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愛の向かうところ
犠牲の定義※
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兄上に抱きついた僕の身体は引き剥がされる事なく、更にぎゅっと抱き寄せられた。それから僕の耳元で兄上の優しい声がした。
「…アンドレ、私にとってはそんな事どうでも良い事なんだ。犠牲?それはものの見方のひとつでしかない。それに今の様に望まない秋波を送られなくなるとしたら願ったり叶ったりだ。
それよりアンドレ自身も、今後私の側にいることで何かしらの噂が立つ事になるかもしれない。だが、どんな噂が立とうとも私はお前を側から離すことは出来ない。…すまない、アンドレ。」
兄上の言葉は、最後まで残っていた僕の諦めと遠慮を打ち砕いた。ああ、事実上兄上を僕だけのものにしても良いって事なんだろうか。僕は胸の奥から湧き上がる喜びを感じて、顔を上げた。
迷いのない灰色の瞳には僕だけが写り込んでいて、僕は兄上の真っ直ぐに向けられる気持ちを受け取った。
「シモン、愛してます。兄上としてではなく、唯一の人として…。」
その時に感じたのは何だっただろう。僕らは全てのしがらみを振り払って目の前の差し出された唯一の愛に飛び込んだ。もう二度と迷う事など無いとは言えないかもしれないけれど、不安になったその時はシモンが僕を抱きしめてくれるだろう。
重なる唇の熱さは心臓の鼓動の速さに比例して、熱くなるばかりの身体はシモンが欲しくて疼いた。
「…震えているのかい?」
僕に低い声で囁くシモンの声に、僕は溶け出しそうだった。ああ、愛してる。僕は夢中になってシモンの髪に手を差し込んで引き付けた。
「アンドレ、私の全て…。」
シモンの唇から溢れ出す言葉のひとつずつが、今まで辛く感じてきた日々を癒した。シモンの葛藤と僕の未熟さがそうしてしまったと今は知っている。でもあの少年の頃に傷ついた心は何処かにまだ残っていた。
いつの間にかシモンの髪は乾いていて、汗ばんだ鍛えられた身体を僕に曝け出していた。僕はうっとりとその美しい騎士の身体を指先でなぞって呟いた。
「僕には望めない全てをシモンは持っているの。でもだからって好きになった訳じゃないよ。気づいたら僕はシモンから目を逸せなくなっていたから、いつから愛していたのかなんて説明がつかないんだ。…シモンは僕のこといつから愛していたの?」
するとシモンは気まずそうに目を伏せた。
「それを言うと嫌われそうだ。…私の隣に潜り込んだまだ幼さの残るアンドレに口づけたいと感じたあの夜、私はショックで息も出来なかった。自分が酷く恐ろしい化け物の様に感じたものだ。
だからアンドレから距離を取ったのは今でも正しかったとは思うよ。そうでなければ、今こうして愛し合うことはなかったかもしれない。けれどそのせいでアンドレの心を傷つけたのは確かだね。…償いをさせてくれ。」
そう言うと僕に覆い被さってもう一度甘く口づけた。ヌルリと割り開いて侵入するシモンの舌使いに僕はすっかり虜になっていた。必死でシモンの舌の動きに食らいついていると、シモンのイタズラな指先に僕の胸のてっぺんをぎゅっと摘まれて、僕はビクビクと身体を震わせた。
「いつにも増して敏感だね、アンドレ。ああ、可愛くて酷くしてしまいそうだ。」
そう言いながら首に吸い付いて、期待に震える胸へと降りていく。僕が息を堪えてシモンに咥えられるのを待ち望んでいると、焦らす様に舌先でくすぐられる。もっと、もっと強く…!
