オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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3章:探求

『架瑠』 2話

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 静かに『架瑠かける』が言い放つ。

 その言葉の重さに、架瑠が息をむと、伊吹はぶんぶんと首を横に振った。

「違う! るーくんのご両親は、るーくんのせいで死んだんじゃないっ!」

 伊吹いぶきは人間の姿のまま、猫耳と尻尾を見せ、ぶわりと尻尾を膨らませた。その尻尾は二本にわかれている。

 彼女の言葉と『架瑠』の言葉が耳に届き、架瑠は何度も深呼吸を繰り返した。

 むせかえるような鉄のような匂いを感じながら、架瑠はぐっと自分の拳を握りしめる。

 自身の手が、血で汚れる。その様子を見て、そっと目を閉じて唇を噛み締めた。

(――そうだ。本当は、知っていた)

 架瑠は自身の呼吸を整えて、ゆっくりと立ち上がる。『架瑠』が言っていることは、本当のことだと。

 受け止めるには、幼すぎた。

 心の奥にしまい込んで、思い出さないようにしていた。

 ――だって、それを認めてしまったら――……

 自分だけが生き残ったことが、つらすぎて。考えないようにしていた。だけど、もう自分の心をだますことなんてできない。

 この『架瑠』が言っていることはすべて、――架瑠がずっと心の奥でしまい込んでいた思いのだと気付いている。

『霊力が強いと、魔のモノを惹きつける。お前がいるから他の者も不幸になっていく』

 淡々とした口調で、『架瑠』は言葉を続ける。その言葉にも、伊吹は「そんなことないっ!」と否定していたが、架瑠はパシャン、パシャンと音を立てながら足元の血の海を歩き、伊吹の隣に立つ。

 血で汚れた自身の手に視線を落とし、一瞬耐えるように目を閉じてから、大きく深呼吸をして目の前の『架瑠』に向き合う。

「そうかもしれない。それでもおれは――みんなと一緒にいたい」

 心からの言葉だった。

 ずっと、心の奥にしまい込んでいた、もう一つのこと。

 ――許されるのなら、幸せになりたい。

 だけど、両親が自分のせいで死んだのに、そんなことを願ってはいけない。幼い頃にそう思い続けていた。

 ズキリ、と一層頭が痛み、「くっ」と表情を歪める架瑠に、伊吹が「るーくん……」と手を伸ばす。

 架瑠が自身の前髪をかき上げ、後頭部に撫でつけた。

 はっきりと見えるようになった、彼の瞳に、伊吹は息をむ。

(――ああ、るーくんは今、戦っているんだ……)

 両親の死について、架瑠はほとんど覚えていなかった。思い出せないようだった。

 だから、蓮也れんやと相談し、無理に思い出すことはさせないようにしようと決めた。

 高校二年生に進級してから、徐々に彼の記憶の蓋が緩み、怪異に巻き込まれる回数も増えてしまい、ハラハラとしていた自身の気持ちに伊吹はふっと表情を歪める。

 その日のことを思い出してしまったら、架瑠はどうなるのだろうとずっと不安だったのだ。

 だが今――伊吹の隣に立つ架瑠の瞳に、迷いは感じられない。

(強くなったね、るーくん)

 伊吹が心の中でそうつぶやくと、架瑠は『架瑠』を見据えたまま動かない。
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