【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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2章:同じことはしないけど

夕食を一緒に 2話

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 そっか、私……誰かに認められたかったのかもしれない。

 アレクシス殿下は私の努力について、全然気づいていなかったし、マダムはその努力が普通だと一貫していた。

 努力しても褒められることなく、ただ誰かに認めてもらいたくて底なし沼の中でもがいていた感覚。

「ふふっ」
「どうした?」
「いえ、ありがとうございます、フィリベルトさま」

 努力を認めてくれたのが他国の方っていうのも、なかなか嬉しいものね。

 不思議そうに私を見つめるフィリベルトさまから視線を外し、景色を楽しむことにした。

 フローレンス邸について、彼と一緒に屋敷に入ると、お父さまが目を丸くした。だって、まさか、こんなことが――?

「久しぶりだな、リディア」

 優しく声をかけられて、ハッとしたように動き出す。慌てて、でも優雅に見えるようにカーテシーをっして頭を下げた。

「お久しぶりでございます、陛下」
「おや、きみはユミルトゥスの……」
「ご無沙汰しております。竜の国、ユミルトゥスのフィリベルト・スターリングがご挨拶申し上げます」

 すっと胸元に右手を添えて、私と同じように頭を下げるフィリベルトさま。

 陛下は「ああ、なるほど」とつぶやいて、「楽にしなさい」と柔らかく言葉をかける。

 私たちが顔を上げると、慈愛に満ちた微笑みが視界に入った。

「夕食はまだかな、二人とも」
「はい」
「では、一緒に食べようか」

 お父さまの誘いに、フィリベルトさまはちらりと陛下を見てから、口を開く。

「私もご一緒してよろしいのですか?」
「もちろん。ユミルトゥスの話も聞いてみたかったしね」

 相変わらず、フレンドリーな陛下だ。

 私と陛下は親戚関係にあるけれど、フィリベルトさまと陛下にはなんの繋がりもない。

 ごめんなさい、フィリベルトさま! まさか陛下がフローレンス邸に来ているとは思わなかったの!

 夕食までまだ時間があるから、私たちは一度私服に着替えることになり、場所を移動した。

 フィリベルトさまには、背格好が似ているお兄さまの服を着てもらうことになり、なぜかメイドと執事が張り切っている。

 ……お兄さまのほうがフィリベルトさまより、ちょっとだけ背が低いのだけど、そんなに変わらない……と思うからきっと大丈夫よね?

 ちなみに、そのお兄さまは留学中。帰ってきたら私とアレクシス殿下の婚約解消ニュースが一番に聞こえてくるだろう。……倒れないといいけれど。

「お嬢さま、こちらのドレスでよろしいですか?」
「もっとシンプルなものにしてちょうだい、お願いだから」

 チェルシーを先に帰しておいて、正解だったわ。

 とにかくシンプルなドレスにしてもらわないと困る。陛下の前でド派手なドレスはいやだ。

 ああいうゴテゴテで重そうなドレス、『リディア』はよく着て動けていたなぁ……
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