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アフターストーリー【不定期更新】
真夏日に熱を宿して
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梅雨入りがまだだというのに、早くも真夏日だという。地域によっては猛暑日だそうで、勘弁してほしい。
「弓弦ちゃん、おかえり」
日が暮れて空気が入れ替わり始めた時間帯だとはいえ、コンクリートだらけの都心は熱気が篭りがちだ。私が汗だくで帰宅すると、彼はにこやかに迎えてくれた。
「先にシャワーを浴びるといいんじゃないかな」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
エプロンをつけているあたり、夕食の準備をしてくれていたのだろう。前もって帰宅時間を伝えておくと、こうして待っていてくれるからありがたい。いまだに連絡手段を持たせていないから、緊急時はアニキ経由になってしまうけど。
彼がアニキの店で働くようになってそろそろ半年。フロアには出ずにキッチンメインで働いているのだが、時々お客さんの前に立つとざわめくらしい。イケメンだもんな。だから、本気で手が離せないとき以外は裏方に専念させているのだという。
「そうそう」
「うん?」
バッグを片付けて着替えに持ち替えたところで彼が声をかけてきた。私はコンロの前に立って作業をしている彼に意識を向ける。
「新作、預かってきているから、湯上がりにどうぞ」
「了解」
これはいいことを聞いた。私はウキウキしながら浴室に向かった。
#####
シャワーを浴びて戻ると、テーブルに見慣れないカップが置いてあった。
「これが、新作?」
髪を雑にタオルで拭きながらカップを見る。
透明なカップにはゼリー状のカラフルな塊に半透明の青っぽい液体が注がれている。冷凍フルーツだろうか、赤やオレンジ色の小さなキューブがところどころに入っていた。
「うん。くりぃむが載っているのは保存が効かないから、持ち帰りはこういう感じ。お好みであいすを載せることもできるよ」
「ほええ……」
また可愛らしいものを作ったものだ。色合いは写真映えがよくなるように考えられているのだろう。話題になればいいけど。
「さあ、どうぞ」
「いただきます」
太めのストローで吸ってみる。柔らかいゼリーはとろけるようで、味は想像したよりもしっかりとしている。酸味の強いジュースに合っている気がした。
「これ、炭酸のはないの?」
「あるよ。暑くなったらそっちの方がウケるだろうなって梓くんが言ってた」
「次はそっちを注文する」
「今日は特に暑かったからねえ」
そう告げて、彼は手際よくフライパンの物をお皿に取り分けた。キムチ炒め。こうも暑いと辛いものが食べたくなる。
「のんあるびぃるも冷やしてあるよ」
説明しながら冷蔵庫から冷や奴を取り出す。お酒にも合いそうだ。
「今日は金曜日だからお酒があってもいいのに」
「僕がいるからって家飲みを増やすのはよくないよ」
インスタントのわかめスープがお椀に入れられる。お湯が注がれて、乾燥ワカメがふわりと広がった。
「むむ……アニキに止められちゃいました?」
「ふふ。健康診断があるだろうから、不摂生には気をつけてって」
「むう。そんな心配しなくても、今はまともな時間に帰れるから大丈夫なのに」
私が席に着けば、彼は箸を置いてくれる。空腹なので先につまみたいところだったが、サンプルの飲み物を飲むだけにした。フルーツの食感が面白い。フルーツポンチを飲みやすいドリンクにしたような味だと思った。
「そうだねえ。僕と暮らし始めた頃はまだまだ遅い日も多かったからさ、心配してたよ」
炊飯器からご飯をよそって、私の前に茶碗が置かれた。彼の席にもひと通り食器が並んで、彼は席につく。
「あの頃は在宅勤務から切り替わったところだったから、業務が混乱していたのよね……」
一年前のちょうど今頃は家に帰って寝るだけの日々だった。神通力で干渉しようとしてくる彼を鎮めるのに苦労したのがその頃だろうか。
「とにかく、健康第一さ。しっかりお食べ」
「はーい。いただきます」
向かい合って、両手を合わせて食事を始める。すっかり馴染んでしまったが、これでいいのだろうか。
熱々のごはん、キムチ炒め。すごく美味しい。
「――それに、君が元気じゃないとイチャイチャできないからねえ」
「ぐっ……ちょっ、口の中がいっぱいのときに言わないでください」
喉に詰まらせたかと思ったわ。
私が涙目で見つめると、彼は妖しく笑った。とても綺麗だ。
