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1章:婚約破棄とプロポーズ
婚約破棄とプロポーズ 1話
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「リディア・フローレンス、きみとの婚約を破棄することを、ここに宣言する!」
いきなり伝えられた言葉に、ハッと顔を上げる。
茶色に近い金色の髪、青い瞳。とても整っている――そう、まるでゲームのように――彼の顔を視界に入れた瞬間、いろいろな情報が頭の中で再生されて、ぐわんぐわんと眩暈がした。
「――ッ」
情報の多さに、思わず額に手を置く。
この記憶は、いったい……?
絢爛豪華なシャンデリアが会場を照らす空間。そう、ここは王城の広間だ。ダンスパーティーに参加しているのは……サファイアブルーのドレスを身にまとう、私。
きっと、彼の瞳に合わせたドレス。
よし、だいぶ記憶が整理された。卒業パーティーの日に起こる断罪イベント真っ最中なのね、要するに。あれ、まだ卒業パーティーの時期ではないんだけど?
確か、ゲームのタイトルは『花の乙女 ~永遠を誓う~』だったはず。
うん、うん、なるほど。
私はさっき『リディア』と呼ばれていたから……悪役令嬢に転生したってこと?
明るい金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳を持つ、吊り目の十六歳の女性。それが悪役令嬢、リディア・フローレンス。つまり、私だ。
この場面、私はどういう態度を取るのが相応しいのかしら?
花の乙女――桜色のふわふわとした髪に、明るい茶色のパッチリとした二重の瞳を持つフローラ。
彼女を守るように前に立つのはこの国、サクリアナの王太子、アレクシス殿下。その瞳には私への軽蔑がにじんでいた。
……私、この乙女ゲーム、殿下ルートを遊ぶ前に命を落としてしまったから、どう対応すればいいのかさっぱりわからないわ。
とりあえず、ここは令嬢らしく振る舞うべきよね。
扇子を広げて口元を隠し、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そうですか」
――ごめん、リディア。貴女のように振舞えない。……一気に前世を思い出してしまったからか、混乱が凄まじい。
アレクシス殿下は、一瞬呆気にとられたような顔をして、それから怪訝そうに眉間に皺を刻んだ。
「ずいぶんと大人しいのだな。ならば、きみがフローラにした嫌がらせも、ここで暴こう」
「嫌がらせ?」
私、そんなことをしていたの?
アレクシス殿下は赤く顔色を変えた。怒らせちゃったみたい。
……仮にも一国の王位継承者が、そんなにすぐ感情を表に出すのはちょっといただけない。
だからこそ、私のような――いや、リディアのような女性が婚約者に抜擢されたんだろうけど。
婚約破棄の宣言なんて、こんな衆目を集める場ではなく、二人きりのときにすればいいのに。
私は公爵家の娘だから、殿下と結婚すると血が濃くなってしまう。血の濃さのデメリットを前世で勉強してきたから、この婚約破棄ってラッキーよね。
「白を切るな! 貴様がフローラを階段から突き落としたり、嫌がらせをしたり、彼女をきずつけていたことを知っているのだぞ!」
「それは確かな証拠がございますの?」
ざわざわと周囲の人たちが騒ぎ始める。まぁ、いきなりの婚約破棄宣言だったものね。
ところで私、本当にそんな嫌がらせをしていたの? まったく記憶がないんだけど……?
えーと、リディアがフローラにした嫌がらせってどんなのだった? 中途半端にプレイしていたから、覚えているところと覚えていないところの差が結構あるわ。
誰か教えてくれる人がいないかな、と周りに視線を巡らせた。
いきなり伝えられた言葉に、ハッと顔を上げる。
茶色に近い金色の髪、青い瞳。とても整っている――そう、まるでゲームのように――彼の顔を視界に入れた瞬間、いろいろな情報が頭の中で再生されて、ぐわんぐわんと眩暈がした。
「――ッ」
情報の多さに、思わず額に手を置く。
この記憶は、いったい……?
絢爛豪華なシャンデリアが会場を照らす空間。そう、ここは王城の広間だ。ダンスパーティーに参加しているのは……サファイアブルーのドレスを身にまとう、私。
きっと、彼の瞳に合わせたドレス。
よし、だいぶ記憶が整理された。卒業パーティーの日に起こる断罪イベント真っ最中なのね、要するに。あれ、まだ卒業パーティーの時期ではないんだけど?
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うん、うん、なるほど。
私はさっき『リディア』と呼ばれていたから……悪役令嬢に転生したってこと?
明るい金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳を持つ、吊り目の十六歳の女性。それが悪役令嬢、リディア・フローレンス。つまり、私だ。
この場面、私はどういう態度を取るのが相応しいのかしら?
花の乙女――桜色のふわふわとした髪に、明るい茶色のパッチリとした二重の瞳を持つフローラ。
彼女を守るように前に立つのはこの国、サクリアナの王太子、アレクシス殿下。その瞳には私への軽蔑がにじんでいた。
……私、この乙女ゲーム、殿下ルートを遊ぶ前に命を落としてしまったから、どう対応すればいいのかさっぱりわからないわ。
とりあえず、ここは令嬢らしく振る舞うべきよね。
扇子を広げて口元を隠し、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そうですか」
――ごめん、リディア。貴女のように振舞えない。……一気に前世を思い出してしまったからか、混乱が凄まじい。
アレクシス殿下は、一瞬呆気にとられたような顔をして、それから怪訝そうに眉間に皺を刻んだ。
「ずいぶんと大人しいのだな。ならば、きみがフローラにした嫌がらせも、ここで暴こう」
「嫌がらせ?」
私、そんなことをしていたの?
アレクシス殿下は赤く顔色を変えた。怒らせちゃったみたい。
……仮にも一国の王位継承者が、そんなにすぐ感情を表に出すのはちょっといただけない。
だからこそ、私のような――いや、リディアのような女性が婚約者に抜擢されたんだろうけど。
婚約破棄の宣言なんて、こんな衆目を集める場ではなく、二人きりのときにすればいいのに。
私は公爵家の娘だから、殿下と結婚すると血が濃くなってしまう。血の濃さのデメリットを前世で勉強してきたから、この婚約破棄ってラッキーよね。
「白を切るな! 貴様がフローラを階段から突き落としたり、嫌がらせをしたり、彼女をきずつけていたことを知っているのだぞ!」
「それは確かな証拠がございますの?」
ざわざわと周囲の人たちが騒ぎ始める。まぁ、いきなりの婚約破棄宣言だったものね。
ところで私、本当にそんな嫌がらせをしていたの? まったく記憶がないんだけど……?
えーと、リディアがフローラにした嫌がらせってどんなのだった? 中途半端にプレイしていたから、覚えているところと覚えていないところの差が結構あるわ。
誰か教えてくれる人がいないかな、と周りに視線を巡らせた。
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