精一杯のおねだりで胸を突き出すと、シモンは少しくぐもった笑い声を立てて一気に甘噛んで吸い上げた。僕の掠れた悲鳴が部屋に響いて、僕は思わず口元に手を押し付けた。
「大丈夫だから、そのあられも無い声を聞かせて、アンドレ。」
僕は首を振ってシモンを睨みつけた。
「ダメ!セバスに聞こえちゃう…!」
するとシモンはニヤリと笑って言った。
「セバスが部屋を移動したのを知らないのかい?もっとも言い出したのは彼からだったがね。彼はアンドレに忠誠を誓っているだろう?この棟には私達しか居ない…。どれだけ声を立てても良いんだ。私もアンドレの感じている声がもっと聞きたい。」
そう言いながらギラついた眼差しで僕を見つめるシモンに、僕はますます興奮してしまった。ああ、もっと欲しい。
思わずはち切れそうな下半身を擦り付けて、シモンを誘った。直ぐにシモンの重量のあるそれで迎え撃たれて、僕は馬鹿みたいに喘いだ。このほとばしる誘惑の声も、シモンにならどれだけ聞かれても構わない。
うつ伏せられて、すっかりシモンに慣らされた僕の卑猥な窄みを舐められるのも、力が抜ける様な気持ち良さだった。
「アンドレのここは私のものだ。その証拠にこうして縦に割れて卑猥な眺めになってる。決して誰にも見せてはいけないよ?ここを見るのも触れるのも、ぐちゃぐちゃに挿れるのも私だけだ。」
シモンの独占欲といやらしい言葉に興奮した僕はすっかり息が上がってしまった。だけど香油とシモンの指に焦らす様に解されては、強制的に呼吸をさせられてしまう。
僕は嬌声を上げながら、決定的な快感をわざとお預けされている事に気づいてシモンに懇願した。
「シモン、もうだめ…!お願い、その熱い杭を僕に押し込んで…!ああぁんっ!」
ズルリと勢いよく指を引き抜かれて、シモンの熱い杭が僕の敏感な場所に押し付けられたのを感じて、思わず誘う様に腰を揺らしてしまった。
「…アンドレはおねだりが上手だ。これでたっぷり擦ってあげようね。あぁ…、吸い付いてくる…。」
掠れたシモンの声に誘われる様に、僕は自分からお尻を突き出した。それと同時にシモンもまた腰を突き出したのだから、僕らはお互いに息を呑んで甘く呻いてしまった。ああ、最高…!
「…アンドレ、私にとってはそんな事どうでも良い事なんだ。犠牲?それはものの見方のひとつでしかない。それに今の様に望まない秋波を送られなくなるとしたら願ったり叶ったりだ。
それよりアンドレ自身も、今後私の側にいることで何かしらの噂が立つ事になるかもしれない。だが、どんな噂が立とうとも私はお前を側から離すことは出来ない。…すまない、アンドレ。」
兄上の言葉は、最後まで残っていた僕の諦めと遠慮を打ち砕いた。ああ、事実上兄上を僕だけのものにしても良いって事なんだろうか。僕は胸の奥から湧き上がる喜びを感じて、顔を上げた。
迷いのない灰色の瞳には僕だけが写り込んでいて、僕は兄上の真っ直ぐに向けられる気持ちを受け取った。
「シモン、愛してます。兄上としてではなく、唯一の人として…。」
その時に感じたのは何だっただろう。僕らは全てのしがらみを振り払って目の前の差し出された唯一の愛に飛び込んだ。もう二度と迷う事など無いとは言えないかもしれないけれど、不安になったその時はシモンが僕を抱きしめてくれるだろう。
重なる唇の熱さは心臓の鼓動の速さに比例して、熱くなるばかりの身体はシモンが欲しくて疼いた。
「…震えているのかい?」
僕に低い声で囁くシモンの声に、僕は溶け出しそうだった。ああ、愛してる。僕は夢中になってシモンの髪に手を差し込んで引き付けた。
「アンドレ、私の全て…。」
シモンの唇から溢れ出す言葉のひとつずつが、今まで辛く感じてきた日々を癒した。シモンの葛藤と僕の未熟さがそうしてしまったと今は知っている。でもあの少年の頃に傷ついた心は何処かにまだ残っていた。
