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4章:寵姫 アナベル
寵姫 アナベル 2-1
しおりを挟む「とりあえず、コラリー嬢からの誘いには乗ったほうが良いと思います」
「招待状も来ていますよ」
「あら、そうですの? では、その誘いには参加の方向で。……なんだか緊張してきますわ……」
パトリックの言葉に、メイドが続く。
アナベルは紹介の儀で出会った女性、コラリーのことを思い浮かべて頬に手を添えて小さく息を吐いた。
「どんな人たちが集まるのかしら……?」
「コラリー嬢のことだから、様々な人を呼ぶと思いますよ。参加する人たち全員が陛下の味方というわけでもないでしょうが、中立派もいるはずです」
アナベルは小さくうなずく。
現状、王妃イレイン派がエルヴィス派よりも若干多く見える、とメイドたちが話していた。
そして、それがなぜかというと、イレインに逆らえば命がないから、というのが通説になっているようだ。
(――随分と好き勝手していたみたいね……)
そして、アナベルにはもうひとつ、気になることがあった。
「王妃サマには子どもがいましたよね、その子はどうしているんですか?」
「――あー、それ聞いちゃいます?」
アナベルはじっとパトリックを見つめた。真摯な眼差しを受けて、う、とパトリックが頬を赤らめる。
(本当に女性に免疫がない人よねぇ……)
あと数日、旅芸人の一座の踊り子たちに囲まれていたら、取って喰われていた可能性が高いな、と思いアナベルは肩をすくめた。
「乳母とナーサリーメイドに育てられていますよ、大切に。ただ……本当に陛下の子ではないと思います」
「……じゃあ、誰の子?」
「わかりません。ただ、王妃殿下はいろいろな人たちを王妃宮に呼んでいるそうなので……」
なぜ呼んでいるかを察したアナベルは、イヤそうに眉間に皺を刻んだ。
「……陛下はどうして放置しているのかしら?」
「放置というか、興味がないというか。良く言うでしょう、好きの反対は無関心だって。そんな感じです。それに、王妃殿下が好き勝手にしているのは、今に始まった問題じゃないですし……」
それもそれでどうなのだろうか、とアナベルは息を吐く。
そもそも、最初から間違っていたのだろう。
「――生まれは選べないけれど、こうも間違った方向性を見せつけられると、逆に清々しいわね……」
貴族として生まれ育ったであろうイレインに、王族として国を背負うことが決定づけられたエルヴィス。彼らの間には、きっといろいろな思惑が飛び交い、訂正されることなくここまで来てしまったのだろう。
(……あたしがエルヴィス陛下に出来ること……)
彼を支えて、共に戦う。せめて、自分といる時だけでも彼が少しでも安らげれば良い。――アナベルはそっと、自分の胸元に手を当てて目を閉じた。
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