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アフターストーリー【不定期更新】
ハロウィンに祠を壊して
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実家の周辺にはいろいろな祠があったように記憶している。
なにを祀っているのかよくわからないものもいたるところに点在していたのだろう。祠が立つその土地を利用したいものが現れれば、そういうたぐいに詳しい人間がやってきては移動をお願いしたり破壊したりして退かすのだ。
私や父は視える人間だったので、ヤバいものが残っている気配があればそれなりに対処する必要にかられた。祠をなくして彷徨うなにかに追いかけられることも多々あって、そういうときは自分の家の守り神に頼んで追い払ってもらうのだった。
「――神様さんって、結局のところどういう怪異なんです?」
部屋に居ついている自称神様な怪異である彼に、私はふと尋ねた。今日は休日、アニキからの差し入れでもらったかぼちゃのドーナツを齧りながら聞けば、彼は不思議そうな顔をした。
「いまさら、どうしたんだい?」
「スマホゲームのイベントが十月ということでハロウィンっぽい雰囲気なんですけど、導入が祠を壊してしまうところからで」
「ほう?」
彼は目を細めた。そういう顔をしているときはきまって、ホラーっぽい話題や神様的な心理に絡んだ話題を口にするときである。何を言う気だろう。
「それをきっかけにいろいろな怪異に出会(でくわ)すんですよね」
「君が好んでいるげぇむとやらは、俳優を育てることが中心になっていると思ったのだけど」
異性とイチャイチャするゲームだという認識からは離れてもらえたらしい。そう、私が課金して推しているゲームは俳優を育成するゲームである。その中でも一番好みである甘崎くんに神様さんは外見が似ているのだが、中身は別物だ。
「そうなんですけど、期間限定のイベントはファンタジー要素が強めなんですよ」
「それで?」
ツッコミを入れたかったわけではなく、別のゲームの話ではないことを確認したかっただけのようだ。彼に話を促されて、私は咳払いをする。
「怪異に合わせて対応していくと物語が展開するんです。判断を誤るとプレイヤーとキャラクターの関係に影響が出てしまって、キャラクターの俳優としての仕事に影響が出てしまうっていう厄介なシステムで」
「げぇむをしていたら、僕を攻略したくなったということかな?」
「ちょっと違いますね」
私がすぐに否定したので、彼は首を傾げた。
「攻略は攻略かもしれないんですけど、神様さんって、ウチの守り神ではないのに、よく存在できているなあって」
我が家の守り神とここにいる神様さんは全く別のものである。関係者ということもないだろう。ならば、ほかの怪異と同様に神様さんが私に接触することはできないのではなかろうか。
私が疑問を口にすれば、彼は不敵に、どことなく妖艶に微笑んだ。
美人はこういう表情も魅力的に感じるんだよね……薄っすら恐怖心も芽生えているはずなのに。
「それは、君のところの彼が僕よりもあとにあの場所にやってきたからさ。僕よりも彼のほうが歳上だし、力も上だから間借りさせているだけ。僕は僕の土地を渡したところで行き場はないし、共生しているんだよ」
「そういうの、アリなんですか」
「向こうも僕も嫉妬はしない性質だからね、どうでもいいんだよ。決定的に意見が合わないことが発生したら、おおらかにはなれないだろうけど」
つまり、今のところ大きく対立することはないからなんとなく近くにあっても気にしていないということか。
「あ、そういう意味では――」
「変なところで言葉を切らないでください」
「うん、そういう意味では、土地から離れる君に持たせる御守りをどうするかについてはずいぶんと揉めたよ。君が僕を選んだから、それ以降はお互いに干渉しないことになったけど」
毎日のように持ち歩いている御守りは神様さんの力が込められている。実家の守り神のものだと思っていたけど違ったと知ったのは去年の事件のときだが。
「あー、なるほどね……」
「どんな怪異なのかについては、君が知っている以上のことは特にないよ。ここにあるだけの、君を幸せにすることを使命にしている怪異さ」
適当にはぐらかされた気がする。意図的に嘘はつけないらしいので、矛先を変えられてしまったのだろう。
「はいはい。承知しました。……その上で、聞くんですけど」
「うん?」
私はスマートフォンの画面を彼に向けた。ゲーム画面が表示されている。
「それなりに考証が入っているみたいなんですよ。怪異である神様さんなら、この攻略、どうしますか?」
「僕に意見を求めるなんて珍しいね」
目をぱちくりさせたあとに、彼は画面の文字を視線でなぞった。普段邪険にしてゲーム中は追い出していたからか、頼られたことでどことなく嬉しそうだ。
「興味がないならないでいいんですよ」
「ふふ。面白そうだね。僕の意見でよければよろこんで」
