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2章:寵姫になるために
寵姫になるために 8-1
しおりを挟む宮殿の中はアナベルの予想を大きく超えていた。
ダヴィドの住んでいる屋敷もすごかったが、ここはそれよりもすごかった。
(――すごいとしか言いようがないのよね……)
あまりにも煌びやかすぎて、目がちかちかしてきたアナベルは、メイドたちに連れられて行った。
残ったのはエルヴィスとロマーヌ。
「ベルをどう思う?」
「……どう、とは?」
「イレインと戦えそうか……?」
目を瞬かせたロマーヌは、エルヴィスをマジマジと見つめた。その視線を避けるように、顔を逸らす。
ロマーヌは「そうですね……」とアナベルの連れられて行ったほうへと視線を向けてにっこりと微笑んだ。
「性格についてはまだ知りませんので、お答えできません。ですが、あの背筋をピンと伸ばして歩くところ、陛下と並んでも引けを取らない美貌……。話し方は問題ですが、これから学べばよいのです。……ところで、本当に未婚のまま彼女を?」
「ああ、紹介の儀までには間に合わせる」
そう言ってニヤリと口角を上げるエルヴィスに、ロマーヌは扇子を取り出して広げ、口元を隠す。
「――完璧な淑女にしてみせますわ」
すっと目元を細めロマーヌを頼もしそうに見るエルヴィス。
ここで待つのもなんだから、と食堂に案内されたエルヴィスは、恐らく風呂に連れていかれ、生まれて初めて着るドレスに苦戦しているであろうアナベルを想像して、口元に弧を描いた。
それを見たロマーヌは意外そうに目を丸くする。
(――陛下は本気、のようですわね……。でしたら、私も気合を入れて彼女に接しましょう)
紹介の儀に向けて。ロマーヌがそんなことを考えている間に、アナベルは汗をかいた後だったので、問答無用で浴室へと案内され、数人がかりで綺麗に洗われ、魔法をかけられて身体と髪を乾かし、保湿のためのボディクリームをたっぷりと塗り込まれて、
「ゃ、ぁ、はははっ! くすぐったいっ!」
「我慢してくださいませ。このボディクリームとっても肌がすべすべになるんですよ」
――と、くすぐったさに悶えていたアナベル。
ボディクリームを塗り終わると、メイドたちは彼女の体をバスタオルで巻いてドレスルームに連れて行った。
浴室からドレスルームは驚くほど近かった。
「衣装係、後は頼みます! 私たちは寝室のセッティングへ向かいます!」
「わかりました、お任せください!」
テンポよく話すメイドたちに呆気に取られながらも、ドレスルームにいるメイドたちがアナベルを取り囲んだ。
ひくり、とアナベルの表情が引きつった。
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