【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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1章:婚約破棄とプロポーズ

婚約破棄とプロポーズ 2話

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 周囲の人たちはこちらの様子をうかがうだけで、関わろうとはしない。

 私の味方はいないってことかしらね?

「そんな、ひどい……」

 うるっと瞳を濡らし、アレクシス殿下の袖を掴み、わざとらしく弱々しく声を震わせるフローラ。

 弱々しいのに透き通る声のおかげで、一斉に注目の的になる私。

 さて、リディア。ここからどうする? ちょっと記憶も落ち着いてきたから、淡々と事実を告げてみよう。

「私、フローラさまが階段から落下したところを、目撃しただけですわ」
「証人は?」
「それをおっしゃるのなら、私がフローラさまを突き落としたという証人はどこに?」
「それなら、いるぞ!」

 いるの? と目をぱちくりとまたたかせた。

 リディアとしての記憶もちゃんと私の中にある。

 その記憶をたどると、フローラは勝手につまずいて、階段から転がり落ちた感じだったけど……その証人ってどんな人かな?

 あまりにも華麗に転がっていったし、そのとき荷物を持っていたから助けることもできなかった。その状況でどうして突き落としたと思えたのか、気になるわ。

「では、証人をお呼びください」
「――よいだろう。ここへ」

 アレクシス殿下が証人として呼んだのは、セシリアという上級生だった。表情が硬く、戸惑っていることがよくわかる。彼女はおそるおそる口を開いた。

「わ、私は確かにこの目にしましたわ。リディアさまがフローラさまを突き飛ばしているところを!」
「では、どのように突き飛ばしたのか、真似してくださる?」

 扇子を閉じて、ペシンと手のひらに打ち付ける。ビクッと肩を揺らした彼女は、私が突き飛ばしたというポーズを取る。両手を突き出したポーズだ。

「それはおかしいですわ」

 人差し指を頬に添え、キッパリと言い切る。

 ぴくりとアレクシス殿下の眉が跳ねあがったけれど、気にしない。

「フローラさまが階段から落下したとき、荷物を持っていましたのよ。それを床に置いた覚えはありません。……そういえば、セシリアさまはすぐに駆けつけましたよね? 私が荷物を持っていることに気づかなかったのですか?」
「ゆ、床に置いて持ち直したのでしょう?」
「いいえ。あれは魔石の入った箱ですもの。一瞬たりとも我が身から離しておりませんわ」

 魔石って、衝動で小さな爆発を起こすことがあるから、持ち運ぶときってそぅっと歩かないといけないの。先生も気をつけるように、と口を酸っぱくして注意していた。

 そもそも、本来なら荷物を運ぶ当番だったアレクシス殿下が、私に押しつけていったの。

 いつもそう。私は殿下の尻拭いばかり……あ、なんかこれ、今までの不満をぶちまけてもいい場面なのでは?

 ふつふつとはらわたが煮えくり返ってきたわ!
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