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愛の向かうところ
ローレンスside公然の秘密
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「ローレンス!君が卒業してしまうなんて凄く寂しいよ。…今までお世話になりました。」
急に改まった言葉で私に微笑みかけて来るアンドレに、私はクスッと笑いながら以前より少し目線が変わった彼の淡い空色の瞳を見つめた。卒業してしまえば、こうして彼の笑顔を見る機会も減るだろうと思いながら。
「今度はアンドレ達が最上級生だろう?私達が邪魔だったのでは無いのかい?」
そう揶揄うと、アンドレは悪戯っぽく目を光らせて、それから柔らかく微笑んだ。
「確かにジェラルドは面倒くさかったから、そうじゃ無いとは言えないけど。ローレンスに限って言えば、僕にとっては大事な親友でもあるから…。本当に寂しいよ。」
その言葉でひと昔のアンドレの姿を思い起こしていた。今と変わらない様でいて、けれども何処かしら自信無げな様子は今は見受けられない。彼を変えたのはやはりシモン様との関係なのだろう。
「まぁ、私も直ぐに領地へ戻る訳じゃ無いからね。領地との行き来はするだろうけど、こちらに居ることの方が多いだろう。だからアンドレともたまには会えるよ。まさか卒業したら会ってくれないって事はないよね?」
シモン様なら、場合によったら上級生でも無くなる私とアンドレを会わせないかもしれないと、そんな事を言ってしまったけれど、アンドレはその事に気づかない様で首を傾げた。
「え?会うよ、勿論。卒業後の話も聞かせてね。じゃあ、また今度。さよなら。」
そう言うと、同級生達に呼ばれたアンドレは慌てて彼らの方へと戻って行った。アンドレは学校の執行部に属しているので忙しい。私は成長した彼を感慨深く思いながらぼんやり後ろ姿を見送っていた。
「なんだ、相変わらず仲良しか。ローレンスはアンドレの事になると特別扱いだからな?」
噂をすればジェラルドが背後から声を掛けてきた。
「ああ、やっと下級生からの挨拶を終えたのか?こう言う時にしみじみジェラルドには信奉者が多いって良く分かるよ。」
私がそう言うと、ジェラルドは鼻を鳴らして言った。
「お前だってそうだろう?俺は量、お前は質。それだけの違いだ。アンドレだって俺のこと無視してくれて。あいつの面倒は俺だって見てやってたと思ったのに。違うか?まったく。」
ジェラルドの愚痴に少し笑いながら、私は遠くでも目立つアンドレの金髪を眺めて答えた。
「アンドレはすっかり変わったよ。元々自信がなかった彼も、今の彼も全てシモン様のせいだって分かると、私達の影響なんて碌になかったんじゃないかって思ったりもするよ。」
するとジェラルドが私の肩を抱き寄せて囁いた。
「そんな事ないだろう?昔を知ってるお前は気づかないかもしれないが、アンドレはお前に随分と助けられたと思うぜ?まぁ、シモン様が実際アンドレを手の内にしたって知った時は随分仰天したが、結局のところあの二人は収まるところに収まったって事だろうからな。
今後どうなるかなんて分からんが、何が起きてもシモン様が指を咥えている訳ないと思うと、心配するだけ無駄な気がしてきたな。」
私はジェラルドの言い草にクスッと笑うと、頼り甲斐のあるこの親友に目をやった。
「そうだね。心配する必要のない他人の事より、自分たちの事を考えた方がいいかもしれない。そう言えばジェラルドは私の事を隙あらば喰おうとしてたよね。」
私の言葉に普段動揺しない男が目を白黒しているのが珍しくて、私は気分が高揚してきた。何を言い出すのかと私の言葉を待っているこの男の押しの弱さを、意外に思いながら言葉を続けた。
「…卒業の記念に寝ても良いかなって思っただけだよ。もし望むならね?私はジェラルドがどちらかと言えば好きだし、なんて言うか…。」
これ以上どう言えば伝わるか分からずに言葉を探していると、ジェラルドが私の顔を覗き込んで琥珀色の瞳をギラリと光らせた。
「まったく、俺を驚かせる事に成功したみたいだな。俺のあの手この手をスルスルとかわしてきたのに、最後の最後にこれか?まったくローレンスは悪い奴だ。
でも良いのか?俺様と寝たらもう癖になってやめられなくなるぜ?少なくとも俺はローレンスを掴んで離さないって分かるけどな。」
私はジェラルドの物言いに胸の鼓動を速くしながら、でも口をついて出て来るのは憎まれ口だけだった。
「癖になる?随分と自信満々だね。こればかりはやってみないと分からないだろう?じゃあこれから私の部屋に来るかい?」
ジェラルドは目を丸くしてから、弾けるように笑って言った。
「まったくどっちがやる気満々なんだか。良いぜ、卒業の記念を生涯忘れられないものにしよう。俺の溜め込んだローレンスへの気持ちをじっくり分からせてやる。覚悟しろ?
…こうなるとシモン様の気持ちも少しは分かる気がするぜ。ハハハ。」
機嫌の良いジェラルドの眼差しが熱く私に絡みつくのを感じて、私はすっかり高ぶって来た。確かに私もアンドレ達を心配している立場じゃないのかもしれない。
先のことは分からないけれど、少なくとも今は目の前のガサツで男らしい親友に溺れ始めているのを自覚しているのだから。アンドレ、今度会う時は私の方が話を聞いてもらう方かもしれないね?