「明日はお休みなんだから、いいよね?」
私の欲望に火をつけないでほしい。返事はもう決まっている。
《終わり》
「弓弦ちゃん、おかえり」
日が暮れて空気が入れ替わり始めた時間帯だとはいえ、コンクリートだらけの都心は熱気が篭りがちだ。私が汗だくで帰宅すると、彼はにこやかに迎えてくれた。
「先にシャワーを浴びるといいんじゃないかな」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
エプロンをつけているあたり、夕食の準備をしてくれていたのだろう。前もって帰宅時間を伝えておくと、こうして待っていてくれるからありがたい。いまだに連絡手段を持たせていないから、緊急時はアニキ経由になってしまうけど。
彼がアニキの店で働くようになってそろそろ半年。フロアには出ずにキッチンメインで働いているのだが、時々お客さんの前に立つとざわめくらしい。イケメンだもんな。だから、本気で手が離せないとき以外は裏方に専念させているのだという。
「そうそう」
「うん?」
バッグを片付けて着替えに持ち替えたところで彼が声をかけてきた。私はコンロの前に立って作業をしている彼に意識を向ける。
「新作、預かってきているから、湯上がりにどうぞ」
「了解」
これはいいことを聞いた。私はウキウキしながら浴室に向かった。
#####
シャワーを浴びて戻ると、テーブルに見慣れないカップが置いてあった。
「これが、新作?」
髪を雑にタオルで拭きながらカップを見る。
透明なカップにはゼリー状のカラフルな塊に半透明の青っぽい液体が注がれている。冷凍フルーツだろうか、赤やオレンジ色の小さなキューブがところどころに入っていた。
「うん。くりぃむが載っているのは保存が効かないから、持ち帰りはこういう感じ。お好みであいすを載せることもできるよ」
「ほええ……」
また可愛らしいものを作ったものだ。色合いは写真映えがよくなるように考えられているのだろう。話題になればいいけど。
「さあ、どうぞ」
「いただきます」
太めのストローで吸ってみる。柔らかいゼリーはとろけるようで、味は想像したよりもしっかりとしている。酸味の強いジュースに合っている気がした。
「これ、炭酸のはないの?」
「あるよ。暑くなったらそっちの方がウケるだろうなって梓くんが言ってた」
「次はそっちを注文する」
「今日は特に暑かったからねえ」
そう告げて、彼は手際よくフライパンの物をお皿に取り分けた。キムチ炒め。こうも暑いと辛いものが食べたくなる。
「のんあるびぃるも冷やしてあるよ」
説明しながら冷蔵庫から冷や奴を取り出す。お酒にも合いそうだ。
「今日は金曜日だからお酒があってもいいのに」
「僕がいるからって家飲みを増やすのはよくないよ」
インスタントのわかめスープがお椀に入れられる。お湯が注がれて、乾燥ワカメがふわりと広がった。
「むむ……アニキに止められちゃいました?」
「ふふ。健康診断があるだろうから、不摂生には気をつけてって」
「むう。そんな心配しなくても、今はまともな時間に帰れるから大丈夫なのに」
私が席に着けば、彼は箸を置いてくれる。空腹なので先につまみたいところだったが、サンプルの飲み物を飲むだけにした。フルーツの食感が面白い。フルーツポンチを飲みやすいドリンクにしたような味だと思った。
「そうだねえ。僕と暮らし始めた頃はまだまだ遅い日も多かったからさ、心配してたよ」
炊飯器からご飯をよそって、私の前に茶碗が置かれた。彼の席にもひと通り食器が並んで、彼は席につく。
「あの頃は在宅勤務から切り替わったところだったから、業務が混乱していたのよね……」
一年前のちょうど今頃は家に帰って寝るだけの日々だった。神通力で干渉しようとしてくる彼を鎮めるのに苦労したのがその頃だろうか。
「とにかく、健康第一さ。しっかりお食べ」
「はーい。いただきます」
向かい合って、両手を合わせて食事を始める。すっかり馴染んでしまったが、これでいいのだろうか。
熱々のごはん、キムチ炒め。すごく美味しい。
「――それに、君が元気じゃないとイチャイチャできないからねえ」
「ぐっ……ちょっ、口の中がいっぱいのときに言わないでください」
喉に詰まらせたかと思ったわ。
私が涙目で見つめると、彼は妖しく笑った。とても綺麗だ。
「明日はお休みなんだから、いいよね?」
私の欲望に火をつけないでほしい。返事はもう決まっている。
《終わり》
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