不可思議カフェ百鬼夜行は満員御礼

一花カナウ

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音楽・不可思議カフェ百鬼夜行の業務“外”日誌・2

絶対音感がないと出られない部屋・転

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「――不協和音に聞こえるのには意味があると思うんだ」
「ふむ」
「とりあえず、調律を試みる」
「任せていいかい?」
「ギターは扱ったことがあるから問題ない」

 昔取った杵柄というものだろうか。俺は不協和音を奏でることになった原因は調律ができていないことによるものではないかと考えて、半分だけ布を被せてあったギターを手に取る。
 ん。やっぱり様子がおかしいな。
 軽く弦を弾いてみて違和感を調節していく。

「これでよし」

 不協和音に感じていた音が整った。これは正解のようだ。

「ふむ。興味深い」
「ベースも、うまくできるかわからないが直してみよう」
「なら、キーボードは僕が見てみよう」

 手分けして調整してみると、音が綺麗になった。なお、ドラムセットはバラバラになっていたのを位置を整えるだけで改善した。

「音は聞き取りやすくなったが、まだ閉じ込められたままだね」

 店長は自分たちが入ってきたドアを確認している。

「だとしたら、残るはこっちだな」

 俺は譜面を手に取った。サッと目を通す。

「……この楽譜を奏でていたのか」
「ほう」

 店長も覗き込んで、小さく唸る。

「楽器以外に聞こえてくる旋律はボーカルのものだな?」
「歌えばいいのかい?」
「歌詞はない」
「ハミングでどうだろう?」

 俺は提案してきた店長に譜面を差し出す。店長は驚いたような顔をしていたが、やがて小さく咳払いをした後にふんふんと音をなぞって聞かせた。

「……違うようだな」

 ドアは開かなかった。

「なら、歌詞を書くのはどうだろう」

 音が一瞬やんだ。

「正解じゃないか?」
「ずいぶんと変わった怪異だね」
「部屋を出られたスタッフたちはみんなこれをさせられていたのか?」
「完成させることができなかったのかもしれないがね」
「どうしてそう思う?」
「実際のところは、時間制限があるだけで、部屋からは出られるということだよ、獅子野(ししの)くん」

 そう応えて、店長は懐中時計を取り出して時間を確認する。

「不協和音を聞かされ続けると精神が参ってしまう。部屋から出るには条件をクリアするのが一番早く出られるのかもしれないが、彼の話だとヘトヘトになっていただけで入院が必要というほどでもなかった」
「なるほど、そういう」
「それに、彼にとってはこんな怪異は怪異として認められるようなものではなかったのだろう。彼は音楽の神様に愛されている。気になった箇所を整えて立ち去った可能性が高い」
「だったら、彼以外立ち入り禁止にしてしまえば問題は解決じゃねえか」
「それでは面白くないよ、獅子野くん」

 面白くするために怪異に付き合えるほど、俺は余裕はないのだが。

「曲を完成させて、この部屋を出よう」
「はぁ……歌詞とか考えたことねえんだけど」

 俺は頭を掻いて、大きく息をつきながら店長に付き合うことになったのだった。
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