欲望の神さま拾いました【本編完結】

一花カナウ

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アフターストーリー【不定期更新】

夏至と梅雨時

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 例年は梅雨の時期だから、夏至といえどこの地域は日の長さを実感しにくい。もっとも、ワーカーホリックで引きこもりの私からしたら、日が長かろうと短かろうとお天道様と顔を合わせることがほぼないので関係がないが。

「――ありゃ、今日は早かったんだねえ」

 家に帰ると、彼が迎えてくれた。タオルをすぐに持ってきてくれるあたり、本当に気がきく。たんに私の思考を読み取っているためにして欲しいことがわかりやすいのかもしれないが、読み取ってから動くまでがスムーズで早いのだから気が利いていることには違いない。
 外は雨が降っていて、びしょ濡れになってしまった。遠い西の空が明るかったから、いつものように遅くなっていたら雨に濡れずに済んでいたのかもしれないが。

「出先から直帰だったの」

 同行した上司から食事をして帰らないかと遠回しなお酒のお誘いを受けたのだが、疲れが溜まっているからと遠慮しておいた。
 流行り病のおかげで、体調が優れないから念のためと言えば誘いを辞退しやすくなった。とてもありがたい。まあ、今日の場合はお昼も客先に行く都合で一緒だったから、もうええやん、となってやんわり断ったわけだけど。

「珍しいねえ」
「これからしばらく客先に行くことが増えるから、今日みたいに早ければ、逆に遅いときもあると思うよ」
「新しいぷろじぇくとってやつかい?」
「そんなところ。オンライン会議でもいいっちゃあいいんだけど、たくさんの人が関わると直接会ったほうが早いことも多くて」
「大きなお仕事なんだね」
「うん。私の下にも何人か入ることになってるから。いつまでも新人じゃいられないってことですよ」

 新人枠から中堅枠に入ってきたということなのだろう。同期からしたら大抜擢になると思う。上司に同行して挨拶しているのも、客先とのやり取りの顔になるのが私だからだ。

「ほほう。出世だ」
「ここで失敗したら降格ってことですよ。試されているんじゃないかな」
「弓弦ちゃんならうまくやれるさ」
「自分を信じて、がむしゃらにやれることやりますよ」

 私は笑う。タオルで濡れた体を拭っている間に、彼はカバンを雑巾で拭ってくれた。テーブルには私が提げてきたコンビニの袋が載っている。

「シャワー浴びるよね。夕食、その間に準備しておくよ」
「うん。できればビールに合うものがあると嬉しいな」
「おや、あれはお酒かい?」
「前にコンビニのクジで当てたのを引き換えてきたんですよ。一緒にいかがですか? 明日はお休みですし」
「弓弦ちゃんがそういうなら、お酒に合うものを用意しておくさ。体、温めておいで」
「はーい」

 少しずつ運が回ってきているような気がする。ここが頑張りどきなのだろう。成功せずとも、何らかの結果を残して次に繋げたいなと願いながら、私は浴室に向かうのだった。

《終わり》
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