【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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1章:婚約破棄とプロポーズ

突然の訪問 3話

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「おそらく、リディア嬢は覚えていないと思いますが……」

 そんな前置きをしてから、私の瞳を見つめる。その真摯しんしな表情にトクンと胸が高鳴った。イケメンだなぁ。

 顔だけ見れば、アレクシス殿下もイケメンなんだけど(なんせ乙女ゲームの攻略キャラなわけだし?)、中身がなぜああなったのか。それを知りたいところだわ。

「入学式の日、私は貴女に助けられたのです」

 はて、誰かを助けた記憶はないんだけど……?

 こてんと小首をかしげると、フィリベルトさまは目を伏せた。その表情に入学式の記憶がパッとよみがえった。

 女性に囲まれて困っていた人がいたような……丁寧に接していたけれど、動けなくて困惑しているようだった人。彼女たちの振る舞いに、思わず声をかけたのよ。

『淑女たるもの、相手の迷惑も考えずに騒ぎ立てるものではありません』

 ――ふと、入学式に口にした言葉が、頭の中で再生された。

 あれを言ったのは私であって私じゃないんだけど……あー、ややこしい!

「思い出していただけましたか?」
「……ええ。ですが、それだけで?」
「私はあの日、留学生として目立っていたようで……入学式が終わっても女性たちに囲まれ、なかなかクラスにいけずに困っていたところを、貴女が助けてくれました。ずっとお礼を伝えたかったのですが……」

 私に声をかけられなかった、ということね。まぁ、それは仕方ないと思うわ。

 入学式からずっと、私に取り入ろうする人たちが周りにいたし、アレクシス殿下の婚約者だからって睨まれてもいたし。

 あの婚約は、陛下とお父さまが決めたことだから、敵視されても困るのだけど。

 正直、あの学園で心から私の味方といってくれる人は、いないに等しいでしょう。

「きみは、娘の味方になってくれるのかい?」

 お父さまにたずねられ、フィリベルトさまは「もちろんです」と力強くうなずいた。

 その瞳には優しさがにじんでいて、息をむ。

「ふむ。……実は本日、陛下に呼ばれていてね。悪いがリディア、フィリベルトさんのことを頼むよ」
「……もしかして、昨日の件ですか?」
「いろいろだよ、リディア。では、あとは二人で話していてほしい。リディアの選ぶ道を、私は応援するからね」

 お父さまはとても朗らかな笑顔を私に向け、椅子から立ち上がると応接室から出ていった。

 そして、残された私たちはしばらく黙っていた。ちらりと彼に視線を移すと、ぱちっと視線が交わる。

「……フィルベルトさまは、お一人でこちらまで?」
「屋敷の外に護衛を待たせています。ところで、リディア嬢、よければ少し歩きませんか?」
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