「じゃあ、オヤツを片づけたら協力してくださいね」
交渉成立。私はドーナツを口に押し込んで、コーヒーを口にするのだった。
《終わり》
なにを祀っているのかよくわからないものもいたるところに点在していたのだろう。祠が立つその土地を利用したいものが現れれば、そういうたぐいに詳しい人間がやってきては移動をお願いしたり破壊したりして退かすのだ。
私や父は視える人間だったので、ヤバいものが残っている気配があればそれなりに対処する必要にかられた。祠をなくして彷徨うなにかに追いかけられることも多々あって、そういうときは自分の家の守り神に頼んで追い払ってもらうのだった。
「――神様さんって、結局のところどういう怪異なんです?」
部屋に居ついている自称神様な怪異である彼に、私はふと尋ねた。今日は休日、アニキからの差し入れでもらったかぼちゃのドーナツを齧りながら聞けば、彼は不思議そうな顔をした。
「いまさら、どうしたんだい?」
「スマホゲームのイベントが十月ということでハロウィンっぽい雰囲気なんですけど、導入が祠を壊してしまうところからで」
「ほう?」
彼は目を細めた。そういう顔をしているときはきまって、ホラーっぽい話題や神様的な心理に絡んだ話題を口にするときである。何を言う気だろう。
「それをきっかけにいろいろな怪異に出会(でくわ)すんですよね」
「君が好んでいるげぇむとやらは、俳優を育てることが中心になっていると思ったのだけど」
異性とイチャイチャするゲームだという認識からは離れてもらえたらしい。そう、私が課金して推しているゲームは俳優を育成するゲームである。その中でも一番好みである甘崎くんに神様さんは外見が似ているのだが、中身は別物だ。
「そうなんですけど、期間限定のイベントはファンタジー要素が強めなんですよ」
「それで?」
ツッコミを入れたかったわけではなく、別のゲームの話ではないことを確認したかっただけのようだ。彼に話を促されて、私は咳払いをする。
「怪異に合わせて対応していくと物語が展開するんです。判断を誤るとプレイヤーとキャラクターの関係に影響が出てしまって、キャラクターの俳優としての仕事に影響が出てしまうっていう厄介なシステムで」
「げぇむをしていたら、僕を攻略したくなったということかな?」
「ちょっと違いますね」
私がすぐに否定したので、彼は首を傾げた。
「攻略は攻略かもしれないんですけど、神様さんって、ウチの守り神ではないのに、よく存在できているなあって」
我が家の守り神とここにいる神様さんは全く別のものである。関係者ということもないだろう。ならば、ほかの怪異と同様に神様さんが私に接触することはできないのではなかろうか。
私が疑問を口にすれば、彼は不敵に、どことなく妖艶に微笑んだ。
美人はこういう表情も魅力的に感じるんだよね……薄っすら恐怖心も芽生えているはずなのに。
「それは、君のところの彼が僕よりもあとにあの場所にやってきたからさ。僕よりも彼のほうが歳上だし、力も上だから間借りさせているだけ。僕は僕の土地を渡したところで行き場はないし、共生しているんだよ」
「そういうの、アリなんですか」
「向こうも僕も嫉妬はしない性質だからね、どうでもいいんだよ。決定的に意見が合わないことが発生したら、おおらかにはなれないだろうけど」
つまり、今のところ大きく対立することはないからなんとなく近くにあっても気にしていないということか。
「あ、そういう意味では――」
「変なところで言葉を切らないでください」
「うん、そういう意味では、土地から離れる君に持たせる御守りをどうするかについてはずいぶんと揉めたよ。君が僕を選んだから、それ以降はお互いに干渉しないことになったけど」
毎日のように持ち歩いている御守りは神様さんの力が込められている。実家の守り神のものだと思っていたけど違ったと知ったのは去年の事件のときだが。
「あー、なるほどね……」
「どんな怪異なのかについては、君が知っている以上のことは特にないよ。ここにあるだけの、君を幸せにすることを使命にしている怪異さ」
適当にはぐらかされた気がする。意図的に嘘はつけないらしいので、矛先を変えられてしまったのだろう。
「はいはい。承知しました。……その上で、聞くんですけど」
「うん?」
私はスマートフォンの画面を彼に向けた。ゲーム画面が表示されている。
「それなりに考証が入っているみたいなんですよ。怪異である神様さんなら、この攻略、どうしますか?」
「僕に意見を求めるなんて珍しいね」
目をぱちくりさせたあとに、彼は画面の文字を視線でなぞった。普段邪険にしてゲーム中は追い出していたからか、頼られたことでどことなく嬉しそうだ。
「興味がないならないでいいんですよ」
「ふふ。面白そうだね。僕の意見でよければよろこんで」
「じゃあ、オヤツを片づけたら協力してくださいね」
交渉成立。私はドーナツを口に押し込んで、コーヒーを口にするのだった。
《終わり》
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