、掠れ声しか出なかった。

「…ん。…中に出して欲しかっただけ。」

 思わず言ってしまった本音に兄上は笑いを含んだ口づけを僕に落とした。

「まったく、アンドレは私を喜ばすのが上手いな。どうしたってアンドレに負担になるだろうに…。今度別邸でたっぷり味わって貰うさ。アンドレが可愛すぎて、私も一度じゃ満足出来ない…。」


 起き上がった兄上が布で汚れた僕の身体の表面を拭いながら、ごろんと仰向けた僕の濡れた股間をギラついた眼差しで見ている。いつの間にか兄上の逞しいそれも持ち上がって来ているのが分かって、僕は兄上の手から布を奪い去って床に放った。

 それから兄上の胸に手を伸ばして、興奮で尖ったその可愛い粒を爪で弾いて笑った。

「…どうして我慢するの?僕ももっと欲しいのに。」

 困った奴だと欲望を滲ませて凄みのある顔で微笑む兄上に僕はゾクゾクさせられて、覚えさせられた素晴らしい快感のお代わりをしてしまった。



 屋敷では朝まで僕の部屋に残るわけにいかない兄上が、薄れていく意識の端っこで部屋を出ていくのを感じながら、僕は引き寄せられる睡魔に抗う事なく自分から飛び込んだ。

 決して許されるわけでは無いこの禁断の関係から目を逸らせるなら、僕は簡単にそうした。

 まだ子供だった僕は、兄上の苦悩まで想像する事も出来ずに、目の前の覚えたての愛と欲望に溺れてどっぷりと浸かり込んでいたんだ。冷静になれば、僕らのしていることは誰にも言える事では無いと簡単に分かることだった。


 僕らは兄弟だった。義理とはいえ、それは紛れもない事実で、公表出来る関係では無かった。それを僕より良く分かっていた兄上は、僕と交わる度に苦悩を積み重ねていた。

 僕が現実から目を逸らしている間も、兄上がそれを見つめていたのを知ったのは随分後だったけれど。

 シモン、僕は何て子供だったんだろう。一人で悩ませて、苦しませてごめんね。
















しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

恋人ごっこはおしまい

秋臣
BL
「男同士で観たらヤっちゃうらしいよ」 そう言って大学の友達・曽川から渡されたDVD。 そんなことあるわけないと、俺と京佐は鼻で笑ってバカにしていたが、どうしてこうなった……俺は京佐を抱いていた。 それどころか嵌って抜け出せなくなった俺はどんどん拗らせいく。 ある日、そんな俺に京佐は予想外の提案をしてきた。 友達か、それ以上か、もしくは破綻か。二人が出した答えは…… 悩み多き大学生同士の拗らせBL。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

生き急ぐオメガの献身

雨宮里玖
BL
美貌オメガのシノンは、辺境の副将軍ヘリオスのもとに嫁ぐことになった。 実はヘリオスは、昔、番になろうと約束したアルファだ。その約束を果たすべく求婚したのだが、ヘリオスはシノンのことなどまったく相手にしてくれない。 こうなることは最初からわかっていた。 それでもあなたのそばにいさせてほしい。どうせすぐにいなくなる。それまでの間、一緒にいられたら充分だ——。 健気オメガの切ない献身愛ストーリー!

【完結】偽装結婚の代償〜リュシアン視点〜

伽羅
BL
リュシアンは従姉妹であるヴァネッサにプロポーズをした。 だが、それはお互いに恋愛感情からくるものではなく、利害が一致しただけの関係だった。 リュシアンの真の狙いとは…。 「偽装結婚の代償〜他に好きな人がいるのに結婚した私達〜」のリュシアン視点です。

処理中です...