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「は?あり得ないんだけど」
二人の幸せを喜ぶ歓声で沸くホールの中に、凍えそうな程冷たい声が響き渡った。
まさか二人の幸せに異を唱える輩がいるなんて信じられない!
いったい誰が言ったのかと、辺りをキョロキョロと見渡す人々。
当然ホール内はシーンと静まり返ってしまったし、重い空気が漂い始める。
でも、僕は一瞬でわかってしまった。
涼やかな天上の音楽を奏でる楽器の音よりも澄んだ声を持つ人物は、この世で一人しか存在しない。
誰もがまさか彼がそんなことを言うはずもないと、疑念から恐る恐る顔を上げる。
階段の踊り場で王太子殿下アレックス様の隣に立っている人物。
この国で一番綺麗で、心優しくて、神様のような人。
そんな彼が、まさかあんなことを言うなんて誰も想像していなかった。
「モブレッドとの婚約を破棄することは、当然大賛成だ♪モブレッドには何度も婚約破棄しろと言い続けていたからな」
笑顔で話しているはずなのに、空気が凍り付きそうな程冷たい雰囲気が漂っている。
不機嫌すぎて笑顔なのが一番怖い。
特に綺麗で優しい人が怒った時って、普通の人がキレるよりも怖いと思う。
「だが、なんでオレとあんたが結婚するなんてふざけた話になるわけ?意味わかんないんだけど」
ユレイユの細腰を抱いていたアレックス様の手をベリッと引き剝がし、虫ケラでも見るような目で王太子を睨み付けている。
「オイ、誰が、いつ、どこで、あんたのことを好きになったって?寝言は寝て言えクソ王子」
ユレイユの澄んだ天上の音楽のような声で、なぜが罵倒の言葉を次々と吐き出している。
ブルーサファイアの瞳は氷のように冷たく、王太子を見下している。
「オレはモブレッドから手を引けと言っただけだろ?オレの可愛いモブレッドに手を出すな。とも言ったよな?」
ドスの効いたユレイユの声に圧倒され、尻もちをついているアレックス様。
アイリッシュ・セターみたいな綺麗な大型犬が飼い主に怒られているみたいに小さく縮こまり、プルプル震えているように見えてしまう。
アレックス様、ちょっと犬っぽいところあるもんね……。
怯えすぎてるせいか尻尾と犬耳が見える気がする。
「お前のここに付いているこの耳は節穴か?頭は飾りか?オレの許可があるまでそこを動くな」
ビシッと人差し指で床を指差し牽制した瞬間、弾かれたようにアレックス様が正座をしてピーンと背筋を伸ばしている。
「あ、あの……ユレイユ?」
「あ゙?誰がしゃべっていいって言ったクソ犬。Shut up」
ギロッとひと睨みされたアレックス様はビクッと肩を震わせ、涙目で俯いてしまった。
そんな様子をずっと見ていた卒業生たち一同は、アレックス様同様身動きが取れないでいる。
みんなユレイユの怒りに触れないように黙ってしまったし、視線を合わせないように顔を背けている。
「はぁ~、やっと静かになったか。ホント、どいつもこいつも好き勝手言いやがって……」
後頭部をガシガシと掻きながら、ゆっくりと階段を下りてくるユレイユ。
僕も驚きのあまり口が半開きになり、床にへたり込んだまま現状の行方を呆然と見ていることしかできなかった。
「モブレッド、可愛い口が開きっぱなしになっているぞ」
天使のような優しい笑みを浮かべたユレイユが、なぜか僕に近付いてきて膝をついて手を差し伸べてくる。
「モブレッド、あんなバカ殿よりもオレの方がお前を愛している。あんな奴との結婚は止めて、オレと結婚して欲しい」
金縁のようなプラチナブロンドの睫毛に縁取られた美しいブルーサファイアの目が、愛おし気に僕を見つめてくる。
「お前を誰よりも愛しているのはこのオレだ。オレの愛を受け取って欲しい」
無意識に差し出されたユレイユの手に、自らの手をそっと重ねてしまう。
その瞬間、僕の手をギュッと握り締め、王子様のように僕の手の甲にチュッと触れるだけの口付けをしてくれるユレイユ。
それだけでも頭から湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にしてしまったのに、そのままグイっと引き寄せると同時に腰を抱かれてしまう。
ユレイユの胸に顔を埋められ、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキバクバクしているのに、ユレイユの白魚のような美しい指が、僕の頬をゆっくりと撫でる。
「モブレッド、何度もこうやって抱きしめているのにまだ慣れないんだな」
僕の鬱陶しい前髪が白く長い指で掻き分けられ、顔を晒される。
「可愛いオレのモブレッド。その黒曜石のような美しい瞳も可憐な唇も、今日から全てオレのものだ」
ユレイユの美しすぎる顔が近付いてきたと思ったら、当然のように唇にふにゅっとマシュマロのような柔らかな触感が当たる。
二人の幸せを喜ぶ歓声で沸くホールの中に、凍えそうな程冷たい声が響き渡った。
まさか二人の幸せに異を唱える輩がいるなんて信じられない!