いつの間にかシモンの髪は乾いていて、汗ばんだ鍛えられた身体を僕に曝け出していた。僕はうっとりとその美しい騎士の身体を指先でなぞって呟いた。
「僕には望めない全てをシモンは持っているの。でもだからって好きになった訳じゃないよ。気づいたら僕はシモンから目を逸せなくなっていたから、いつから愛していたのかなんて説明がつかないんだ。…シモンは僕のこといつから愛していたの?」
するとシモンは気まずそうに目を伏せた。
「それを言うと嫌われそうだ。…私の隣に潜り込んだまだ幼さの残るアンドレに口づけたいと感じたあの夜、私はショックで息も出来なかった。自分が酷く恐ろしい化け物の様に感じたものだ。
だからアンドレから距離を取ったのは今でも正しかったとは思うよ。そうでなければ、今こうして愛し合うことはなかったかもしれない。けれどそのせいでアンドレの心を傷つけたのは確かだね。…償いをさせてくれ。」
そう言うと僕に覆い被さってもう一度甘く口づけた。ヌルリと割り開いて侵入するシモンの舌使いに僕はすっかり虜になっていた。必死でシモンの舌の動きに食らいついていると、シモンのイタズラな指先に僕の胸のてっぺんをぎゅっと摘まれて、僕はビクビクと身体を震わせた。
「いつにも増して敏感だね、アンドレ。ああ、可愛くて酷くしてしまいそうだ。」
そう言いながら首に吸い付いて、期待に震える胸へと降りていく。僕が息を堪えてシモンに咥えられるのを待ち望んでいると、焦らす様に舌先でくすぐられる。もっと、もっと強く…!
精一杯のおねだりで胸を突き出すと、シモンは少しくぐもった笑い声を立てて一気に甘噛んで吸い上げた。僕の掠れた悲鳴が部屋に響いて、僕は思わず口元に手を押し付けた。
「大丈夫だから、そのあられも無い声を聞かせて、アンドレ。」
僕は首を振ってシモンを睨みつけた。
「ダメ!セバスに聞こえちゃう…!」
するとシモンはニヤリと笑って言った。
「セバスが部屋を移動したのを知らないのかい?もっとも言い出したのは彼からだったがね。彼はアンドレに忠誠を誓っているだろう?この棟には私達しか居ない…。どれだけ声を立てても良いんだ。私もアンドレの感じている声がもっと聞きたい。」
そう言いながらギラついた眼差しで僕を見つめるシモンに、僕はますます興奮してしまった。ああ、もっと欲しい。
思わずはち切れそうな下半身を擦り付けて、シモンを誘った。直ぐにシモンの重量のあるそれで迎え撃たれて、僕は馬鹿みたいに喘いだ。このほとばしる誘惑の声も、シモンにならどれだけ聞かれても構わない。
うつ伏せられて、すっかりシモンに慣らされた僕の卑猥な窄みを舐められるのも、力が抜ける様な気持ち良さだった。
「アンドレのここは私のものだ。その証拠にこうして縦に割れて卑猥な眺めになってる。決して誰にも見せてはいけないよ?ここを見るのも触れるのも、ぐちゃぐちゃに挿れるのも私だけだ。」
シモンの独占欲といやらしい言葉に興奮した僕はすっかり息が上がってしまった。だけど香油とシモンの指に焦らす様に解されては、強制的に呼吸をさせられてしまう。
僕は嬌声を上げながら、決定的な快感をわざとお預けされている事に気づいてシモンに懇願した。
「シモン、もうだめ…!お願い、その熱い杭を僕に押し込んで…!ああぁんっ!」
ズルリと勢いよく指を引き抜かれて、シモンの熱い杭が僕の敏感な場所に押し付けられたのを感じて、思わず誘う様に腰を揺らしてしまった。
「…アンドレはおねだりが上手だ。これでたっぷり擦ってあげようね。あぁ…、吸い付いてくる…。」
掠れたシモンの声に誘われる様に、僕は自分からお尻を突き出した。それと同時にシモンもまた腰を突き出したのだから、僕らはお互いに息を呑んで甘く呻いてしまった。ああ、最高…!
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