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1章:婚約破棄とプロポーズ
突然の訪問 2話
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私と視線が合うと、フィリベルトさまはまなじりを下げた。……それにしても、改めて彼の姿を確認すると、格好いい人なのだとしみじみ思う。まるで王子さまみたい。
あ、公爵の息子だから、王族の血は流れているのか。
燃えるような赤い短髪はオールバックにしていて、昨日は隠れていた額が見える。エメラルドの耳飾りも視界に入る。あれはピアスなのかしら、イヤリングなのかしら……待って、その色、私の瞳の色!
黒曜石のような切れ長の瞳が、柔らかく細められた。スタスタとこちらに向かってきて、ピタリと足を止める。
私よりも頭一つ分くらい高い身長。程よく鍛えられているような身体。
うーん、乙女ゲームの中だから、こんなに格好いいのかしら?
「昨日ぶりですね、リディア嬢」
「ええ。昨日ぶりですわね、フィリベルトさま。……ずいぶんと、素早い行動ですわね……?」
「こういうのは先手必勝だと父から教わっていまして。……普段の制服やパーティーで着るドレスも似合っていますが、休日の服装も素敵ですね」
「……ありがとう、ございます……」
本気でそう思っているのか、休日だからってラフ過ぎじゃね? という意味なのか……どちらかしら。前者であってほしい。
訝しむように彼を見上げると、私の前髪を梳くように手を動かす。
「あの?」
「急いできていただいたようで……」
あああ、穴があったら入りたい! 汗で額に張り付いた髪を拭ってくれたのね!
羞恥で顔を赤くすると、フィリベルトさまは笑みを深めて応接室まで、私をエスコートする。きっと声が聞こえたのよね。だから出てきたんだわ。
応接室に入ると、お父さまは私たちを見て一瞬目を見開いたけれど、すぐにごほんと咳払いをした。
お父さまの隣に座ろうとしたけれど、フィリベルトさまが椅子を引いて彼の近くに座るようにうながした。ちらりとお父さまの顔を見ると、小さくうなずいたので彼に顔を向ける。
「ありがとうございます」
椅子に座りお礼を伝えると、彼は緩やかに首を横に振り、私の近くに座った。
チェルシーにお茶を淹れてもらい、彼女が一礼して部屋から出ていくのを見送ってから、フィリベルトさまが口を開く。
「急に訪問して、申し訳ありません」
「いや、正直驚きましたが、昨日リディアから話は聞いていたので……」
お父さまも、まさかこんなにすぐくるとは思っていなかったでしょうからね……。驚きすぎて口調が怪しいわ。
紅茶に手を伸ばして、とりあえず落ち着こうと一口飲む。
「なら、話は早いですね。昨夜、私はリディア嬢に求婚しました」
――紅茶、飲み込んでいて良かった……!
危うく咳き込むところだったわ!
「……リディアを選んだ理由を、お聞きしても?」
あ、お父さま、混乱から少し回復したみたい。
なにかを探るように、じっとフィリベルトさまを凝視するお父さま。
確かに、いきなりの求婚だったし……なにか、理由があるのかしら?
私も理由が気になり、フィリベルトさまの答えを待つ。すると、彼は一度紅茶を飲んでから、にこやかに話し始めた。
あ、公爵の息子だから、王族の血は流れているのか。
燃えるような赤い短髪はオールバックにしていて、昨日は隠れていた額が見える。エメラルドの耳飾りも視界に入る。あれはピアスなのかしら、イヤリングなのかしら……待って、その色、私の瞳の色!
黒曜石のような切れ長の瞳が、柔らかく細められた。スタスタとこちらに向かってきて、ピタリと足を止める。
私よりも頭一つ分くらい高い身長。程よく鍛えられているような身体。
うーん、乙女ゲームの中だから、こんなに格好いいのかしら?
「昨日ぶりですね、リディア嬢」
「ええ。昨日ぶりですわね、フィリベルトさま。……ずいぶんと、素早い行動ですわね……?」
「こういうのは先手必勝だと父から教わっていまして。……普段の制服やパーティーで着るドレスも似合っていますが、休日の服装も素敵ですね」
「……ありがとう、ございます……」
本気でそう思っているのか、休日だからってラフ過ぎじゃね? という意味なのか……どちらかしら。前者であってほしい。
訝しむように彼を見上げると、私の前髪を梳くように手を動かす。
「あの?」
「急いできていただいたようで……」
あああ、穴があったら入りたい! 汗で額に張り付いた髪を拭ってくれたのね!
羞恥で顔を赤くすると、フィリベルトさまは笑みを深めて応接室まで、私をエスコートする。きっと声が聞こえたのよね。だから出てきたんだわ。
応接室に入ると、お父さまは私たちを見て一瞬目を見開いたけれど、すぐにごほんと咳払いをした。
お父さまの隣に座ろうとしたけれど、フィリベルトさまが椅子を引いて彼の近くに座るようにうながした。ちらりとお父さまの顔を見ると、小さくうなずいたので彼に顔を向ける。
「ありがとうございます」
椅子に座りお礼を伝えると、彼は緩やかに首を横に振り、私の近くに座った。
チェルシーにお茶を淹れてもらい、彼女が一礼して部屋から出ていくのを見送ってから、フィリベルトさまが口を開く。
「急に訪問して、申し訳ありません」
「いや、正直驚きましたが、昨日リディアから話は聞いていたので……」
お父さまも、まさかこんなにすぐくるとは思っていなかったでしょうからね……。驚きすぎて口調が怪しいわ。
紅茶に手を伸ばして、とりあえず落ち着こうと一口飲む。
「なら、話は早いですね。昨夜、私はリディア嬢に求婚しました」
――紅茶、飲み込んでいて良かった……!
危うく咳き込むところだったわ!
「……リディアを選んだ理由を、お聞きしても?」
あ、お父さま、混乱から少し回復したみたい。
なにかを探るように、じっとフィリベルトさまを凝視するお父さま。
確かに、いきなりの求婚だったし……なにか、理由があるのかしら?
私も理由が気になり、フィリベルトさまの答えを待つ。すると、彼は一度紅茶を飲んでから、にこやかに話し始めた。
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