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不可思議カフェ百鬼夜行の業務日誌【短編集】
店内にツチノコがいたので
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この店の部屋の隅には物怪の通り道があるので、時折予期せぬものが店内に迷い込むことがある。これまでも様々なものを見ては対処してきたわけだが。
スタッフルームから顔を出して、店長の手に細長い生き物らしき何かを掴んでいるのを見て、俺はまず目を擦った。
見間違いではなさそうだ。概ね蛇の類だろう。爬虫類らしきそれを店長は片手で掴んでいる。
「……店長、それは?」
俺が尋ねると、店長はにこやかに微笑んだ。
「獅子野(ししの)くんには何に見えるかい?」
店長に首の辺りを掴まれており、長い胴から尻尾を左右に揺らしているそれには、横槌を想起させる膨らみがあった。
「ん……? ツチノコ、とか?」
「そうだね。僕にもそう見えるよ」
尻尾を店長の腕に絡めて脱走をはかるので、店長は握る力を強める。慌てたように激しめに体を動かしたが、やがてそれはだらりと脱力した。
「って、おい」
「気絶させただけさ。心配はいらない」
「なんだ、それ、迷い込んじまったのか?」
動かないのを確認して、俺は店長に掴まれたツチノコを見る。確かに気絶しているだけのようだ。
「そうかもしれないね。こんなところにいるものでもないから」
「ツチノコって、蛇が何か丸呑みしたところを見られたやつなんじゃねえのかよ」
店内に客が入ってこないあたり、ツチノコを捕獲して対処するために看板をクローズにしたままにしているのかもしれない。もう昼休みは終わっている時間のはずだ。
「そういう説もあるが、彼はツチノコだよ」
「これまでに見たことがあんのか?」
「接触したのはこれが初めてだね。実に興味深い」
「へえ」
午後の接客仕事はどうするつもりなのだろうか。店内にカジュアルにツチノコがいるという状況はなかなかシュールな絵面だと思うのだが。
俺が店長とのびたツチノコを交互に見ていると、店長が困ったように笑った。
「彼がこのままここにいるのも仕事にならないからね。閉店まで封じさせてもらおうかな」
「返してやらねえのかよ」
「穏便に保護したのだから、少しは調べる時間がほしいね」
そう返しながら、店長はのびたツチノコを大きな瓶の中に突っ込んだ。封として札を作成して貼り付ける。術を掛けられた状態なので、そう易々とは逃げられないだろう。
運がなかったな。かわいそうに。
「……ツチノコって食えるのか?」
「獅子野くんは食べるのかい?」
「あ、いや。ウチの種族は蛇にちょっかいは出すけど、食べる習慣はねえよ」
酒に蛇がつけられているのを連想してしまい、つい食べることを口にしてしまったが、別に腹が減っているわけではない。蛇を食べるのが好きだというわけでもない。
俺が慌てて否定すると、店長は愉快そうに笑った。
「そう。僕は食べてみてもいいかと思ったのだけど、捌くのが面倒そうだから今回は見送るつもりだよ」
「お、おう」
好奇心の塊のような店長の気まぐれで命が助かったな、ツチノコ。
「じゃあ、午後の仕事といこうか」
僕はこの瓶をさげておくから準備をして、と店長に促されたので、俺はドアの看板をひっくり返しに向かうのだった。
《終わり》
スタッフルームから顔を出して、店長の手に細長い生き物らしき何かを掴んでいるのを見て、俺はまず目を擦った。
見間違いではなさそうだ。概ね蛇の類だろう。爬虫類らしきそれを店長は片手で掴んでいる。
「……店長、それは?」
俺が尋ねると、店長はにこやかに微笑んだ。
「獅子野(ししの)くんには何に見えるかい?」
店長に首の辺りを掴まれており、長い胴から尻尾を左右に揺らしているそれには、横槌を想起させる膨らみがあった。
「ん……? ツチノコ、とか?」
「そうだね。僕にもそう見えるよ」
尻尾を店長の腕に絡めて脱走をはかるので、店長は握る力を強める。慌てたように激しめに体を動かしたが、やがてそれはだらりと脱力した。
「って、おい」
「気絶させただけさ。心配はいらない」
「なんだ、それ、迷い込んじまったのか?」
動かないのを確認して、俺は店長に掴まれたツチノコを見る。確かに気絶しているだけのようだ。
「そうかもしれないね。こんなところにいるものでもないから」
「ツチノコって、蛇が何か丸呑みしたところを見られたやつなんじゃねえのかよ」
店内に客が入ってこないあたり、ツチノコを捕獲して対処するために看板をクローズにしたままにしているのかもしれない。もう昼休みは終わっている時間のはずだ。
「そういう説もあるが、彼はツチノコだよ」
「これまでに見たことがあんのか?」
「接触したのはこれが初めてだね。実に興味深い」
「へえ」
午後の接客仕事はどうするつもりなのだろうか。店内にカジュアルにツチノコがいるという状況はなかなかシュールな絵面だと思うのだが。
俺が店長とのびたツチノコを交互に見ていると、店長が困ったように笑った。
「彼がこのままここにいるのも仕事にならないからね。閉店まで封じさせてもらおうかな」
「返してやらねえのかよ」
「穏便に保護したのだから、少しは調べる時間がほしいね」
そう返しながら、店長はのびたツチノコを大きな瓶の中に突っ込んだ。封として札を作成して貼り付ける。術を掛けられた状態なので、そう易々とは逃げられないだろう。
運がなかったな。かわいそうに。
「……ツチノコって食えるのか?」
「獅子野くんは食べるのかい?」
「あ、いや。ウチの種族は蛇にちょっかいは出すけど、食べる習慣はねえよ」
酒に蛇がつけられているのを連想してしまい、つい食べることを口にしてしまったが、別に腹が減っているわけではない。蛇を食べるのが好きだというわけでもない。
俺が慌てて否定すると、店長は愉快そうに笑った。
「そう。僕は食べてみてもいいかと思ったのだけど、捌くのが面倒そうだから今回は見送るつもりだよ」
「お、おう」
好奇心の塊のような店長の気まぐれで命が助かったな、ツチノコ。
「じゃあ、午後の仕事といこうか」
僕はこの瓶をさげておくから準備をして、と店長に促されたので、俺はドアの看板をひっくり返しに向かうのだった。
《終わり》
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