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音楽・不可思議カフェ百鬼夜行の業務“外”日誌・2
ライブハウスの幽霊・後編
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カフェ百鬼夜行を閉めて、俺たちは問題のライブハウスに向かった。
薄暗いホール。客はまばらではあるが、素人の演奏のようなのでこんなものだろう。
「――獅子野くんがライブハウス事情に詳しくて助かるよ」
「別に詳しくはねえよ。数十年前の話だし」
ビジュアル系バンドが流行っていた時代の話でほぼ意識が止まっている。最近の状況は知らないに等しい。
「楽器が弾けると思わなかった」
「最近は触っていないから、もう弾けないんじゃないかな」
そう返して、購入した炭酸飲料を飲む。アルコールの方が嬉しいのだが、今はある意味勤務中なので遠慮したのだった。
「彼の前ではああ言ったけれども、弾きたくなったら訪ねるといい。彼は器用だから、何か得られるかもしれないよ」
「引き抜かれるのを心配していたくせに」
「勤務時間は被らないから、両方で働けばいいさ」
「それはちょっと」
やっぱり怒っているじゃねえか。
そう返して、俺はライブハウス全体を見やる。今のところ異常は見られない。
「追加でもらった情報にも目を通したが、確かに規則性はないな」
転送してもらったメッセージをみての感想である。証言の中に嘘や思い違いがあるのかもしれない。
「幽霊が出るライブハウスとして話題になって人が増えればよかったのにな」
「おそらく、それが噂を流した人間の意図だったのだろう」
「ハズレか、この件」
「彼が調べた結果がそうなら、僕が新しく見つけることはないよ」
眼帯の青年の能力は認めているのだろう。
ならば、どうして現場に足を運んだのだろう。
俺は店長の横顔を見つめる。
「だったら、引き受けることはなかったんじゃないか?」
「客が必要だったのだろう。見たところ、設備はきちんとメンテナンスされているようだし、スタッフもきちんとしている。うちと提携して、紹介することが目的じゃないかな」
「客層が合っているとも思えないけど」
カフェ百鬼夜行を訪ねてくる客は常連のほかは怪異がらみのエピソードを持った人間ばかりだ。彼らがライブハウスに行くところはあまり想像できない。
「あるいは、もっと単純な話だ」
店長は人差し指をステージに向ける。
そこには眼帯の美青年がいた。サックスを持っている。
「……え? ってか、知ってたのかよ」
驚いて尋ねると、店長は小さく笑った。
「今日は代打。本来なら自分の店にいるはずだが、納品のついでに手を貸したのだろう」
「ふぅん……」
演奏が始まる。空気が変わる。
すげえ。
眼帯の青年の演奏は会場の人間たちの気を引くのに充分すぎるものだった。
「能力……ではないんだよな?」
「魅了される人間は多いが、能力ではないね」
「いい音色だった。ボーカルとも合っていたし」
「君も合わせてみたくなったかな?」
「遠慮する。俺が合わせるのも難しけりゃ、向こうが俺に合わせるにはもったいねえよ」
「してみれば、上達すると思うがねえ」
「店長を嫉妬させてまでやることじゃねえよ」
その答えに満足したのか、店長は少しだけ笑って飲み物を口にした。
「さて、義理は果たしたことだし、僕はそろそろお暇するよ」
「だな。アルコールの匂いだけでも影響あるんだろ?」
ライブハウスが閉まるまでにはまだ時間はあるからか、お酒を持った客が増えてきた。これからもっと人気のバンドが登場するのだろう。
俺が気遣うと、店長は嬉しそうに笑った。
「お伴してくれるかね?」
「ああ、喜んで」
飲み物を飲み干して、俺たちはライブハウスを出たのだった。
《終わり》
薄暗いホール。客はまばらではあるが、素人の演奏のようなのでこんなものだろう。
「――獅子野くんがライブハウス事情に詳しくて助かるよ」
「別に詳しくはねえよ。数十年前の話だし」
ビジュアル系バンドが流行っていた時代の話でほぼ意識が止まっている。最近の状況は知らないに等しい。
「楽器が弾けると思わなかった」
「最近は触っていないから、もう弾けないんじゃないかな」
そう返して、購入した炭酸飲料を飲む。アルコールの方が嬉しいのだが、今はある意味勤務中なので遠慮したのだった。
「彼の前ではああ言ったけれども、弾きたくなったら訪ねるといい。彼は器用だから、何か得られるかもしれないよ」
「引き抜かれるのを心配していたくせに」
「勤務時間は被らないから、両方で働けばいいさ」
「それはちょっと」
やっぱり怒っているじゃねえか。
そう返して、俺はライブハウス全体を見やる。今のところ異常は見られない。
「追加でもらった情報にも目を通したが、確かに規則性はないな」
転送してもらったメッセージをみての感想である。証言の中に嘘や思い違いがあるのかもしれない。
「幽霊が出るライブハウスとして話題になって人が増えればよかったのにな」
「おそらく、それが噂を流した人間の意図だったのだろう」
「ハズレか、この件」
「彼が調べた結果がそうなら、僕が新しく見つけることはないよ」
眼帯の青年の能力は認めているのだろう。
ならば、どうして現場に足を運んだのだろう。
俺は店長の横顔を見つめる。
「だったら、引き受けることはなかったんじゃないか?」
「客が必要だったのだろう。見たところ、設備はきちんとメンテナンスされているようだし、スタッフもきちんとしている。うちと提携して、紹介することが目的じゃないかな」
「客層が合っているとも思えないけど」
カフェ百鬼夜行を訪ねてくる客は常連のほかは怪異がらみのエピソードを持った人間ばかりだ。彼らがライブハウスに行くところはあまり想像できない。
「あるいは、もっと単純な話だ」
店長は人差し指をステージに向ける。
そこには眼帯の美青年がいた。サックスを持っている。
「……え? ってか、知ってたのかよ」
驚いて尋ねると、店長は小さく笑った。
「今日は代打。本来なら自分の店にいるはずだが、納品のついでに手を貸したのだろう」
「ふぅん……」
演奏が始まる。空気が変わる。
すげえ。
眼帯の青年の演奏は会場の人間たちの気を引くのに充分すぎるものだった。
「能力……ではないんだよな?」
「魅了される人間は多いが、能力ではないね」
「いい音色だった。ボーカルとも合っていたし」
「君も合わせてみたくなったかな?」
「遠慮する。俺が合わせるのも難しけりゃ、向こうが俺に合わせるにはもったいねえよ」
「してみれば、上達すると思うがねえ」
「店長を嫉妬させてまでやることじゃねえよ」
その答えに満足したのか、店長は少しだけ笑って飲み物を口にした。
「さて、義理は果たしたことだし、僕はそろそろお暇するよ」
「だな。アルコールの匂いだけでも影響あるんだろ?」
ライブハウスが閉まるまでにはまだ時間はあるからか、お酒を持った客が増えてきた。これからもっと人気のバンドが登場するのだろう。
俺が気遣うと、店長は嬉しそうに笑った。
「お伴してくれるかね?」
「ああ、喜んで」
飲み物を飲み干して、俺たちはライブハウスを出たのだった。
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