いったい誰が言ったのかと、辺りをキョロキョロと見渡す人々。
当然ホール内はシーンと静まり返ってしまったし、重い空気が漂い始める。
でも、僕は一瞬でわかってしまった。
涼やかな天上の音楽を奏でる楽器の音よりも澄んだ声を持つ人物は、この世で一人しか存在しない。
誰もがまさか彼がそんなことを言うはずもないと、疑念から恐る恐る顔を上げる。
階段の踊り場で王太子殿下アレックス様の隣に立っている人物。
この国で一番綺麗で、心優しくて、神様のような人。
そんな彼が、まさかあんなことを言うなんて誰も想像していなかった。
「モブレッドとの婚約を破棄することは、当然大賛成だ♪モブレッドには何度も婚約破棄しろと言い続けていたからな」
笑顔で話しているはずなのに、空気が凍り付きそうな程冷たい雰囲気が漂っている。
不機嫌すぎて笑顔なのが一番怖い。
特に綺麗で優しい人が怒った時って、普通の人がキレるよりも怖いと思う。
「だが、なんでオレとあんたが結婚するなんてふざけた話になるわけ?意味わかんないんだけど」
ユレイユの細腰を抱いていたアレックス様の手をベリッと引き剝がし、虫ケラでも見るような目で王太子を睨み付けている。
「オイ、誰が、いつ、どこで、あんたのことを好きになったって?寝言は寝て言えクソ王子」
ユレイユの澄んだ天上の音楽のような声で、なぜが罵倒の言葉を次々と吐き出している。
ブルーサファイアの瞳は氷のように冷たく、王太子を見下している。
「オレはモブレッドから手を引けと言っただけだろ?オレの可愛いモブレッドに手を出すな。とも言ったよな?」
ドスの効いたユレイユの声に圧倒され、尻もちをついているアレックス様。
アイリッシュ・セターみたいな綺麗な大型犬が飼い主に怒られているみたいに小さく縮こまり、プルプル震えているように見えてしまう。
アレックス様、ちょっと犬っぽいところあるもんね……。
怯えすぎてるせいか尻尾と犬耳が見える気がする。
「お前のここに付いているこの耳は節穴か?頭は飾りか?オレの許可があるまでそこを動くな」
ビシッと人差し指で床を指差し牽制した瞬間、弾かれたようにアレックス様が正座をしてピーンと背筋を伸ばしている。
「あ、あの……ユレイユ?」
「あ゙?誰がしゃべっていいって言ったクソ犬。Shut up」
ギロッとひと睨みされたアレックス様はビクッと肩を震わせ、涙目で俯いてしまった。
そんな様子をずっと見ていた卒業生たち一同は、アレックス様同様身動きが取れないでいる。
みんなユレイユの怒りに触れないように黙ってしまったし、視線を合わせないように顔を背けている。
「はぁ~、やっと静かになったか。ホント、どいつもこいつも好き勝手言いやがって……」
後頭部をガシガシと掻きながら、ゆっくりと階段を下りてくるユレイユ。
僕も驚きのあまり口が半開きになり、床にへたり込んだまま現状の行方を呆然と見ていることしかできなかった。
「モブレッド、可愛い口が開きっぱなしになっているぞ」
天使のような優しい笑みを浮かべたユレイユが、なぜか僕に近付いてきて膝をついて手を差し伸べてくる。
「モブレッド、あんなバカ殿よりもオレの方がお前を愛している。あんな奴との結婚は止めて、オレと結婚して欲しい」
金縁のようなプラチナブロンドの睫毛に縁取られた美しいブルーサファイアの目が、愛おし気に僕を見つめてくる。
「お前を誰よりも愛しているのはこのオレだ。オレの愛を受け取って欲しい」
無意識に差し出されたユレイユの手に、自らの手をそっと重ねてしまう。
その瞬間、僕の手をギュッと握り締め、王子様のように僕の手の甲にチュッと触れるだけの口付けをしてくれるユレイユ。
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