急に改まった言葉で私に微笑みかけて来るアンドレに、私はクスッと笑いながら以前より少し目線が変わった彼の淡い空色の瞳を見つめた。卒業してしまえば、こうして彼の笑顔を見る機会も減るだろうと思いながら。
「今度はアンドレ達が最上級生だろう?私達が邪魔だったのでは無いのかい?」
そう揶揄うと、アンドレは悪戯っぽく目を光らせて、それから柔らかく微笑んだ。
「確かにジェラルドは面倒くさかったから、そうじゃ無いとは言えないけど。ローレンスに限って言えば、僕にとっては大事な親友でもあるから…。本当に寂しいよ。」
その言葉でひと昔のアンドレの姿を思い起こしていた。今と変わらない様でいて、けれども何処かしら自信無げな様子は今は見受けられない。彼を変えたのはやはりシモン様との関係なのだろう。
「まぁ、私も直ぐに領地へ戻る訳じゃ無いからね。領地との行き来はするだろうけど、こちらに居ることの方が多いだろう。だからアンドレともたまには会えるよ。まさか卒業したら会ってくれないって事はないよね?」
シモン様なら、場合によったら上級生でも無くなる私とアンドレを会わせないかもしれないと、そんな事を言ってしまったけれど、アンドレはその事に気づかない様で首を傾げた。
「え?会うよ、勿論。卒業後の話も聞かせてね。じゃあ、また今度。さよなら。」
そう言うと、同級生達に呼ばれたアンドレは慌てて彼らの方へと戻って行った。アンドレは学校の執行部に属しているので忙しい。私は成長した彼を感慨深く思いながらぼんやり後ろ姿を見送っていた。
「なんだ、相変わらず仲良しか。ローレンスはアンドレの事になると特別扱いだからな?」
噂をすればジェラルドが背後から声を掛けてきた。
「ああ、やっと下級生からの挨拶を終えたのか?こう言う時にしみじみジェラルドには信奉者が多いって良く分かるよ。」
私がそう言うと、ジェラルドは鼻を鳴らして言った。
「お前だってそうだろう?俺は量、お前は質。それだけの違いだ。アンドレだって俺のこと無視してくれて。あいつの面倒は俺だって見てやってたと思ったのに。違うか?まったく。」
ジェラルドの愚痴に少し笑いながら、私は遠くでも目立つアンドレの金髪を眺めて答えた。
「アンドレはすっかり変わったよ。元々自信がなかった彼も、今の彼も全てシモン様のせいだって分かると、私達の影響なんて碌になかったんじゃないかって思ったりもするよ。」
するとジェラルドが私の肩を抱き寄せて囁いた。
「そんな事ないだろう?昔を知ってるお前は気づかないかもしれないが、アンドレはお前に随分と助けられたと思うぜ?まぁ、シモン様が実際アンドレを手の内にしたって知った時は随分仰天したが、結局のところあの二人は収まるところに収まったって事だろうからな。
今後どうなるかなんて分からんが、何が起きてもシモン様が指を咥えている訳ないと思うと、心配するだけ無駄な気がしてきたな。」
私はジェラルドの言い草にクスッと笑うと、頼り甲斐のあるこの親友に目をやった。
「そうだね。心配する必要のない他人の事より、自分たちの事を考えた方がいいかもしれない。そう言えばジェラルドは私の事を隙あらば喰おうとしてたよね。」
私の言葉に普段動揺しない男が目を白黒しているのが珍しくて、私は気分が高揚してきた。何を言い出すのかと私の言葉を待っているこの男の押しの弱さを、意外に思いながら言葉を続けた。
「…卒業の記念に寝ても良いかなって思っただけだよ。もし望むならね?私はジェラルドがどちらかと言えば好きだし、なんて言うか…。」
これ以上どう言えば伝わるか分からずに言葉を探していると、ジェラルドが私の顔を覗き込んで琥珀色の瞳をギラリと光らせた。
「まったく、俺を驚かせる事に成功したみたいだな。俺のあの手この手をスルスルとかわしてきたのに、最後の最後にこれか?まったくローレンスは悪い奴だ。
でも良いのか?俺様と寝たらもう癖になってやめられなくなるぜ?少なくとも俺はローレンスを掴んで離さないって分かるけどな。」
私はジェラルドの物言いに胸の鼓動を速くしながら、でも口をついて出て来るのは憎まれ口だけだった。
「癖になる?随分と自信満々だね。こればかりはやってみないと分からないだろう?じゃあこれから私の部屋に来るかい?」
ジェラルドは目を丸くしてから、弾けるように笑って言った。
「まったくどっちがやる気満々なんだか。良いぜ、卒業の記念を生涯忘れられないものにしよう。俺の溜め込んだローレンスへの気持ちをじっくり分からせてやる。覚悟しろ?
…こうなるとシモン様の気持ちも少しは分かる気がするぜ。ハハハ。」
機嫌の良いジェラルドの眼差しが熱く私に絡みつくのを感じて、私はすっかり高ぶって来た。確かに私もアンドレ達を心配している立場じゃないのかもしれない。
先のことは分からないけれど、少なくとも今は目の前のガサツで男らしい親友に溺れ始めているのを自覚しているのだから。アンドレ、今度会う時は私の方が話を聞いてもらう方かもしれないね?
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